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HR Millenial Lounge #1レポート


HRテックは本当に必要か? ミレニアル世代が生きるEmployee ExperienceとPeople Analyticsの未来

2019.03.29

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ミレニアル世代とは2000年代に成人あるいは社会人になる世代を指す。彼らは生まれた時から電子テクノロジーに精通したデジタルネイティブ世代であり、これまでの世代の常識に当てはまらない特徴を有する。世界人口の半数がミレニアル世代という時代を迎える2020年を目前に、企業組織はどのようなビジョンを描いて行動していくべきか。そのヒントとして、HRテックに精通した3名のミレニアル世代が語るEmployee ExperienceとPeople Analyticsの世界を、独占レポートでお届けする。【2019年1月取材:野澤麿友子】

参考:【地方×HR】採用目的のインターンは捨てるべき。「地方の色はいらない」人気インターンから見えた学生を集めるシンプルな法則。

登壇者プロフィール

石原史章(株式会社BtoA 代表取締役)
従業員体験の向上に特化したクラウドサービス「BetterEngage」を開発・運営。カスタマーサクセスの一環で、お客様の「戦略的人事」の実現をサポートする。国内外のHRテックサービスやピープルアナリティクス事例に精通。

森 謙吾(ピアリー株式会社代表取締役)
PwCコンサルティング合同会社に入社後、人事コンサルティング領域に従事。大手企業に対する人材マネジメント戦略策定および人事制度構築、役員報酬設計、残業削減・退職率低下などのプロジェクトに参画。現在はピアリー株式会社を創業。急成長スタートアップにおける従業員のエンゲージメント・心理的安全性を高めるコンサルティングおよびHRテクノロジーサービスの導入事業を行う。

丸吉香織(ヤフー株式会社 コーポレート統括本部 People Analytics Lab.)
現在は人事関連の分析や分析用データベースの環境構築、BIを使ったダッシュボード作り、またそれらの活用のためSQL/BIのトレーニングを提供。エビデンスを知る・使う・教え合う人を増やす文化づくりに従事。

【モデレーター】土橋 隼人(PwCコンサルティング合同会社マネージャー)
会計系コンサルティングファーム2社を経て現職。10年以上組織・人事領域のコンサルティングに従事。人材マネジメント戦略策定、人事制度改革、コーポレートガバナンス改革、組織・人事デューデリジェンス、組織・人事統合支援、働き方改革支援などに携わる。近年は、Employee ExperienceとPeople Analytics領域に注力している。日本人材マネジメント協会(JSHRM)執行役員。

ミレニアル世代におけるKey Wordは「Employee Experience」

2000年代に成人あるいは社会人を迎える「ミレニアル世代」と称される彼らは、他の世代と大きく異なる特徴を有する。イベント前段、モデレーターの土橋氏が解説した。

ミレニアル世代は、PwCが実施した調査(「Millennials at work Reshaping the workplace」(2011)、「NextGen:A Global generational study」(2013))によると、ワークライフバランスを重視し、時間や場所など柔軟な働き方を望む。

また、年に1回の評価では足らず、月1回以上の頻繁なフィードバックを求める。その一方で、同じ職場に長く働こうとは思っておらず、常に他の選択肢も考えておきたいという志向性を持つという。

とりわけ1990年代以降に生まれたデジタルネイティブ世代は、生まれたときからデジタル機器に親しんでおり、テクノロジーを活用してより効率的に働きたいと考えている。
彼らは自分にパーソナライズされた情報を求めると、それを即座に得られるといった消費者として高度な体験を得ており、会社でもそれと同じレベルの体験を得たいと希望している。

HRMillenialLounge#1レポート

人材獲得競争の激化もあり、人材マネジメントの世界ではミレニアル世代を組織で活躍させるため「いかに動機づけていくか」「彼らが考える魅力、彼らに選ばれる会社とは何か」といった議論が活発化してきているという。

「Employee Experience」は、そんなミレニアル世代のマネジメントにおいて外せないキーワードだ。
Employee Experience (以下、EX)は、社員が企業組織と接する中で体験する価値を示す言葉で、入社前(応募・選考)から退職後(アルムナイ)までの幅広いタイムラインの中で捉えられている。

EXを向上させることは、企業が「社員の求める期待値」を超える体験を提供することを意味し、その結果として社員のエンゲージメントが高まると考えられている。
人材獲得競争が激化する現在、優秀なミレニアル世代から選ばれる企業となり、彼らの能力を最大限に生かすためには、彼らが期待する水準のEXを当然に提供できなくてはならないようだ。

「Employee Experience」におけるマネジメントの在り方

「EXの向上には、ミレニアル世代の特徴を踏まえたマネジメントの在り方への移行が欠かせない」と1人目の登壇者・森氏は強調する。
仕事において上司が部下に与える影響は大きく、EXの中でもマネジメント領域がとりわけ重要だと感じているからだ。

ミレニアル世代が仕事で重視するものには大きく「透明性」「個別性」「即時性」「価値志向性」の4つがある(PwCが定義するEXを高めるための観点)。

もう少し具体的に説明すると、透明性は評価基準やルールがはっきりとしていて分かりやすく、オープンであるか。個別性は、全員一律ではなく自分にとって価値のある情報がカスタマイズされた上で提供されるか。即時性は、リアルタイムに情報が提供されるか。価値志向性は、自己成長したいという意欲に応える環境があるか、ということである。

これらの期待値をふまえると、従来のMBO(目標を年初に立てて年1~2回で評価する)だけでは不十分であることがお分かりいただけるだろう。

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「ミレニアル世代のマネジメントはコーチング型。成長実感を持たせるために高い目標を設定し、サーベイや1on1を実施して細かく状況を確認、その経過をフィードバックして褒める。このサイクルをひたすら回していき、その積み重ねを評価することが大切です」(森氏)

リアルタイムのフィードバックは、マネジャーの負荷がどうしても上がってしまう。そこで、まずはマネジャーに「実施することの意義」を実感してもらう必要があり、そのためにはさらに上位の経営層がマネジャーに対して同じように接することが重要だという。

GEやAdobeなどの先進的な海外企業は試行錯誤をしながらも、徐々にこうした、いわゆるパフォーマンスマネジメントへと移行しつつある。

「EXの向上というとデジタルツールやデータ分析に焦点が当たりやすいが、私個人としては上司と部下をはじめとする人間同士の関係が、EXに大きな影響を与えるのではないかと考えています」。そう森氏は締めくくった。

データドリブンな人事戦略遂行の最大の障壁は「データ分散問題」

2人目の登壇者・石原氏は、ジョゼフキャンベルのヒーローズジャーニー(数々のヒーロー物語の研究の中で見いだされた共通の流れ)になぞらえて、人事にとってのデジタルトランスフォーメーションを解説する。

まず、HRが担う役割の定義として、デイビットウルリッチ教授の提唱する「人事の4つの役割」(①経営戦略を実現する戦略のパートナー②組織文化を醸成する変革のエージェント③EXの向上に資する従業員のチャンピオン④労務や人材の管理のエキスパート)を紹介した。

石原氏によると、④管理のエキスパート的側面は、今後HRテックやRPAにより自動化・効率化が進むため、人である人事が注力すべきは、人事/組織戦略をつくる・EXを高める(役割としては①~③の領域)ことだという。

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「私は、人事は経営と従業員・両者の目線が語れて、双方の間を反復横跳びし続ける存在と捉えています」。石原氏は、人事は時にハードな意思決定が求められる存在であり、その意思決定を手助けする新しい武器が「データ」ではないかと考えている。

データドリブンな意思決定を進める一例として、まず経営指標というゴールから逆算し、ゴール達成を構成する要素(人件費や一人ひとりのスキルなど)をデータとして可視化、その分析結果を採用・育成などの具体的な改善施策につなげるといったトップダウン型のものがある。

ただし、これはあくまで理想論であり、人事がデータドリブンな意思決定を実際に試みるときに立ちはだかる最大の障壁が「データ分散の問題」だと石原氏は指摘する。現在、1つの企業が扱うHRテックの数は10~15ともいわれ、本来統合して分析すべきデータが企業内部に散らばってしまっているというのだ。

そこで、このデータ分散の問題を解決するのが、WorkdayをはじめとするHRテック同士を連携するデジタルプラットフォームであるという。

有象無象のHRテックも今後はデジタルプラットフォームへと収束されていくのではないかと石原氏は予想する。

「データドリブンな意思決定を進める過程で、どんなツールを入れるのか、ベンダーをどうするかなど、決めることはたくさんありますが、やはり最も大切なのは組織がどうなっていきたいのかというビジョンをしっかりと描くことです。このあたりは丸吉さんの方が詳しいですよ」
笑いながら、石原氏は話を締めくくった。

HRテクノロジー(HRテック)って何それ美味しいの?

「HRテクノロジーって何それおいしいの?」

3人目の登壇者・丸吉氏は、Courseraというオンラインサービスを用いてスタンフォード大学Andrew Ng教授のMachine Learning、ペンシルバニア大学のPeople Analyticsコースを独学で修了。現在はヤフー株式会社で20以上の社内システムにたまるさまざまなデータの収集・分析に挑むミレニアル世代の一人だ。

そんな彼女が日々の業務経験の中から生じた、HRテックとは一体何か? そもそもHRテックは本当に必要なものなのか? という挑戦的な問いを投げかける。

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「結論、HRテックは手段でしかないです。何より大切なのは、その組織が何を大事にしていて何を実現したいのか。そこを見失わずにいれば、HRテックやそれに伴うデータの活用が進むことは、人事の行動を変えてくための非常に良いきっかけではないかと考えています」。これが丸吉氏の持論だ。

人間には無意識のバイアスがかかる。
ミレニアル世代を例にとると、彼らの中にはワークライフバランスを重視する人もいればしない人もいる、というのが事実だ。こうしたバイアスを可視化するのに「HRテックは有効だ」と丸吉氏は語る。

さらにデータ分析の世界に目を向けると、膨大なデータの蓄積によってECやアドテック業界では新しい発見が次々起こっている。
そうした通常のマーケットデータに比べて、現状の人事データは圧倒的に量が少ない。だが今後、行動科学のデータが蓄積されてくると、「人事領域も加速度的に発展していくのではないだろうか」と丸吉氏は期待する。

なお、目的意識やビジョンをしっかりと描き、それに沿った構造設計をしていくのがベストだが、経営者がHRテックに前向きではないときもある。
そんなときは目の前にあるデータから小さく始めて実績を残し、数値を基に経営層と対話するプロセスを同時並行することを推奨するという。
それによって経営層の意識が変わることも大いにあるだろう。

「データは人事として会社の未来のために残せる資産」と捉える丸吉氏は、テクノロジーがもたらす未来のためにHRテックやデータという存在と日々向き合っている。

イベントの最後は土橋氏がHRテックに対する思いを語って締めくくりとなった。
「HRテックも1on1もOKRも結局一つの手段でしかないんです。実施することで良いこともあれば悪いこともたくさんある。大切なのはその目的で、組織にとってそれらの手段が本当に有効なのかをきちんと精査していくべき。だから、私はこれからも引き続き仮説を検証していきたい」
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優秀なミレニアル世代を企業組織の中で活躍させるためには

今回登壇した4名は、ラスベガスで開催された世界最大のHRカンファレンスで知り合った間柄だ。彼らは海外のHR事情や学術研究にも精通している。

「アメリカではHRテックで何ができるか、どんなツールがあるか・良いかという議論よりも『人事はどういった問いを解決することで経営に貢献すべきなのか』という問題設定こそが大切だという議論が多くなされている。日本はHRテックの認知度と期待度が高まっているステージであり、アンテナを張りフットワークを軽くすることは大切だが、何のためかという問いを忘れてはならない」と土橋氏は警鐘を鳴らす。

優秀なミレニアル世代を企業組織の中で活躍させるために、我々人事や経営者はツールではなく本質的な問いに向き合わなければならない時代に突入している。

イベント概要

HR Millenial Lounge #1 ミレニアル世代が語るEXの向上と新しいHRテックの世界
日時:2019年1月22日(火) 19:00~21:30
会場: GMOアドパートナーズ株式会社
(東京都渋谷区桜丘町26-1 セルリアンタワー11階)
主催: HRLOUNGE事務局

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