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人事・総務が知っておきたい災害時対応・災害前の備え


社員が出張先で被災してしまったら? 人事担当者が取るべき対応・対策とは

2019.03.11

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2018年は、日本全国で多くの自然災害が発生した。被災した地域の企業では、社員の安全確認や出社可否の判断など、対応に追われたのではないだろうか。

また、その一方で「出張先で社員が被災した」ケースに遭った企業も少なくないのではないだろうか。そこで今回は、実際に出張先で被災した社員の体験談と専門家の解説を基に、人事担当者が取るべき対応について解説する。

目次
  1. 出張先でまさかの被災。助かったのは「宿泊先・交通手段の手配」
  2. 1.出張先で被災した社員が現地で取るべき対応
  3. 2.出張した被災した社員に対して、人事担当者が取るべき対応
  4. 3.災害が起きる前に、人事担当者が事前に準備できること
  5. 被災社員の賃金・勤怠・事故に関する労務法務上の対応

出張先でまさかの被災。助かったのは「宿泊先・交通手段の手配」

東京の会社で勤務するライターのSさんは、2018年9月6日、出張先の北海道に滞在していた。そして同日、北海道胆振東部地震に遭ったという。

Sさん:
取材・撮影のため、札幌市内のホテルに宿泊しており、 揺れが来たときはホテルの部屋で寝ていた。被災中に困ったのは「スマートフォンの充電」。交通情報を調べたり、家族に連絡したりしているとすぐに充電が減ってしまうので、できるだけ電源を入れないようにしていた。あとは仕事ができないこと、食料が調達できないこと、トイレが流せないこと……など。ホテルに泊まっていたので避難場所には困らなかった。

また、会社の対応で助かったこととして、以下のことを挙げている。

Sさん:
予約していた飛行機が欠航した場合に備えて、宿泊先やフェリーを手配してくれたこと。実際は飛行機が復旧したので使わずに済んだが、もしもの場合に備えて手配してくれたのは助かった。

それから、ビジネスチャットのSlackやLINEで電力復旧や交通機関の情報などを届けてくれたこと。自分でも調べることはできたが、ネットを使うと充電がなくなってしまうので。ちなみに会社とは、SlackのチャンネルとLINEのグループでやりとりをしていた。

slack_captcha

slackでの実際のやりとりの様子。

翌日には飛行機が復旧し、元々予約していた便でSさんは帰宅できたという。

1.出張先で被災した社員が現地で取るべき対応

以上の体験談を踏まえた上で、出張先で被災した場合、その被災社員や人事担当者はどのような対応を取るべきなのだろうか。

1.出張先で被災した社員が現地で取るべき対応
2.出張先で被災した社員に対して人事担当者が取るべき対応
3.災害が起きる前に、人事担当者が事前に準備できること
の3つの場合について、ソナエルワークス代表の高荷智也氏が解説する。

高荷 智也

ソナエルワークス代表 高荷氏ソナエルワークス代表 備え・防災アドバイザー

1982年静岡県生まれ。「自分と家族が死なないための防災対策」と「中小企業の身の丈BCP」のポイントを解説する専門家。
分かりやすく実践的なアドバイスに定評があり、講演・執筆・メディア出演など実績多数。
著書に『中小企業のためのBCP策定パーフェクトガイド』がある。

まずは身の安全の確保と避難

発災時に取るべき行動は、場所にかかわらず「自身の安全確保」ですが、安全確保の方法は災害ごとに異なるため、次のような行動原則を知っておく必要があります。

大地震

まずは揺れから身を守るため、転倒物や落下物のない場所に身を伏せて頭部を守ることが基本。室内であれば倒れそうな棚から離れたり机の下に潜り込んだりする。屋外の場合は落下物・転倒物・足下に注意が必要。周囲が開けている広場などにいる場合はその場で身を伏せて安全を確保。ビル街や街中である場合、看板・外壁・窓ガラスなどが落下してくる恐れがあるため、建物から離れられない場合は逆に軒下や、建物内に入って身を伏せる。ブロック塀・自動販売機などがある場合は少しでも距離を置いて身を伏せる。また道路の地割れや液状化、あるいは免震ビルの場合は基礎と周囲の境目が動く場合があるため、足下に亀裂が入る場合は少しでも移動するなど、状況に応じた対応が必要。

大地震の二次災害

大地震発生後は、地震火災・津波・土砂災害などの二次災害から避難することが重要。海辺であれば高い場所へ移動、木造住宅などが密集する地域であれば広い場所へ移動、ガケの近くや山間部であれば頑丈な建物や崖から離れた場所へ移動するなど。また宿泊先周辺の、津波発生時の避難の必要性と避難場所は必ず確認しておく。確実な方法はフロントへチェックインする際に「地震発生時にこのホテルは津波にのまれる可能性がありますか?その場合の避難先は?」と聞くこと。確認できなかった場合は、スマートフォンやPCで「○○市津波ハザードマップ」などで検索をすれば、浸水想定と避難場所を閲覧することができる。

浸水害・土砂災害

大雨による河川の氾濫、土砂災害、台風の高潮による浸水害を回避する。大地震と異なり事前予報なしで突発的に生じる可能性は低いため、出張時に気象警報が出ている場合は、訪問先やホテル周囲のハザードマップを確認しておき、避難の必要性と避難場所を確認しておくと、万が一発災した場合の避難行動が取りやすい。

建物火災

大地震などの自然災害とは関係なく、突発的な建物火災に巻き込まれる場合もある。特に宿泊先のホテルで火災に巻き込まれた場合、避難が遅れると命を落とす可能性が高い。個人的な旅行・出張による宿泊問わず、ホテルの部屋に到着したら、必ず非常口と避難ルートの確認をすることを習慣付けると良い。

災害情報と避難先を確認する

自宅や会社周辺などの見知った地域ならばいざ知らず、土地勘のない出張先で被災した場合は、情報収集や安全な避難場所の把握に大変戸惑います。この場合、インターネットが利用できる状況であれば、情報サイトやスマートフォンアプリなどを用いた情報収集が役立ちます。行き先が国内であれば、出張時以外の災害時にも役立つ以下のようなアプリをインストールしておくと良いでしょう。

 Yahoo!防災速報(https://emg.yahoo.co.jp/

緊急地震速報や、現在地周辺で発表される気象警報や避難に関する情報をプッシュ通知してくれる他、周辺の避難場所情報も閲覧できます。現在地周辺の危険をピンポイントで把握するのに向いています。

 NHKニュース・防災(https://www3.nhk.or.jp/news/news_bousai_app/index.html

 最新ニュースや災害情報、地図による雨雲や河川情報などを素早く確認できます。非常時にはライブ放送の視聴もできるため、災害の全体状況を把握するのに向いています。

会社と情報を取るために

大規模災害時には、電話がつながりづらくなったり、電子メールが遅延したりする可能性があります。会社からの指示を仰ぐためにはインターネットによる連絡手段を確保しておくことが重要です。LINE、Skype、SNSのメッセンジャーアプリ、各種チャットツールなどで、会社と連絡が取れるよう、普段からアカウントの登録と、使い方の確認などをしておくとよいでしょう。

2.出張先で被災した社員に対して、人事担当者が取るべき対応

災害情報の収集と避難先の指示

大規模災害時は被災地内部での情報収集が行いづらくなります。会社側が各種の情報収集を代替し、分かりやすくまとめた上で素早く従業員本人へ共有できると役立ちます。とりわけ出張先が海外である場合、現地での情報収集は極めて難しくなるため、会社の協力が不可欠となります。インターネットによる情報収集や訪問予定先への連絡などを行い、現地状況を確認してください。

この際は、上記①の項目を参考に、大地震であれば各種二次災害の有無と避難場所の確認、その他の災害であれば現在地周辺のハザードマップの確認と、避難場所及び移動ルートを確認し、従業員へ共有します。この共有を行う際にも、前述のインターネットによる連絡手段がつながりやすく、役立ちます。日常の業務でこうしたツールを用いていない場合は、後述する方法でWebツールを使えるようにしておくと良いでしょう。

出張の訪問先への連絡対応

同じく大規模災害時で、従業員が出張先へ訪問する前に被災した場合は、予定していた訪問先・取引先への連絡も会社側で行うと良いでしょう。特に従業員が移動中に被災し、一方訪問先は被災していない状況の場合、連絡をしなければドタキャンと見なされてしまう恐れがあるためです。

移動手段を絶たれただけで、連絡は問題なくできるという状況であれば、出張中の従業員本人から連絡をさせることができますが、本人が被災しており身の安全確保が必要な場合や連絡手段が絶たれている場合は、会社から連絡を行うようにしてください。人事・総務が個別の連絡先を把握していない場合は、その出張に関連している上司やチームメンバーを、あらかじめ申請させるルールにしておくとスムーズに対応できます。

宿泊先・移動手段の確保

出張者が宿泊先のホテルにたどり着けない場合、あるいは宿泊不可となった場合、会社側でホテルの予約(及びたどり着けなくなったホテルへのキャンセル連絡)や、一時的に滞在できそうな場所の確認と共有ができると良いでしょう。

また帰社手段についても、被災地周辺で動いている公共交通機関の情報収集は、現地よりも遠隔の方が行いやすい場合があります。従業員本人と連絡が取れる場合は、交通情報の収集も会社側で協力するとスムーズです。またチケットの手配は会社側で行い、eチケットや確認番号を共有できると素早く帰社させることができます。とりわけ海外出張時には航空券の素早い確保が重要になります。

3.災害が起きる前に、人事担当者が事前に準備できること

緊急時の連絡手段の確認

前述の通り、発災時には出張者本人と会社との連絡手段を確保することが重要で、手段としてはインターネットによる通信が適しています。LINEや各種SNSメッセンジャーを用いた連絡を、日頃から行っているのであれば問題ありませんが、会社によってはこうしたWebサービスを一切利用していなかったり、逆に従業員側が会社へ個人アカウントを伝えることを嫌ったりするケースもあります。

このような場合は、例えばChatworkやSlackといったビジネスチャットを会社側で導入しておき、出張時にのみ臨時で従業員をアカウントに追加するといった方法が考えられます。なお会社側はPCで構いませんが、出張者はスマートフォンが必要になりますので、スマートフォン端末を保有していない場合は会社から貸与することも検討してください。

出張先の気象警報などの確認

台風や集中豪雨による大雨や土砂災害は、数日~数時間前に予報を知ることができます。例えば気象庁の「警報級の可能性」ページを閲覧すると、市区町村単位で、最大5日先までの気象警報の可能性を閲覧することができます。出張先・出張日程についてこの情報を閲覧し、大雨や土砂災害の可能性が発表されている場合は、特に連絡を密にする準備をしておくことが重要です。

被災社員の賃金・勤怠・事故に関する労務法務上の対応

次に、社員が出張先で被災し、出勤・就業が困難になった場合の労務法務上の対応について、社会保険労務士の松井勇策氏が解説する。

松井 勇策

matsuiyusaku社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト
東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。IPO支援、労務監査等の人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

勤怠管理と賃金支払い義務

まず、被災地が混乱しており、出張の目的である業務が遂行できない場合の勤怠管理や賃金支払い義務について。「ノーワークノーペイの原則」に従うと、企業側には賃金支払いの義務はなく、勤怠上もあくまで出勤していない、つまり欠勤扱いと見なされます。もちろん、その社員の有給休暇の残日数があればそれを使用することは可能です。

法的な原則論としては以上です。しかし社員側としては、災害下においても可能な限り業務を遂行し、それができないと欠勤・無賃金という非常に不安定な状態に置かれることになります。

この場合の救済措置として、仮に就業規則の根拠がないとしても、任意の特別の有給休暇を付与することや、業務をしないように指示をして休業手当を支払うことが挙げられます。ただし、ルール上の根拠がないと平等性や運用の問題が生ずることもあるので注意が必要です。

企業が社会的な存在であることを鑑みても、被災社員の状況を考慮した対応や判断を行うこと、災害時にも対応できる就業規則を準備しておくことが重要でしょう。

労働災害の認定

出張中の災害で怪我や死亡をした場合は、近時の行政判断によれば「危険な環境下で業務をしていた」と解釈され、原則として労災保険の対象となります

出張中については、業務時間外でも、業務と異なる行為を積極的に長時間行っていた場合を除けば「業務中」だと見なされます。不幸にも災害による事故に遭われた社員の方がいる場合、災害後の一時対応の後には、労災申請の対応が必要な場合もあるでしょう。

行方不明になってしまった社員の対応

行方不明になりどうしても連絡がつかない社員の方の扱いをどうすれば良いかということも問題になると思われます。

民法上、行方不明になってから1年後に申請することで失踪と見なされ、死亡の扱いとなります。こうした失踪の原因が業務遂行中の災害によるものであれば、前項と同じように、原則として労災認定の対象となる死亡事故になると考えられます。

災害時を考慮した就業規則の整備が必要

自然災害は、本人にも会社側にも責任がなく、またいずれの側にとっても不幸なことだと思います。そのため、法的な原則論のみで押し切るような対応をすると配慮に欠ける点も出てくることもあり、社員と企業との間でのトラブルにもつながりかねません。

また、就業規則や社内ルール等には、前項のように災害発生に備えて最低限配慮すべきポイントがあります。この点を抑えておかないと、被災社員のフォローをし切れなかったり、平等性が欠けたりしてしまいます。

災害時の対応については、社会保険労務士をはじめとする専門家も活用して日頃から準備し、適法で、かつ丁寧な対応を行うことが求められます。

【編集部より】
企業防災のノウハウに関する記事はこちら。

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