特集

モチベーション向上は、日々の小さなことから


現場力を底上げ! 老舗大手企業の挑戦~ヤマト運輸~

2016.06.13

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目次
  1. 物流業界で圧倒的シェア1位を支える現場力
  2. 感動体験の共有と感謝の気持ちを見える化し、従業員満足度がアップ

物流業界で圧倒的シェア1位を支える現場力

新たな制度や研修の導入により、社員のやる気が向上するのは、何もベンチャー企業に限った話ではない。老舗でも大手でも、新たな制度を取り入れ根付かせることにより、社員が働くモチベーションを上げることはもちろんできる。

宅配便最大手のヤマト運輸は、グループ全体で従業員19万人を超える、言わずと知れた巨大企業だ。創業は1919年(大正8年)。2019年には創業100周年を迎える老舗企業でもある。特に宅配便市場では、全体の45%を超える圧倒的シェアを有し、業界2位の佐川急便を10%以上突き放している(※)。
※ 会社四季報 業界地図2016年版(東洋経済新報社)より

同社の宅配と営業を一手に支えているのは、全国に約6万人いるセールスドライバー(以下、SD)だ。SDは、通常の集荷、宅配、決済業務を担うだけでなく、新商品・新サービスの拡販も行い、ときには顧客が必要とする新サービスや新商品の企画立案まで行う。

古くは、スキー場から荷物を送りたい顧客のニーズを取り込んだ「スキー宅急便」や「ゴルフ宅急便」など、次々と生み出される新商品や新サービスの多くは、SDたちが考えたものだ。

ヤマト運輸育成戦略部の木村氏(左)と犬竹氏

育成戦略部の木村氏(左)と犬竹氏

「日々、お客様とダイレクトに接して、そのニーズを一番くみ取ることができるのがSDです」とヤマト運輸育成戦略部の犬竹美代氏は言う。人員の増加に伴い、よりSD一人が担当するエリアを細分化し、顧客と密な接点を持てるようにしているのもそのためだ。

SDたちは、拠点ごとに少人数のチームに分かれ、自分の担当エリアを密にフォローしながら、荷物の過多によっては柔軟なチームワークも求められる。

感動体験の共有と感謝の気持ちを見える化し、従業員満足度がアップ

ヤマト運輸では、現場を支えるSDのモチベーションを維持・向上するために、これまでさまざまな取り組みを実施してきた。

その一つが、在籍1年以上の社員を主な参加対象とした「満足創造研修」だ。この研修では、顧客から寄せられた感謝の言葉や、実際にSDが体験した“感動”を写真と短い言葉、音楽だけでシンプルに構成した、8分間の「感動体験ムービー」を見る。

「SDの経験を積んだ人間なら、必ず共感するエピソードが入っています」と犬竹氏が話す通り、ムービーを見ながら、つい目頭を熱くする社員も後を絶たない。研修ではビデオを見た後に、参加者同士で各自の“感動”体験を語り合い、改めてSDの魅力を再確認している。SDとして働く魅力が詰まった動画だが、あくまでも現役メンバーたちの“共感”を重視して製作しているため、入社時や選考時には使用していない。

ヤマト運輸社内イントラネットの「満足BANK」制度

満足BANKは全従業員が利用できる

もう一つ、大きな取り組みとして2009年から始まったのが、社内イントラネットの「満足BANK」制度だ。この制度は、SDだけではなく全従業員が利用可能。特定の社員を「褒めたい」と思うときに、イントラネット上に記名式で入力を行う。全社員がお互いに、誰が誰をどう褒めているかも閲覧可能だ。

入力回数に応じてポイントが付与され、褒められた人は10ポイント、褒めた人にも3ポイントが入る。

下から時計回りに、ダイヤモンド、銀、金、銅

下から時計回りに、ダイヤモンド、銀、金、銅

貯まったポイントに応じて、銅(200)、銀(500)、金(1000)とバッジのランクが上がり、2000ポイントで最高位のダイヤモンドバッジが授与される。褒められるだけなら、200回以上誰かに褒められることが必要だ。

この制度が作られた背景には、世界一高いサービスレベルが求められる日本の物流業界ならではの悩みがあった。

「日本の物流業界は、迅速な配達や細かい時間指定通りの配達を行います。そんなサービスに対して、お客様からは『ありがとう』と感謝の言葉をいただけて、それがSDの最大のモチベーションとなります。それなのに、仕事の大変さがより分かるはずの社内で、『できて当然』『ミスがあったら注意する』という風土が蔓延していました。そんなぎすぎすした環境ではなく、もっとお互いが気持ちよく働ける『褒める文化』に変えていくために導入された制度です」(犬竹)

制度の導入当初、ダイヤモンドバッジは、表彰状とともに社長から授与された。これは、経営陣による「満足BANK」の利用を浸透させたいという強烈なトップダウンのメッセージとなった。加えて拠点ごとに任命された「満足BANK」推進者が、社員たちに積極的な入力を促すことで、入力者は自然と増えていった。仕事が行き詰まったときには、過去に褒められた「満足BANK」の言葉を見直して、元気を取り戻す社員もいるという。

現在では「褒める」よりも「感謝」の気持ちを伝え合うために利用する社員も多い。「先日、部署異動があったときに、前部署の同僚から『満足BANK』にたくさんの感謝の言葉をもらいました。そういった言葉がずらりと並んでいると、仕事へのモチベーションは本当に高まります。

自分がうれしいから、周囲にも同じように感謝の気持ちを伝えたい。『ありがとう』と伝え合うことが、日ごろの社内コミュニケーションを円滑に進め、社内の雰囲気が格段に改善されたと思います。実際に高い効果を感じたからこそ、これだけ制度として浸透しているのだと思います」(犬竹)

組織が巨大であるほど、新しい制度を根付かせることは難しい。それを社員数約16万人のヤマト運輸に根付かせることができたのは、シンプルな「ありがとう」の言葉の力だ。

大規模なシステムを導入しなくとも、身近な人々に「ありがとう」と気持ちを伝えることはできる。組織で働く満足度やモチベーションを向上させるのは、実はそんな小さなことの積み重ねなのかもしれない。

【ヤマト運輸・まとめ】
・仕事の魅力が詰まった動画は、入社時や選考時だけでなく中途研修にも非常に有効
・新制度を浸透させるには、トップダウンと草の根の両方から
・できて「あたりまえ」ではなく、お互いに感謝の気持ちを忘れない。

執筆者紹介

玉寄麻衣(たまよせ・まい) 1979年生まれ。立命館大学政策科学部卒業。外資系大手人材派遣・人材紹介会社で、営業として主に中小企業の人材採用をサポート。その後フリーランスのライターとなり、人材採用、人材育成、大学教育、広報・PR、企業経営等に関する取材・執筆を行う。

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