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コラム

失業経験あり人事コンサルによる直球コラム


社員が逮捕されたら即解雇? 人事担当者が対応すべきこと

2016.05.23

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目次
  1. 社員が逮捕されて会社として処分する前にすべきこと
  2. 本人が逮捕事実について否認しているとき
  3. 本人が逮捕事実について認めているとき
  4. 社業に関係して逮捕されたとき

社員が逮捕されて会社として処分する前にすべきこと

社員が警察に逮捕されたので即刻解雇したい…との事例が増えています。しかしいくら社員が逮捕されたからといって、簡単に解雇することはできません。なぜなら解雇には、客観的に合理的理由があり、社会通念上相当であると認められる場合のみできるからです。

「ええ?逮捕されたんだから、合理的理由があるし、社会通念上も認められるじゃないか」と考える方も多いと思います。しかし日本の法律では量刑が決定するまで、「推定無罪の原則」が働きます。つまり単に逮捕されても「有罪」が確定するまでは、推定無罪である人間を会社は処罰できないことになります。しかし社員が逮捕されたという事実は社会的に大きな信用失墜になる、ということは間違いありません。

そこで大切なのが、「逮捕前に規定(就業規則)を整備しておくこと」です。社員が逮捕されたとき会社はこのような対応をとります、とあらかじめ規定しておくことで、急に発生しがちな社員逮捕という事態に迅速に対応することができます。

ではどのような規定を用意しておけばよいのでしょうか。具体的には、推定無罪の原則を尊重して、社員が逮捕・起訴されたときは「休職」扱いとする。有罪が確定したときは「解雇・依願退職」とする、と規定しておけば良いでしょう。規定せずに処分を強硬に実行すると、「根拠無き処分」をされたとあとから問題になることも多々あります。

また「不起訴」だったらどうするのか、「執行猶予」だったらどうするのか、「懲役」「禁固」「罰金」「科料」それぞれの刑の場合、会社としての処罰はどのようになるのか。などを細かく規定して、会社の姿勢を「規定」という形で従業員に示すべきでしょう。

さて次は、以下の3つのパターンについて、考察を深めていきましょう。すなわち、

・本人が逮捕事実について否認しているとき
・本人が逮捕事実について認めているとき
・社業に関係して逮捕されたとき

です。

本人が逮捕事実について否認しているとき

逮捕されたが、本人が逮捕事実について争う姿勢を示しているとき、会社は慎重に対応しなければなりません。推定無罪の原則から言って、簡単に処罰を本人に与えることができないので、休職扱いとする手続を取っておくと良いでしょう。なかには弁護士費用を立替える会社もありますが、本人を支援するか、それとも中立的立場をとるかは会社の判断によります。

また「逮捕」は事実であり、会社もなぜそのような人物を雇用していたのかとの道義的責任をとるように社会から求められることもありますので、必要があれば、取引先等に逮捕事実と本人が否認していることなどをしっかり説明する必要があるでしょう。そして本人には、会社はあなた(社員)の味方ではあるが、規定を曲げてまで支援はしないという姿勢を保つことが大切です。

本人が逮捕事実について認めているとき

次は本人が逮捕事実について認めているときです。この場合でも「推定無罪の原則」は働きますので、逮捕=会社処罰とすることはできません。しかしながら、すでに罪状について認めている人物を刑が確定するまで、休職扱いにしておくのも不合理といえます。そこで必要なことは、弁護士に相談して、予想される量刑が(会社の規定と照らし合わせて)重い場合は「諭旨解雇」、軽い場合は復帰後「降格」・「減給」「厳重注意」などの処分を行うことを、逮捕された本人に通告しておくべきでしょう。とくに諭旨解雇する場合は、本人に刑が決定したのちは「懲戒解雇」とすることを伝え、今退職を願い出れば自主退職扱いにするとするのが一般的です。

しかし罪状が特に重いときで、本人が認めているときは、諭旨解雇を認めず懲戒解雇を選択することもでき、会社として社員に処分をしっかりとしたと世間に対してメッセージを送る意味も生じます。そのあたりは会社判断です。しかし、逮捕→懲戒解雇とした経緯については、取締役会や懲罰委員会等で議論をしっかりとすべきでしょう。

社業に関係して逮捕されたとき

会社の業務に関係して逮捕された場合、会社も連帯的な責任を負ったり被害者になることがあります。すなわち横領であったり、会社の名前を利用して犯罪を犯したり、会社の業務で不正を犯し、それが犯罪行為であった場合などです。その場合は、取引先からは社員本人の処分を要求されるケースもありますので、特に慎重な対応が必要です。

下手に本人を支援すると、会社が庇っているとみられるケースもありますので、(1)事実関係をしっかり調査し、本人が行った「不正行為」に対する会社としての処罰、そして(2)「逮捕されたこと」に対しての処罰を重ねて行わなければなりません。同一の行為に対して、処分を別々に行うことはあまり得策とはいえませんので、この(1)(2)を合わせて、一本の処分とすべきでしょう。

また会社の名前を利用しての不正行為の場合は、本人が逮捕→釈放後に会社の名前を利用してまた不正行為を行うことも考えられますので、取引先等に処分を伝え、すでに会社を解雇されたということも伝えることを視野に入れる必要があります。会社も処分(法的・社会的)を受ける場合は、記者会見等を開き謝罪することも必要になるかもしれません。

いかがでしょうか。社員一人の行為が会社全体の存亡に関わることも想定されるということも説明しましたが、まずは規定の整備からはじめるのが肝要です。まさかうちの社員が逮捕されるような行為は行わないだろうと高をくくらず、万全の体制で会社運営を行いたいものです。

執筆者紹介

田中 顕(たなか・けん)(人事コンサルタント) 大学を卒業後、医療系人材派遣会社・広告代理店で人事を担当したのち、密着型人事コンサルティング団体「人事総合研究所」を設立。代表兼主任研究員として、労務相談受付・課題解決に取り組む。得意分野は採用・法務・労務・人事全般の問題解決等、多岐にわたる。

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