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日本の人事を科学する~より良いピープルアナリティクスに向けて~(中編)


サイバーエージェントとパーソルHDが実践するピープルアナリティクス活用

2019.09.05

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人事領域におけるデータ活用は今、どこまで進んでいるのか。人事データで企業は何ができるのか――。企業でAIやクラウドなどテクノロジーの導入が進む中、HR領域では、データ活用によって人事課題を解決する手法の1つとして「ピープルアナリティクス」や「HRテクノロジー」が注目を集めている。
「People Analytics & HR technology CONFERENCE 2019」のレポートから、今回はサイバーエージェントとパーソルホールディングスが実践する、ピープルアナリティクスの活用法が披露されたパネルディスカッションの様子を紹介する。

前回の記事はこちら ピープルアナリティクスは「より良い意思決定のため」に使う

■登壇者
大湾秀雄…早稲田大学 政治経済学術院 教授/協会理事
向坂真弓…サイバーエージェント 人材科学センター アナリスト/協会上席研究員
山崎涼子…パーソルホールディングス グループ人事本部 人事企画部 タレントマネジメント室 室長/協会上席研究員

■モデレーター
古川琢郎…協会上席研究員

目次
  1. ファクトで語れる人事を目指す(向坂真弓・サイバーエージェント)
  2. 【質問】最初の時点でどのような構想があったのか?
  3. 採用から配置、リテンションまで。HRデータを最大限に生かす(山崎涼子・パーソルホールディングス)
  4. 【質問】データ分析で意外な結果が出たことは?

ファクトで語れる人事を目指す(向坂真弓・サイバーエージェント)

サイバーエージェント・向坂真弓氏

古川:ありがとうございます。また後ほど、ディスカッションのためのいろいろなご意見を聞きたいなと思います。続きまして、サイバーエージェントの向坂様、お願いします。

向坂:改めまして、サイバーエージェント向坂です。簡単に当社で今までやってきた取り組みを紹介できればと思っています。

さっきお伝えしていただいたように私は人事畑ではないので、マーケの経験から、それを何とか人事に生かしてほしいというメッセージをいただいて今の仕事を4年やっているんですけど、その頃から一貫して、この部署が何をやるのかという目的なんですけど、ひとことで言うと、「ファクトで語れる人事を目指そう」というところを掲げています。

向坂氏のスライド

どうしても人事というと、採用だったり、育成とか配置とか、経験だったりとか、人事の勘でいろいろな物事を決めていく世界がまだまだ多いと思うんですけれども、そこを全てデータで変える必要はなくて、意思決定のサポートとして、もうちょっとデータを活用できるんじゃないかというところを目的として、この部署を4年前に立ち上げています。

現在はアナログな作業が中心

本当に上流から下流までいろんなことをとにかくやってるんですけど、本当は「③分析」をすごくやって、もう最高のモデルができましたというところを目指したいんですけど、実はやってる業務のボリュームとしては、「①データ回収」と「②見える化」がほぼ9割を占めているんじゃないかっていうくらい、まだまだアナログな作業だと思っています。

最終的な分析に至るまでに、まず、正しいデータをいかに取り続けるかという「①データ回収」をきちんとやって、そこのデータベースを設計する。それが終わった段階で、データを「②見える化」して、簡単な集計ですね、それが人の手を介さなくても、どんどん自動的に見えるようになっていくところを目指すというのを、ずっと①と②をぐるぐる繰り返して、最終的にデータが溜まってきたら、それを使っていろんな切り口で分析していこうということで、こういったことをやっています。

データが歪まないよう、丁寧な運用を徹底

それぞれに簡単に突っ込んでお話をしたいと思うんですけど、データの回収のところは基本的な社員データとか勤怠データとかがいろいろある中で、当社の特徴としては、こういったいろんなところでお話させていただいているんですけど、社員の声を第一に大事にしようということを経営陣がよく掲げていますので、そこを基本として、データもそれを回収していくというところを意識的にやっています。

そのために使っているのが、Geppo(ゲッポー)というアンケート(※)でして、これは6年ちょっとくらいずっと社内で必ず月に1回、全社員にアンケートを取るということを徹底してやっています。ひょっとしたら似たような取り組みをやられている会社さんもあるかもしれないのですが、本当に社員って勝手なことを書いてくるんですね(笑)。

当然、人事とか上司に対する不満も書きますし、あと、このアンケート、たかがアンケートなんですけど、けっこう運用が大変でして。ずっと毎月毎月、6年間も取り続けていると、当然、書くのをやめてしまう社員もいますし、誰が見ているか、どう使われているか分からないということになってくると、データがどんどん歪んできて、異常に「晴れ率」が高過ぎてしまうとか、逆に何も書かない人が増えてしまうことも起こりうります。

そういうことが起こらないように裏側ではものすごく丁寧な運用をして、人事が実際に全コメントをいまだに目視で読み込んで、何かコメントしている社員には、ちゃんと人事が真摯に対応をするというような運用をしていますので、データを集めるためにアナログの運用をかなり徹底しているというのが当社の特徴かなと思います。

向坂氏のスライド3

※株式会社ヒューマンキャピタルテクノロジーが提供する、アンケート形式で従業員の状態の変化を発見するサービス。快晴~大雨の5段階の天気マークから自分の状態に近いものを選び、仕事の満足度や健康状態を回答する。
参考:リクルートとサイバーエージェントの力を結集したテクノロジーサービスを提供

正確なデータを自動集計できるのが理想

そういった形で集めたアンケートデータですとか、勤怠とか、社員の情報が自動的に集まってくるデータを、データベースに全部格納して、それを人の手を介さなくても自動的に集計されて、常に最新のものが見える状態というのを今目指して作りつつあるところです。

これができるまでは、各担当者がシステム管理からデータを引っ張ってきて、手元でエクセル集計をして、退職傾向や昇格率を集計していました。

これも皆さん、実感あるかと思うんですけど、担当者がそれぞれ分析をすると、人によってデータを抜いてくるタイミングで、データが当然違いますし、エクセルのスキルの違いや、データの読み込みとか使い方のスキルの違いで、同じデータを使っているはずなのに人によって退職率が違うとか、けっこう往々にして起こってしまうんですね。

なので、そういう状態をなるべくなくすために、人事として使うマスタデータは必ずデータベースに格納したこれを使いましょう。

で、集計する担当者のスキルに関係なく、誰が見ても同じ数字が出てくるようにダッシュボードという形で自動的に集計されるようにしましょうという環境の構築を今進めています。

主観×客観のデータをもとに、兆候を探る

当社は、これはBIツールのTableau(タブロー)を人事の中で使っています。これはまだまだ取り掛かり始めなんですけれども、やっとその先で、いろんな技術で分析を、いろんなことをやっています。

特徴としては、さっきお伝えしたように、社員の声を大事にしている会社で6年間ずっと取り続けた社員のアンケートデータがありますので、社員本人の実感値に対して、そこに勤怠データだったり、昇給率だったり、昇格率だったりっていうファクトの情報を掛け合わせて主観と客観のサインを見てですね。

本人は「晴れ」と言っているけど、給与がずっと停滞しているから、「本当にこの人大丈夫なの」といったところの違和感を発見する。そういうことのためにクラスター分析という手法を使って、人事が要注意して対応した方が良いんじゃないかというサインを巡視するために、こういったデータ分析をやったりしています。

この分析をやり始めると、データが全然足りていないことに気づいてさっきの「①データ回収」に戻ったり、そこで集まってきたものを改めてダッシュボードで見られるように分析からデータ回収に行ったり来たり、ずっと繰り返して去年からやってきていますので、まだまだ当社は道半ばですけども、ご紹介できればと思います。

【質問】最初の時点でどのような構想があったのか?

古川:ありがとうございました。最初の自己紹介にもありましたが、「人事でマーケをやらないか」と口説き文句があったと思うんですが、最初の時点でどこまで見据えていたんですか? ここまでやろうという絵図がある中でやっていこうという感じだったのか、マーケでやっていることが使えそうだな、くらいで始まったのか。

向坂:最初はですね、どちらかというとアウトプットが先行していて、アウトプットというか、さっきもお伝えしたGeppoが先に始まってたんですね。とある人事のチームがGeppoを運用していて、データも溜まってきたし、何か見えたら良いよねくらいの感じで始めたというのが正直なところだと思いますね。

採用から配置、リテンションまで。HRデータを最大限に生かす(山崎涼子・パーソルホールディングス)

パーソルホールディングス山崎 涼子氏

古川:ありがとうございます。続きまして、山崎さんお願いします。

山崎:パーソルの山崎です。よろしくお願いします。まず弊社なんですが、社員が約4万人おりまして、人事もグループ全体に約300人おりますので、グループ全体として、社員をどういったポリシーで育てていくのか、育成していくのかというところの人事ポリシーというものを作りました。

私の方では特に、社員の市場価値の最大化と組織の活性度の最大化というところをミッションにおいて、そのための手段がタレントマネジメントだという風に位置づけてやっています。社員の数がかなり多いので、ちゃんと平等にタレマネをやっていくためにはやっぱりHRデータ活用が必要だということで、この4年くらい、HRデータの活用に取り組んで参りました。

個別になりがちな人事施策をデータでつなぐ

タレントマネジメントなんですが、いろんな定義があると思うんですが、私個人として、そして弊社としても、人事プロセスが有機的に、統合的に行われることだという風に定義をしています。採用からリテンションというところまで、たくさんのデータが生まれるんですが、それぞれがそれぞれの施策ごとに個別になりがちなデータをちゃんとつないでいくことが重要だと考えています。

山崎氏のスライド3タレントマネジメント

例えば、採用したときに採用しっぱなしではなくて、採用した後に研修でどういうデータが得られたのかみたいなことを、その後の育成とかリテンションにつなげていくというイメージですね。そういう形で使っていきたいという風に思っています。

結果的に、各施策のデータを存分に活用して、社員・経営の意思決定に寄与する情報を人事からレコメンドしていくことができるのが良いことなんじゃないかと考えています。

人事データの収集・管理・分析の方法

では、弊社でデータ活用といっても、どういったことをしているのかという総論をざっくりまとめたものがこのスライドでして、人事データの収集と管理と分析を総じてデータ活用と捉えています。

まず、収集のところですね。ここがけっこう肝なんですけど、まずシステムに登録するルールをいかにシンプルに作るかみたいなところと、いかに強制力を高く設定するかみたいなところを駆使して登録しています。これは誤りを生まない仕組みというのと、間違えたらすぐに直せる仕組みというところを作っておくことで、より間違いのないデータを担保するという観点です。

それから、管理のところは、定期的なデータのクリーニングとモニタリングをやっています。これは、機械的にできているわけではなくてアナログなんですけど、4面くらいの体制を組んで、データをモニタリングして、間違っているものを各種人事に返して直させるといったことを定期的にやっています。それからタレントマネジメントシステムについても、常にちゃんと企業側で記録されるような仕組みを作ることで、情報の鮮度を保つということもやっています。

で、分析のところはですね、データの可視化と予測に大きく分類をして実施していまして、可視化のところは先ほど向坂さんもおっしゃっていたようなBIツールを弊社でも活用しながらやっていますし、予測のとこでは機械学習を使って、社員の情報を使って予測をするというようなこともやっています。

堅い・やわらかいでシステムを使い分ける

データ収集、管理の部分の全体像なんですけど、これはあくまで弊社の例なのですが、システム2台を使っていまして、人事管理システム、主に給与計算に使うシステムと、タレントマネジメントシステムというシステムを2台持っています。人事管理システムの方では、給与とか組織の情報、発令の情報とか、そういった堅い情報を管理してます。

タレントマネジメントシステムの方には、やわらかい情報という風に私は呼んでいるんですけれども、日々日々変化していくような1on1のメモとか、MBOの情報とか、研修の履歴とか成果物とか、そういったものを現場のHRBPがどんどん入力していけるような電源設定にして、登録を促進しています。

人事管理システムの方は、絶対間違ってはいけないので、間違えないデータを入れることを駆使し、日誌で自動連携して、タレマネシステムの方にデータが旧案として入っていくような仕組みにしています。

先ほど申し上げた、データクリーニング部隊は主に人事管理システムの方におりまして、こちらは定期的にモニタリングして、間違っているものがあったら月次で各会社の人事に返していく。そういった取り組みをして、データの鮮度を何とか気合いと根性で保っているというような感じです。

分析は可視化と予測に分けて使い分ける

山崎氏のスライド

分析に関しては、大きく可視化と予測に分けて、目的に応じて使い分けています。先ほど大湾先生がおっしゃられていた、統計分析とか機械学習というのは予測の方に入るんだと思うんですけど、可視化のところは、仮説や課題を導き出すために使っていますし、まだデータがちゃんと整理されていない状況では人事の業務工数が大きく削減されることも多いので、可視化の重みというのはけっこう弊社では大きいと感じています。

予測の方では、社員の表出していない可能性を見出すことが可能ですので、より平等性の高い、社員に対してのタレマネという意味で予測というものを実施しています。

分析結果はデータの可視化やレコメンドに活用

分析事例、サマリとしていくつか持ってきたんですが、例えば、どういうことをやっているのかというと、可視化の領域では、タレントの履歴情報とか予測情報みたいなものをまとめてダッシュボード化をして、役員が見れるようなものを作ったりとか。

あとは、社員意識調査のコメント情報があまり使われないものを、テキストマイニングで会社単位の課題みたいなものを浮き彫りにして、それを経営会議で議論するとか。

あとは、これは簡単な話なんですけど、採用の進捗・KPI情報が、エクセルで管理していてかなり時間がかかるところを、自動集計ツールを使って業務効率化を図るというのを可視化の領域ではやっています。

予測のところでは、異動規模とかキャリアの相談の履歴を使って、その人その人に合うポジションをレコメンドしたり、また過去の配属結果の成功・失敗事例から、将来の配属先のレコメンドを新卒採用の領域で実施したり、ということをやっています。

タレントデータが議論の活発化材料になることも

山崎氏のスライド2

もう少し具体的に話しますと、例えば、タレントダッシュボードってこういうイメージなんですが、左側がいろんな人事システムに入っているデータとか、モデルの予測をしたデータというものを反映させていて、タレントの強み弱みというか定性情報みたいなのも載せてます。これは多面評価から持ってきています。

右側が、クラスターの所属の、どういうタイプの人なのかみたいなところとか、いろんな評価の情報っていうものを分かるように出してます。

タレントのサクセッションなどにおいては、役員の方々の勘とか経験で議論されることが多いんですけれども、こういう私たちしか持っていない生々しいデータを出すことで議論が活発化することがあるので、効果としてはそういった面で感じています。

適性ポジションのレコメンド分析も実施

それからもう1つは、適性ポジションのレコメンド分析で、こちらは大湾先生に半年くらい張り付きでご指導いただきまして、かなり厳しいフィードバックもいただきながらやったものなのですが、公募制度、会社またぎの転職制度と言えばいいんですかね。

山崎氏のスライド4

そういうものを実施していまして、半年に1回、500くらいのポジションが出て、100名くらいの公募があるという、そういう制度なんですけども、私の意思としては外に出るよりは、内部で異動してほしいという思いがありまして、より社員に対して向いているポジションをレコメンドしたいという思いがありました。

なので、過去の社員の応募履歴に対して、新しい応募者のデータを当てれば、どういうポジションに向いているかというのが出せるというようなものを作り、それだと募集内になっているデータが少ないというところがあるので、キャリアアドバイザーの制度というものと当てにいきながら、どれくらい現場判断と近いかを検証して、やっとテストデータとして使えるようになったというものです。

こういったことを弊社としては、事例紹介としてはこちらの2点をご紹介できればと思います。私もまだやり始めて4年経つんですけれども、まだまだ足りないデータもあるなと思いますし、もっとやりたいこともたくさんあるなと思っているんですが、まだまだ道半ばですので、今後も頑張っていきたいという風に考えています。

【質問】データ分析で意外な結果が出たことは?

古川:また1つご質問させていただくんですけど、非常にたくさんの領域で可視化も予測もされているとなって、配属だったり採用だったり、退職予測だったりで。そうですね、例えば、可能な範囲で構わないので、「これは意外な結果だな」と過去に出たものがあれば1つお伺いしたいです。

山崎:ちょっとニッチな話なんですけど、新卒採用のエリア拠点で、拠点って分かりますかね、中部とか九州とか、東京以外のところに配属するにはどういう人が向いているのか、というオーダーを現場からいただいて分析したことがありました。

最初は、統率力とか、自分で推進していく力が強い人の方が向いているんじゃないかとテストして私は思っていたんですけど、結果としてコミュニケーション能力が高く出ている人が向いているという結果が出まして。過去、配属していた人間の勘とは違う結果が出たので、それを生かしたという事例があります。私としては意外だったなと感じました。【文中敬称略】

>>>後編「ピープルアナリティクス活用を担う人材に必要なのは、人事領域に対する熱意」につづく

【日本の人事を科学する~より良いピープルアナリティクスに向けて~】
・【前編】ピープルアナリティクスは「より良い意思決定のため」に使う
・【中編】サイバーエージェントとパーソルHDが実践するピープルアナリティクス活用
・【後編】ピープルアナリティクス活用を担う人材に必要なのは、人事領域に対する熱意

【編集部より】
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