法改正対応のための勤怠管理術特集
タイムカードは限界。自社にマッチする勤怠管理システムの選び方
2019.05.10
働き方改革関連法の施行を背景に、正確な労務管理が今後ますます求められるようになりました。勤務時間や休暇の取得を把握するための勤怠管理システムを導入する企業が増える一方、導入企業の実情とシステムのミスマッチが起こることも少なくありません。
今回は、勤怠管理システムの導入で失敗しないために、事前に確認しておく必要のあるポイントを詳しく解説します。
※参考:自社の勤務体系にフィットする勤怠管理システムの選び方
「働き方改革」で増す勤怠管理の重要性
2018年6月に働き方改革法案が成立し、2019年4月1日についに施行されました。
この法案によって、労務管理の必要性が高まることは間違いありません。これまでは、労務に関するルールが明確でなく、形骸化していることが珍しくありませんでした。長時間労働が存在することは分かっていても、解消のための取組みが行われずに、労働時間の正確な把握ができていない企業もありました。
しかし、働き方改革への取組みが不十分な企業は、今後処罰の対象となる可能性があります。改正労働基準法では、「月45時間、年360時間」という時間外労働の上限が明記されました。これに違反すれば罰則の対象となります。また有給休暇の取得の義務化や同一労働同一賃金など、労働状況の正確な把握が前提となる取組みが多いのです。
タイムカード方式ではもはや対応できない
これまで利用されてきたタイムカードによる労務管理では、正確な労働状況の把握が難しいのが現状です。労働時間、雇用形態、休暇の取得状況などを一元的に把握するためには、これまで以上に精度の高い管理システムが必要になります。タイムカード方式は勤務集計の作業にも手間とコストがかかるので、効率化の面でも新たなシステムのニーズが高まっているのです。
勤怠管理システムの選定は「失敗」が多い
以上のような理由から、勤怠管理システムの導入を検討する企業は年々増加しています。しかし、勤怠管理システムにはそれぞれ特性があり、自社にフィットするものを選ばなくては、適切な運用ができなくなる可能性があります。
その理由は、勤怠のルールは企業によって全く違い、統一されていないからです。36協定により、労働基準法で定められたものとは違う勤怠ルールで運用されることが当たり前になっています。したがって、企業独自の勤怠ルールにあったシステムを選ぶことが重要なのです。自社のルールにフィットしないシステムを導入してしまうと、最悪の場合全く機能しない可能性さえあるのです。
従業員にシステムが合わないことも
また、企業のルールに合っていたとしても、導入した勤怠管理システムを全従業員が正確に使いこなせなくてはなりません。勤怠を打刻し、休暇を申請するのは従業員なので、管理者だけでなく従業員に合ったシステムが必要なのです。
よくある失敗談として、パソコンでの打刻がうまくいかないケースが挙げられます。多くの従業員はパソコンによる打刻を利用できるのですが、ITリテラシーが不足している従業員はうまく使い方が分からず、問い合わせや打刻ミスが増えて管理者の手間を結果的に増やしてしまうようなケースがあります。
今まで利用してきた勤怠管理の方法をそのまま移行するような感覚で、新しい勤怠管理システムを導入できると考えている方は、実は少なくありません。そのためシステムの選定を誤り、すぐに別のシステムを導入し直したというケースもあります。自社の勤怠ルールや雇用形態などにマッチするものを選んで導入することが、勤怠の正確な把握とその効率化には欠かせないのです。
自社にフィットする勤怠管理システムを選ぶための3つのポイント
では、勤怠管理システムの選定においては、どこに着目すればよいのでしょうか。ここでは、勤怠管理システムの導入の成功に欠かせない3つのチェックポイントをご紹介します。
1. システムや機能が勤務体系にマッチしているか
第一にチェックしたいのが、自社の勤怠ルールや雇用体系、勤務状況にマッチしているか、という点です。
企業によって就業ルールはさまざま。例えば勤務の現場が複数あり、現場ごとに勤務時間の集計が必要な場合、それぞれの現場に打刻システムを用意しなければなりません。営業の場合は、直行直帰の状況の記録が必要なケースがあります。打刻のために自社に戻らなければならず、直行直帰ができないようなシステムは適切なものではありません。また、一日の間に複数回の出退勤がある場合は、それを記録できるシステムが必要です。
導入後に勤怠状況に合わないことが分かった、ということのないように勤務体系にマッチするシステムを選ぶことが大切です。
2. サポート体制が充実しているか
勤怠管理システムは、商品によってサポート体制が異なります。
例えば、法改正に対する対応状況は必ずチェックしておきたいもの。働き方改革法案のような、労務管理に関わる法改正や新設法が施行されることがあれば、勤怠管理システムもそれに対応してバージョンアップしなければなりません。その場合に、すぐに対応するバージョンを提供してくれるシステムならよいのですが、対応が遅かったり、あるいは対応そのものがなかったりして、別のシステムに乗り換えなければならないケースもあります。
また、カスタマイズしないと勤務体系にマッチしないシステムにも注意が必要です。自社のルールに合わせるためのカスタマイズが必要になると、追加費用が発生することがあります。利用料以外の費用の発生については事前に確認しておきましょう。あるいは、カスタマイズの必要がないシステムを選ぶことも有効な方法です。
導入直後は、何かとトラブルが起きやすいもの。トラブルのサポートや運用上の問題に対する相談などを提供してくれるかチェックすることが大切。どの程度のサポートを提供しているのか、またどの範囲まで無料で対応してくれるのか、自社の状況や労務管理者の運用スキルと照らし合わせてみましょう。
3. システムが使いやすいか
前述のように、勤怠管理システムは全社員が使うもの。誰にとっても使いやすいもの、あるいは社員の勤務状況やITリテラシーに合わせられるものを選ぶことが重要です。
導入したシステムを使ってもらうために、全社員に対して利用方法を説明することになります。説明を理解し、適切に使ってもらうことができるものを選びましょう。打刻や有給の申請はどのような従業員がどのような状況で行うのか把握することで、使いやすいシステムを選定することができます。
労務管理の精度の向上は、もはや急務といってもいいもの。勤怠管理システムをスムーズに導入することは、働き方改革への対応、打刻の教育コストの削減の両面において重要です。
勤怠管理システムは業界・業種に合ったものを選ぼう
業界、業種によって、勤怠管理システムの課題やその解決のために求められるものは異なります。自社の勤務状況の把握が重要なのは言うまでもありませんが、同時に業界や業種ごとの課題とその解決方法を知ることも大切です。業界・業種に共通した課題に対応するツールを知ることから、勤怠管理システムの選定を進めるのも一つの方法でしょう。
執筆者紹介
石神 高 (いしがみ たかし) 一橋大学社会学研究科修士課程修了。在学中より執筆をはじめ、エッセイスト、ライターとして活動。 某飲食チェーンにて音楽事業の立ち上げから携わり、マネジメントを手がける。 また、社外にてコンサートシリーズをプロデュースするほか、自らも音楽家として国内外での公演を行なっている。
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