人事のキャリア【第19回】
急速に新規出店を進めるコンビニで採用の在り方を改革(セブンイレブン-ジャパン・長井由衣さん)
2019.05.13
さまざまな企業の人事担当者に、仕事のやりがいやキャリアについて聞く「人事のキャリア」。今回は、セブンイレブン-ジャパンの長井由衣さんに話を伺いました。
「セブン-イレブン」といえば、国内トップシェアを誇るコンビニエンスストア。2018年には国内2万店舗を突破しました。長井さんはこの急拡大する企業に新卒で入社し、採用の在り方を改革。現在は、グローバル人材の採用と教育のサポートを担当しています。
【取材・文・撮影:尾越まり恵、構成:編集部】
長井 由衣(ながい・ゆい)
株式会社セブン-イレブン・ジャパン 海外事業本部 グローバル人材開発部 マネジャー
2004年3月、学習院大学法学部卒業。同年4月、セブン-イレブン・ジャパンに新卒社員として入社。横浜の直営店で副店長・店長、その後店舗経営相談員を経て、2008年採用部へ。新卒採用を任される。2014年から中途採用マネジャー。2016年の育休を経て17年に復帰。18年9月から現職。
長井さんのキャリアアップのポイント
・ハードな経験が自分を成長させると捉える
・ 社内外に積極的に協力を求めながら成果にこだわる
・ 自分の仕事の枠組みを超えて関わる
自分が採用した人の頑張りが仕事の原動力
―現在の業務内容を教えてください。
海外事業本部のグローバル人材開発部という部署でマネジャーをしています。この部署に異動してまだ3カ月で、今は育児をしながらの時短勤務です。当社はフランチャイズビジネスですので、本部の人材開発と加盟店の人材支援の両方の業務があります。
私は加盟店バックアップの業務を担当しており、主に外国人人材の活躍支援策を企画しています。
具体的な業務内容としては、例えば日本語学校など、海外の留学生が多く集まる場所に出向き、「セブン-イレブンでアルバイトをすると経営が学べるんですよ」というような魅力をアピールしたり、オーナー様の中には外国人スタッフを雇うことに不安を感じている方もいらっしゃるので、心理的なハードルを下げるためのサポートをしたりもしています。
教育ツールをはじめ多言語対応には限界があるため「従業員向けの研修はやさしい日本語で統一するのはどうか」といった入社後の研修に対する提案をしたりもします。
―人事の仕事の魅力は何でしょうか?
原動力は、採用時に自分が関わった人が頑張っていることですね。あぁ、疲れたな……という日も、隣に自分が採用していた人が座っていると、「ちゃんとしなきゃ!」となります(笑)。人事の仕事は他の社員からも見られているので、襟を正して仕事ができるのはいいなと思います。
そして、人を介して社員が笑顔になるのを見られることも魅力ですね。自分の仕事次第で会社を良くできるのは面白いです。
新卒入社後、現場店舗を任される
―新卒でセブン-イレブン・ジャパンに入社したきっかけは?
大学は法学部に在籍していて、当時、親族のもめごとがあり、私が調べた法律の知識を伝えたらすごく喜ばれたんですね。それで、「人の役に立ち、喜ばれる仕事がしたい」と考えるようになりました。
弁護士を目指そうとも考えたのですが、先輩弁護士の話を聞いていると、「自分には向いていないかもしれない」と思ってしまって……。
一般企業の中で、人の役に立てる仕事はないかと探していたときに出会ったのが、セブン-イレブン・ジャパンでした。
説明会で「コンサルティングの仕事に近い」という話を聞いたのがとても印象的だったんです。加盟店のオーナー様が経営に関するさまざまな課題を抱えていて、それを一緒に解決していくのが面白そうだなと感じました。そうしてお店の経営がうまくいけば、地域に住む人たちにも嬉しいことですし、商品が売れればメーカーさんも喜びます。かなり幅広い範囲の人の役に立てるのではないかと思いました。
もちろん、その時点では経営についての知識はありませんでしたが、入社後に直営店での店舗勤務研修がありました。また、コンビニは自分の生活に馴染みのあるもので消費者の視点が役に立つのであれば、「私にもできるかもしれない」と考えました。
―店舗ではどんな仕事を経験したのか。
従業員のマネジメントを任され、最後は店長として1つの店の責任を負わなければなりません。とにかく忙しいんですよ。近くの川が氾濫してお店の中に水が流れ込んできたこともあり。いろんなことがありました(苦笑)。
ただ、20代前半で何億円という売り上げのある店舗を任されるのは楽しかったですね。パートさんらとチームで一緒に「商品を売ろう!」 と1つの目標に対して団結できた瞬間は貴重な経験でしたし、それで数字が出るとなおさら楽しくなりました。
1年半ほど店舗を経験した後、2006年から店舗経営相談員になり、加盟店7店舗を担当しました。オーナー様と一緒に店舗が抱える課題を解決していく仕事です。相談員として2年くらい働いたあと、急に人事に発令が出たんです。
修羅場の経験は人を育てる
―人事は想定外だったのか。
そんな道があるとも思っていませんでした。「出張が多い仕事だけど大丈夫?」と聞かれたくらいで、事前の打診もほとんどなくて。毎日店舗を回っていた生活から、急に本社勤務になり、 まるで転職したような感覚でした。
新卒採用を担当したのですが、この時期が、今考えると一番つらかったですね。後で「修羅場の経験は人を育てる」と思えるようになったのも、この時があったからです。
―どんな修羅場を経験したのか?
私は2009年の採用活動から新卒採用のチームに入りました。その翌年には2011年卒採用を考えなければなりません。ちょうどリーマン・ショックのあとだったので、他社も採用人数を大幅に縮小する流れでした。当社も採用人数を4分の1程度にする、と決まりまして。「じゃあ新卒採用担当は1人でいっか」と私に任されることになったんです。
採用人数が4分の1になったところで、すごく業務が楽になるわけではないんですよ(苦笑)。不安から本気で逃げてしまいたくなりました。
採用目標人数が大きく変わったため採用計画も全部考え直しです。なら、「やりたかったことをやろう」と開き直って、採用基準を明確化することにチャレンジしました。現場の活躍社員の適性を分析して、その指標に沿って雇用するようにしました。
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執筆者紹介
尾越まり恵(おごし・まりえ) フリーランスライター。福岡県北九州市生まれ。結婚情報誌ゼクシィの制作に携わり、2011年に独立。「女性の生き方」をテーマに取材・執筆を続けている。福山雅治、ホークスが好き。
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