この会社で大丈夫!学生の不安を和らげる内定式とは
内定式で学生の心をつかめ!内定辞退防止のカギは社風とメッセージの体現
2019.10.02
採用担当者にとって、内定を出した後も課題となるのが「内定辞退防止」と「早期離職防止」です。学生の超売り手市場の今、内定式はどのように変化しているのでしょうか。
就職みらい研究所の就職プロセス調査(2020年卒)【確報版】「2019年9月1日時点 内定状況」によると、2019年9月1日付の最新の就職内定率は93.7%で、前年同月+2.1%という高水準。就活生が早々に内定を得る中、今年も多くの企業で10月1日に内定式が行われました。
今回は、内定者の前で初めて永年勤続表彰式を行ったCBホールディングス(東京・港)と、6年ぶりに内定式を復活させたS-FIT(東京・港)の内定式をレポート。学生の心をつかむために考えた工夫と思いを人事担当者に聞きました。【2019年10月1日取材、@人事編集部 飯塚陽子】
内定式と永年勤続表彰式を合体! その時内定者は…
医療・介護・福祉業界の経営・採用支援などを行うCBホールディングスの内定式会場。緊張感あふれる面持ちでやってきたのは、来年4月1日に入社予定の内定者8人(1人欠席)です。鈴木尚之社長が激励を送り、一人ひとりに辞令を手渡した後は、1年目の先輩社員からのあいさつ、内定者代表のあいさつと続きます。ここまでは例年通り。
次に名前を呼ばれたのは、30代の男性社員2人です。思わず、前列の役員たちから笑みが漏れ、少し照れながらその社員が前に出ると、内定者も自然と笑顔に。行われたのは勤続10年の表彰式です。
「10年を評価していただき、うれしいです! これからもがんばります」とあいさつした中山智弘さんは、入社後にグループの別会社に転籍し、復帰して通算10年目の社員。「こういった場で表彰していただけると、自分を認めてもらうといいますか、モチベーションにつながりますね」と話しました。
同社では、これまで4、10月に単独で永年勤続表彰式を行っていましたが、今回は鈴木社長のアイデアで初めて内定式と合体させて実施。人事部の坂本竜太さんは「表彰された社員の笑顔もそうですが、内定者の表情がほころんでいる様子を見て、やってよかったな、と思いました」と振り返りました。
3年前に勤続手当を導入。継続して働くことの価値を示す
今回の狙いについて、坂本さんは「入社しても早い段階で転職するような時代になっている中、『継続して働く』ことの価値を示すことで内定者の安心材料になればと思いました」と説明します。7月に創業20年を迎えた同社ではこれまで5年、10年の節目に永年表彰を実施。社長から直接手渡しで表彰を受けた際、感激で涙ぐむ社員もいるといいます。
同社では2016年から、全社員に毎月3,000円の「勤続手当」を付与する制度を導入。ここにも「継続して働くこと」へのリスペクトが表れています。
この日勤続10年の表彰を受けた佐藤文洋さんは、内定式という場での表彰について「内定者にとって、この価値だけが全てではないとも思いますが、やはり継続して働いてきたことを表彰してもらえるのはうれしいですね」と話していました。
坂本さんによると、同社の社風は「フラットな組織であること」。この日の内定式でも、鈴木社長は内定者に向けたあいさつで内定者や出席した社員に声を掛けながら進行。永年勤続表彰式では顔なじみの役員が茶々を入れつつ10年目の社員を温かく見守るなど、短い式の中でも会社の雰囲気がにじみ出たものになりました。
離職防止対策として「能動的に会社を知ってもらう」機会を増やす
一方、内定式を6年ぶりに復活させたのは、不動産サービス事業を展開するS-FITです。通年採用を行っていたことから一部の社員に疎外感を与えないようにするため、また「会社の一員として本格的に働くのは入社してから」という意味でもしばらく内定式を行ってきませんでした。復活させた理由について人事部の神宮陽太さんはこう話します。
「最近では内定承諾をした後も内定先の企業に対して不安に感じる学生さんが数多くいらっしゃいます。理由の一つが、内定先の企業の風土や人柄の理解が不足していること。企業側から能動的に会社のことを彼らに知ってもらう機会を与えることが必要と考えました」
不安感からの内定辞退や入社後の早期離職につながらないために、同社では今年から、内定者が内定から入社までの間に店舗でインターンする制度を強化。これまでは内定者がアルバイト的に行っていたものを、店舗ごとにメンターがついてきちんとフォローできるように体制を整えたそうです。
内定式を行うポイントは実直なメッセージ
6年ぶりの内定式には、44人の内定者が出席。和やかなムードの中、一人ずつ新しい仲間の前で自己紹介を行い、内定式後には年齢の近い先輩社員が参加して懇親会が開かれました。同社の社風は「コミュニケーションが活発で、堅苦しくないこと」。社内行事の後は必ず懇親会があるそうで、神宮さんは「イマドキ古臭い考えと言われてしまうかもしれませんが、一緒にご飯を食べて腹を割って話すことで距離が縮まることもあると考えています。会社とは緊張するものではなく、身近にあるものだと知ってほしい」と話します。
同社では入社後にも「会社を身近に知ってほしい」取り組みとして、昨年から全女子社員を10グループに分けてディスカッションする「S-FIT女子会」を始めました。ベテラン社員やママ社員の声を聞く機会をつくることで不安を取り除き、若手社員がキャリアイメージを描くきっかけにしています。
神宮さんに内定式を復活させた一番の理由を聞くと、「会社の一員として歓迎していることを示すこと」でした。
もちろん、4月1日の入社式ではどこの会社でも歓迎ムードいっぱいで新入社員を迎えるわけですが、売り手市場の昨今では内定から入社までの間にも辞退者が出ることも珍しくありません。人事担当者はあの手この手の趣向を凝らして内定者の心をつなぎとめることに苦労していることでしょう。
今回は、派手さはなくとも実直に内定者へメッセージを伝える内定式を行なった2社を取材。楽しい演出やユニークなイベントで盛り上げる例もありますが、やはり「自社らしさの体現」が本来の役目だと感じました。あなたの会社では内定式にどんなメッセージを込めましたか? 担当者の思いが伝われば、内定者にとって「この会社で大丈夫」と思える大事な一日になったはずです。
【編集部より】
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