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特集「令和時代に必須! ハラスメント対策最前線」


「物言わぬ上司」から卒業し、パワハラを恐れず部下を育成する方法

2019.09.02

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パワハラ防止法が成立し、2020年4月からは大企業でパワハラ対策が義務付けられる(中小企業の義務付けは22年4月以降になる見通し)。

対策の副作用として生まれるのが、「これもパワハラ?あれもパワハラ?」と考えて部下に何も言えなくなる「物言わぬ上司」問題だ。上司がパワハラのリスクなく部下を育成するにはどうすればいいのか。

人事コンサルティング会社「アチーブメントHRソリューションズ」(東京・港区)代表取締役社長の青木仁志さんが、マネジメント論や心理学の視点から具体的な解決策を語った。【取材:2019年8月5日 @人事編集部 大西里奈】

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「冷静と情熱のあいだ」で叱る上司はパワハラと言われない

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【特集】「令和時代に必須! ハラスメント対策最前線」

目次
  1. そもそも日本企業に「パワハラ」が存在する理由
  2. 「物言わぬ上司」によって組織の成長が鈍化する
  3. マネジメントのコツは「人間関係」「部下が行動を選択できるようにする」
  4. パワハラ防止だけで終わらず、部下の成長を促す育成スキルを身に付ける

青木仁志(あおき・さとし)
アチーブメントHRソリューションズ株式会社 代表取締役社長

北海道函館市生まれ。 プロセールスの世界で腕を磨き、国内人財開発コンサルティング企業を経て、1987年アチーブメントグループを設立。研修講師としてのべ39万名以上を担当。「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」の審査委員も務めるなど、中小企業経営者教育に力を注いでいる。著書は、30万部のベストセラーとなった『一生折れない自信のつくり方』をはじめ57冊。

そもそも日本企業に「パワハラ」が存在する理由

そもそも、なぜ日本の企業にはパワハラが存在するのか。青木さんは日本人のマネジメントスタイルの歴史から解説する。

「従来の日本では、立場を使って強制的に相手に命令、指示して自分の思い通りにしようとする『ボスマネジメント(外発的動機づけ)』が横行していました

「指導」の名のもと、フロア中に響き渡るような大声で怒鳴られる、デスクに電話機が飛んでくる、ということはほんの数十年前までは珍しいことではなかった。目標やノルマ管理で数値を追い、短期間で生産性を上げようと上司が部下にボスマネジメントをする。部下に身体的・精神的苦痛を与えるボスマネジメントは、2019年5月に成立したパワハラ防止法で「パワハラに当たる行為」と定義された3条件に該当する可能性がある。

ボスマネジメントの特徴

※職場における「パワハラに当たる行為」の定義
①優越的な関係を背景とした
②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により
③就業環境を害すること(身体的もしくは精神的な苦痛を与えること)
(出典:厚生労働省「パワーハラスメントの定義について」)

日本では上司と部下に限らず、親子、教師と生徒など、日常生活の中で長年ボスマネジメントが繰り返されてきた。

青木さんは「立場を使うと物を言いやすんですよね。でも、嫌なことを無理やり押し付けても部下のやる気は出ません。一時的に行動が変わっても、効果は持続せず部下は言われたことだけを実行するようになります。ボスマネジメントは最終的に人間関係を破壊してしまうのです」と力を込める。

アチーブメントHRソリューションズ代表取締役社長の青木仁志さん②

「物言わぬ上司」によって組織の成長が鈍化する

最近はパワハラの防止が国やマスコミで叫ばれ、パワハラ行為が批判されるようになった。

パワハラ防止研修などを受けた上司は、パワハラに当たる行動を知り自分のマネジメントスタイルのリスクに気付く。厳しく指導しない、個人的なことを聞かないなどの禁止事項を学んだ上司は「パワハラにならないように部下に何も言わないでおこう」と考え、「物言わぬ上司」になってしまう

青木さんは「物言わぬ上司が生まれるとさまざまな弊害が起こります」と指摘する。

まず上司自身。指導力の低下によりチームの目標達成が難しくなると、上司の責任が果たせず権威が失われる。当然評価もされないだろう。

部下は成長に必要な指導をもらえず、成長が鈍化する。仕事の進め方に対するフィードバックがもらえず余計な仕事をしたり、防げたはずの大きなミスを起こしたりするかもしれない。目標達成もできず昇進昇格が遅れ、最悪の場合は離職もありえる。

会社全体への影響もある。青木さんは「上司が部下を育成する慣習が失われると、組織の成長が鈍化し会社の競争力が弱まります。待っているのは業績悪化です」と危険性を説明する。

マネジメントのコツは「人間関係」「部下が行動を選択できるようにする」

ではパワハラのリスクなく、上司が部下を育成するにはどんなスキルが必要なのか。キーワードとなるのが「リードマネジメント(内発的動機づけ)」だ。

リードマネジメントの特徴

リードマネジメントは、人の行動を脳のメカニズムから説明する「選択理論心理学」をベースとする。「人は常にその時の最善の行動を選択して行動している」とし、上司は部下との良好な人間関係を土台に、部下が最適な行動を自分で選択できるようリード、支援する。これが「リードマネジメント」だ。

では、具体的な会話例で2つのマネジメントの違いを見てみよう。

【ケース:月の目標に届いていないにもかかわらず、「達成しよう」という姿勢が見えない部下に対して】

ボスマネジメントの会話例

リードマネジメントの特徴

リードマネジメントでは傾聴や支援を通じて相手の内発的動機づけを促し、行動を主体的に選択できるようにする。上司は部下にとって「自分が望むことを支援してくれる存在」になり、パワハラは生まれず部下の成長も見込める。

「リードマネジメントができれば互いに正直になり、ボスマネジメントでは言えなかった本音や課題、悩みが出てきます。部下は主体的に仕事ができ、仕事を楽しめるようになります」(青木さん)

とある中小企業では、ボスマネジメントの影響で新入社員の入社3年間の離職率が4割を越えていたが、リードマネジメントが浸透してからは1割近くまで減少。社内に「新入社員の成長は社員全員の責任」という考え方が定着し、新入社員の成長スピードも上がったそうだ。

アチーブメントHRソリューションズ代表取締役社長の青木仁志さん

パワハラ防止だけで終わらず、部下の成長を促す育成スキルを身に付ける

青木さんは「部下を無理にコントロールしようとすればするほど、コントロールできなくなります。熱心にボスマネジメントすることがいかに効果的でないか、まず人事が理解してほしい」と語る。

「パワハラのない組織にする」「パワハラを根絶する」をゴールにするのは危険だ。大切なのはパワハラ防止だけで終わらず、部下の育成ができるマネジメント層をつくること。ボスマネジメントの非効率さに気付いても、パワハラを恐れて「物言わぬ上司」になっては何も改善されない。

その先の「リードマネジメント」までたどり着き、上司が部下の育成と成長を促すスキルを身に付けることが、本当のゴールになる。

青木さんは「良い組織とは『パワハラのない組織』ではなく、『部下の指導が行われ、かつパワハラのない組織』と認識を改めて、施策を考えることが大切です。パワハラ防止とマネジメント力向上を見込める本質的、中長期的な方法として、リードマネジメントを実践してみてください」と話した。

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企業情報

アチーブメントHRソリューションズ株式会社
・設立:2017年11月(アチーブメント株式会社の事業部から子会社化)
・事業内容:人材教育支援事業、管理職・リーダー・中堅社員研修、内定者即戦力化研修、新入社員研修など
・社員数:24人(2019年8月時点)
・本社所在地:東京都港区三田2-10-6 三田レオマビル3F

【編集部より】
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