欲しい学生に出会えない。情報が少ない。そんな悩みを解決!
最終選考に残った学生をシェア!? 関西人事交流会の斬新な取り組み
2019.10.25
新卒採用市場は激化するばかりで、特に地方企業は欲しい学生を採用しにくい状況に直面している。人口減少や都市部への流出で学生が少ない、東京に比べて情報を得にくいなど、難しい課題もある。
今回は、関西地方の人事コミュニティー「関西人事交流会」を運営する「トゥモローゲート」(大阪市)に取材。地方企業のリアルな悩みをひもときながら、ほしい学生と効率的に接触できるスカウト型イベント「就活AFTERFIVE」、最終選考に進んだ学生を企業間でシェアする「裏口入社」など、地方企業の採用を効率化する同社独自の取り組みの全貌を教えてもらった。【取材:2019年9月11日 @人事編集部 大西里奈】
トゥモローゲート株式会社
2010年に設立。「ブラックな企業」と銘打った採用戦略で学生の認知度を高め、2015年卒の新卒採用では、当時社員3人の会社に7,000人がエントリーし、1人が採用された。そのブランディングのノウハウを生かし、企業の採用ブランディング支援、無料求人媒体の運営などを手掛けている。
関西人事交流会とは?
売り手市場の中で採用を成功させるためには、人事担当者が自らのスキルを高めることが一番の近道だ。採用手法を学ぶセミナーや他企業の人事担当者との交流など、生の情報をキャッチアップできる場を提供することを目的に、2017年11月に「関西人事交流会」が始まった。
現在は大阪や京都など関西圏の企業約30社が入会。入会企業の業種はITや小売などさまざまで、中小企業やベンチャーが多い。
「関西人事交流会」は主に以下の3つのコンテンツに分かれ、それぞれ実施頻度や内容が異なる。
就活AFTERFIVE
会員企業と、地方の中小企業やベンチャーに興味がある学生とを集めた座談会形式の採用イベント。
ほぼ毎月開催し、採用活動がピークとなる3~4月には月4~5回開催することもある。
裏口入社
会員企業の最終選考で不合格になってしまった学生から要望を受け、他の会員企業との社長面接を紹介する。学生の希望に合わせて随時実施。
セミナー・交流会
講師を招き、主に採用課題の解決につながるテーマについて知識を共有する。会員企業でなくても参加でき、各回60社以上の人事担当者が集まる。セミナー後には参加者同士の交流会もある。ほぼ2カ月に1回のペースで開催。
地方企業の悩み①「そもそも母集団が形成できない」
年々採用市場が激化する中で、課題となるのが母集団形成だ。トゥモローゲートの浦下歩さんは「首都圏以上に、地方ではそもそもの母集団形成が難しいです。合同企業説明会に参加して学生に出会う手もありますが、ブースを出すだけでかなりの費用とマンパワーがかかります。地方企業ができるだけコストをかけず、欲しい学生と接触できる新しい方法が必要だと感じました」と説明する。
そこで生まれたのがスカウト型イベント「就活AFTERFIVE」。5~6社の企業と、中小企業やベンチャー志望の学生40人が座談会形式で語り合い、互いの理解を深める。学生の内定者数に応じた成果報酬型サービスで、コスト面での配慮もある。
これまでの実績では、企業1社が3回参加した場合、平均3人の学生を採用しているそうだ。学生からも「大手就職ナビサイトで見つけられなかった企業に出会えた」と好評だという。
最終面接にたどり着いた学生を企業間でシェアする
地方企業の効率的な採用をかなえる、もう一つの変わった取り組みが「裏口入社」だ。
まず、会員企業は自社の最終選考に残った学生に「パスポート」を渡す。このパスポートがあれば、もし学生がその企業の最終選考で不合格となった場合、トゥモローゲートが仲介して、学生の希望にあった別の会員企業の社長面接を取り次ぐことができる。
トゥモローゲートの刑部美穂さんは「中小企業の一番のニーズは、優秀な学生を効率よく採用すること。最終面接まで勝ち上がった学生は一定以上のスキルや才能を持っているはずです。自社で全ての学生を一次面接から見極める作業に比べれば、他社で見つけた優秀な学生にいきなり社長面接をする方が工数も少なく、企業と学生の両者にとってメリットになります」と説明する。
「裏口入社」は2017年11月に始まり、これまでに10人の学生が利用した。今のところそこからの内定実績はないというが、斬新な採用手法として関西の人事担当者から注目されている。
地方企業の悩み② 地方企業の動向や成功・失敗事例に関する情報が入ってこない
もう一つの課題感は、情報網の少なさだ。地方では、東京に比べると人事担当者同士の交流の場が少なく、情報感度もどうしても下がってしまう。「その結果、市場は変化しているのに、昔の採用手法を今も繰り返しているケースがある。人事が採用市場に関する最新情報を知り、うまくいっている企業の話を共有することで採用スキルを上げ、地方企業の新卒採用の成功につなげたいと思いました」(浦下さん)
これまでのセミナーでは、採用ブランディングやチームビルディングをテーマに開催。専門家や、新卒採用を成功させているベンチャー企業の経営者が講師となり、採用市場のトレンドや具体的なノウハウを伝える。セミナー後には参加者同士の交流会があり、横のつながりもできる。「同じエリアの他企業の悩みや成功、失敗談を生で聞くのは、情報の少ない地方では貴重な機会」と浦下さんは説明する。参加企業数も徐々に伸びているそうだ。
地方人事のコミュニティーの強化へ
浦下さん、刑部さんは今後の採用戦略として「ブランディングやSNS採用、リファラル採用が鍵になる」と考える。これまでと同様に大手就職ナビサイトを活用していても、費用がかかり、知名度の高くない地方企業は埋もれてしまう一方だ。2人は「これらのスキルを人事が身に付ければ、1社1社の魅力が効率よく伝わり、学生が集まるようになるはず」と語る。
今後、関西人事交流会では人事コミュニティーの強化に力を入れるという。売り手市場が続けば、地方企業はますます「採用の母集団の減少」という課題に立ち向かうことになる。セミナーへの参加者数は増加傾向で「人事担当者」の危機感は増しているようだが、その上にいる「経営者」がこの危機に気付いていないことも多いそうだ。
刑部さんは「もっと人事の横のつながりをつくって互いに知識やノウハウを高めてほしい。他社事例を通じて人事の採用力を高め、経営者を巻き込んで採用活動を改善してもらえるよう、サポートしたいです」と話した。
★関西人事交流会に関する詳細や問い合わせ先はこちら
【編集部より】
地方企業の採用戦略や、地方学生の採用に関する記事はこちら
- 【地方×HR】採用目的のインターンは捨てるべき。「地方の色はいらない」人気インターンから見えた学生を集めるシンプルな法則。
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- 地方学生のリアルな就活事情 地方学生が「参加したい」と思う選考の共通点とは?
【編集部より】
採用業務を効率化する「業務ガイド」(ノウハウ記事)はこちら
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