企画

リファラル採用の壁を「社外伴走者」と乗り越えるまで


リファラル経由の応募前年比133% 「紹介が増えない」悩みを改善した方法

2019.12.04

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人手不足や採用市場の激化を受けて、社員が知人を会社に紹介する「リファラル採用」がトレンドになっている。しかし、実践し始めると「社員が誰も紹介してくれない」「紹介数や応募者数などのデータや成果をつかめない」と壁にぶつかることも多い。

ソフトウェアテスト会社「バルテス」(東京・千代田)は「リファラル採用の壁」を少しずつ乗り越え、2018年にはリファラル経由の応募者数が前年比133%に増加。成功の裏にあったのは「社員の納得度を高めて、採用を双方向の活動にする工夫」だった。社員や経営陣の巻き込み方を具体的に探る。【取材:2019年10月28日 @人事編集部・大西里奈】

バルテス株式会社

・設立:2004年4月
・事業内容:ソフトウェアテストサービス、品質コンサルティングサービス、ソフトウェア品質セミナーサービス、セキュリティ・脆弱性診断サービス、その他品質評価、品質向上支援サービス
・従業員数:423人(2019年3月末時点) ※グループ連結、契約社員含む
・所在地:(東京本社)東京都千代田区麹町1-10 麹町広洋ビル3F
     (大阪本社)大阪市西区阿波座1-3-15 JEI西本町ビル8F

目次
  1. エージェント頼りから脱却し、自社採用力の強化へ
  2. 「採用しよう」ではなく「私たちの幸せのために、自分で仲間を増やそう」
  3. アンケートで見えた課題をすぐに改善。採用を自分ごと化してもらう
  4. 社員の個性を理解し、現場の納得度の高い施策を実行できるか
  5. 第三者視点で「社員からの紹介がない」「成果が見えにくい」を課題解決

エージェント頼りから脱却し、自社採用力の強化へ

バルテスはソフトウェアやWebサイト、スマートフォンアプリなどのテスト事業を手掛ける。全社員の8~9割を占めるのが、テストを担当するエンジニアだ。IoTやICT業界の急成長という追い風もありバルテスの業績も右肩上がりで、2019年5月には東証マザーズに上場。受注案件の増加により、エンジニアの確保が重要な課題になっている。

これまでの中途採用はエージェントからの紹介経由が多かったが、エンジニアの人手不足や市場価値の高騰により、エージェント頼りのままでは採用コストが上がってしまう。

総務人事部マネージャーの角谷幸子さんは「ソフトウェアテストにはまだまだエンジニアの手や思考が必要不可欠です。そのため、当社の事業成長を考えるとエンジニアの人材確保が重要になります。2018年度からはできる限りエージェント頼りから脱却し、新卒・中途採用ともに自社採用力を高めてリファラル採用やダイレクトリクルーティングに力を入れることにしました」と説明する。

バルテス総務人事部マネージャーの角谷幸子さん

総務人事部マネージャーの角谷幸子さん

「採用しよう」ではなく「私たちの幸せのために、自分で仲間を増やそう」

バルテスでは設立当初から、若干名ではあるが社員の紹介による採用が続いていた。

「エージェント経由の社員に比べると、リファラル経由の社員はカルチャーへの馴染みが早く、即戦力になり離職率も低いと感じていました。有効な採用手法だと分かっていましたが、自社に完璧な採用ノウハウがあるわけではありません。いざリファラル採用を強化しようと思ったとき、2017年から第三者視点で自社のリファラル採用を伴走支援してもらえるサービス『Refcome』を使うことにしました」(角谷さん)

「Refcome」は株式会社リフカム(東京・渋谷)が提供するサービスで、専用のシステムにより紹介業務を効率化する。社員がアンケートに回答するだけで自社のリファラル採用がうまくいかない原因を可視化できるほか、専任のアドバイザーがリファラル採用を成功に導くための支援を行う。

リフカムのアドバイザー上野賢司さん(バルテスを担当)によると、当初の課題は「リファラル採用をする目的や意義を明確化できていなかったこと」だった。

バルテスの採用担当・鈴木綾一さんは「リファラル採用は社員の巻き込みが大切です。特にバルテスは、知人を紹介するとしても慎重に考える文化があります。『なんでもいいから、とにかくリファラル採用をやってみよう』と勧めるのは社風に合わないので、まずはきちんと意義を理解してもらう必要があると思いました」と振り返る。

採用担当の鈴木綾一さん

採用担当の鈴木綾一さん

そこで、バルテスではリファラル採用の意義をこう考えた。

私たちの幸せは、売上達成や会社の成長。そのためにはたくさんの仲間が必要です。
できることならば、私たちをよく知ってくれている仲間の方が、きっと仕事もスムーズに進められるはず。

自分たちのビジネスを成功させるために、自分たちで仲間を増やすのは自然なことではないでしょうか。

ポイントは「採用しなければならない」と強制するのではなく、「会社の成長のために自分たちで仲間をつくろう」と提案したこと。「目的や意義という『基本』を押さえずに、一方的に採用目標人数やインセンティブを掲げるのは、バルテスのカルチャーには合わなかったんだと思います。意義を浸透させると社員の理解度や納得度も高まります」(角谷さん)

理解度や納得度を深めるため、2018年度からは人事が社内チャットツールや四半期ごとの全社会議で、リファラル採用の意義や進捗状況を伝え始めたという。

アンケートで見えた課題をすぐに改善。採用を自分ごと化してもらう

とはいえ、すぐに社内でリファラル採用が活性化したわけではない。リファラル採用で起きやすい「社員が紹介してくれない」という壁にぶつかった。

そこで実施したのは、社員の意見や要望を吸い上げて、人事がスピード感を持って改善策に取り組むこと。

半年に一度、全社員にリファラル採用に関するアンケートを取り、採用に協力したかどうか、協力したいと思った理由、協力しにくかった理由などを聞く。全社会議でアンケート結果を公表し、アンケートで分かった社員の意見や要望への解決策まで伝えている。解決策はなるべく早く実行に移すことがポイントで、社員からも「改善してくれてありがとう」と反響があるという。

バルテスの鈴木綾一さんと角谷幸子さん

鈴木さんは「『採用は人事がやっていること、現場は採用の手伝いをさせられている』という一方的な雰囲気になることは避けたかった。社員に採用を自分ごと化してもらうには、『自分たちの意見が採用活動の改善に役に立った』と実感してもらう機会を作ることがとても大事なんです。普段も社員からの連絡や相談にはできる限り早く答えて、リファラル採用が双方向の取り組みになるようにしています」と語る。

採用感度の高い部門責任者の巻き込みも戦略的に行った。「『自分の部署の売上を上げるには自分たちで人を採用しないといけない』と考えている部署は実際にいい人材を採用し、売上を上げます。そんなロールモデルを作って他部門に見せると、部長や部門責任者に「いい人材は自分で採りにいかないといけない」という意識が生まれてきます」(角谷さん)

経営陣にもリファラル経由で採用された社員が実績を上げている実例を提示し、リファラル採用の効果や意義を説明。経営陣の意識も変化し、全社会議でリファラル採用に全社で取り組んでいることや、会社全体がどう変化しているのかを全社に発信してもらえるようになった。

バルテスがリファラル採用の壁を乗り越え、改善させた方法

・リファラル採用をする意義を明確化し、全社に伝える
・アンケートで現場の意見や要望を吸い上げ、公表する
・現場の意見を基に改善策を実行し、社員に採用を「自分ごと化」してもらう
・採用感度の高い部門責任者から巻き込む
・経営陣にはリファラル採用の成功実績を見せる

社員の個性を理解し、現場の納得度の高い施策を実行できるか

戦略的な社員の巻き込みも少しずつ成果を出し始め、2018年度の紹介者数は前年より増え、リファラル経由による応募者数は前年比133%を達成した。例年は新卒と中途を合わせて40~50人を採用していたが、2018年度はリファラル採用の影響もあり約80人の採用に成功。2019年度は上半期だけでも前年を超える勢いだという 。

今後の課題は、より現場に近い社員の巻き込み方だ。彼らは採用の面接官になる機会が少なく、「自分たちでいい人材を採用する」イメージを膨らませるのは簡単ではない。これからは経営陣や部署の責任者に加えて、リファラル経由で入社し実績を残している社員にも協力を仰ぎ、情報発信源を増やして現場社員の意識をより高める予定だ。

バルテス総務人事部マネージャーの角谷幸子さん②

「リファラル経由で入社したばかりの社員はエンゲージメントが高く、新たに知人を紹介してくれることもあります。そんな事例を見せて『リファラル採用は自然で当たり前のこと』と感じてもらえるようにしたいです」(角谷さん)

バルテスがリファラル採用を改善できたのは、自社のエンジニアたちの真面目で慎重な性格を理解した上で、社員の納得度の高い施策をスピード感を持って取り組んだからだ。鈴木さんは「『採用を増やすためにやる』のではなく、どんな会社を作るためにリファラル採用をしているのかが伝われば、社内の文化を醸成できます。現場社員の目線に立って、一方的な取り組みにならないように行動し続けることが大切だと思います」と語った。

バルテス総務人事部の鈴木綾一さん②

第三者視点で「社員からの紹介がない」「成果が見えにくい」を課題解決

バルテスはRefcomeの導入によりアドバイザーから課題解決のアドバイスをもらったほか、今まで把握しきれていなかった紹介者数や応募者数も可視化できた。「リフカムさんには他社事例もふまえて、次にどんなアクションが必要なのかを提案いただきました。ジムのパーソナルトレーナーのように、第三者目線で伴走してもらえるのはありがたいです」と話す。

リフカムの上野さんによると、内製でリファラル採用をすると「社員からの紹介が起きない」「成果が見えにくい」「紹介してくれた社員や応募者管理の工数がかかる」などの課題に直面しやすいという。

リフカムのアドバイザー上野賢司さん

リフカムのアドバイザー上野賢司さん

Refcomeではリファラル採用専用のシステムで紹介者や応募者の情報を一元管理できる。誰の紹介でいつどんな人がエントリーしたかを可視化するため、現状のパフォーマンスとボトルネックが分かり、改善策を考えやすい。他にも社員のエンゲージメント計測機能、リファラル採用の課題が分かるリファラルスコア機能も併せて提供しているそうだ。

上野さんは「まずは各種ツールをご活用いただき、リファラル採用がうまくいかない理由や課題を洗い出すことから始めます。一度挫折してしまい『リファラル採用に向いていない』と考えている企業や、一度はリファラル採用が活性化したが今は落ち着いてしまった企業にぜひ活用いただきたい」と語った。

株式会社リフカム

・設立:2014年1月
・事業内容:リファラル採用を活性化するサービス「Refcome」「Refcome Teams」の開発・運営等
・従業員数:25人(2019年10月時点)
・所在地:東京都渋谷区恵比寿1-20-18 三富ビル新館4階

★リファラル採用活性化サービス「Refcome」の公式サイトはこちら。
https://jp.refcome.com/

【編集部より】
リファラル採用に関する記事はこちら

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人事労務・総務の業務を効率化する「業務ガイド」(ノウハウ記事)はこちら

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