特集「新卒採用 戦国時代、来る。」第4弾
採用直結型インターンで、優秀な学生を獲得できるのか?
2019.07.03
2021年卒新卒採用のサマーインターンがいよいよ本格化する。就活ルールの撤廃で採用手法や採用時期が混とんとする中、新卒採用においてインターンが持つ役割は増すばかりだ。政府が採用直結型インターンの禁止を要請する方針という報道もある中、インターンはどうあるべきなのだろう。
@人事編集部では、就活を終えたばかりの2020年卒学生と2021年卒採用に向けて準備中の人事担当者に、インターンにまつわる本音を調査。十社十色の姿勢とともにインターンによる“採用格差”も見えてきた。【取材:2019年5月中旬~下旬】
【特集トップ】「新卒採用 戦国時代、来る。」~就活ルールなき21年卒採用。あなたの企業は勝ち組になれるか~
広い意味での「採用直結型」実施は約4割
2021年卒の新卒採用について企業の声を拾ったのは、5月29~31日に都内で開催された「第14回総務・人事・経理ワールド」。人事・総務担当者向けのサービスや商品が一堂に会する現場で、採用担当者や経営者に「採用直結型インターンを実施していますか?」を問いかけた。
ここでは、選考につなぐことを目的としたインターンはもちろん、結果的にインターンが選考・採用につながったケースも「採用直結型」として集計。「すでに実施」「今後やってみたい(興味がある)」「実施する予定はない」の中から1つ回答を選んでもらったところ、「すでに実施」が4割を超える結果になった。「今後やってみたい」も合わせると、約7割の企業が「採用につながるインターン」にメリットを感じていることが分かる。
「すでに実施」の企業では、
「インターンから入社した学生は優秀な印象があり、将来のリーダー候補になりそうだ」(人材支援)
「毎年インターンから採用している。例年は2月のインターンが事実上の採用だが、2021年卒採用は早めに動いて8月のインターンで内定を出すかもしれない」(IT企業)
「採用につなげられるのが理想的だが、実際にはインターン参加者に入社してもらえないことが多い」(不動産)
など、自社の希望する人材や優秀層にアプローチする目的で取り入れていることがうかがえた。 ただ、いまだにインターンの定義付けは企業によって違いがあり、就労型で学生の資質を「選考する」インターンもあれば、説明会型で母集団を増やして自社を「理解してもらう」インターンもあった。
インターンのメリットとリスク、捉え方はさまざま
採用直結型インターンについて「実施する予定はない」と答えた約3割の企業からは、
「インターンは採用目的にしない。会社の理解を深めるためであって採用のために行うものではないと思っている」(メーカー)
「採用直結にすると学生に採用をちらつかせるリスクがあるのですべきではない」(自動車製造)
など、インターンの目的としてマイナス面を強調する声も目立った。
そもそも、採用直結型に限らずインターン実施が過度な負担になる点を指摘する企業も多い。大企業の場合は就労型の実施は難しく、ノウハウがない中小企業がゼロから取り組むのも難易度が高いとされがちだ。トレンドに乗ってインターンを導入も実際は試行錯誤している企業も多いようだ。「必ずいい人材が採用できる保証もないのに、会社の負担があり過ぎる」(サービス会社)という経営者からの嘆きが印象的だった。
一方、「対・大企業」と戦う中小企業にとっては、「インターンこそチャンス」とする声も出てきている。「中小はまず学生に知ってもらわないといけない。体力がないと難しいが、目的を明確にしてインターンに取り組めば必ず結果が出る。中小こそ魂を込めてインターンを取り入れていくべきだ」(飲食業)と熱心に語る経営者の姿もあった。
「採用直結型、賛成」「大切な軸は社員の雰囲気」
次に、インターンに参加した2020年卒の学生に取材。インターンで会社のどこを見て、何を判断材料に「入りたい」と思うのか、本音を聞いた。
内定先:外資系消費財
メーカー内定が出た時期:2019年3月
内定数:5社
インターン参加企業:15社
ありのままの自分を見てもらえる採用直結型は賛成です
最初にインターンに参加したのは大学1年の4月です。もともと興味があった民泊の営業や運用代行などを行う長期の有給インターンで、2年半続けた経験から自分がどのような会社で働きたいか考えるきっかけになりました。
就活を始めた頃は、企業から必要な人材かどうかを一方的に判断されるものだと考えていましたが、インターンでの選考も経験して「学生にも会社を選ぶ権利がある」と次第に感じるようになりました。
長期的な視点で考えた時にやはり両者が納得した上で、「雇う」「雇われる」が行われることが重要だと思います。そういう風に感じるようになってからは、「ありのままの自分でいて、それを評価してくれる会社、人がいるか」を見るようになりました。その意味で、面接よりも本来の自分を見てもらえる、採用直結型のインターンは賛成です。
ココが良かった! インターン
・業種…人材支援事業
・時期…大学3年の8月
・期間…10日間
海外で課題解決を学ぶ、泊まり込み型インターン。人事メンターとは別に事業部メンターが付き、サポートが手厚かった
内定先:電子部品製造メーカー
メーカー内定が出た時期:2019年3月
内定数:2社
インターン参加企業:2社
実習で知った製品に興味が湧き、確実に志望度が上がりました
設計開発の職種を希望し、電子機器メーカー2社のインターンに参加した目的は、その職種での業務内容を知ること。テーマ名に「~の設計」という文言が入っているものを選びましたが、実習内容に差を感じました。
最初の会社では学びはあったものの、設計の体験というよりすでにある製品の図面のデータ整理を行っただけ。会社の建物が古く、全体的に暗い印象も残りました。
一方、内定した会社では製品の機構の分解と組み立てを体験し、非常に興味が湧くものでした。また、会社が品質保証を厳密にしている点も伝わってきました。オフィスも新しく、快適に働けそうだと思いました。
「さまざまな機構が組み合わさった製品を作りたい」「快適なオフィスで働きたい」という2つの考えを持つことができたのは、インターンに参加したからこそです。インターンの参加で確実に志望度が上がったと思います。
ココが良かった! インターン
・業種…内定先企業
・時期…修士1年の8月
・期間…3週間
実際の製品に触れ、機構の分解や組み立てを体験できたため、就職して仕事をするイメージをもつことができた
内定先:就活中(5月中旬現在)
インターン参加企業:6社
出会った社員さんの雰囲気で本選考に進むか決めることも
私がインターンに参加する理由は、「会社の雰囲気を知りたい」「求める人材像を知りたい」「インターンに来る学生がどんな人か見たい」の3つです。インターンを通じて良い雰囲気を感じ取ることができた企業は、本選考も受けたいと感じました。
広告会社やエンタメ会社、飲食業などさまざまな業種のインターンに参加しましたが、良い印象を持った内容は、①社員さんの優しそうな雰囲気を感じられる②学生と社員さんの距離が近く話しやすい、という2点が共通して言えると思います。グループワークに社員さんが混ざってくださった企業はイメージが上がりました。
反対に、普段仕事をしている方々の雰囲気から冷たい印象を受けたこともありました。慣れない環境で不安でいっぱいだったとき、微笑み返してくれたり会釈をしてくださる社員さんがいるとホッとした経験があります。
ココが良かった! インターン
・業種…飲食業
・時期…大学3年の11月
・期間…2日
リーダーシップについて考えるグループワークで、もっとも内容が心に響いた。その後の就活に生かすことができた
インターンのゴールをどこに定めるか
5社から内定をもらったいわゆる優秀層大学に通うAさんは、結果的にインターンで高評価した企業とは違う企業へ入社予定。大学院のBさんは、就労型インターンが決め手となって入社を決めた。ただ、現実的にはCさんのように「就活に生かすために」インターンに参加するというタイプがほとんどだろう。
学生にとってもインターンの位置付けがさまざまであるように、企業側もインターンのゴールを何に定めるかはそれぞれだ。
就職みらい研究所の発表によると、2018年度には96%の企業がインターンを実施し、2018、2019年(※6月時点)ともインターンに参加した学生は全体の約6割。2019年卒学生のデータでは、「インターンシップ参加企業に入社予定」は37.3%だった。
同研究所の増田全所長は「実際は、学生に会社を理解させることはできても、入社意欲を高めるといったような『理解』以上の目的は達成できていない。ただ、『自社の理解』を優先している社も多い」という。ゴールをどこに定めるか、模索しながら導入している企業も多いようだ。
同所長によると「インターンは質の時代」。インターン参加前に就職意欲があったのに、「印象が悪かった」「ただの説明会だった」といった理由で約3割の学生がインターン後に就職意欲が減ったというデータもあるそうだ。インターン導入によって“採用格差”が広がらないためにも、自社と学生のニーズを精査し、目的と中身をアップデートしていくことが「勝ち組」の条件になりそうだ。
【取材・編集:@人事編集部】
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