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特集

人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(第1弾)


「組織に一体感って必要?」人事の常識を疑え! 曽和利光×北野唯我対談

2019.11.11

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人事のバイブル『人事と採用のセオリー』の著者の曽和利光さん、ベストセラー『天才を殺す凡人』『転職の思考法』の著者の北野唯我さん。今回は特別企画として、人事業界のキーパーソン2人が@人事読者からの疑問、質問にタブーなしで答えます!

@人事はTwitter上や対面で、読者から「組織改革」に関する悩みや質問を募集。編集部がその中から4つをピックアップし、2人にぶつけました。「そもそも人事評価っているの? 」「組織に一体感って必要ですか? 」と人事の常識を覆す名回答が次々と飛び出します。今回は約2時間に及んだ対談を計4回に分けてお届けします。【取材:2019年9月18日 @人事編集部 大西里奈】

目次
  1. 人事は「一体感欠乏症」に陥っている
  2. 社員が何に喜び何を嫌がるのか、「マーケティング」できていますか?
  3. 組織に影響力がある「ハブ人材」を巻き込んでいますか?
  4. 「有名な会社の事例だから真似しよう」は危険

プロフィール

人材研究所の曽和利光さんと、ワンキャリアの北野唯我さん

曽和利光(そわ・としみつ)(右)株式会社人材研究所 代表取締役社長

京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。学生向けにも就活関連情報を精力的に発信中。人事歴約25年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。

北野唯我(きたの・ゆいが)(左)作家、ワンキャリア 最高戦略責任者

兵庫県生まれ。神戸大学経営学部卒業。博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。米国留学の後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年にワンキャリアに参画、最高戦略責任者執行役員に就任。2019年1月から子会社の代表取締役、社外IT企業の戦略顧問も兼務。11月28日に初の本格経営書『オープネス ー職場の空気が結果を決めるー』が発売予定。著書は他に『転職の思考法』『天才を殺す凡人』『分断を生むエジソン』がある。

人事は「一体感欠乏症」に陥っている

【質問1:社員が増えて価値観が多様化し、一体感をつくるのが難しい】
(20代女性、サービス、従業員数100人以上300人未満)

社員が増えて、価値観が多様化しています。より自社のビジョンを社会に発信して実現するために、社員を巻き込んで組織をよりよくしたいですが、協力的なメンバーとそうでないメンバーがいます。社内報やイベント企画なども実施していますが、あまりリアクションがもらえません。

会社全体で一体感を持ち、会社のメッセージ実現のため取り組んでいきたいのですが、それを強要するのもおかしいと思っています。自然的に組織に対する取り組みを生み出させるにはどうしたらいいでしょうか

曽和さん(以下敬称略):日本人ならではなのかもしれませんが、そもそも一体感って持たなきゃいけないんですかね? 

北野さん(以下敬称略):僕もそう思っていました!

曽和:ある世界的に有名なソフトウェア会社は、隣の社員の仕事内容が分からず、それをバラしたらクビになるし、組織図は社内秘になっていますが、それでも売上を出し続けています。国内の精密機械メーカーも全員中途採用で、社員の交流や一体感はないけれども、業績は良い。

北野:ある種、人事の方々は「一体感欠乏症」があると思うんです。人が好きで、社員のケアを大切にしている人事の皆さんが一体感を求めるのも分かるのですが、人間はそれぞれバラバラだし、世界中を探しても一体感がある会社ってそんなに多くないなぁと。

曽和:「一体感は是」という考え方は無意識の前提であり、実際はそうとは限りません。
例えば、商品を作るときにはお客様のニーズを調べますよね。人事も施策を立てるときに、会社がどういうパーソナリティーの人で構成されているのか、社員は何に喜び、何を嫌がるのかを調べるべきです。

人材研究所の曽和利光さん①

社員が何に喜び何を嫌がるのか、「マーケティング」できていますか?

曽和:例えば社交欲求が低い人が多い会社ならば、運動会やピザパーティーなどの社内イベントを明るくやっても、うまくいくわけがないんです。マーケティングをせずに社員が求めていない施策をやっても、受け入れられないでしょう。
もっと言えば、一体感を是とする会社であっても、社内報やイベントなどのありがちな手法で本当にいいのか。リアクションがない時点で「社員はイベントは好きじゃないのかな」と考えてみるべきです。

曽和’s Answer:そもそも組織に「一体感」は必要なのか? 
社員が何に喜び、何を嫌だと思うのかマーケティングをして、社員にとって本当に必要な施策を考えよう。

北野:社員ではなく、自分の基準で施策を選んでいるんですよね。僕もほぼ同意ですが、とはいえ自然発生的に文化をつくるならば、3つのポイントがあります。

北野’s Answer:組織文化を醸成するには、3つのポイントを実践すべし。

①最適な人数に組織を分解する
②採用から退職までの一連をできるだけ多くの社員に体験させる
③マネジャー自身に組織戦略を考えさせ、実践してブラッシュアップしてもらう

ワンキャリアの北野唯我さん
一つは、最適な単位に組織を分解すること。意欲が高い人が全社員500人中30人しかいない状況では絶対に組織は変わらない。細かく分けて、40人中30人が意欲がある状態にして、組織を変えていくんです。全体の方向性を統一できます。

二つ目は、採用から退職までをできるだけ多くの社員に担当してもらうこと。チームビルディングや組織改革の重要性は、自分で採用から退職までの一連を体験して、腹落ちしないと理解できないからです。正社員採用ではなくても、例えばアルバイト面接に同席してもらう。採用したら全然会社に合わず、退職してしまったとか、そんな体験をしてもらうのが有効です。

三つ目は、リーダーシップが取れる社員に持論を作ってもらい、ブラッシュアップすること。僕の会社(ワンキャリア)でも、チームのマネジャーには「事業戦略だけでなく、今のあなたの組織戦略や持論を教えてほしい」と伝えています。マネジャーは強いチームの条件を考えて、実際にチームを動かし、フィードバックを受ける。現実的な結果を踏まえてチームを改善していく体験を積んでもらいます。重要なのは「持論」と「その進化」ですから。

曽和:影響力のある社員に持論を吐き出してもらって、それを実行したり、人事がその持論を真似して実践したりする手法もありますよね。

組織に影響力がある「ハブ人材」を巻き込んでいますか?

曽和:僕がこの質問者の方に言いたいのは「インフォーマルネットワークのハブ人材を巻き込んでいないのでは?」ということです。

フォーマル(公式)なネットワークのハブ人材は、課長や部長といったライン長。でも、本当にパワーを持っているのは違う人だったりしますよね。360度サーベイなどを行って社内ソーシャルグラフを作ると、誰が影響力を持っているのかは分かります。その人を巻き込めば「あの社員が言っているから一緒にやってみようよ」という雰囲気ができてくる。

※360度サーベイ:調査(評価)対象者をよく知る上司や同僚、部下が、対象者の仕事ぶりや行動を評価すること。

曽和’s Answer:会社で影響力を持つ「インフォーマルネットワークのハブ人材」を見つけて、巻き込むべし。

北野:『天才を殺す凡人』に出てくる「サイレントキラー」のように、表では何も言わないけれど裏ではロジカルに批判ができる、「岩」みたいな人っているじゃないですか。

曽和:まさにその「岩」みたいな人を巻き込むんです。安倍首相が某担当大臣に、その省庁の抵抗勢力の親玉みたいな方を付けたことが批判されてましたよね。個人的にはむしろ、そういう反対する人を巻き込んで担当者にするなんて、すごくいい人事だなと思いました(笑)。

僕のコンサルの仕事でも、「岩」の存在がいれば徹底的にヒアリングして、彼のワードをできる限り集めます。それを使って社内に発信すると、「岩」の人は「自分の言葉を使われている」と思ってくれる。インフォーマルネットワークのハブ人材が「岩」だった場合の、一番濃いパターンの巻き込み方です。

「有名な会社の事例だから真似しよう」は危険

北野:人事の世界だけではないですが、形式的なところだけコピーする問題はありますよね。「あの有名なサイバーエージェントさんの施策だから、うちもやりましょう」は違う。サイバーエージェントさんは自社に合った人材を採用していて、前提がそもそも違うのに施策をコピーしてしまう。

曽和:やっぱり、社員が何を喜び、何を嫌がる人で構成されているのかをシンプルに考えてみればいいんです。

確かに社内運動会のようなソリューションは復活してきていて、それが合う会社もありますが、それを求めていない社員が多い会社だってある。一体感をつくるためには社内チャットツールを入れるだけでもいいかもしれないし、その会社次第です。

人材研究所の曽和利光さん②

@人事さんを批判するわけではないですが(笑)、「事例主義」は助長しないほうがいいですね。タバコの箱の注意書きみたいに、事例紹介の記事の最後に「ただし今回の企業事例は、この会社が◯◯という前提で作った人事制度なので、そのまま取り入れるのは危険です。あなたの会社でもうまくいくかは分かりません」みたいな注意書きを入れてほしいです(笑)。

北野:例えば社内報をやるにしても、何を載せるかによって社内報の意味合いは全然異なる。「会社でこんな出来事がありました」ではなく、どういう社員が活躍しているのかが分かる方が読みたくなりますよね。特にコンテンツ施策においては、社内報を作ることではなく、中身が面白くてフォーマットが適切であるかが重要ですから。

北野’s Answer:有名企業の人事施策をそのまま取り入れるのは危険。その会社の社員と、あなたの会社の社員は別物。そもそもの前提が違う。
コンテンツをつくるなら、実施することではなく「中身」が重要。

曽和:採用現場だと懇親会の実施率が4割程度になりましたが、良い懇親会も悪い懇親会もあります。実施することではなく、中身が大事ですね。(第1回おわり)

※読者から寄せられた質問は、個人が特定されないよう一部編集しています。


【人事のキーパーソン2人が@人事読者の「組織改革」の疑問に答えます(全4回)】
★第1弾「社員が増え、価値観が多様化して一体感を作れない」という悩みに答えた記事はこちら
「組織に一体感って必要?」人事の常識を疑え! 曽和利光×北野唯我対談

★第2弾「数値化しにくい部署(特に労務)での人事評価をどうするべきか」という悩みに答えた記事はこちら
数値化できない部署を無理に人事評価する方が問題。曽和利光×北野唯我対談

★第3弾「採用や組織改善の取り組みを全社で統一するべきか、グループ会社や事業部ごとに個別最適するべきか」という悩みに答えた記事はこちら
「採用したら最後まで一緒」の理想は嘘。曽和利光×北野唯我対談

【編集部より】
曽和利光さん、北野唯我さんの他の記事はこちら

【編集部より】
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