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2020年4月施行「改正労働者派遣法」を社労士が解説。直前対策【チェックリスト付】


【社労士解説】「同一労働同一賃金」に向け企業が行うべき派遣労働者の待遇・賃金の改善と準備

2020.03.17

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派遣会社・派遣労働者利用企業は対応する必要がある2020年4月施行の同一労働同一賃金に基づく法改正

「パートタイム・有期雇用労働法の改正」と並び、「同一労働同一賃金」で人事や経営者が注意しなければいけないもう1つの法改正が、同じ2020年4月施行の「改正労働者派遣法」だ。

この改正法の内容は、現在、派遣労働者を利用していない企業も、今後利用する場合に対応が必要になる。そこで、フォレストコンサルティング労務法務デザイン事務所代表の松井勇策氏に、改正派遣法の概要や派遣労働者の待遇や賃金を改善する際の注意点や準備について解説してもらった。4月の施行が迫っているため対応漏れがないよう「チェックリスト」も活用していただきたい。

関連記事:【社労士解説】「同一労働同一賃金」に向け企業が行うべきパート・契約社員への対応

目次
  1. 「改正労働者派遣法」は、今後、派遣労働者を雇用するすべての企業も対応が必要
  2. 「改正労働者派遣法」の概要について
  3. 派遣労働者の賃金・待遇の決定方法①「派遣先均等・均衡方式」
  4. 派遣労働者の賃金・待遇の決定方法②「労使協定方式」
  5. 確実な対応のために
  6. 派遣利用企業向け「直前対策チェックリスト」と、派遣先企業が留意すべき点

「改正労働者派遣法」は、今後、派遣労働者を雇用するすべての企業も対応が必要

「改正労働者派遣法」は「働き方改革政策に基づく「同一労働同一賃金」法改正の一つであり根本的な趣旨は同じなのですが、パートタイム・有期雇用労働法における改正とは内容がかなり違います。
派遣労働者の方の待遇の見直しや、待遇の決定方法に関して、具体的な賃金水準や額、決定方法や書式等に至るルールを含んだ、派遣労働者の待遇に関する総合的な法改正です。

派遣先・派遣元とも企業規模の要件はなく、関係するすべての規模の企業が対象です。4月までに対応を終えない場合、法違反となります。また、今後、派遣労働者を活用しようとするすべての企業が対応する必要があります。

本稿では施行直前ということで、法制度の概要とともに、施行までに終わらせておくべき簡易的なタスクリストを提示します。

「改正労働者派遣法」の概要について

今回の法改正は、派遣労働者の賃金や待遇が、正規労働者と同一水準になることを目的としたものです。そのため、派遣労働者の方の賃金の決定方法と水準の具体的な基準・方法が定められた法令となっています。

具体的な待遇決定の方法には、大きく二種類が設けられています。「派遣先均等・均衡方式」「労使協定方式」と呼ばれる方式です。
それぞれの方式の目的をよく認識して制度を整備していくことが大切です。派遣先企業と派遣元企業が協力して、2020年4月の施行時点までに、この2つの方式のいずれかの施策を完了しておくことが求められています。

派遣先・派遣元の合意のもと、いずれの方法を取るのか決定することができます。ただし、「派遣先均等・均衡方式」が原則的に選択する方法で、「労使協定方式」が例外となる方法だとされています。

派遣労働者の賃金・待遇の決定方法①「派遣先均等・均衡方式」

「派遣先均等・均衡方式」とは、派遣先企業から派遣元企業に対して、受け入れている派遣労働者と同じような職務や責任の労働者の賃金の情報を開示し、派遣労働者と同一の職務内容について、同水準の賃金とするように調整し、派遣労働者の賃金を検討・変更し、確定するという方法です。

そもそも、今回の法改正目的が「正規社員と非正規社員に対して待遇の水準を同一にする」ことにあったため、第一義的に非正規社員が働く職場での同一性が重視されて立法されています。そのため、同一の職場で働く派遣先社員と派遣社員について待遇を同一にするこの「派遣先均等・均衡方法」が原則となっています。
しかし、私が知っている顧客の中で、この方法を取っている派遣元はほとんどありません。

理由としては、

  • 派遣先から比較待遇労働者の賃金情報を入手しなくてはならず、もちろん請求すれば法的な権利行使で入手はできるものの、「顧客企業の内部情報(賃金)」という性質上、入手がためらわれること
  • 複数の派遣先に派遣を行っている派遣会社がほとんどであり、それぞれの派遣先の待遇を入手して派遣社員の待遇を検討・決定するという個別の手間が現実的でないこと

の2点であるようです。どちらの方式を取るかは派遣先・派遣元の合意のもとに任意に決定できるのですが、社会情勢も参考にして判断すべきと思います。

「派遣先均等・均衡方式」を実施する際は、次のような手順で行います。

「派遣先均等・均衡方式」の実施手順

1.派遣元から、派遣先に対して、派遣労働者と同一の職務(業務や責任など)を行っている、比較対象労働者の待遇の情報を請求し、入手する。

2.派遣元で、派遣労働者の待遇の検討・決定をする。

3.派遣先と派遣元で、派遣料金の交渉・労働者派遣契約の改定や締結をする。

4.派遣元で、派遣労働者に対する説明資料を用意する。
※雇い入れ時の待遇情報の明示と説明用の資料・派遣時の派遣情報の明示と説明・就業条件の明示用のもの

派遣労働者の賃金・待遇の決定方法②「労使協定方式」

「労使協定方式」は、派遣元企業が派遣労働者の方が派遣されている同地域・同業種・同経験年数の労働者の方と同一水準の賃金への変更を検討し、派遣先企業との調整のもとに決定する方式です。
さらに、派遣労働者の代表者と、本施策についての労使協定を締結します。

先にも述べましたが、私が知る限り、ほとんどのケースでこちらの方法が取られています。

「労使協定方式」は次のような手順で行います。(実務に配慮し、一部行政の資料と検討順を変更しています)

「労使協定方式」の実施手順

1.派遣元において、厚生労働省の「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」を参考に、自社の派遣対象業種や職種が、資料中のどの職種に当たるかを検討・決定。能力・経験に応じた賃金水準かどうかを検討する。
→一定の要件のもとに、これ以外の統計でも良いこととされていますが、実質的にはこの資料を用いることがほとんどだと思います。退職金や通勤費の扱いによる係数の変更などもルールで定められているため、要件漏れがないように検討してください。

2.派遣元において、必要に応じて賃金制度等を作る。
→制度を作ること自体は義務ではありませんが、賃金に関する資料の能力・経験に応じた昇給を可能にしないと法令が守れないため、制度の立案が必要だと思われます。(関連して支払われる賃金が改善されること・派遣労働者の職務の内容、成果、意欲、能力または経験等を公正に評価して賃金を決定することを労使協定で合意することが定められています)また、等級表は作成することが望ましいものとされています。

3.派遣元において、労働者代表を選出する。1、2の準備をもとに、労使間で話し合いをして合意し、法令に定められている内容の労使協定を締結する。

4.派遣先から派遣元に、研修や施設使用等の待遇情報を取得する。
→※行政資料では、この段階での実施が記載されています。後述7.で派遣労働者向けの説明書面に記載する情報です。

5.労使協定に記載された賃金の定めを就業規則等に反映し、改訂する。

6.派遣先と派遣元で、派遣料金の交渉・労働者派遣契約の改定や締結をする。

7.派遣元で、派遣労働者に対する説明資料を用意する。
→雇い入れ時の待遇情報の明示と説明用の資料・派遣時の派遣情報の明示と説明・就業条件の明示用のもの

確実な対応のために

法令が施行される2020年4月が目前に迫っているため、まだ未対応の企業の方や、対応が完了していない企業の方は、上記の情報を参考としていただき、対応を検討してください。

また、今後、派遣受け入れを考えている企業の方にとっても、この法令の方式に基づいた賃金決定と社内の措置が求められることになりますので、必ず考慮が必要です。
細かい運用や対応事項については、厚生労働省のホームページにも多くの資料が掲載されています。日々、通達の増補や質問への対応で内容が拡充されている状態です。最新情報のチェックをお勧めいたします。

派遣利用企業向け「直前対策チェックリスト」と、派遣先企業が留意すべき点

「労使協定方式」を選択する際に役立つ、派遣元の企業向けチェックリストを掲示します。
行政からも派遣元や派遣社員向けのチェックリストが掲示されていますが(本節の最後に紹介※)、原則的な内容のみですので、現場での実作業に即したものとして用意したのが下記のチェックリストです。

なお、派遣先企業に求められる対応(法的義務)は、「派遣元がどちらの協定方式かを確認する」ことです。派遣元の対応が進行・完了しているかについての確認義務等はありません。
しかし私見ですが、こちらのチェックリストを使用し、法改正への対応をどの程度きちんと行っている企業であるか、もう少し突っ込んだ確認を行った方が良いものと思われます。(ただし、労使協定書等を派遣元企業が派遣先企業に提示する義務等は一切ないため、あくまで合意に基づく任意での確認となります)

「労使協定方式」を取る派遣元企業向け「改正派遣法対応」直前チェックリスト

「労使協定方式」を取る派遣元企業向け「改正派遣法対応」直前チェックリスト

本法令は例外のない法的義務です。さらに派遣会社は毎年6月に事業報告を提出しますが、「労使協定方式」を取る派遣会社は、労使協定書を添付する運用になることが決定されています。

行政上、どの程度の取り締まりが行われるかは未知数ではありますが、この法令への対応がなされていない派遣会社は違法であり、派遣許可取り消しなどの対応があり得ることも十分に考えられます。

自社の雇用や事業の安定性を保ち、派遣労働者の方が安心して働くためにも、派遣先・派遣元と働く社員の方が協力し、新しい制度を生かしていくことが求められていると思います。

※【参考】派遣元や派遣社員向けのチェックリスト(厚生労働省)

■「派遣先の皆さまへ 派遣で働くときに特に知っておきたいこと」( PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/000597707.pdf?fbclid=IwAR1JFPir8BnTRAEmFYGJkMH-wf5RvMZ-pPYAS3cEb8vDRnqc4cUEmZAn_N4

■「派遣で働く皆さまへ 派遣で働くときに特に知っておきたいこと 」(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/content/000597705.pdf?fbclid=IwAR1YLzkIxoFWpc9vV_xiDKU-gNZNDZif9p6DRsQ-S_-G2TPCnw1DJHP57Nk

参照しておきたい各種情報(厚生労働省ほか)

同一労働同一賃金特集ページ
・「同一労働同一賃金ガイドライン
・非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する 「キャリアアップ助成金」
『同一労働・同一賃金』最高裁が初判断」(NHK時論公論)


【関連記事】2020年度の制度・法改正に関する解説記事と資料はこちら

執筆者紹介

松井勇策(まつい・ゆうさく)(社会保険労務士、公認心理師、Webフロントエンジニア・グラフィックデザイナー) 東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング労務法務デザイン事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。(2020年1月末時点の情報です)

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