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「RAKUS Cloud Forum」レポート前編


岸博幸教授が解説。 五輪後の不景気を救うキーワードは「ディープ・ワーク」

2019.11.12

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ついに10月から開始した消費増税。増税対策の「軽減税率」「キャッシュレス還元」の文字が街なかに踊る。一年後には東京五輪も控えるなか、ニュース解説でもおなじみの慶応義塾大学教授・岸博幸氏は「2020年後の日本経済は一転して不景気に突入する」と指摘する。今回は9月18日に経費精算システム「楽楽精算」を提供するラクス(東京・渋谷)主催の経理イベント「RAKUS Cloud Forum」で岸氏が講演した、民間企業が生き残るための「付加価値を生み出す働き方」について前編・後編に分けて紹介する。

岸博幸

1986年に 通商産業省(現・経済産業省)入省。経済財政政策担当大臣・郵政民営化担当大臣秘書官、総務大臣秘書官を歴任し、退官後は慶応義塾大学DMC統合研究機構助教授に就任。2008年からは同大の大学院メディアデザイン研究科教授を務める。

目次
  1. 日本経済、今後どうなっていきそうか?
  2. 消費増税・五輪後に不景気の波がやってくる
  3. 2020年以降の経済は低成長へ、生き残るには生産性を上げるしかない
  4. 政府任せではダメ 経済成長の主体は民間企業
  5. 本質的なイノベーションに必要なのは「効率的な働き方」
  6. 「働き方改革」だけでは足りない、付加価値を生み出すのは「ディープ・ワーク」]

日本経済、今後どうなっていきそうか?

皆さんこんにちは。慶応義塾大学大学院教授の岸です。よろしくお願いいたします。今日はラクスさんの主催のイベントで、「苦楽より楽だけするための経理会議」っていうネーミングで、非常に上手いネーミングだなあというふうに思ってました。まあ正直言って、ビジネスで楽ばっかりだったら今の苦労はなく、実際は苦労もあるわけなんですけども。まあ丁度いい機会ですので、丁度いい機会という意味は、今日は、主には中堅中小企業の方が多い、の方が多い、ということです。見回すと結構年齢的にも若い方が多いって言うことでですね、非常に良い機会だと思います。

私に与えられたテーマは、主に「ITでどう楽するか」って言うことではあるんですけども、もうちょっと幅を広げましてですね、「日本経済、今後どうなっていきそうか」です。

実は私この分野は非常に当然詳しいので、日本の経済どうなっていきそうか、その中で企業がしっかり生き残っていくため、またより繁栄するためには何をしないといけないのか、そのために実は経理部門の役割はすごく大事なんだと。でその大事な役割を果たすためにはどう働くべきなのかっていうことについて、感じていることをお話させていただこうと思っています。

経済のデータっていうのは、所詮は過去の数字に過ぎません。じゃあ、過去の数字から予測できる将来はどれくらいの数値か。これは、特に今みたいな変化の激しい時代にはですね、せいぜい数ヵ月先がせいぜいです。一年先なんて絶対わかりません。

まして言うならば5年後、10年後なんて絶対わかりません。それよりも、自分の経験上経済っていうのは必ず、大きな流れ、あとは方向性、あとは大きな波っていうのが明確にあります。それをざっくり理解しておいた方が、特にビジネスをやられてる方が、ご自分のお仕事の関係で将来を考える場合はですね、当たることが多いというのが自分の経験から分かっています。そういう意味で今日は、皆さんにざっくりした現実、将来を理解していただく事が大事だと思ってますので、その妨げとなるような数字はいっさい出しません。ですのでご容赦をいただければと思います。

今日は講演の時間1時間15分ということであんまり時間がそんなに長くないからどんどん話に入っていこうと思います。経理部門の皆様により一層活躍していただきたい、特に中堅中小企業、経理の皆さんに頑張っていただきたい。これお世辞抜きにそう思っていまして、これそう思う明確な理由があるんですね。

なにか。これは残念なお知らせになって大変申し訳無いんですけれども、日本の経済、これから当面、ずっ~と悪くなります。断言します。でこれは、私日頃色々仕事やっていて、私よく色々テレビに出るもので、バラエティ番組に出てる変な人間としか思われてないことも多いんですけど、実は私昔、小泉政権の時、政治の側で経済運営していたこともあって、いまも安倍政権の経済政策にいろんなかたちで関わってまして、政権の内情はかなり詳しい人間でもあります。そういう人間の立場として、真面目に日本経済これから危うくなりしんどくなるだろうな、というふうに思っています。

消費増税・五輪後に不景気の波がやってくる

岸博幸教授の講演1

なんで悪くなるかって簡単で、まず今年これから悪くなります。10月から消費税増税するじゃないですか、で、政府の公式見解では、この増税の悪影響を緩和するために、軽減税率、キャッシュレス決済のためのポイント還元、こういうので色々対策して、「悪影響は払拭できる」と言ってますけども、まあ明確に言えばこれは嘘です。この程度じゃ悪影響は払拭できません。

で、これ理由はいくらでも説明できるんですけどそれに関しては時間食っちゃうから省略します。悪影響の緩和のために2兆数千億政府が予算を使いますけども、その半分くらいが公共事業っていう無駄なことに使ってますから、この程度じゃ悪影響は緩和できないです。

そうなると、特に米中貿易摩擦が激しくなってる、ヨーロッパ経済が悪いと。日本経済はこの1、2年景気がまあまあだった最大の要因の世界経済の上向きが完全に終わりつつある。それに加えて消費税の増税の悪影響があるから、当然この秋から、景気はどちらかといえば良くない方向に向かいます。それに加えて来年もしんどい。なんでしんどいか。東京オリンピックがあるからですね。

実は経済の面からオリンピックを見ると悩ましい存在なんです。何を言いたいかといいますと、過去オリンピックを開催した国の経済状況を見ますと、分かりやすく言うとですね、オリンピックが終わった頃からみんな景気が悪くなっています。

これ当たり前ですよね?オリンピックの前数年、これは、オリンピック関連施設を建設する、という経済の需要が発生する。オリンピックの期間中、まさにこれラグビーのワールドカップもそうなんですが、外国人が日本にたくさん来てたくさんお金を使ってくれる。これで経済の新しい需要。オリンピックが終わるとこういう需要は全部抜け落ちちゃうから、景気が悪くなって当たり前なんですね。ちなみに余計なこと言いますと、前回の東京オリンピックのときの日本は、オリンピックが終わる前から景気後退が始まっていました。

特に、今回政府がダメなのが、キャッシュレス決済のポイント還元。まさに10月1日から始まりますけども、これの終了が、来年の6月末なんですね。みなさんもわかるようにキャッシュレス決済のポイント還元が終わったら、これ当然消費にマイナスですよね? それに加えて、7月にオリンピックが終わったら更に景気が悪くなるわけで、来年の6月~7月の二段階で明確に景気が悪くなる要素ができてしまってる。

2020年以降の経済は低成長へ、生き残るには生産性を上げるしかない

で米中の貿易摩擦が長引くのを考えると、当然来年はより一層きつくなるかな、と。問題は、それだけならいいんですけども、現段階で言えることは、多分2020年代を通じて、日本経済、だいぶ低空飛行が続く可能性の方が高いと言わざるを得ないですね。なんでそんなことがいえるか。実はですね、経済の推移で一つ大事な数字がありまして、これ覚えといてほしいんですが、新聞などにあまり大きく書かれないからご存じない方も多いかと思うんですけど、「経済の潜在成長率」という数字があります。

これなにかといいますと、日本経済が、自然体で長期的に実現可能な経済成長率はどれくらいか。これを予測してるのが、「経済の潜在成長率」と言います。日銀の推計で、年率大体0.9%なんです。この数字が意味するところは、日本経済は長期的には、1%も経済成長できない。だから2020年代を通じて、1%も行かない低空飛行が続く可能性が多いです。

ちなみに翌年のこと言うと、景気が良い悪いの判断の分かれ目は、ざっくり言って、経済成長率が2%いってるかどうかです。2%を超えたら、景気が良いと考えていい。だからアメリカなんかは潜在成長率2%ちょっとですから、まあ良い状況です。

と考えられてるね、と。それに対して日本経済は、潜在成長率が2%よりはるか及ばない0.9%。この現実は2020年代やっぱりずーっとしんどい、と考えざるを得ません。ちなみに、逆に言えばそれなりのこと今すぐわかるんですね。本来この消費税再増税も間違った政策で延期するべきだったんですけども、これはしゃあないと。

ならば、もう今の段階から、この低い潜在成長率を上げておけば、まだ、将来は安心ができる。じゃあ、この低い潜在成長率をあげるために、政府の政治の側は何をすりゃいいの?いいますと、結論から言えば、人口が増えるようにするのが一番手っ取り早いですね。人口が増えれば、将来の労働量は増えるから、生産量は増える。でも、皆様も承知のように、日本はもう人口減少局面になりかけている。この4月から外国人労働力を実質的に受け入れはじめましたが、残念ながら日本は、大規模な移民の受け入れは難しい。

じゃあ、低い潜在成長率をあげるにはどうしたらいいか、もう一つやり方がありまして、それがですね、経済の、生産性を高める。より正確に言えば、人口減少のペースを上回るペースで、経済の生産性を高めると。これができれば、潜在成長率は上がって、日本の将来は多少は明るくなるということがわかってます。

ちなみにこの生産性っていう言葉は働き方改革の文脈で色々言われているのでみなさんご存知かもしれないけれども、じゃあ経済の生産性を高めるために、政府は何をしないといけないのか。これは結論だけ申しますと、実は金融緩和とか財政出動は、全く関係ありません。効果ありません。これは将来の需要を今に前倒しするだけですので。

政府任せではダメ 経済成長の主体は民間企業

じゃあ、経済の生産性を高めるためにどうすればいいか、これは、非常に簡単なんですね。「そもそも、経済の生産性を高める主体は誰だよ」ということを考えればわかります。当たり前の話、資本主義経済では、経済の生産性を高める主体は、民間の側、つまり皆さんの側ですね。

より正確に言えば、民間・地方、民間ならば、企業・産業ですよね。地方で言えば、地方経済のおおもとの、地方自治体。こういったところが、自分の領分の生産性を高めろと。これを、多くの企業・産業・地域経済がやれば、経済全体の生産性も上がると。そう考えると、実は生産性の主体は、民間・地方、特に民間の側、ですので、政府は自分の力ではなにもできないわけですね。

じゃあ、政府が何をできるか。民間なり地方が、自分の領分の生産性を高めるために、いろんな新しいことを自由に何でもできるようにする、でそのためには政府が改革、要は規制改革や地方分権、そういったものをどんどん進めていかないとだめだと。ですね? でその観点から安倍政権を見ますとですね、残念ながら、経済政策は、もう失格である…落第点です。

これまで6年半やってきた安倍政権、もちろん地方創生とか一億総活躍とか去年で言えば働き方改革等、いろんな改革のキャッチフレーズが語られてきたんですけれども、実は大した改革できてません。これ自分が関わっていて一番悔しいんですけれども。そういう意味でですね、実は6年半日本経済、生産性も潜在成長率もほとんど上がってないという状況なんですね。

この先二年間は景気対策は進まない?

じゃあ、そうはいってもこないだ内閣改造したよね、と。残り任期二年あるよね、と。じゃあそれで、その間に改革を進めてくれて、生産性も上がってくれれば、来季の日本経済の将来明るいな、っていうふうになるんですけど、これはですね、内閣改造の結果を見てですね、私がっくりしましたけれども、絶対無理です。正直言って、この改革をすすめるべきポストに任命された大臣は、改革とは全然縁遠い方ばかりになっちゃってる。

どっちかといえば残り期間2年で安倍さんは願望である、憲法改正を少しでも前にすすめるため、の方に人を当ててしまっているな、っていうことになっています。残り任期、その間に憲法改正とか北朝鮮問題、あとはロシア問題、これを集中してやって、経済政策は、多分年末に消費税増税で景気回復になる段階で補正予算は組むだろうけども、多分残り2年も改革自体は進まないだろうな、と思います。

つまり、残念ながら今のままでは、2020年代日本経済はだいぶ低空飛行が続く。これは、皆さまの企業の観点からすれば、やっぱりなかなか、バブル崩壊後の失われた20年を思い返せばわかるように、業績を良くするというのがなかなかしんどいなと言わざるを得ない状況にあります。

ちょっと最初から暗い話で申し訳ないんですけれども、ただですね、政治に期待できないからと言って日本経済の将来が、暗いと言う気は全くありません。永田町・霞ヶ関だけだと日本の将来だいぶ暗いんですけども、逆に言えば、自分自身が色んな仕事をさせていただいている経験からですね、ミクロ的に見ますと、マクロ全体はしょうがないとしても、「ちゃんとやるべきことをやっている企業、なり産業、なり地域は明るい将来を作ることができるんだな」と真面目に思っています。

さっき言ったことをもう一度思い出してもらいたいんですけれど、要は日本経済の問題は、この低い潜在成長率をあげないとだめだとさっき言いました。で、そのためには経済の生産性をあげないとだめ。かつですね、生産性を高める主体は、民間企業、または地方自治体、こういった民間・地方のプレイヤーだと申し上げました。

これが、実は非常に大事な点でして。確かに全体的にはしんどいですけれども、逆に言えば、ちゃんと自分の生産性を向上させてる企業なり、産業なり、自治体、地域経済は、日本全体が仮に右肩下がりになっても、十分明るい状況を継続することができるんですね。

というのも、自分の生産性をしっかり上げた企業は潜在成長率が当然上がりますので、そうなると周りの状況は悪い中で、その潜在成長率が高いから、つまり、景気が良い状況を続けることができるわけです。というわけで、政治が頼りないからこそ、より一層、やっぱり、民間・地方、特に民間は、民間企業は、自分の企業が生産性をしっかり高めるんだってことをやらないと、2020年しっかり生き延びて繁栄するのは、やっぱりなかなか大変だよな、と、言わざるを得ないと思います。

本質的なイノベーションに必要なのは「効率的な働き方」


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じゃあですね、民間企業は生産性を引き上げるためには、何をしなくてはいけないのか。これ結論は非常に簡単でして、やっぱりイノベーションを作り出すことで、もっと言うとイノベーションを継続的に作り出すということをやらないと、だめです。

それで、あまりに当たり前なことを偉そうに大声で言っているから非常に申し訳ないんですけれども、実はこんな当たり前なことを偉そうに言っているのには一応理由がありまして、というのは、今日は、経理部門の方が多い、と聞いてます。経理部門の方にイノベーション、って聞くと、おそらく多くの方がですね、「じゃあ自分の仕事に関係ねえか」と思ったはずなんですね?

加えて言えば、色んな業種の企業の方が今日おいでになっていると思いますけど、特にサービス業は、意外とイノベーションってうちの企業と関係ないかなと思ってるかもしれないですね。ただそういうふうに思うことが、最大の誤解だと思ってます。「イノベーション」が日本では間違って理解されちゃってますので、今日は丁度いい機会ですので、この「イノベーション」を正しくご理解いただきたいと思っています。

そもそも「イノベーション」って何なのか?

じゃあですね、そもそも、イノベーションってなんなんだよ、ということになるんですけども、例えば私のいる大学院で、日本人の学生に「イノベーションって何よ?」って聞くと、だいたいこう答えます。「技術革新」。まあイノベーションの日本語訳は技術革新だから、だいたいこう答える。でこれ聞くと、なんか技術が関係することをやるのがイノベーションだよなあって思っちゃうんですよね。

で次にですね、外国人留学生、彼らに「イノベーションって何よ?」と聞くとだいたいこう答えます。「今までにない、全く新しい製品とかサービスを生み出すこと」。でこれも、「今までにない」っていうと非常にハードルが高いっすよね? だいたいこういう認識になっちゃってる。で実は、海外の答えは、もちろん間違いではないんですけども、まあ大学のテスト的に点数としたら、100点満点でも、50点の回答でしかないんですね。

で、じゃあイノベーションって何か? このイノベーションの重要性を、一番最初に強調した経済学者にシュンペーターって人がいまして、で彼の言葉を借りれば、イノベーションっていうのはですね、非常にシンプルです。彼の言葉を借りれば、イノベーションっていうのは、いわゆる発明、インベンションみたいに、なにもないゼロの状況から新しいものを作り出す、みたいな、難しいことではないと。そうじゃなくって、「イノベーションっていうのは、ニューコンビネーションを作り出すこと」だ。

「ニューコンビネーション」で経済を活性化させる

当時の日本語訳は「新結合」という訳のわからない日本語ですけれども、今の言葉で言えば「ニューコンビネーション」、つまり「新しい組み合わせ」ですよね。で、シュンペーターの言うイノベーションというのは、発明みたいな小難しいなにもない状況から新しいものをつくるのではなくて、今、常に世の中に存在するもの、自分の周りにあるもの、の融合リレーション、新しい組み合わせを作り出して、で新しい形を生み出す。これを継続的にやってこそ、経済の古い風習が破壊されて経済は新しい発展段階に入ることだと。まあこういう事を言います。

要は平たく言えばイノベーションというのは、企業がいろんな部門、すべての部門、単純に製品サービスを作り出す部門だけではなくて、あらゆるもの全部が対象で、そこでニューコンビネーションを作り出していくこと。これが大事なんだと。これを継続的にどんどんやっていくことが大事なんだというふうに言ってます。だから、この考えからもわかるように、単純に既に存在するもの、色んなものの新しい組み合わせをどんどん作り出して、新しい形を生み出すことがイノベーションなんですね。で、この定義からわかるように、これは経営論も含めて、企業の全部門に関係する話です。当然サービス産業も含めて、全産業に該当する話です。

イノベーションを作り出し生産性を上げる2つの方法

さらに、大事なポイントは、じゃあ具体的にイノベーションを作り出すっていうのは、やり方、どういう方法があるかなということ。イノベーションを作り出して生産性をあげる具体的なアプローチはどうやってやればいいのか。まあ大体ざっくり分けて2通りあると思っています。

2通り。1つ目はですね、よく一番生産性に関して言われる言葉ではあるんですけれども、いわゆる「効率的に働く」。これは同じ時間働いても、生み出す付加価値を高くする。これが生産性があがるという概念の一つに入りますので、じゃあ効率的に働く場合はどうすべきか。当然、これは一に最先端のデジタルですよね。これを導入すれば、まず、同じ時間で、処理できる仕事の量が増える。効率的に働くというのが1つのアプローチでしょう。それを実現するには、既存の今やっている仕事に特に今みたいな第4次産業革命がどんどん進んでデジタルの性能がどんどん上がっているなかでは、最先端のデジタル、サービスの機器も含め、こういったものをどんどん導入して、同じ時間働いても、処理できる仕事の量を増やす。これももう皆様、既存の仕事とITのニューコンビネーションを作ることという意味ではやはりイノベーションに入るのですね。これは1つ目。いわば効率的に働くもの。

2番目のやり方はですね、同じ時間働いて、単純に効率的に働くじゃなくてより付加価値が高いアウトプットを生み出す。これはすごくわかりにくくて、例を出しますと、例えば皆様が、業者の工場で働いているとしましょう。当然ながら働いて車を作る、皆様はTOYOTAの工場で働いていることにしましょう。工場で働いていて、例えば皆さんがカローラを生産したとする。一定時間働けば当然、1日8時間1月働ければ、まあ仮定として、一人で10台ぐらいのカローラを生産できたとしましょう。それが仕事に慣れてきました、自分なりにやり方を工夫して、もっと難しい車、TOYOTAでいうならレクサスを生産できるようになった。

これを仕事としてちゃんとできるようになったとして、カローラより付加価値高いしややこしいんだけども、やはり1月働いて10台レクサスを生産できるようになれば、皆様お知りのようにカローラとレクサスでは値段が全然違いますよね。付加価値の差を反映して価格が高い。要は同じ時間働いて価格が高いものを同量生産できれば、これもやっぱり生産性があがる。

そういうのもできるようにすれば、自分のスキルアップであるとか、いろんな新しいやり方とかをどんどん取り込んで行かなければならない。これも自分の仕事に色んなやり方をニューコンビネーションさせて作って、今までカローラを作っていた。でもレクサスを作れるようになれば、単価の高い製品は付加価値も高いから、やっぱりこれは生産性が高いということになる。

生産性を上げるという観点で言えば、まさにイノベーションのやり方でも、1番目に、「効率的に働くこと」、2番目に「同じ時間働いて生み出す付加価値を名一杯高める」というやり方があるんですね。だから2つのやり方をどう経理部門がやっていくかがすごく大事です。

「働き方改革」だけでは足りない、付加価値を生み出す「ディープ・ワーク」

なんですけども、実はですね、その観点から、まさに去年政府が一生懸命に旗を振った、「働き方改革」。これが非常に大事なわけです。ただ残念ながら、政府はこの働き方改革の1番大事なものをしっかり強調してくれなかったんですね。これは皆さんご存知のように、去年の働き方改革でやった内容はですね、残業期間の上限規制を作ることだった。加えて言えば、企業が社員にですね、連続で休養を取れるようにするなどですね、どちらかというと、休み方改革みたいなことばっかやりました。なるべく短時間で効率的に働きましょうってことばかり言ってきた。これ実はさっきの分類的には、前者の方の効率的に働こうと言っているだけなんですね。で後者の付加価値の高いものを生み出すことをやろうというのとは繋がっていないのです。

これが非常に問題なのは、単純に働く時間を短くしようということをばっかり言っていて、本当に大事な働き方改革の中身を政府が一切説明してないんですよね。働き方改革で1番大事な部分はですね、ちょっと詳しめに説明させていただきますと、まさにこの働き方を研究している研究者がいまして、彼らの間では結構常識的な考えになっています。そもそも人間が仕事をする場合、仕事には仕事には大きく分けて2種類の仕事があると言います。

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例えばどういう仕事かというと、名前だけ言っておきますと、英語で申し訳ないのですけど、1つは「ディープ・ワーク」。「deep」って深いって意味ですね。深く働く。2つ目は「シャロー・ワーク」この「shallow」っていう意味は、英語でどっちかというと「表面だけ」で軽い仕事。要は仕事には隊列して「ディープ・ワーク」と「シャロー・ワーク」に分類できると。

2つの働き方 「シャロー・ワーク」と「ディープ・ワーク」の違い

で「ディープ・ワーク」とは何かというと、その時間、要は他に気をそらさず、仕事でやっている内容に名一杯集中して、自分なりの付加価値を作り出すということ。今どうしてもデジタルの差で全盛の時代で当然仕事していてもメールとかいろんな連絡が来るわ、調べ物したらその影響でwebサイトで余計なものを見るわ、ソーシャルビデオを見ちゃうわ、結構ですね、余計な集中をそらすようなものがたくさんあるんですね。でそういうのに集中力をそらさせないで、自分の仕事だけに没頭して、自分で考えて新しいアイデアを作り出す。これが「ディープ・ワーク」と言われていまして、1番大事な付加価値を生み出すと言われています。

もう1つの分類「シャロー・ワーク」。これはあんまり新しい付加価値を生み出せない仕事でこのアメリカの研究者の分類ではいわゆるメールをチェックする、来たメールに返事する、余計なwebサイトを見ちゃうだとか途中でソーシャルメディアで返事をするとかまたは本当に定型的な仕事をずっとやっている。こういうまさにメールの処理に代表されるような仕事は実は「シャロー・ワーク」で、本質的には付加価値を全然作り出してないよねという分類になっています。

いかにシャロー・ワークの減らしてディープ・ワークの時間を増やすか

アメリカの研究者たちの間で言われているのは、やっぱり新しい付加価値を生み出すのはディープ・ワークなので、いかにシャロー・ワークを減らしてディープ・ワークの時間を増やすかと。これをできるようになった人間は、本当に新しい価値を作り出す。「そういう働き方をしっかりやっている企業こそが本当の意味で生産性を高めるよね」という風になっています。でこういく研究者たちが証明している働き方とはどういう働き方か。なるべくディープ・ワークをやれる時間を増やしましょう。

意外と、特にオフィスワークの人は、意外と1日の大半の時間をネットをつかってやれメールを処理する、なんかメールで連絡したら全部返信しなきゃいけないとなっちゃって、すぐ集中力が途切れちゃう。後は調べ物をしていてどうしても余計なことに取り掛かってしまう。まあ言い方悪いんですけど、情報収集はいっぱい出てくるんだけどもいわゆるシャロー・ワークばかりになってしまう。これをいかに減らすかということが大事かとなっています。

でそう考えますと、実は私、昔留学してアメリカのコロンビア大学のビジネススクールにいまして、ちなみにファイナンスを専攻しましたので、一応財務も程度詳しい人間なんですけども、このディープ・ワークとシャロー・ワークを話をもとに考えるなら、この経理の部門の仕事もだいぶ変えられるはずだよなと思います。

後編に続く

【編集部より】イノベーション・生産性向上に関する記事はこちら

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