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企画

「イクボス」市長に学ぶ組織改革


男性育休取得率2.2%→34.3%。千葉市・熊谷市長が貫く「全職員、肯定」の哲学

2019.10.10

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環境大臣に就任した小泉進次郎氏の育児休業取得検討が話題になっているが、「平成30年度雇用均等基本調査(速報版)」(厚生労働省)によると、企業での男性育休取得率は女性の82.2%に対して6.16%にとどまっている。大企業でのパタニティハラスメントも問題になる中、男性職員の育休取得率をこの5年で2.2%から34.3%と大幅に向上させたのが千葉県千葉市だ。

民間企業にとってハードルが高い壁を、なぜ一自治体が打破できているのだろうか。

2009年に31歳で政令指定都市の首長となった熊谷俊人市長はこの10年、行政改革とともに職員の働き方改革を敢行。自身も2児の父で、組織として課長クラス以上の職員に「イクボス宣言」させたカリスマ市長に、男性育休取得の意義や組織にもたらす効果、改革を貫く信念を聞いた。【2019年9月4日取材、@人事編集部 飯塚陽子】

千葉市の熊谷市長熊谷 俊人(くまがい・としひと)

1978年生まれ。神戸市出身。新卒でNTTコミュニケーションズ株式会社に入社し、2007年千葉市議会議員に初当選。09年6月に千葉市長に当選。31歳5カ月での市長就任は現職最年少(当時)。政令指定都市長では現在も一番若い。3期目。2児の父。歴史愛好家で、徳川家康や大久保利通など「新しい時代の制度づくりをした人物に引かれる」。

「イクボス」とは

男性の従業員や部下の育児参加に理解のある経営者や上司(ボス)のこと。千葉市では2015年11月に「千葉市が、日本で一番、子育て家庭に優しく、働きやすい都市となるよう全力で取り組みます」と「イクボス宣言」している

目次
  1. 31歳で政令指定都市の長に。トップの声を届けるために
  2. 男性育休取得率が一気に向上した「逆転の発想」とは
  3. 「保育園のお迎え日数」を数値化。育児参加のバロメーターに
  4. 年功序列と成果主義のハイブリッドは可能
  5. 軸になるのは哲学。「全職員の生き方を肯定したい」

31歳で政令指定都市の長に。トップの声を届けるために

千葉市での2013年度の男性職員の取得率は2.2%。熊谷市長が「職員へ取得を強く呼びかけ始めた」のが2016年ごろからだ。

「(市長就任)当初から、いずれは男性の育休取得を5割まで持っていきたいと思っていました。目指したのは、子育てにおいて男性側も仕事を調整するのは当たり前、という考え方の浸透です」

千葉市の男性職員の育休取得率推移グラフ

就任した2009年当時は31歳。1万人以上の職員を抱える組織の若きリーダーは、どのように周囲を巻き込んでいったのか。声を届ける「場」となったのは、千葉市の各組織のトップが集まる幹部会だった。

「幹部会でかなり強く発言しましたね。幹部の年代は55歳~60歳が中心で、もちろん世代間ギャップもありましたが、『育休は子育てしている人だけのためじゃない』『可変的に仕事を組み立てる姿を見せましょう』と繰り返しました」

取り組んでいたのは育休取得も含めた職員の働き方改革。幹部会の席で有給休暇の取得数が多い幹部トップ3を発表するなど、「これからの時代はこの働き方が素晴らしいんだ、ということを徹底して植え付けた」という。

男性育休取得率が一気に向上した「逆転の発想」とは

市が2014年に「千葉市職員の子育て支援計画」の目標として立てた数値は「2019年度の取得率を13%にすること」。それが17年度に2年も前倒しで達成できたのは、逆転の発想があったからだ。2017年4月より、子どもが生まれた男性職員に対して「なぜ育休を取得するか」ではなく、「なぜ育休を取得しないか」の理由を申請させることにした。

熊谷市長の「もう一歩、取得率を上げられないか」というリクエストに対し、担当部署にあたる給与課の職員たちがアイデアを出して申請方法を変更。一気に取得率を押し上げた。「取得しない理由として『妻が望んでいない』と書いてくる人がいるんですが、人ごとにもほどがありますよ。それって奥さんに役に立たないと思われているだけ。そこから変えてもらわないと」

現状、”成績”のワーストは消防局。「消防局は古い男性社会。忙しいのは言い訳です。忙しいはずの教員も数字を上げてきているので消防局の幹部にハッパをかけているところ。数字の管理は考え方を変えるのに効果的だと思います

インタビューに答える千葉市の熊谷市長

「男性職員の育休取得はいづれ100%を目指したい」と話す熊谷市長

育休の期間で多いのは1週間程度。1年間取得する人もいるという。熊谷市長が推進しているのは日数の長さよりも、状況に応じて仕事を切り上げられる「時間休」だ。

「育休はあくまで入り口。親は長く 育児に関わるわけだから、産まれた直後だけ 取ればいいというわけではないですよね。政府は男性の育休義務化の議論をしているけれど、企業は時間休の義務化を推進してほしい。リアルに母親が助かるはずですし、全ての人が恩恵を受けられます」。言葉に強い思いがこもるのは、市長自身が2児の父親であること、また多くの市民と対面して母親たちの声を拾っているからだ。

「保育園のお迎え日数」を数値化。育児参加のバロメーターに

熊谷市長が「男性の子育て参加」の指標としている数字は、実は育休取得率ではなく、休業期間でもない。普段の「保育園のお迎え日数」という。

自身も現在小学生になった子どもたちの保育園の送り迎えを、市長の業務の傍らに行ってきた。そこで気付いたのが「送りは父親はいるが、迎えに来るのはほぼ母親ばかり。いかに母親ばかりが犠牲になっているか」ということだった。

育児をしている男性のイメージ写真

写真はイメージです

保育園を管轄する自治体の長としても、保育士から声を聞く「お迎え」の時間は貴重だったという。「私は送りは評価しない。仕事に調整をつけて迎えにいき、子どものその日の様子を聞いたり、保育士さんと会話して気付きを得ることが、本当の育児。だから迎えに行った日をバロメーターにすることにしたんです」

ここ3年ほど、各局で保育園児等がいる男性職員の「お迎え日数」を管理。課長クラス以上の職員には全員、部下のライフ・ワーク・バランスを支援する「イクボス宣言」をしてもらい、「お迎え日数」の数値を上げさせた。

千葉市が職員の育休取得率を向上させ、育児参加を促したポイント

・「育休を取得する理由」ではなく「育休を取得しない理由」を申請させた

・保育園児がいる男性職員の「保育園お迎え日」を数値化して管理した

・組織のトップである市長が繰り返し、幹部に促した

年功序列と成果主義のハイブリッドは可能

休日の少なさやサービス残業など労働環境の課題は民間企業と同じ、むしろ自治体の方が劣悪とも言われている。働き方改革関連法が成立する以前から公務員改革に取り組んでいる千葉市では、人事制度でも新しい仕組みを取り入れている。

その一つが、柔軟な昇任制度だ。育児や介護で長期休暇を取得する場合など、一時的に管理監督職の責任が果たせず本人の希望により降任した職員でも、復職するなど降任の事由が解消した後、再び元の職に戻れるというもの。以前までは一度降任すると、元の職に戻るまでに時間がかかっていたという。また、立候補制度を導入し、意欲や能力がある職員を早期に登用するケースも増えている。

インタビューに答える千葉市・熊谷俊人市長

「育児中で短時間勤務中の職員もポスト職に昇格した事例も出ています」と話す熊谷市長

とはいえ、「以前は古い体制がはびこっていた」だけに、年功序列制度も残してバランスをとっている。「欧米ほど一気に成果主義にするのは難しいですね。年功序列も残しつつ、部分的に新しい評価制度を取り入れています。その共存は可能だと感じています」と、ハイブリッドの利点を強調する。

過去には年末の仕事納め式を簡素化して9連休とする「幸せシフト」で話題になったり、「新・仕事ダイエット」としてサービス残業の撲滅や、記念日休暇の取得促進など、大企業顔負けの働き方改革を実行。これらは熊谷市長の旗振りをきっかけに、それぞれの担当課が知恵を絞っているものという。外部コンサルタントなどの専門家を入れることなく自前で行っているのだから、リーダーシップがいかに重要かを感じざるを得ない。

軸になるのは哲学。「全職員の生き方を肯定したい」

千葉市が今、力を入れているのが「男性保育士活躍推進プラン」だ。男性保育士の働きづらさを解消することが目的で、熊谷市長は「保育園で先生が全員女性だったら、子どもも『育児は女性がするもの』と思ってしまいますよね」と未来を見据えた施策であることを説明。「女性のための施策ばかりをやるわけじゃない、というメッセージもあります」という。

今年1月には、「パートナーシップ宣誓制度」を導入した。同性異性問わず、事実婚も対象としたのは国内初。 市長の中にあるのは、「全ての人の生き方を肯定したい」という哲学だ。

「働き方改革はブランディングのためではありません。全職員対象のものであることを常に考えています。育休も、育児している人だけのものではない。家族のため、個人の事情のために、どんな人も負い目がなく休める。仕事のやりがいにつながるような制度をつくりたいと思っています。全ての人の生き方を肯定したい。改革で大切なのは、そういった哲学ではないでしょうか」

【編集部より】イクボス、男性の育休に関する記事や役立つ業務ガイドはこちら。

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