黒髪ひっつめ髪ではなく、個性と自由を尊重した「表現型就活」へ
企業こそ個性を表現しよう。パンテーン「#令和の就活ヘアをもっと自由に」にワンキャリアが協力した理由
2019.10.01
10月1日は2020年卒の内定式。21年卒のインターンの面接や就職活動も少しずつ動き出しています。今年もまた、学生が黒染めした髪をキュッと縛って、全員同じスーツ姿でオフィス街を歩く風景を目にするのでしょうか――。
そんな凝り固まったスタイルはやめて、個性を尊重した就活に変えませんか? そう呼び掛ける「#令和の就活ヘアをもっと自由に」プロジェクトが、ヘアケアブランド「パンテーン」の主催、就活口コミサイト「ワンキャリア」の協力で展開されています。
パンテーンの調査※によると、就活生の81%が「企業に合わせて自分を偽ったことがある」と回答したのに対し、企業の78%が「自分らしい自由な髪を推奨する採用が受け入れられる世の中になってほしい」と回答しました。このすれ違いを改善するべく、まず企業は何をすべきなのでしょうか。
今回はワンキャリアのPR Directorで、キャンペーンの仕掛け人の一人でもある寺口浩大さんに取材。就活が「没個性化」する理由や人事担当者が今、行動すべき「自由に表現できる就活への転換」について語ります。【編集:@人事編集部 大西里奈】
※参考
・パンテーン「就職活動に関する調査」(2018年8~9月)
・パンテーン「就職活動のホンネ調査」(2019年7月)
「令和ヘアの就活をもっと自由に」キャンペーンとは?
パンテーンが2018年9月に実施した、画一的な就職活動生の髪型をテーマにしたキャンペーン「#就活をもっと自由に」の反響を踏まえてスタート。昨年は1,000人の就活生の本音をまとめた広告や動画を公開し、就職活動生の個性の尊重についてメディアやSNSでさまざまな議論が生まれた。
今年はワンキャリアが協力企業として参画。139社の賛同企業とともに、就活生一人ひとりの個性が尊重される前向きな就職活動が行えるよう、社会全体で応援するキャンペーンに発展した。自由な髪型で働く賛同企業の若手社員をモデルに起用したパンテーンの広告も展開された。
※関連記事:パンテーン×ワンキャリア『#令和の就活ヘアをもっと自由に』始動
※関連記事:『もっと就活を自由に』パンテーン広告から見る、「就活病」の問題点
就活は長年「個性」を「表現する」のではなく、「説明」せざるを得なかった
──なぜこのキャンペーンにワンキャリアは協力したのですか?
我々が目指している就職活動マーケットの透明化を進められると考えたからです。
パンテーンは「あなたらしい髪の美しさを通して、すべての人の前向きな一歩をサポートする」というブランド理念に沿って、就活ヘアや学校校則について、社会で対話が起こるようなブランドアクションをしてきています。
ワンキャリアも透明性のある社会をつくるために、口コミメディアの展開や、「#ES公開中」「#インターンのリアル」など、マーケットの透明化というブランドアクションを行ってきました。ブランド理念に忠実にアクションしていたら解決すべき課題が交差し、このようなプロジェクトを行うことになりました。
また、パンテーンのブランドチームの方々は、本気で就職活動生の前向きな一歩をサポートしたいと強く願っていました。大変なプロジェクトではありましたが、互いのブランドがどう社会と共存できるか、どう社会変革を起こせるかを集中して議論することができました。パンテーンの方々と一緒に仕事ができて本当に良かったです。
──そもそもなぜ、就活生は自分を偽ってしまうのでしょうか。
根本的にはこの採用マーケットが長きにわたって不透明で、企業と就活生の間に十分な対話がなされなかった。双方に自己開示によるメリットがなさそうであると学習してしまったことが大きいです。就職活動は心理的安全性があまりない状態だと考えていて、学生も企業も明らかに身構えてしまっていますよね。
もう一つは、就職活動におけるコミュニケーションのフォーマットが相互理解に適していない可能性があると考えています。
言い換えれば、コミュニケーションのフォーマットが、「表現」した方がいいことに関しても「説明」せざるを得ない形になっている。エントリーシートにせよ面接にせよ「説明」を求められます。つまり、「個性」さえ「説明」の対象になってしまっているということです。言ってみれば「あなたの個性を説明してください」という問いに対し、「はい、私の個性は3つあります」と説明せざるを得ない状況です。
──「表現」と「説明」に違いについてもう少し教えて下さい。
ざっくりいうと、コミュニケーションの方法には表現と説明があると考えています。
そもそも人間の認知能力について、人の行動が他人の認知にどのように影響を及ぼすかというと、話の内容などの言語情報が7%、口調や話の早さなどの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合で、説明するよりも、表現によって伝達する情報の方が大きな影響を及ぼすことが分かっています。
この採用マーケットに対峙する人は特に、人を理解したいときも、自分を知ってほしいときも、表現によって感じるものと、説明によって理解するものの割合をまず考えた方がいい。意外にこの事実を知らない人も多いんじゃないでしょうか。
まずは企業から、自社の個性を表現しよう。
──就活生が個性を表現できるようにするためにはどうすればいいのでしょうか。
個性の開示(表現)によるリスクは、法人に所属する組織人よりも、個人の方が大きいと考えています。
特に学生は、自分の個性を開示した結果「厳正なる審査の結果」とかいうお祈りメールで、理由も分からず「自分は不要」と言われてしまう。数十社に「あなたはいらない」と言われながら個性やホンネを開示しろと言われても、難しいのが現実です。社会人の方は思い出してほしい。結構つらいと思いますよ。
そんな不安な状況の中で学生が個性を表現したいと思うためには、既にその対象自身が個性を開示していることが必要条件なのだと思います。だから、まずは法人が表面的な説明だけでなく、法人としての個性を開示する意思表示と、自社の表現をし始めることが大事だと思います。
今大事なのは、きれいな言葉による説明より、具体的な社員の様子の開示による表現
昨年9~10月にパンテーンが行ったキャンペーンの後に、多くの人事の方がTwitterやFacebook上で「自社の内定式はこんな様子なので参考にしてください」など勇気のある発信をしてくれました。
ただ、それから1年が経ちましたが、街を歩いていても、就活生の様子はそんなに変わっていませんよね。真っ黒なスーツに、真っ黒な髪、みんな同じ格好をしていて、どこか楽しくなさそうです。若い人が未来のことを考える機会に楽しくなさそうって悲しいですよね。
今回のプロジェクトでのメッセージによる重要な進歩は2つあると思っています。一つは人事個人の意見ではなく、法人の意思表明として「もっと自由な就職活動を応援しませんか?」という旗に対して、139社が「法人として」賛同の意思表示をしたこと。
もう一つは、今まで法人から個人へのメッセージは「社会人らしい髪型で来てください」というテキストの説明がメインだったのに対して、「例えば、うちの会社にいる若手の人はこんな感じですよ。これがうちらしい人の一人ですよ」と、具体的で透明性のあるメッセージを打ち出せたこと。実際に11社の企業は「実際に働く若手社員の姿」を示してくれています。
これによって、学生は「この会社のスタンス」「この会社らしさ」を何となくでも感じ取ることができます。そして、内定式や面接にモヤモヤしながら、いわゆる「就活用フル装備」の黒髪ひっつめ髪で行かなくてもいいことが事前に分かるでしょう。黒髪ひっつめ髪を否定しているわけではありません。情報が開示され、それを基に意思を持って選択できるということこそが、大きな進歩なのだと思います。
今大事なのは、きれいな言葉による説明よりも、具体的な社員の様子の開示による表現なのではないでしょうか。
僕らのような口コミメディア(ONECAREER)が必要とされはじめているのも、学生はリアルを求めているからだと思います。主観的なアピールよりも、自分向けの確からしい情報が重宝される。先が見えない不安な時代だから、いい意味で法人という存在を無責任に信用しなくなっている。冷静で現実的ですよね。いいことだと思います。
「会社説明会」ならぬ「会社表現会」をやってみませんか?
──「賛同企業139社」という数字についてはどう感じていますか。
初めてなので多いか少ないかは分かりませんが、100社以上の人事の方がこの意図を汲み取って、法人としての意思表明の象徴であるロゴを提供してくれたことは事実。まずは、139社の人事の方、広報の方、経営者の方に敬意と感謝の意を表したいです。ぜひ自社を表現し、学生が個性を表現できるムーブメントをリードしてほしいと思います。
現時点では139社が「企業として賛同した」という事実だけが明らかになったというだけ。重要なのはこの事実をきっかけに、各社が自社らしさを表現するアクションを行うことだと考えています。
実際にサイバーエージェントは内定者に、選考中の髪型や服装に関する調査を行い、採用活動をマーケットに向けて可視化するアクションを行っていました。
就職活動について聞きました!-データで見るサイバーエージェント-
レバレジーズは、このキャンペーンに賛同した意図や普段の社員の働く姿、執行役員の方のメッセージをオウンドメディア「meLev」で公開しています。
そして何もこういった自社を表現するアクションは、広告にロゴが載っている企業だけの特権ではありません。実際に、ロゴが掲載されていない企業も「自社らしさ」を表現する開示アクションをとっています。
イグナイトアイ「#令和の就活ヘアをもっと自由に」をテーマに社長と対談
パンテーンがせっかくきっかけをつくってくれたので、これを機に多くの企業に自社を表現してほしいし、せっかく「#」(ハッシュタグ)があるから、それに合わせて会社説明会ならぬ「会社表現会」のようなものを行ってもいいのではないでしょうか。
数字や文字のテキストよりも、社員の方の自然な姿の写真や動画、生の声を見せるだけで、学生はそこで働く姿をイメージできるようになる。企業としてそのような「表現」の発信が増えてほしい。「#令和の就活ヘアをもっと自由に」というハッシュタグを通じて、透明性のあるコミュニケーションから対話が生まれたらいいなと思っています。
髪型だけでなく、「そもそも自由とは何か」を考えるきっかけにする
──いきなり自由と言ってしまうと混乱が起きるのでは?
たしかに、パンテーンと賛同企業を募っているときに「金髪で来られたら困るから賛同できない」という声もいただきました。背景としては、自由という言葉はみんな知っているけれど、その解釈が曖昧かつ、それぞれが違う意味合いで使ってきたことがあると思います。なので、自由って何? っていう対話が今回を機に生まれたらいいなと。
今回において重要なのは、自由というものが何なのか、人事担当者も学生も今一度自分で考えて、自分の言葉で解釈を示すこと。
例えば、髪型でいえば「黒髪ひっつめ髪でない状態」が自由かというときっとそうではない。それは単なる抑圧からの解放で、そこに意思がなければただの「今までではない何か」です。自由っていうのは「自分の意思で選択し、その行動の結果に対して自分で責任を持つと決めている状態」なのではないかと思います。
だから、髪の色が何色かとかパーマがどうかとか、そういう話ではなく、今回を機に「自由」に対してこのマーケットに向き合う人たちが全員で考え、自分の意思で選択すること、それについて責任と覚悟を持つ重要性を考える機会が増えたらいい。髪型だけではなく、自分のキャリアをつくる上でもこの考え方は大事なんじゃないかなと思います。
ワンキャリアは引き続き、採用のマーケットに透明性をもたらすためのアクションを継続していきます。今回のプロジェクトをきっかけに、企業の透明性のあるコミュニケーションが増えて、学生が心理的安全性のもとに個性を表現したり自己開示したりできるようになることを願っています。
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