弁護士による企業がとるべき法的対策解説
景品表示法違反となる表現やトラブル回避の方法とは【弁護士が解説】
2019.05.23
弁護士を使いこなすことがトラブルを未然に防ぐ
企業法務は、雇用問題や債権回収、契約書関連、社内規定の整備など、総務・人事・経理だけの領域と思われがちですが、たとえば近年は広告やキャンペーンなどの販促施策への法務チェックがなかったことにより、景品表示法の措置を受けるトラブルが増えています。
販促案は営業部やマーケティング部の担当者主導で進められることも多く、話題性を重視して内容が決定されがちですが、景品表示法に抵触する販促施策を行ったためにキャンペーン中止を余儀なくされたり、課徴金が課されるなど行政処分を受けることもあり、企業の信頼性を大きく損なう事例が絶えません。
問題が起きてから弁護士に相談するのではなく、新たな事業活動を始める際に法務確認をしておくことが、トラブル回避・危機管理に繋がります。
「弁護士に相談すべきことは特にない」その認識、ホントに正しい?
日本弁護士連合会が国内企業15,000社を対象に行った調査をまとめた『第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査報告書』によると、「この10年の間に弁護士を利用したことがあるか」の問いに対し、半数以上の企業が「ない」と回答をしています。弁護士を利用したことがない理由としては、「特に弁護士に相談すべき事項がない」の回答が最も多く、86.3%にも上ります。しかし、本当に「弁護士に相談すべき事項」はないのでしょうか。
「閉店売り尽くしキャンペーン!」「豪華オマケ付き!」その販促キャンペーンが法に抵触する?
消費者庁が発表した『平成29年度における景品表示法の運用状況及び表示等の適正化への取組』によると、平成29年4月1日から平成30年3月31日までの景品表示法措置件数は前年度の2倍以上となりました。
景品表示法は、一般消費者の利益を保護することを目的とした法律です。具体的には、うそや大げさな表現で誤解させたり、過大な景品の提供で射幸心を煽るなどして、消費者の自主的・合理的な選択ができなくなってしまうようなケースを防止しています。
では、“うそや大げさな表現”には、何が該当するでしょうか。
品質や規格、ブランド銘柄、原産地、効果効能などを偽ったり、大げさに言うことが不当表示であることは、一般的にも知られています。しかし近年急増しているのは『有利誤認表示』と呼ばれる、価格や期間、数量、アフターサービスなどについて、「今買うとお得!」と誤認させることです。常にその価格で販売しているにも関わらず「閉店売り尽くし」と称したり、希少性を演出するため事実に反して「10個限定」と表示するなどがこれにあたります。
次に“過大な景品の提供”とは、何が該当するでしょうか。
景品には、ポイントを集めて応募したり抽選やクイズ等で獲得する賞品、商店街などの福引き、商品の“オマケ”などがあり、種別によって景品の最高額や限度額、開催期間などの上限が定められています。
こうした法的観点なく、「個数限定をうたって宣伝しよう!」「豪華なオマケで話題にしよう!」と気軽にキャンペーンを実施すると、法に抵触し、措置や課徴金納付の処分を受けたり、何より企業の信頼度が低下するなど、多大なペナルティを受けることとなります。
過去に処分を受けた会社には、大手企業も多数含まれており、そもそもこうした販促事案を「弁護士に相談すべき事項」だと思わなかったことが伺えます。
問題が起きてからでは遅い、トラブルを防止するために弁護士の活用を
景品表示法をはじめとした法律は、その時々の社会の実態によってルールが変わります。また、アプリゲームの課金やアイドル商法など、新しく生まれたビジネスモデルには、まだはっきりした解釈が定まっていない場合もあります。
冒頭に引用した通り、多くの企業が回答している「特に弁護士に相談すべき事項がない」という判断は、果たして本当にそうなのでしょうか。
企業が一度失った信用を回復するのは、非常に難しいことです。一般に、弁護士への相談は問題が起きた後になりがちですが、ビジネスシーンにおいては問題が起きないための“防止”として、法務相談を行うことが必要です。
インターネットやSNSの普及で、企業のミスはあっという間に拡散され、取り返しのつかない炎上を引き起こすことも多い昨今です。「法務に関係すると知らなかった」では済まない事態を回避するためにも、企業が法務サービスを積極的に活用することを心から願っています。
【弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 概要】
法人名:弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所(第一東京弁護士会)
代表弁護士:藤井 総、小野 智博(共同代表制)
所在地:東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館20階
電話:03-4405-9708
設立:2015年(2018 年に現事務所名に変更)
ホームページ:IT弁護士.com https://itbengoshi.com/
事業内容:IT事業に特化した企業法務顧問業
オウンドメディア:IT弁護士 MEDIA https://media.itbengoshi.com/
【この記事は2019年5月14日発表の弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所のリリース記事を一部編集して公開しています】
執筆者紹介
藤井 総(ふじい・そう)(弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士) 「世界を便利にしてくれるITサービスをサポートする」ことを使命(ミッション)に掲げ、ITサービスを運営する企業に法務顧問サービスを提供している。 顧問を務める企業は2019年現在で70社以上。契約書・Webサービスの利用規約(作成・審査・交渉サポート)、労働問題、債権回収、知的財産、経済特別法など企業法務全般に対応している。
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