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特集「ブラック企業からの脱却」第3弾


残業だらけのIT企業が、失敗を経てようやく残業ゼロを達成したワケ

2019.03.14

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「日本一残業の少ないIT企業」を掲げるアクシア(東京・千代田)も、以前は長時間労働や休日出勤が常態化していた。業務を効率化しても残業が減らない苦い過去を乗り越えて、2012年から完全な残業ゼロを実行。17年には「ホワイト企業アワード」(主催:日本次世代企業普及機構)で労働時間削減部門大賞に選ばれた。顧客の都合に左右されやすいシステム開発業で、どうやって残業ゼロを成し遂げたのか。同社の米村歩社長に一度経験した「失敗」と、長時間労働から抜け出した理由を聞いた。【取材:2019年1月10日】

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目次
  1. 残業削減に挑戦するも一度は失敗に終わる
  2. 強制的に残業ゼロにし、社員が自然に業務をマネジメントできるように
  3. 業務効率化の根幹は「仕事の見える化」
  4. 「顧客は残業ゼロを褒めてくれた」
  5. 採用の応募が増加し、採用力が向上
  6. 経営者が残業ゼロの「覚悟を決める」

残業削減に挑戦するも一度は失敗に終わる

今でも長時間労働のイメージが残るエンジニアの世界。アクシアも、2006年の設立から数年間は「終電ギリギリに帰り、休日出勤が当たり前」(米村社長)の状態だった。社員の1年の有給消化率は50%に満たず、離職率は30~40%にまで到達していた。

米村社長は離職と採用の繰り返しに問題意識を持ち、2009年から残業削減策として業務の効率化を開始。生産性管理システムを導入して各社員の業務内容を可視化し、チームで業務を補完できるようにしたが、残業時間は一向に減らなかった。

その理由は、全社的に「業務が終わらなければ最後は残業で解決する」思考回路が残っていたから。残業で補える程度ならば無理のある顧客の要望も受け入れ、業務効率化で空いた時間に別の仕事を入れていた。残業を減らすために業務効率化する必要はあるが、業務効率化だけで残業が減るわけではないのだ。業務をマネジメントができない状態では、どれだけ業務効率化しても「残業まみれ」のままでしかなかった。

強制的に残業ゼロにし、社員が自然に業務をマネジメントできるように

転機が訪れたのは2012年。事業に欠かせない、ある社員が退職を申し出たことだった。「いよいよ何とかしないと仕事が回らなくなる」(米村社長)と、半ば追い詰められた状況で「完全なる残業ゼロ」を実行することになった。

米村社長は朝礼で「今日から残業ゼロにする」と全社員に宣言。たとえ仕事が終わっていなくても、納期が遅れて顧客から怒られたとしても、必ず強制的に終業時間にパソコンを切らせて帰宅させた。「最後は残業で解決する」意識を変えるため、社員から「納期が近いから残業したい」と言われても米村社長は一切受け入れなかった。社長が残業ゼロにかける真剣さが社員に伝わり、半年後にはようやく「残業ゼロ」が定着。社員は残業しないことを前提に、次第に業務量やスケジュールを管理できるようになった。

業務効率化の根幹は「仕事の見える化」

2009~2011年に実施した業務効率化はすぐには効果が出なかったが、このときの施策が今の「残業ゼロ」を実現する基盤になっている。アクシアの業務効率化の方法は、以前米村氏が@人事に寄稿した記事「米村歩氏が語る、企業が残業を減らすべき理由と4つの業務効率化策」で詳しく解説している。

4つの方策の中でも最も重要なのが「仕事の見える化」だ。マネジメントの対象となる社員のタスク内容やスケジュールを管理するには、これらの情報を可視化しないと最適な対策を考えられない。

アクシアでは以前、ミーティングで社員のタスクの進捗やスケジュールを確認していた。生産性管理システム導入後はミーティングを廃止。システムの日報の登録画面で、社員がタスクごとにその日の進捗状況を入力すると、自動で翌日のスケジュールが組み直される。約1分の作業で工数と進捗率、生産性が一目で分かり、定時内に誰が何をすべきかを把握できる。このシステムを確認すればいつでも全員の進捗が分かるため、ミーティングを開く必要がなくなった。

マネジメントの対象となるタスク状況を可視化することで初めて、最適な対策や管理方法を考えられる。仕事の見える化は業務効率化の根幹なのだ。もし、自社でいきなりシステムを導入できない場合は、エクセルで日々の仕事の進捗状況を把握していくことから始めてもいい。

「顧客は残業ゼロを褒めてくれた」

システム開発業は顧客の要望に左右されやすい業界だ。それを全て受け入れてしまうと残業時間が増え、業務効率化の努力が水の泡になる。もちろん、米村社長にも残業ゼロにより顧客を失う恐怖があったが、意を決して「これから残業ゼロにするため、午後6時以降は対応できません」と宣言した。

アクシアの米村歩社長

「多くのお客様は褒めてくれた。これからはそういう時代だよね、すごいね、と」(米村社長)。中には激怒して理不尽な要求をしてくる顧客もいた。しかし、考え方を変えればその顧客との契約が切れればより優良な顧客に十分な時間を費やせる。短期的には売上ダウンするように見えるが、長期的には利益が改善する。無茶な要望をする顧客に割く時間を生産性の高い仕事に充てられるからだ。実際に、残業ゼロ宣言をしてからは取り引きする顧客の質が向上し、取り組みに共感した新規顧客からの問い合わせも増加した。

採用の応募が増加し、採用力が向上

労働環境が改善されてから離職率は10%を切り、2018年度は1人も正社員の離職者を出していない。休日出勤はなくなり、有給消化率は95%にまで向上した。2019年3月には100%を達成する見込みだ。

採用状況にも大きな変化があった。それまでは広告費をかけて求人媒体を利用していたが、残業ゼロの評判が浸透するにつれて自社のホームページ経由での応募が増加した。米村社長が2017年からブログやSNSでの発信を強化すると毎日応募があり、求人媒体は一切利用しなくなった。人材採用難の時代に労働環境を改善することで、採用コストを限りなくゼロに抑えることを可能にした。

経営者が残業ゼロの「覚悟を決める」

アクシアが最終的に残業ゼロを成し遂げられた理由は「覚悟を決めたから」だ。納期が近いから、顧客に強く要望されたから、顧客を失うのが怖いから……と理由をつけて、結局残業してしまう状態から、覚悟を決めて残業ゼロにかじを切った。「経営者がマネジメント能力を発揮して社員の労働時間をコントロールすることで、残業ゼロは達成できる」(米村社長)

多様な働き方が求められる時代に、企業は社員の出産、育児、介護の問題にも対応しなければならない。そうなった時、長時間労働せざるを得ない企業は社員の要望に応えられない。残業ゼロは、企業が日本社会で生き抜くためにも必要不可欠な要素になる。

「残業ゼロなんて無理だ、と思うからできない。『この業界は特殊だから』と自分の会社が特別だという思いを捨てて、言い訳はやめよう」(米村氏)。覚悟を決めれば、残業ゼロは必ず達成できる。

企業情報

株式会社アクシア
・本社所在地:東京都千代田区東神田1-16-7 東神田プラザビル4F
・設立:2006年2月
・従業員数:23人
・事業内容:業務システムやWebサイトの構築、保守移管、運用

【編集部より】
■残業削減に関する記事はこちら


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執筆者紹介

山岡ソースケ・リホ(ライター) 人材会社出身のフリーライター夫婦。インタビュー取材からコンテンツ執筆、コピーライティングまで幅広く活動する。得意ジャンルは採用関連、ビジネス、IT、グルメなど。旅行が趣味で、毎月1回国内外問わず飛び立つ。阿佐ヶ谷在住で、街のグルメや面白スポットを開拓中。

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