これからの「採用」「組織」のあり方を考えるイベントレポート
メルカリ・ウォンテッドリー流! 組織エンゲージメントの高め方
2019.07.11
企業理念への共感を基準にした「共感採用」を展開するウォンテッドリー(東京・港)と、OKRをはじめ特色ある人事制度を導入するメルカリ(東京・港)。2つの成長企業の人事が6月20日、三井不動産が展開するシェアオフィス「ワークスタイリング八重洲」にて、採用や組織のエンゲージメントの高め方をテーマにしたイベント「ウォンテッドリーとメルカリが語る、これからの『採用』『組織』のあり方」に登壇し自社の実践を語った。【2019年6月20日取材:@人事編集部】
登壇者プロフィール
小池 弾(こいけだん)
大手SIer、HRスタートアップを経て、2018年1月にウォンテッドリーのビジネス採用担当に。現在は、ビジネスサイドのHR責任者として、組織の採用・教育・文化醸成などに関わりながら、リクルートメント・マーケティングに関する啓蒙を行っている。
矢野 駿(やのしゅん)
大学卒業後エンジニアを経て人事担当に。アマゾンや日産自動車などの国内外の大手企業での人事を経験後、2018年7月にメルカリへ。中途採用チームやオンボーディングチームのマネジメント、HRBP(HR Business Partner)チームの立ち上げを担当し、現在はHRBPのマネジャーとして、幅広い人事領域を担当。
【ウォンテッドリー】エンゲージメントのカギは「企業における社員の成功を定義すること」
社内エンゲージメントとは、企業と社員の結び付きを強めることや、社員と企業が互いに愛着を持っている状態のことを指す。社内エンゲージメントが高い企業は離職率が低く、社員のモチベーションも保たれている。
近年のエンゲージメントの変化について、小池さんはこう説明する。
「従来の社内エンゲージメントのモデルは一社の中で社員のキャリアを高めることだった。日本は大量生産を原則とした製造業を中心に成長を遂げてきたため、人を大量に雇用し長期的に育てるという点に長らく組織開発の視点が置かれていた。しかし、現在はそのモデルも移り変わっている」(小池さん)
そのうえで「エンゲージメントを高めるためには、企業における社員の成功を定義すること」と指摘した。
「会社のカルチャーやビジョンに共感した人を採用する」というウォンテッドリーの「共感採用」も、最重要の目標である「社員の成功」を実現させる方法の一つだという。
エンゲージメントを高めるため、自社の「社員の成功」の定義を言語化し、成功させるための制度設計やインナーブランディングなどを浸透させる試みを続ける。その際には、「制度化を目的としない働き方改革の進め方」も重要だと話す。
「フレックス制やリモートワークなど、働き方改革のトレンドをとりあえず取り入れてしまうことが多いが、トレンドの制度が必ずしも企業が求める社員の成功につながるわけではない。共感採用の面から考えた場合、採用という入り口で企業のビジョンやカルチャーにマッチしているか、しっかり精査を行う。彼らが組織に共感している要素を維持するための制度設計を意識することが大切だ」(小池さん)
【メルカリ】企業理念はあらゆる場面に浸透、人事評価も企業理念に基づく
「企業理念」を重視することで知られるメルカリ。「人事評価や経営などあらゆる場で企業理念(バリュー)を意識している」と矢野さんは話す。
メルカリでは、会社のミッションを達成するために「Go Bold:大胆にやろう。All for One:全ては成功のために。Be Professional:プロフェッショナルであれ」という3つのバリューを設定している。どんな行動がGo Boldか、という厳密な縛りはない。
メルカリでは現在、メンバーの直属の評価者だけではなく二次評価を行うマネジャーたちが「キャリブレーション(調整)評価」という、評価会議を開く制度を導入している。全メンバー一人ひとりに対して正しい評価ができているか、調整を行うためだ。
そこでもメンバーのどこがGo BoldでAll for Oneだったか、チームごとにバリューに沿った評価のすり合わせをする。例えば、「第一営業部メンバーはGo Boldだった」と評価があれば、次は営業部全体、次はマーケティング、エンジニアも含め、会社全体でバリューが浸透しているかを測る。
「これまで経験した会社のなかで、メルカリは特に企業理念を重視する企業だと感じている。企業理念の浸透や、ブランドをどう作っていくのか、ブランドのコンセプトをどう定義して散りばめていくかなど、制度設計までを考えている」(矢野さん)
ウォンテッドリーは、評価などの人事システムを社員の管理のためだけではなく、文化浸透の一環として捉えているという。
「人事システムは社員が必ず関わるもの。うちの会社はこういう文化だから、こういう意図があって自社の人事システムがあるんだと、社員に対して明確に打ち出している」(小池さん)
メルカリの考える人材育成目的は「個人の成長」、ウォンテッドリーは「チームが最大限の力を発揮すること」
矢野さんは日産自動車の人事担当だった頃の経験を踏まえ、「伝統的製造業だと、終身雇用が前提だったこともあり、人を育てる文化環境があった。スタートアップやIT企業だと現状、人を育てる環境を持つ企業がそう多くない。でもそこに人事としてのチャンスがあるのではと考えている」と投げかけた。
「昔の大企業だと、花形社員は管理職になる前にさまざまな業務を経験し、人事もやるというパターンがあった。終身雇用が全て正しいわけではないが、そのような環境の中で実施されている人材育成の良いところもどこかで取り入れたいと思っている。ただスタートアップ企業では、より速いスピードでの育成が重要になる、人事が考えなければならないのはその点だ」(矢野さん)
一方小池さんは、メルカリの話を受け「ウォンテッドリーにとって重要なのは個人の成長に寄り添うというよりは、チーム全体のパフォーマンスを最大化させること」と語った。
「会社は社員のミッションを実現させるためにある。そのためこの会社においては、ビジョンを達成することに共感した社員が入るからこそ、チームとして最大の力を発揮するための制度設計を重要視している」
★メルカリ流人材育成
・社内に人を育つ/育てる環境をつくる
・社員をどれだけ成長させてあげられるかが人事の役割
★ウォンテッドリー流人材育成
・チームとしてのパフォーマンスを最大化させることを重視
・社員とチームの成功が会社にとってのミッションの実現につながる
トレンドに踊らされない!副業・リモートワークの捉え方
会場からは、「副業やリモートワークなど、企業として柔軟な働き方にどう対応すればいいか」「規則で縛りすぎてしまうと制度が使いづらくなる」という声が上がった。
メルカリは、現状ではリモートワークの推奨は行っていないという。
「会社に来てメルカリの文化を共有してもらうというのが基本の方針。もちろん、状況によってはリモートワークもできるようにはなっている」
副業は許可している。「確かに副業を認めることによる会社としてリスクは0ではないが、外部の知見など、副業を認めることから得られるものも大きい」と矢野さん。
「共感採用」を掲げているウォンテッドリーも同様の考え方を持っているとした上で、小池さんからは、副業を受け入れた状態の企業こそ、本質的なエンゲージメントの重要性に気付くこともある、という意見が出た。
「そもそも副業をしている人やできる人というのは、デザインやコーディングなど、一定のスキルがある。お金が稼げるから、という目的や視点だけをその企業で働くモチベーションとは思っていない。つまり、そんな人が給与などの条件以外の部分に共感をして定着している会社というのは魅力がある会社なのではないか」
ウォンテッドリー、メルカリの両社とも、組織のエンゲージメントを高めるための共通する答えがあるわけではない。働き方改革への対応、採用や人事制度構築など、「自社にとって最も大事な理念はなにか」を明確にすることが有効な施策をつくるカギとなるはずだ。
イベントデータ
・イベント名:ウォンテッドリーとメルカリが語る、これからの「採用」「組織」のあり方
・主催者:三井不動産株式会社 法人向けシェアオフィス「ワークスタイリング」
・日にち:2019年6月20日(木)
・場所:ワークスタイリング八重洲
【編集部より】
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