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企画

キーエンスやダイキン工業が成果主義を成功させた理由とは


成果主義は社員を大切にすることから。守島基博が語る「人事の盲点」

2019.06.03

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「うちの会社は成果主義だ」って言われるけど、成果って何?何に対して頑張ればいいの?もうやる気なんて出ないよ……。社員からこんな不満が聞こえてきたら、人事担当者はどうすればいいのだろう。

今や大半の日本企業が部分的(または完全)に、成果主義を人事評価や賃金制度に取り入れている。実は成果主義にはいくつもの落とし穴があり、気付かない間に社員の疑問や不満が膨れ上がっているかもしれない。人材マネジメント研究の第一人者、学習院大学の守島基博教授に「成果主義を成功させるための重要な視点」について聞いた。【取材:2019年4月23日】

参考:【特集】“評価しない組織”の衝撃~ティール組織の解説、ホラクラシーやノーレイティング実践企業の事例紹介、人事評価のアップデートまで~

守島 基博(もりしま・もとひろ)

学習院大学経済学部経営学科教授・副学長
1986年米国イリノイ大学産業労使関係研究所博士課程修了。人的資源管理論でPh.D.を取得後、カナダのサイモン・フレーザー大学経営学部Assistant Professor。慶應義塾大学総合政策学部助教授、同大大学院経営管理研究科助教授・教授、一橋大学大学院商学研究科教授を経て、2017年より学習院大学教授、2018年から副学長。厚生労働省労働政策審議会委員、中央労働委員会委員などを兼任。企業での講演・研修多数。著書に『人材マネジメント入門』、『人材の複雑方程式』(いずれも日本経済新聞出版社)、『人事と法の対話』(有斐閣)などがある。

目次
  1. 日本で初めて成果主義を導入したのは富士通
  2. 目標管理制度が、社員の納得できない「ノルマ管理制度」に
  3. 成果主義の成功の鍵は「毎日マネジャーが部下と関わる」意識
  4. キーエンスやダイキン工業が成果主義を成功させる理由

「成果主義」の盲点

・マネジャー層に訓練しないまま成果主義を導入している
・「目標設定の基準点」がなく、上から降りてきた事業の目標だけで個人の目標を決定しようとする
・「毎日上司と部下が関わる」くらいの気持ちがないと回らない
・マネジャーの能力開発より、まずは「マネジャーの選び方」から
・社員の希望を聞き、どうすれば「自分は会社に大事にされている。その分、成果を上げよう」と思えるのかを知る

日本で初めて成果主義を導入したのは富士通

――そもそも日本で成果主義はいつから始まったのでしょうか。
1990年代に大手電機メーカーの富士通(川崎市)が成果主義を導入したのが最初だとされています。その後、働いた時間ではなく、成果によって賃金を支払う処遇制度として成果主義が広まっていきました。

2000年代の始めに成果主義の導入がピークを迎えると同時に、後述するさまざまな問題点が明らかになりました。一部の企業では、年によって1人の社員の中で、ボーナスを含めて1,000万円の年収差が生まれたことが分かったのです。

「やはり成果主義ではうまくいかない」との認識も広がり、2010年以降は従来の年功序列・職能的な評価制度と成果主義をミックスする方向に進みました。今では基本給は能力主義、ボーナスは成果主義で判断する「日本的な成果主義」を採用する企業が多いようです。

【参考】評価・人事制度の課題解決に役立つノウハウブック

【成果主義の3つの特徴】

①脱年功主義化、脱能力主義化

賃金の決定要因としての年功序列・能力の要素を縮小、廃止する

②賃金の変動費化、業績連動化

社員の短期的な成果を、賃金に結びつける

③評価の厳密化、緻密化

成果を具体的かつ正確に測る仕組みとして、目標管理制度(MBO)をはじめとする人事制度を導入する

目標管理制度が、社員の納得できない「ノルマ管理制度」に

――成果主義に関するさまざまな混乱、問題点とは。
一つ目はマネジャーが、社員の納得できる目標を設定し、成果を評価する能力が足りなかったことです。

成果主義とは現場のマネジメントを強化することですが、マネジャーが部下の給与や職務の決定に力を持つために必要な訓練を、企業がやらなかった。マネジャーは経営層から下りてきた目標をブレイクダウンし、部下が納得できる成果目標に設定できない。部下が目標を達成できるようなサポートや、部下の成果を評価して次期の目標を立てることもできませんでした。

特に2000年代はバブル崩壊の余波やリーマンショックの影響で、日本企業が現場の中間管理職の教育に投資できませんでした。限られた資金で選抜型の経営者育成に力を入れ、現場のマネジメントがガタガタになった。成果主義の導入プロセスに大きな問題があったと思います。

学習院大学・守島 基博教授3

二つ目の問題は、目標管理制度(MBO)の導入が急すぎた点です。日本企業は元々職務主義(ジョブ型)の人事制度が普及していませんでした。成果を測る「道具」がなかったため、やむなく成果評価の手段としてMBOを導入したのです。

MBOが生まれた米国は、「その仕事に何を期待されているのか」を定義する「職務主義」が浸透しています。職務主義の人事では、まず職務(役割)の期待値があり、期待値が評価基準となります。社員は自分の仕事ぶりがその期待に応えられているのかを拠り所に、MBOの目標を立てます。

日本はその状況がないまま、いきなりMBOを導入して社員の納得感を得るのがとても難しかった。さらに、マネジャーもMBOのような対面型の人事評価に慣れていませんでした。

※目標管理制度(MBO):1960年代にドラッカーが提唱した、上司が部下をマネジメントする仕組み。米国企業で浸透し、日本企業では1990~2000年代に成果主義と一緒に取り入れられた。

【参考】ノウハウ本「『人事評価制度』が 会社を変える 離職防止、モチベーションアップ、生産性向上を実現する方法

――成果主義の問題点は、何をしたら成果となるのか明確でない点だと思います。
職務主義のない日本では「目標設定の基準点」がなく、上から降りてきた事業や部門の目標だけで個人の目標を決定しようとします。結果として無理な目標が設定される、自分の仕事における「目標」が理解できず、何をすれば成果になるのか予想がつかない……と問題が起こります。日本企業のMBOは社員が納得できない「ノルマ管理」になりやすいのです。

――成果を出せない社員はどうなるのでしょうか。
高い成果を出す人が高い賃金をもらい、そうでない人の賃金が下がるのは合理的かもしれません。しかし、後者にとって成果主義は嫌な状態ですし、生産性やモチベーション、エンゲージメントが下がります。

さらに、日本では成果を出せない社員が処遇に不満を持ちながら社内に滞留します。もちろん社内の配置転換はありますが、多くの企業では自己申告制がほとんど機能せず、社員の異動希望はなかなか通りません。成果を出せない人に解決策が与えられにくいことが、成果主義の問題です。今は労働市場が流動化し、会社を辞めることも選択肢にしやすくはなりましたが……。

――労働時間との関係は。
研究では明確にはなっていませんが、関連はあると思います。

真の成果主義は、成果さえ出していれば一日中ビーチで遊んでいてもいいような、全体の数%にも満たない人にしか適用できません。多くの人は労働時間や労働の仕方、仕事の内容を選べない会社員です。彼らに成果主義を導入すると、何とか成果を出すために頑張ってしまう。他の仕事や依頼も断れない中で、成果を出して賃金を上げるために長く働く傾向になります。

成功の鍵は「毎日マネジャーが部下と関わる」意識

――成果主義を成功させるためには、どうすればいいのでしょうか。
納得感のある目標を設定することです。マネジャーは、部下が何のために仕事をしているのか、会社や社会にどう貢献しているのか、常に本人に説明できなければいけません。自分の仕事が上位目標とどうリンクしているのかを明らかにすることが大切です。極端に言えば、毎日上司と部下が関わるくらいの気持ちでないと、成果主義はうまく回りません。

――上司の能力開発も重要ですね。
まずはマネジャーの選び方が重要です。これまでは勤続年数が長かったり、専門性が高くて成果を出していたりするがマネジメント能力は低い人が、マネジャーになることがありました。まずはマネジメントできる人かどうかを見極めて、マネジャーの仕事を権限委譲し、どこまで現場が機能するのかを判断してください。さらに、マネジメントの方法は一つに限定せず、支援型、アカデミック型、体育会型など、マネジャーと部下の特徴に任せるのがポイントです。

キーエンスやダイキン工業が成果主義を成功させた理由

――成果主義がうまく機能している事例はありますか。
キーエンス(大阪市)は成果主義の色が強いことで有名ですが、とにかく社員を大事にしています。研修には時間や費用を惜しまず、男女関わらず家庭の事情を配慮して仕事内容を調整できます。社員はその分、仕事を頑張って成果を出そうとする。

ダイキン工業(大阪市)も厳しい成果主義です。若手社員が海外で生活し、現地で自社製品に何が求められるのか学ぶ体験を重視しています。現地の生活は大変ですが、自社製品の理解が深まり、成果にもつながります。産後休暇や育児休暇も取得しやすく、自分の人生設計に合わせて働けます。その分、仕事に復帰したら会社に貢献してもらう。

中小企業や地方の企業も同じです。人材に恵まれているわけではない企業でも、独自の取り組みで社員を大切にして厳密な成果主義を成立させています。

【参考】ノウハウ本「社員満足度を高める 人事評価制度4つのポイント

――「成果主義は優秀な人材が多い企業でしか成り立たない」という印象がありました。
いい大学を出て、仕事ができる人だけを集めたら成果主義が成り立つのではありません。働く人は企業に大切にされると、成果を出そうと努力する。真の成果主義とは、育成や配置転換なども含めて、社員が成果を出せるように人事制度や経営方針の形で支援することです。

日本の組織は上層部からの命令だけでは動きません。まずは社員の希望を聞き、どんなことがあれば成果を上げたいと思えるのかを知ること。現場に信用されたボトムアップ型のリーダーが必要です。成果主義を人事評価や賃金制度の枠組みだけで考えるのは、大きな間違いです。現場を見て社員を大切にする仕組みがあって初めて、成果主義が成功するのです。【取材・編集:@人事編集部】

【編集部より】
評価制度や評価面談の改善方法、上司と部下との関わり方に関する記事はこちら

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