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「RAKUS Cloud Forum」レポート後編


岸博幸教授が解説。「経理部門はイノベーションのために何ができるか?」

2019.11.15

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経済の低迷が予想される東京五輪後の日本。ニュース解説でもおなじみの慶応義塾大学大学院教授・岸博幸氏は「イノベーションを起こすためにはバックヤードの業務と言われてきた経理部門のIT化が鍵になる」と語る。

今回は経費精算システム「楽楽精算」を提供するラクス(東京・渋谷)主催の経理向けイベント「RAKUS Cloud Forum」(9月18日開催)で岸氏が講演した、民間企業が生き残るための「付加価値を生み出す働き方」について紹介する。

※前編記事はこちら
岸博幸教授が解説。 五輪後の不景気を救うキーワードは『ディープ・ワーク』

目次
  1. 経理部門がシャロー・ワーク時間の短縮のカギになる
  2. デジタル化によって経理の役割がより重要に
  3. 「よそ者」「若者」「バカ者」の視点を取り入れよ
  4. 中小企業に倣い、斬新なイノベーションを生み出せ
  5. AKB、EXILEの成功はニューコンビネーションにあり
  6. 経理が財務情報を分析して発信し、製品に意見を出せば、会社は絶対に変えられる

経理部門がシャロー・ワーク時間の短縮のカギになる

伝票であるとかですね、経費であるとか、こういうものの手入力、とかで結構時間がかかってしまう。じゃあこういう仕事は、さっきの分類でいうとどっちに分類できるか。これ残念ながら、お仕事の内容は非常に大事なのですけれども、やっぱりシャロー・ワークと言わざるを得ない、と思います。

じゃあやっぱり正しい働き方をするためには、シャロー・ワークを減らさなきゃいけない。そうなると、こういうまあ経費であるとか、いろんな経費関連の手入力っていうのも、なるべくこれをデジタルで、機械で、これがシャロー・ワークの時間を非常に短縮できることになるわけです。

慶応義塾大学大学院教授・岸博幸氏①

で、このシャロー・ワークの時間を短縮する、空いた時間をどうするか。経理部門の方も、できるディープ・ワークはたくさんあるわけです。例えば、実は経理の部門がすごく大事なのは、これはもう皆さんもちろん当然ご存知だし釈迦に説法だと思うんですけれども。バランスシートをしっかり理解していれば。

バランスシートであるとか、財務三表ですよね。インカム・ステートメント、バランスシート、キャッシュフローステートメント、こういうのをしっかり分析すれば、その企業の事業の中で、将来性が高いのか、または現状ちょっとやばいのか明確に分かるからです。

こういう財務的な分析をしっかりした上で、トップの方に、財務の観点からビジネスをどういう方向に、よりリソースを割くべきか重点をおくべきか、こういうアドバイスはやっぱり、経理部門の方しかできません。で、これはさっきの分類で言えば、明確にディープ・ワークなのですね、財務三表にしっかり集中して、読み込んで、理解した上で、そこの観点からわかる各事業の現状、将来性をしっかりトップに伝えて、で、経営戦略にそれを生かしてもらう。これが大事なディープ・ワークです。

デジタル化によって経理の役割がより重要に

そう考えると、やっぱりこの経理の世界ってまずシャロー・ワークをなるべく、デジタルに任せてしまって、シャロー・ワークに割く時間を減らす。ディープ・ワークをする時間を増やす。それでこの経営戦略に役立つような、財務の整理をしっかりやって伝えていただく。

これがすごく大事だし、もう一個言えば、シャロー・ワークの時間を減らして、ディープ・ワークの時間を増やした場合に、いわゆる財務の観点からの分析以外に、企業の作ってる製品サービスへのアドバイスというのも、実は経理部門の人は十分できるはずなんですね。

これはディープ・ワーク、シャロー・ワークからはちょっと離れますけども、経営理論にイノベーション理論っていうのがありまして、イノベーション理論っていう分野の中で確立された、明確な結論が一つありまして。それが何かといいますと、イノベーションを作り出そうと思ったら、まあ要は、まさにニューコンビネーションを考えて、新しい製品なりサービスを考えると思ったら、どうすべきか。

そのサービスとか製品の、担当者部署の人間だけでやっちゃだめです。なるべく、いろんな人材を取り込んで、その考えを反映しないとだめです。要は、そういう製品やサービスを開発する部署の人間だけだと、当たり前だけどみんなそこで一緒に働いてると、目線とか考え方が同じになっちゃうんですね。

そうなると、なかなか斬新なニューコンビネーションが生まれなくなっちゃう。で逆に言えば、なるべく多様な目線とか知識とか経験を持った人を集めると、当然その製品・サービスの世界では常識だった考えとは違った考えを持ってきてくれる。

で、そういった違った考えを取り込むことによって、斬新なニューコンビネーションが作れる。そう考えると、経理部門の方は製品サービスを作り出す専門家ではないからこそ、門外漢として、新しい組み合わせであるニューコンビネーションのヒントになるような、別の視点を持ってこれるはずなんですね。

「よそ者」「若者」「ばか者」の視点を取り入れよ

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実はこれが結構大事なポイントで、卑近な例で言えば、よく地方創生、地方経済の活性化が言われてるんですけど、なかなかうまくいきませんよね。日本全体の自治体が頑張ってるのにうまく行かない。

なんでか。理由は簡単で、みんな「観光を盛り上げる」というようなことはやってるんですけども、「じゃあ結局、地方経済の活性化をどうするか」を検討しているのが、その自治体の地域経済の中に住んでいる人たちばっかりでやってるんですね。そうなると、特に地元の長老ばっかり。だいたい地元に長年住んでいる人だから。

みんな考え方が同じになっちゃってますので、つまんないアイデアしか出ないわけです。逆に言えば、地方の活性化に必要なのはよく「よそ者」「若者」「ばか者」だって言われてるんです。

要はよそ者だと、地域の伝統とかしっかり無視して、全く客観的な観点から何がいいかを考えてくれる。若者だと、年長の人間よりも、やっぱりいろんな新しい視点でモノを言ってくれる。ばか者はばかだからばかな考えをいってくれる。その中から、まさにいろんなニューコンビネーションを考えていく、っていうことをやる。これが必要なんだと。

そう考えますと、経理部門の皆さまは、皆さんの企業で新しい製品なりサービスを開発しようと、でそれを考えようという場合は、まさに「よそ者」「若者」「ばか者」といったところから、どんどん新しい観点を入れていただく。

要は、シャロー・ワークを生む時間を短くする。ディープ・ワークの時間を増やす中で、このディープ・ワークの一つとして、そういう別部門、新製品なりサービスを開発するときに、いろいろ余計なことを言っていただく。これも実は大事なディープ・ワークになるんです。そのことをしっかりとやっていただくことが、実は非常に重要。

そう考えると、どうしても生産性を上げるイノベーションを生み出そうとなるとそういう製品サービスを作り出す実際の部門ばかりがクローズアップされることが多くて、どうしても経理とか総務とかっていうのはバックヤード的な存在になっちゃうんです。でもこれは自分の経験上、間違いなく、このバックヤードが、いかに、シャロー・ワークを減らして、ディープ・ワークをふやしていくか。それが、実は企業にとっては、決定的に重要なんです。

既存の経理の仕事でも生産性を高められる

そう考えますと、繰り返しになりますけども、皆さんは、ご自分の企業にまさにイノベーションを作り出して生産性を高めるっていう観点で、かなり大きく貢献できる立場にいらっしゃるわけです。繰り返しになりますけども、なんで貢献できるのかっていうのは簡単で、まず、働き方改革をしてシャロー・ワークを極力減らしましょう。

そのポイントは簡単で、まさにラクスさんが提供しているような、まさにデジタルの最先端のサービスをどんどん取り入れて、皆さんの既存のお仕事と、デジタルのニューコンビネーションを作り出して、いわゆるシャロー・ワークをなるべく減らす。

その上でディープ・ワークになるべく時間を使う。ディープ・ワークには繰り返しになりますが2つありまして、まずみなさんの専門の分野で言えば、この財務三表をしっかり分析する、その上で既存の事業がどうなっているのかをちゃんと診断していただいて、それをどれくらいになるのか作り直して、分かるように伝えていくか

これが非常に重要で付加価値が高いディープ・ワークなんですけれど、それに加えてさらに余裕がある時間があったら、まさにこの具体的に新製品の開発の段階にも「若者」や「バカ者」にも口を出していただく。そういったことをしっかりやっていただくことによって、実は企業はかなり大きく変わることができるはずです。

デジタル化が遅れてきた日本の背景

そう考えますとですね、意外とこのデジタル、第4次産業革命が進んでいる中で、日本はまだまだ十分にこれを取り入れることができなかった。余計なことを言いますとですね、この第4次産業革命が始まるはるかに以前から、日本はこのデジタルの導入が遅れてきたんですね。

私が小泉政権にいた2000年ぐらいのころは内閣官房のIT担当室と呼んでいまして、日本政府一番初めのIT戦略を書いた人間なんですけど、実は99年~00年のころから、日本はデジタル・最先端のITを取り入れるのが、非常に遅れている。だからこれをどんどん取り入れいていこうと。特に、地方、中小企業はそれが遅れているからやるべきだと、ずっと言い続けています。言い続けてはや20年経ちました。まだ遅れています。

でも逆に言えば、この遅れたのが今となっては幸いしまして、つまりこの10年くらい、デジタルの世界の技術はどんどん進化のレースを早めちゃいましてデジタル化をしようと思った場合は、格段に性能が良いサービスとか、格段に性能が良いハードを10年前より格段に安い値段で売られるようになったんですね。

中小企業に倣い、斬新なイノベーションを生み出せ

慶応義塾大学大学院教授・岸博幸氏

そういう意味ではかえって遅れたのが今となっては便利となっている。加えて言えば、日本の経済の将来を考えた場合、実はこれから一番重要なのが中堅の中小企業とか、あとベンチャーなんですね。理由は簡単で、残念ながらこれは日本のみならず、世界に共通していまして、大企業はなかなかこのような斬新なイノベーションを作り出せません。特に日本の大企業は無理です。これ断言します。理由は簡単で日本の大企業、いまもこの10年でイノベーション、だいぶ少なくなっているんですけど、なんで少なくなってきたかを考えると明らかなんですね。

日本のエリートはイノベーションが苦手?

イノベーションというのは、ニューコンビネーション、新しい組み合わせを作り出す。でも実は新しい組み合わせを作り出すのが苦手な人種は、いわゆる日本的なエリートの人々が多いですね。これは政治の世界でも私が昔いた霞が関にもたくさんいますし、大企業の経営者みんなそうなんですけど、だいたいみんな日本的なエリートってどういう時代かって言うと、受験戦争を経て、有名大学に入って、そこから良い企業に入って出世競争を経て、大企業とか有名企業の経営者になったと。

こういう経営者たちの特徴なんですが、受験戦争、出世競争ばっかりやってきた人は、残念ながらなかなか前例がないことをできなくなってしまった。さらに正解が最初から予想できるもの以外はできなくなってしまった。でも実はこのニューコンビネーション、イノベーションを作り出すということは、まさに前例がないことを作り出す。正解が分からない世界で、自分なりの正解を作り出す。

これはまさにニューコンビネーションを作り出すことに他なりませんから、残念ながら、日本的エリートの方々は、イノベーションを作り出すことが一番苦手な人種なんですね。だから政策イノベーションはほとんどない。大企業のイノベーションも、海外で前例があるものの延長くらいしかない。だから大企業はこれから厳しいです。

でも逆に言えば、日本の企業の数でいえば99%くらい、働く人で言えば7割くらい、大企業ではなく中堅中小企業で働いている。で逆に言えば、中堅中小企業の世界は、変な日本のエリートがいない分、イノベーションを作り出す地盤が十分あるんです。

加えて、デジタル化、このデジタル技術がどんどん進んでいることによって、中堅中小企業は、イノベーションを作り出す大事なツールである、デジタルの製品とかサービス、これがかなり安い値段で使えるというのは、中堅中小企業にとって非常に絶好のチャンスなんですね。

AKB、EXILEの成功はニューコンビネーションにあり

余計なこと言いますと中堅中小企業が大事なんだって言いますとね、お世辞で言っているんだと思われることが多いんですけど、実は私お世辞じゃなくて全然、自分の経験から心底そう思っています。一例を挙げますと、私仕事の一つでエイベックスというレコード会社の顧問をやってまして、前まで役員をやっていて音楽業界に十数年関わってます。

音楽産業って実はですね、皆さんの中にもご存じの方がいらっしゃるかもしれないのですけど、全産業の中で一番悲惨な産業です。どれくらい悲惨か。過去20年で日本の音楽事業の規模は半分以下になってしまいました。正確には1998年がピーク6,000億円あった資本が減っていってしまいまして、去年で2,500億。だから20年そこらで市場が3,500億消えちゃいましたから、典型的な衰退産業なんですね。

そう考えますと、音楽業界、夢も希望もないように見えちゃうんですけど、実はそんなことなくてですね。全体のこういう右肩下がりの20年間ずっと、当然多くのアーティストはそれに比例して苦しんでいるんですけれど、ちゃんとその中でもそれなりの個人のアーティストと企業は、逆の右肩上がり。しかもかなりシャープな右肩上がりを続けているところもあるのです。

CDに投票券・握手券をつける方法で大成功

慶応義塾大学大学院教授・岸博幸氏

これ簡単で別に偶然の理由があるわけではなくてですね、そういう衰退産業の右肩上がりというのは、ちゃんとさっき言いました、イノベーションを作り出しているところが実はちゃんと右肩上がりを続けているんです。みなさまがご存知のところで言えば、「AKB48」。最近「欅坂48」もそうですね、ジャニーズ系のアーティストもそうです、あとはエイベックス関係で言えば「EXILE」とか「三代目JSOUL BROTHERS」。

この辺はみんな売上は右肩上がりを続けていますけれど、理由は、単にヒットチャートを作っているだけじゃないんです、イノベーションを作り出しているからです。ニューコンビネーション。これ具体的に言ったほうが分かりやすいでしょうから、具体的に何をやったか。例えば、AKBの場合は簡単なんですね、今の時代、音楽ビジネスはCDを買うのが一番儲かるんだけどこんな時代遅れのもの、普通誰も買いませんと。

ネットでの違法行為もあるし、配信なら安いだろう、でもCDを買ってほしいとなって、AKBはどうしたか。CDにおまけをつけることを考えた。AKB48総選挙の投票券と握手券ですね。これをつけることによって、この古臭い媒体、CDをたくさん買ってもらうことに成功した。これが実は分析的に言えば、CDという滅んだほうが良い製品と、おまけのニューコンビネーションを作り出したわけです。

加えて言えば、AKBの場合はCDをいっぱい買ってもらうことが大事だよね、と考えた時に、秋葉原に本拠地を置いた。秋葉原はいわゆるオタクがいっぱいいるようなところ。なんでかって言うと、オタクっていうのは、デフレ貧乏でお金を使わなくなった若者の中で唯一、自分の好きなことにとことんお金を使ってくれる。

でも彼、彼女らの関心は基本的にメイドとか漫画とかアニメで、音楽は関係ない。でも金使いが良いから取り込みたい。ということで本拠地、劇場を秋葉原においた。オタクの人たちをAKBのコア・ファンに引っ張り込むことに成功した。でこれも分析的に言えば、音楽ビジネスとオタクのニューコンビネーションを作り出した。でこのようないろんなイノベーションを作り出すことに成功している。

EXILEが打ち出した「男性アイドル」のイノベーション

EXILEなんかで言えば、彼らのイノベーションは何か。男性アイドルが成功するビジネスっていうのはジャニーズが証明してくれていた。で彼らもそれをやろうと思ったんだけど、冷静に考えたら、彼らはいわゆるヤンキー風だと。ということで男性アイドルとヤンキーというすごいニューコンビネーションを作ってしまった。

「彼らは歌とダンスがうまいよね」ということで、そっちに自信があるということで、歌とダンスのニューコンビネーションを作っちゃおうと。でダンスが一番映える場所、一番儲かるようにしたい、コンサートだよなと。じゃあコンサートの収益だけではもったいないよねということで、コンサートでアーティストたちとファンクラブのニューコンビネーションを作り出した。こういうことをたくさんやっている結果、こういったアーティストはみんな右肩上がりを続けている。

大事なポイントを一つだけ。音楽産業、さっき言った通り、典型的な衰退産業です。加えて言えば、AKBを運営している会社、ジャニーズ事務所、あとはEXILEや三代目が所属するLDH、どれも会社の規模で言えば、典型的な中小企業です。

言いたいことは、衰退産業で頑張っている中小企業でも、こういうイノベーションを作り出すことをしっかり連続的にやっていれば、十分に繁栄を続けられるということです。ですから、音楽産業ができたことは他の産業ができないはずがないんです。だから実は音楽産業って分析すると、そこらの日本的エリートがやっている大企業より結果出してます。

日本の経済を引っ張っていくのは中小企業や地方自治体

慶応義塾大学大学院教授・岸博幸氏⑤

されに余計なことを言いますと、今日本に外国人観光客がどんどん増えていますよね。今後もさらに増えていくと思うんですけど、彼らが日本に行くのはいろいろな理由があるのですけど、特に欧米アジア問わず金持ちが日本に来る最大の理由は、実は食。食べ物なんですね。それくらい日本の食文化。特に東京の食文化は、世界最高水準だと世界の富裕層のみんなが言っています。

単に寿司とか和食だけではなくて、フレンチとかイタリアンとかステーキに至るまで、東京世界最高レベルと最たる金持ちは分かっています。なんでこんな日本、特に東京の食文化、飲食は、世界最高水準になるのか。

実はそういうのを作り出しているのは全部、飲食の世界だと中小企業、零細企業ばっかりなんですね。飲食の世界で大手の資本が入ってるところもそれなりにありますけど、実はそういうところよりも、本当に中小企業がやっているところ、または個人経営のところ、そういうところがまさにいろんなイノベーションをどんどん作り出しているからこそ、東京の食文化は世界最高水準だと世界中から認められているわけです。

イノベーションに成功している人口数万の自治体

いろんな例があるんですけれども要はそういう日本的なエリートがいる世界と、実は今もいろいろなクリエイティブなアイデアを出してイノベーションを作り出して、それがしっかり成果として反映されている、そいつらの生産性、潜在成長率が上がって、ちゃんと景気が良い状況長く続く状況を作り出している、というのは実はたくさんあるんですよね。

自分の関わってる世界でも実はたくさんあります。地方創生に関しましても、私いろんな地方自治体の顧問をやっておりますけども、今東京は正直言って大したイノベーションはあんまり出てません。だから残念ながらオリンピックが終わったらその後東京は、だいぶきつくなる可能性が高くなると考えています。

でも逆に言えば、私が関わっている港の自治体でとっくに地方創生に成功しているところはたくさんあります。一例をあげますと、自分が一番関わっています福井県の坂井市。東京から電車で3時間以上かかります。日本海側で冬が厳しいところです。でも実は私これでも4年位は市長と組んでやっていますけど、でここはメインの産業以外、新しい産業を組み合わせていろんな産業を作り出した結果、こんな条件が不利な場所でも人口は増えています。

それ以外に、長野県の山奥にだって人口を増やすことに成功している村はあります。そういう坂井市は人口数万です。長野県の山奥で人口を増やすことにに成功しているのは人口4,000人くらいです。でもそういうところでイノベーションをちゃんと作り出すことをやっていれば、明確に成果として出ているわけです。私は日本の本当の強みというのは、言わゆる日本的エリートの力ではなくて、やっぱり民間地方や現場の力だと思います。余計なこと言いますと今に始まったことでなくて、中世からずっと日本はこうなんです。

この、まさに現場の力が強いのが一番反映できるのが、まさに音楽産業での中小企業。後は坂井市なんかと同じように、現場の人が頑張れる中堅中小企業なんです。特にこの10年くらい、第四次産業がどんどん増えているので、そういう中堅中小企業のポテンシャルを簡単に成果に結びつけることは、歴史上一番容易なんですね。でそう考えるとやはりこれらの中堅中小企業にもっと頑張ってもらいたい。

経理が財務情報を分析して発信し、製品に意見を出せば、会社は絶対に変えられる

繰り返しになりますけども、皆さまの企業に実現していただくためには、単純にそこのメインの製品やサービスを作っている部門だけが頑張れば良いではありません。私は、総務部門だっていろんなイノベーションを作り出して、シャロー・ワークを極力減らして、ディープ・ワークを増やすことによって、これがすごく変わるんです。本日ご参加の皆さまの多くが仕事にしている経理部門も基本的な構造は全く同じです。

何遍も言いますけども、シャロー・ワークを、まさにそういう付加価値を満たさない、ダイレクトに繋がらない仕事を、デジタルを使って減らす。浮いた時間を使ってディープ・ワークの時間を増やす。正しい付加価値をバックヤードからもどんどん増やすことが実は企業の成長に一番重要なんですね。そういう観点から言って、働き方改革の本質は、単純に働く時間を減らすのではなくて、シャロー・ワークの時間を減らして、ディープ・ワークの時間を増やすと。

慶応義塾大学大学院教授・岸博幸氏④

実は最後に一言だけ言うと、ディープ・ワークを説明するのは結構大変です。理由は簡単で、皆さま日々、結構長時間スマホを触っていますよね。残念ながら、スマホを使いすぎると、人間はですね集中力がすごく落ちまして、皆さまもスマホを触っていてどんどん画面を変えると思いますけど、画面を変える癖がついちゃうと、それがやっぱり脳が覚えちゃいましてね、なかなかディープ・ワークで集中しようと思いましても、余計なメールをチェックするとかやっちゃうんですね。ディープ・ワークは訓練が必要で、ちょっと時間がないんで訓練の仕方はお話しないんですけど、働き方改革の本質はいかにディープ・ワークを増やすかです。

ちなみに余計なことを言いますと、本当に集中して、またはディープ・ワークの第一歩としましては、ディープ・ワークをする時間はネットに絶対自分のパソコンとかをつなげないこと。メールもチェックしない、webサイトも見ない、ソーシャルメディアも見ないと、ということを徹底することから始まるんですけど、アメリカの研究者の分析の結果だけ言いますと、人間は、ディープ・ワークをやれる時間は、1日多分4時間くらいが上限なんですね。

これも研究成果が明確に出ておりまして、逆にディープ・ワークの上限は4時間なんです。だから皆さんの働く時間を8時間とするならば、これをもしかしたら6~7時間が シャロー・ワーク、経理部門の仕事も数字の入力とかそういうものに削がれるかもしれない。それをラクスさんのサービスみたいな最先端のデジタルを使って、4時間以内に抑えちゃう。残り4時間くらいをディープ・ワークに投入することで、まず財務状況を分析した観点からどんどん発信していく。それに加えてさらに時間があれば、そういう製品やサービスにどんどん口を出していただく。ということをすれば、経理部門から会社は絶対変えられます。それをやらないと真面目にもったいないと思います。

ですので、実は経理部門がどうしてもバックヤード的仕事ばかりだからイノベーションから縁遠いように思われているんですけど、現実は全然違うと。経理部門の重要性が非常に高いんだということを是非ご理解いただいて、明日からも是非がんばっていただければと思っています。

とにかくすみません、今日は時間が1時間だけだったもんで、あまり長話もできなかったんですけども、これがこの後いろんなセッションもあってまさに経理部門でのシャロー・ワークを減らす。デジタルで最先端のものがどんどん出てくると思いますので、こういうのをしっかりと学んで、それを持ち帰って、会社でそういったデジタルの最先端をどんどん導入すること。これがイノベーションをつくることだと思って頑張っていただければと言うふうに思います。今日はどうもありがとうございました。

 

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