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特集「新卒採用 戦国時代、来る。」第2弾


人事の仕事は「スタイリング(整える)」から「デザイン(創造)」へ モザイクワーク・杉浦二郎氏

2019.06.19

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勝ち組になるのは通年 “入社”できる企業

いよいよ2021年卒から就活ルール廃止後初の採用が始まる。経団連は「通年採用の拡大」を発表したが、大手企業では当面、従来通りの新卒一括採用を続けると予想されている。

三幸製菓(新潟市)の人事責任者を務め、現在採用プランナーとして活躍するモザイクワーク代表取締役の杉浦二郎氏は、「買い手市場が続く大企業と異なり、厳しい採用状況の中小企業では危機感を持って『通年 “入社”ができる会社』に変わらなければ負け組になる」と指摘する。就活ルール廃止後の時代、「勝ち組」の採用を実現するために、人事は社内制度や採用方法をどう改善していけばいいのか? 具体策を聞いた。
【2019年5月7日取材】

【特集トップ】「新卒採用 戦国時代、来る。」~就活ルールなき21年卒採用。あなたの企業は勝ち組になれるか~

杉浦 二郎(すぎうら・じろう)

 株式会社モザイクワーク・代表取締役社長。2015年9月まで三幸製菓の人事責任者を務め、2016年4月より現職。株式会社モザイクワークを設立し、組織人事クリエイティブディレクターとしても活動中。「カフェテリア採用」「日本一短いES」等々を生み出し、TV、新聞、ビジネス誌等、多くの媒体に取り上げられる。イベントでの講演多数。また、地元新潟において、産学連携キャリアイベントを立ち上げるなど、「地方」をテーマにしたキャリア・就職支援にも取り組んでいる。

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目次
  1. 中小企業は「通年入社できる会社」に変わらないと勝てない
  2. 通年採用時代のインターンは、ミスマッチを減らす「就労型」
  3. ゼロベースで社内制度や採用のあり方を考えていけ

中小企業は「通年入社できる会社」に変わらないと勝てない

――就活ルール廃止後の採用はどうなりますか?
「就活ルール廃止」「通年採用」と世の中は騒がしいが、大手企業は買い手市場で、中小企業の採用は厳しいという状況は今後も当面変わらない。このワードだけに振り回されてもあまり意味はない。特に中小企業の人事や採用担当は市場のパワーゲームで終わらせていい話と思わない方が良いだろう。

そう簡単に通年“入社”が一般化するとは思わないが、そもそも、今まで3月31日までは学生、4月1日からは新社会人という一括ルールに無理があった。通年採用を拡大していくのなら、卒業後1年以内なら新卒など、「新卒」の定義を柔軟に変えて行く必要があるのではないか?
大企業の場合、今後も応募してくる学生の数に変化はない。通年採用制度は大企業になるほど整備するコストがかかる。大手は就活ルール廃止後もこれまでとさほど変わらないスケジュールで新卒採用を行うと予想できる。通年採用の拡大があろうがなかろうが、現状でいい人材が採れず苦戦している中小企業なら、「通年採用できるよう自社が変わっていくしかない」と迫られる。

その中で新卒を通年“入社”できるよう人事が危機感を持って改革していけるかどうか。これからの採用の「勝ち組」と「負け組」の明暗がここで分かれてくると思う。大企業に比べ、大人数の新卒を採用しない中小企業は通年入社の制度を導入しやすく、この状況は逆にチャンスでもある。採用力の強い中小企業がこの先は成長していく。採用を強化する意義が、今後ますます高まっていく。

ミスマッチを減らす「就労型」が通年採用時代のインターン

――通年採用の拡大でインターンの扱いはどうなると思いますか?
就労型の長期インターンは大企業では導入が難しい。なしくずし的に通年採用の時代が始まるこれからの時代なら、中小は大企業ができないインターシップの活用を採用の強みにしていくべきだ。現状、採用直結型インターンは望ましくないとされているが、望ましくないとするほうがおかしいと思っている。学生に不利益のないインターシップ制度を整備すれば互いにとってウィンウィンな制度になるはずだ。

学生の中には在学中から起業を考える意識の高い層もいれば、とりあえず周囲に合わせて就職活動をしているという層もいる。前者も後者も就労経験なしに4月1日からは同様にビジネスパーソンとして扱うのは、後者の学生にとって酷な部分もあると思っている。通年採用が拡大していけば一括採用型の就活のような「新卒アドバンテージ」は薄れていく。この前まで学生だったまっさらな新卒より、一度でも働くことの厳しさを知った人材の方が教育をしやすいと思う企業も出てくるだろう。この溝を埋めるものとして、インターンでビジネスを経験する意味がある。

通年採用を導入するなら、卒業後インターンを経験してみてから就職するなどインターンの柔軟な運用も進めていったほうが良い。インターンシップで企業・学生が双方を知り、有益な採用をしていくのが望ましい。長期インターンの受け入れは確かに手間もコストもかかるが、ミスマッチを減らせるため中小企業にとって最終的なリターンは大きいのではないか。

モザイクワーク代表取締役の杉浦二郎氏

「新しい制度作りに挑戦しようとする人事は批判を浴びるが、そういった人たちを応援していきたい」と話す杉浦氏

ゼロベースで社内制度や採用のあり方を考えていけ

――就活ルール廃止で、人事が担う仕事にも変化がありそうです
今後の人事に求められるのは、ゼロベースで既存の考え方に捉われない社内制度や採用制度を一から構築していける力。私が大事だと思うのは「どうやったら明日も行きたくなる会社にできるか」と考えられる視点だ。「連休明けに出社するのが憂鬱だ」という社員のつぶやきを当然のように聞き流しているようではいけない。「成長実感が得られる」「ここで働くことが楽しい」と思える場に会社を変えていく気概が必要だ。

これから日本もどんどん個の時代になっていく。会社で経験を積んでから、フリーランスとして自立することを視野に入れている学生も多い。そんな時代、「わざわざ会社で働いて組織人になる理由」も人事や採用担当の側が考えて意味付けしていかなければならない。従来の人事は社内の規則を作りフローを整理していくスタイリング(整える、綺麗にする)が中心だった。しかしこれからは自社の働き方や目指す方向をデザインしていく役割に変わっていくと考えている。

「一つの街をつくる」というふうに人事の仕事を考えてみてはどうか。住人を募集するだけで街を作り上げることはできない。環境や住まい、インフラ整備など、その街に住み続けたいと思えるような街作りをしなければ、街は豊かにならない。

社員がモチベーションを持って働き続ける魅力ある会社にしていくことまでが新時代の人材戦略ではないか。ゼロベースで既存の考え方に捉われず社内制度や採用を一から創造していくことがこれからの人事に期待される役割だ。【取材・編集:@人事編集部】

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