Loco Partners 長期インターンから採用につなげる3つの秘策とは?
月100人応募、毎年複数人の新卒採用!長期インターン成功企業の全貌
2019.08.26
今や9割以上の企業がインターンシップ(以下、インターン)を実施している(就職みらい研究所「就職白書2019」より)。中でも3カ月~半年以上仕事を体験させる「長期インターン」は、会社理解や自己成長が期待できるとして学生から注目されつつある。
企業は優秀な学生とできるだけ早期に接触し、学生の特性を理解した上でそのまま採用へ……と美しいゴールを決めたいはず。
今回は長期インターンの成功企業として知られるLoco Partners(東京・港)に取材。「月に最大100人の応募、毎年2~5人の学生が新卒入社」する仕組みができるまでの苦労やインターンの極意を教えてもらった。【取材:2019年7月23日 @人事編集部 大西里奈】
インターン生第1号は今や上海子会社で社長に
Loco Partnersはホテル・旅館の宿泊予約サービス「Relux」を展開する企業。2011年に篠塚孝哉社長が一人で立ち上げたが、起業の半年後には、社長の知人のつながりで知り合った男子大学生がインターン生として入社。彼は社員と同等に会社の成長を支え、今では上海の子会社の社長に就任している。
今の「Loco Partnersのインターン文化」には、社長が起業直後から学生を「2人目のメンバー」として迎え成長してきた背景があった。
その後もインターン生を随時受け入れ、現在は大学2~4年の31人が勤務。マーケティングや宿泊施設への営業、オウンドメディアを運営する編集部、グローバル事業、人事や広報などの管理部門まで、ほぼ全ての部署に1人以上の学生が配属されている。
学生に1億円規模の事業を任せる
Loco Partners流インターンの最大の特徴は「裁量を与えて仕事を任せきる」こと。昨年度は、年間1億円規模のマーケティング予算がかかるプロジェクトの責任者や、海外の有名企業との連携事業もインターン生が担当した。
組織デザイン部で採用責任者を務める岡田友宏さんは「任せ方の設計も大事。最初は小さな仕事から始めて、本人のスキルアップに合わせて大きな仕事を任せていきます」と説明する。
例えば編集部の配属になると、SNS投稿に始まり、宿の紹介記事の作成を経験。会社全体に関わる事業にも加わり、新しく改訂した企業MissoinやVisionを外部に発信するキャッチコピーづくりを担当する。
岡田さんは「学生の革新的なアイデアが社員に刺激を与えている」と自信を持って語る。
インターン生は、宿の予約客全員にお礼の手紙を送る取り組み(現在は休止中)を発案したり、YouTubeでおすすめの宿や旅行プランを紹介する動画を作って再生回数を上げたりと、独自の視点で活躍してきた。
岡田さんは「学生にはこの仕事はできない、スキルがないと思って業務を切り出せない会社もあるかもしれませんが、彼らは想像以上にできます。インターンだからといって変な忖度もしないんです」と言い切る。Loco Partnersは学生の中でも「成長できるインターン」として認知度を上げ、月最大100人の応募を受けることもあった。
インターン生は、毎月100人以上が参加する事業報告会後の懇親会にも携わる。懇親会に関わるヒト・モノ・カネの計画や運営は、全てインターン生の仕事だ。社員同然に会社全体の仕事に関わってもらうことで、会社のカルチャーも自然に伝わり会社理解につながる。
Loco Partners流・長期インターンの特徴
①とにかく仕事を任せる。社員以上のアイデアが生まれることも
②仕事の任せ方の設計も大事。小さな仕事から大きな仕事へとシフトチェンジ
③社内イベントの計画や運営を任せ、会社のカルチャーやありのままの姿を伝える
受け入れ体制が属人的で、学生に次々と仕事を任せてしまう時代もあった
今では学生からの口コミ人気を集め、テレビや雑誌などメディアからも取材を受けるLoco Partnersだが、最初から万全な体制が整っていたわけではない。当初はインターンの受け入れフローは特に決まっておらず属人的で、学生に多様な仕事を次々と任せていたこともあった。
3年前、社内メンバーが増えてきたタイミングでインターンの受け入れ体制の見直しを開始。学生の期待値ややりたいこと(Will)に傾聴し、今できること(Can)、会社としてやるべきこと(Must)を見ながら仕事を任せるようになった。
配属先の上長は毎月1回インターン生と1on1を実施。各学生のメンターも最初の2カ月は毎月、ランチなどを通じて交流し、彼らのWillや業務内外の相談を聞く。学生のやりたいことに応じてインターン期間中に部署を異動することも可能だ。
「会社に対する期待値の濃度は学生一人ひとりによって違います。その濃度に合わせながら、Canのハードルは下げずに仕事してもらいます」(岡田さん)
採用につながる理由は「学生への傾聴」と「成長を実感できる環境整備」
2015年に最初のインターン生が新卒入社して以来、毎年2~3人がインターンから新卒入社している。2019年卒は過去最高5人。新入社員全9人のうち半数以上をインターン生が占めたことになる。
Loco Partnersのインターンは「採用直結」と銘打っているわけではない。あくまでも社員と同じ「メンバー」として学生を受け入れ、社員同様に戦力となってもらう。
それでもLoco Partnersのインターンが「採用直結」となる理由は、「学生への傾聴」と「成長を実感できる環境整備」ができているからだ。
インターン生から2019年4月に新卒入社した好美日奈子さんは「Loco Partnersのインターンでの1年半が一番、人生の中で挫折経験が多かった」と打ち明ける。
インターンではマーケティングやインターンの採用、中国系グローバル企業との連携事業に関わった。業務を通じて何度も失敗もしたが、「『できる』とは到底思えなかったことが、気付いたら当たり前にできるようになっていた」と振り返る。自分が成長できる場所として、大学卒業後もLoco Partnersで働くことを決めた。
岡田さんは「学生はスキルが完全なわけではなく、時には大きなミスだってする。それでも、なんとかできるように社員がサポートする」と語る。
インターンから新卒入社した学生は「会社理念、事業、社員の魅力に引かれた」と話すという。会社があらゆる業務を愚直に学生に任せ、彼らの成長を支える姿が学生の魅力づけとなり、採用ブランディングになっているようだ。
優秀な学生と早期に出会ってグリップできる
学生の「成長」を感じさせる秘訣が、2018年から運用するインターン生向けの人事評価制度だ。実はこの制度を作ったのもインターン生の中のリーダーだった。
もちろん人事部の担当者がサポートしたが、リーダーが中心となって約2カ月のスピードで制度を設計。「学生自身にオーナーシップを感じてもらいたかったんです。こちらから『指示』はせず、『こういう問題が起きたらどうする?』と声を掛けて能動的な行動を促しました」(岡田さん)
評価制度は会社のバリューの実現性をみる定性評価、業務遂行能力をみる定量評価の2つで構成。等級制度も整え、評価が上がれば賃金も上がり、成長を感じられる仕組みになっている。
長期インターンを採用につなげるための極意
①学生のやりたいことに耳を傾ける
②学生に業務を任せて能動的に行動してもらい、もし失敗したら全力でサポートする。成長を実感できる環境をつくる
③「スキルが上がれば賃金が上がる」人事評価制度を整える
Loco Partners流の長期インターンを実現するには、学生を支える社員や会社側の体力が必要だ。インターン生の選考も、面接2回、インターンへの思いを語ってもらう課題提出など、本気度の高い優秀な学生と出会う仕組みをつくっている。
もし「新卒採用につなげる」というゴールだけを考えるならば、学生対応にかける工数は負担にもなりえるため、効率的な手法ではないかもしれない。
それでも、学生側は「自己成長を感じられる職場体験」を求めてインターン先を探しているのも事実で、その期待に応えるLoco Partnersのインターンは確実に企業ブランディングにつながっている。
岡田さんは「優秀な学生と早期に出会い、長期的にグリップしたい会社には有効だと思います。まずは彼らの思いに傾聴し、恐れずに業務を愚直に任せてみてください」と語った。
【編集部より】
長期インターンの設計や運営に役立つ記事はこちら
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