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特集

「令和時代に必須! ハラスメント対策最前線」


吉本社長発言はアウト!? パワハラ防止法を佐々木亮弁護士が徹底解説(上)

2019.08.05

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この夏、吉本興業社長の「パワハラ発言」が大批判を浴びている。2019年にハラスメント防止法が成立し、企業にはパワハラを防ぐための対策が新たに義務付けられた。経営者から「お前ら全員クビにする力がある」発言が出ないようにするために、企業の人事は今後どんな対策をとる必要があるのか。具体的にはこれまでと何が変わるのか、パワハラと認定される行動は何か。数々のパワハラ訴訟に携わってきた佐々木亮弁護士に、法律の詳細解説と企業が押さえておかなければならないポイントを聞いた。【2019年6月27日取材:@人事編集部・長谷川久美】

【特集】「令和時代に必須! ハラスメント対策最前線」(特集記事一覧)

佐々木亮(ささき・りょう)

弁護士。日本労働弁護団常任幹事。労働事件・民事事件を中心に扱い、ハラスメントに関する事件を多く担当。2013年に、長時間労働やパワハラなどの労働状況を支援するブラック企業被害対策弁護団を結成、代表を務める。

目次
  1. パワハラ防止法について知る!そもそもセクハラとパワハラの違いは?
  2. 解説:①「パワハラに当たる行為」の3つの条件
  3. 解説:②相談した・相談を受けた労働者の不利益取扱いは禁止
  4. 解説:③パワハラ防止研修の実施は必須に
  5. 解説:④経営者もパワハラについて学び防止する義務がある
  6. 解説:⑤個別労使紛争で重い「勧告」の処分が導入、対応怠れば炎上リスクも増加

パワハラ防止法について知る!そもそもセクハラとパワハラの違いは?

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――成立した「ハラスメント防止法」とはどんな法律ですか?

「ハラスメント防止法」というのは今回、女性活躍推進法などを含めた5本の法律を一括で改正したものの総称です。この中でパワハラについて新たに定めたのは「労働施策総合推進法」という法律。「パワーハラスメントとは何か」と初めて定義がされ、パワハラを防止するための対策が企業や国に義務付けられました。「労働施策総合推進法」は改正後、「パワハラ防止法」とも呼ばれています。

――パワハラはすでに深刻な社会問題ですが、これまでなぜ法律の定めがなかったのですか?

パワハラより以前に、セクハラ(セクシャルハラスメント)やマタハラ(マタニティハラスメント)は防止義務が法律で定められていました。

セクハラとパワハラだったら、セクハラのほうが圧倒的に「アウト」と判断しやすいです。そもそも、会社で性的な言動をする必要はないのですから、業務上必要な行為かセクハラ行為かどうかは、比較的簡単に判断が可能でした。

一方パワハラは長らく「業務上必要な叱責とパワハラとの区別がしづらい」という理由で法律上の規制や定義が進んでいませんでした。法律よりも裁判での「この行為・この発言がパワハラに当たる」という事例ごとの認定が先行してきたという背景があります。

解説:①「パワハラに当たる行為」の3つの条件

今回改めて「パワハラに当たる行為」と法律で定義されたのは

①「職場において行われる」
②「優越的な関係を背景とした言動」
③「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」

の3つの条件を満たした行為です。

このうち、「優越的な関係を背景とした言動」は必ずしも上司と部下の間に限定された言動ではありません。同僚の場合であっても、リーダー格の社員・成績が良い社員とそうではない一般社員など、業務上の力関係が認められる場合、ただのけんかではなく、「パワハラである」と認められるケースも十分にあります。

パワハラ防止について企業が対応しなければならない義務の詳細は2019年中に厚生労働省が指針として公表することになっている。具体的には「相談窓口の設置義務」や「企業名の公表」などの義務付けが予想されます。

解説:②相談した・相談を受けた労働者の不利益取扱いは禁止

――現段階で、企業が行わなければならないと分かっていることはなんでしょうか?

まずは、「相談等をした労働者や相談対応をした者に対する不利益取り扱い(解雇、降格など)の禁止」が上げられます。

先日、龍角散で社長のセクハラを問題視した元部長が解雇されるという事件が話題になりました。全容はまだ分かってはいませんが、この件はセクハラ被害者から相談者を受け内部調査した社員に、企業の側が報復を行おうとしたものだと考えられます。

参照:「セクハラ申告巡り解雇は無効」龍角散の元部長が提訴

新たに明記された義務では、龍角散で問題となった「ハラスメントの相談を理由にした不当な解雇・降格」は認められないと企業側に明言した内容となっています。

解説:③パワハラ防止研修の実施は必須に

――今後、企業ではパワハラ防止の研修などの教育も実施しなければなりませんか?

研修については、「パワハラに関する研修の実施やその他必要な配慮をすることの努力義務」が新たに定められました。

法律施行後でも、「研修を行っていない企業は労働局が即刻立ち入り」、ということにはならないでしょう。しかし、パワハラが訴訟などに発展した際に社内でパワハラ防止の研修を行っていなかったことが判明すれば、企業側は「義務を怠った」とみなされ、より法的責任が認められやすくなります。

★ポイント
①パワハラを受けて相談をした労働者や、その相談対応に協力した労働者に対して企業は解雇や降格など不利益なことをしてはならない。

②パワハラを防止するために、企業は社員にパワハラ研修などの教育を実施しなければならない。

解説:④経営者もパワハラについて学び防止する義務がある

――パワハラについて配慮・教育を担うのは人事や管理職ですか?

今回の法改正で「事業主(経営者)も優越的言動問題に対する関心と理解を深め配慮する努力義務」も定められました。

つまり「従業員や管理職だけでなく、経営者自身もパワハラを行わないよう学び、努力しなさい」という意味。「経営者だからといってパワハラが社会的に許されるわけではない」と法文に明記されたわけですが「何を当たり前のことを言っているんだよ」と、思う人もいるかもしれません。

それでも龍角散の事例のように、経営者自身がハラスメント加害者となっている職場は表に出ていないだけで数多く存在しています。わざわざ法律に定めたのは、そうした企業の経営者に対する国からのメッセージでしょう。

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                  経営者も無関係ではない?

特に、ワンマン経営になりがちな中小企業では社長自身がパワハラを行い、誰も反抗できないといったケースも珍しくありません。職場からパワハラをなくすために、企業の人事担当者や管理職は社員だけでなく経営者にもパワハラについて学ぶよう働きかける必要があります。

★ポイント
経営者、社員問わず、全社員に対しパワハラについての知識を学び、パワハラが起きないよう配慮する義務が定められた。

これらの内容はあくまで「企業はパワハラを発生させない措置をとりなさい」という「措置義務」といわれるもので、パワハラそれ自体に対する罰則の規定は今回の法改正では見送られました。しかし、社員から「研修を行っていない」「パワハラ相談をしたら降格された」などの通報が労働局にされれば、すぐに行政指導の対象となります。

罰則規定がないからと言って社内で何も対策をしないでいいということにはならないのです。パワハラを苦に社員が自死した場合、労災が認められれば企業は多額の損害賠償を支払うことになります。パワハラ対策に消極的でいては会社のためにも社員のためにもならないのは明らかです。

解説:⑤個別労使紛争で重い「勧告」の処分が導入、対応怠れば炎上リスクも増加。

――パワハラ防止の努力義務の他にも何か変更点はありますか?

企業にとっては努力義務の他にも重大な変更点があります。

今回の法改正で、パワハラをめぐる労働者個人と使用者との間の紛争である個別労使紛争で「調停」が導入されました。また、行政指導としても、これまでの「助言・指導」だけでなく「勧告」もできるようになりました。

★個別労使紛争制度
解雇・労働条件の引き下げ・ハラスメント・採用取り消しなど、個々の労働者・求職者と事業主の間に生じる紛争を未然に防止したり、早期の自主的解決を促進する目的で設けられた制度。都道府県労働局長による助言・指導、紛争調整委員会によるあっせんなどの解決援助制度がある。あっせんでは、弁護士等が代理人になる場合もある。

「勧告」というのは行政指導の中でも重い措置です。企業側に勧告が行われたとなれば、パワハラの被害者や被害者を支援する労働組合は「パワハラの事実が行政に認められた」と世間に向け大々的にアピールをする可能性もあるでしょう。

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           パワハラに対する社会の目は厳しく、炎上に発展することも

SNSでの炎上が株価急落などに直結する今の時代、個別労使紛争の結果は決して無視できるものではありません。

昨年起こされた個別労使紛争のなかでもパワハラを扱ったものはダントツに多く、年間1800件以上にものぼっています。

★ポイント
個別労使紛争に発展した場合、これまでより重い「勧告」が企業に下されることも。
パワハラ行為が世間に発覚した際の炎上リスクがこれまで以上に強まる

労働者が個別労使紛争制度を使ってパワハラの改善を求めやすくなったいま、企業がパワハラを防ぐ努力を怠ったままだと、これまで以上に大きな炎上リスクを抱えることになるでしょう。

パワハラと指導の違いとは? 佐々木亮弁護士が徹底解説(中)に続く

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