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ひとり人事座談会 組織改革編(前編)


社長の感情次第で提案がボツに……「ひとり人事」のぶっちゃけ座談会

2019.06.24

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採用、育成、評価、働き方改革、離職防止……。ほとんどの人事業務を1人でこなす人事担当者を「ひとり人事」と呼びます。主に100人以下の企業規模で多く、人事業務以外も兼任することも珍しくありません。

彼らも本当は、1人だからこその悩みや課題解決方法を、他社の人事担当者と共有したいはず。今回は都内で働く「ひとり人事」3人による座談会を開催。前編では社長との攻防や働き方改革の大変さについて、包み隠さず打ち明けてもらいました。【取材:2019年5月中旬】

【後編】人事は社長のお使いじゃない! 孤独と戦う「ひとり人事」座談会

目次
  1. 上司に業務を教えてもらえず、経験を積むしかない
  2. 社長の感情次第で提案がボツに
  3. 社内の人間の言うことは聞かないから、外部業者に研修を委託
  4. 働き方改革をしている側の仕事が増える

プロフィール

ひとり人事座談会の様子

忙しいのについ大量に相談を受けてしまう田中さん(仮名)(写真右)
・40代男性、人事歴13年。社員数100人弱の化粧品メーカーで人事、総務業務を担当
・モットー:お給料は我慢料。反省しても後悔しない
・休日の過ごし方:テニスの王子様に変身。さまざまなライブ会場に足を運び音楽三昧。

入社3年目で相談する上司がいない伊藤さん(仮名)(写真中央)
・20代女性、人事歴3年。社員数70人の飲食業界に新卒で入社。経理、総務、採用を担当
・モットー:視野を広く持つこと
・休日の過ごし方:理想は自然を見に行くことですが、現実は忙しくてなかなか……。

感情豊かな社長と日々戦う鈴木さん(仮名)(写真左)
・30代男性、人事歴5年。社員数60人の印刷業界で人事、総務、法務などを担当。
・モットー:従業員を守る! 会社・社長を守る! 法律を守る!
・休日の過ごし方:日向ぼっこをしながらの読書、散歩

上司に業務を教えてもらえず、経験を積むしかない

――ひとり人事ならではの困りごと、悩みはありますか?
伊藤さん(以下、敬称略):私の会社は70人規模なんですが、入社1年で部長が退職してしまい、直属の上司が役員なんです。私は新入社員で知識も十分ではないのに、役員も忙しくて業務を教えてもらうタイミングがない。その場で経験を積むしかなく、降ってくる仕事をとにかくバーっとこなすのがしんどいです。

田中さん(以下、敬称略):うちの会社は人事以外の畑から来た上司ばかりで、人事総務の仕事を知らないんですよ。上司に仕事を教えなきゃいけないし、聞きたいことは聞けないし、最終的には不安なまま自分で判断を下さないといけない。社内に相談できる相手がいないので、社会保険労務士や外部委託先、退職した先輩に聞くこともあります。

年に1回の人事評価の方法を変えたときは大変でした。従来の部長陣に加えて、課長も参加することになり、新しい動かし方が分からない。昔のフォルダーを引っ張り出して「合っているかわからないけどこうです」と通しちゃいました。(笑)

鈴木さん(以下、敬称略):うちも人事評価は年1回ですが、特にしっかりした評価制度もないので、社長と私だけで話し合って決めます。社長と距離が近いので大変なことも多いですが、逆に「うまくリードしていこう」と思っているんです。自分の提案や施策が社長に通らないこともありますが、別の方法を考えてできる範囲で実行できれば私としては勝ちかな、と。

社長の感情次第で提案がボツに

――うまくいった施策、だめだった施策を教えてください。
鈴木:元々パートさんのために認めていた社内ルールを、一部の正社員が悪用していたことが発覚して……。社長が私に「あいつが悪用してる」とぶつぶつ愚痴を言うので(笑)、正社員も許可制にする規定を作ると、急に社長が「やりすぎなんだよ、全部禁止にしろ」と怒り出して。

理不尽な上司にいらだつ部下やむなく就業規則にはそのルールを「禁止」と明記しましたが、案の定パートさんから不満が続出。最終的には「禁止とは書いたがパートさんだけ黙認する」という、つじつまの合わない就業規則になりました。

伊藤:せっかく制度を整えようとしたのに、結局グレーに……もったいないですね。

鈴木:一方で、在宅勤務制度はスムーズにできました。ある社員の事情を社長が理解してくれたので、急いで規定を作って取締役会にもねじ込み、すぐ制度化できました。基本的には全て社長の感情次第で、効率性はないです。(笑)

伊藤:うちは制度施策は通りやすいです。遠方に住む優秀な社員のために、交通費支給の上限を上げたことがあります。

ただ、新卒採用の復活は経営陣の意向に沿わず、だめでしたね。私の入社以降、新卒採用を止めているのですが、私はとにかく後輩が欲しかった。自分が教える立場になれば、必要な知識を上司が教えてくれると思ったんです。あまりに上司が教えてくれないのでこういう手段に出ました。(笑)

でも、経営陣の「新卒の受け入れ体制が整っていない」との判断で実現していません。今は上司に相談できるチャンスとして、半年に1回の人事査定を大事にしています。

社内の人間の言うことは聞かないから、外部業者に研修を委託

鈴木:うちは社長と私だけで人事査定して、そこで評価が決まってしまいます。社員本人の声が全く反映されない状況を変えるため、私が全社員と1対1で面談しました。人事査定そのものに対する不満はそこまで出ませんでしたが、会社の改善点や社員の希望がたくさん上がりました。

田中:うちの人事評価は、部長同士の調整が難しいです。一回の査定で評価を上げられる人数は決まっているのに、各部長が自分の部下の評価を上げようとねじ込んでくるんですよ。昨年は人事査定だけに、丸一日と半日を費やしました。

部門ごとに業務内容が異なり評価が難しいので、先日は評価者側の研修を開いて部門ごとに評価方法を理解してもらいました。研修は外部業者に依頼しましたね。社内の人間が作っても言うことを聞かないので。(笑)

働き方改革をしている側の仕事が増える

田中:日中は社員から総務関係の質問を受けることが多いので、残った自分の仕事は午後に、夜に、深夜に、とずれてしまうのもつらいです。

他にも、働き方改革や採用関係で新しい仕事が次々に増えて、自分の時間が全くなくなるのも大変。心の中では「うわぁ……また増えた」と思っても、周りには「頑張ります」としか言えないんですが。(笑)

残業する社員

働き方改革で業務を効率化すると、その分、総務に仕事が流れてくるんです。「全社で業務効率化して残業時間を減らそう」と掲げて全社の残業時間のグラフを作っていますが、管理部門の残業時間だけすごく増えています。(笑)例えば、ペーパーレスをすると複合機の変更や業者選定、マニュアル作り、社員向けの説明会の開催……という道程が待っている。どんどん時間が奪われていくんです。

鈴木:うちは社長が残業しない主義なので、元々働き方改革は比較的できているかなと。忙しかった時期は月100時間残業している社員が各部署に1人ずつくらいいましたが、今は全社的に残業していない方だと思います。私自身も残業時間は月10時間くらいなので。

伊藤:すごい!感動する!(笑)

鈴木:やるべきことは大体午前中に終わらせます。午後はリサーチ、イレギュラーな案件やトラブルに対応する時間にしています。これまでに複数回転職して人材サービスの営業や採用、法務などを経験してきたので、いざトラブルが起きても経験則で対応できると思います。

もちろん、私も皆さんと同じように上司がいない環境で育ち、自分で専門書を読んで乗り切ってきました。いつの間にか不安がなくなり「何でも乗り越えられる」と思えるようになったので、皆さんも絶対大丈夫です!(笑)

田中:何かうちの業務を委託してやってもらいたい。(笑)

鈴木:タスク管理のコツは、定例業務を含めて一日の全業務の時間を細かく見積もり、Googleカレンダーに設定してその時間通りに進めること。今は定時の午後6時半には帰れますし、定時後はセミナーに行くなど自分の勉強の時間に使います。

ひとり人事座談会の後編も公開中

前編ではひとり人事が誰にも相談できずもがく姿、さまざまな手法で会社を動かそうとする様子を紹介しました。後編では、離職や採用の悩み、多忙な業務を乗り切るための秘策を語り合います。

>>>座談会記事(後編)「人事は社長のお使いじゃない! 孤独と戦う『ひとり人事』座談会」

【取材・編集:@人事編集部】

【編集部より】
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