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特集

特集「ブラック企業からの脱却」第2弾


サイボウズがホワイト企業の先の「カラフル企業」をつくり上げた方法

2019.03.07

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ソフト開発会社「サイボウズ」(東京・中央)は2006年から働き方の改善に取り組んでいる働き方改革の先駆者だ。2018年4月からは新たに社員一人ひとりが自由に働き方を宣言できる制度を導入。多様な働き方を実現させ、離職率は約10年で28%から4%まで減少した。ホワイト企業の次に見えた、100人100通りの「カラフル企業」はどう生まれたのか。同社広報の大川将司さんに取材した。【取材:2019年1月10日】

【特集】ブラック企業からの脱却(トップページ)

目次
  1. 「長時間働いている人が偉い」とされたブラック企業時代
  2. 選択制の人事制度で多様な働き方を実現
  3. 働き方を分類することの一歩先へ
  4. オープンな企業風土が「脱ブラック企業」を促進させる
  5. 100人100通りを実現する人事コストも、成長のためには必要
  6. 公平性よりも個性を重視するカラフル企業へ

「長時間働いている人が偉い」とされたブラック企業時代

サイボウズは2005年、ITベンチャーとして急速な成長を遂げる一方で、深刻なマンパワー不足に陥っていた。業務量の増加に社員が追いつかず、長時間労働が当たり前のブラック企業と化した。当時の離職率は28%で、1年で4人中1人が会社を去る状態。引き継ぎに追われた社員が「後追い退職」する悪循環も生まれ、各事業を安定的に回すことが困難になった。

大川さんは「『長時間働いている人がえらい』という風土があると、ブラック企業になりやすい」と分析する。長時間労働が「正義」になると、業務の効率を求めなくなる。また、社員が若い時は遅くまで働けても、30~40代になると無理が効かなくなる。子育てをはじめとするライフスタイルの変化も重なり、ハードな働き方は維持しにくい。

また、メンバーシップ型の「社員の同意のない転勤」も是正すべき課題の一つだ。サイボウズは青野慶久社長自身が「同意のない転勤は人権侵害」と断言し、転勤時には必ず本人に相談して同意を得ている。個人の意思を尊重しない働き方の強要は一切行わない。

サイボウズ広報の大川将司さん

選択制の人事制度で多様な働き方を実現

サイボウズは離職率が28%まで達した現状を何とか変えるため、給与を上げたり、配置転換したりするなど、処遇を上げることで社員を引き留めようとした。しかし、それでも退職者は減らなかった。退職理由は社員によってさまざまで、一人ひとりの働き方の要望に耳を傾ける必要があった。

そこで、個々の社員が希望する働き方を実現することを目指し、2006年に働き方改革を開始。2007年には「選択型人事制度」を導入し、短時間勤務ができる「DS」と裁量労働制の「PS」の2種類から希望する働き方を選べるようにした。子育て中の女性を中心にDSを選んで短時間勤務する社員が増えたものの、2分類では個々の希望を包括することはできなかった。社員の勤務時間や場所が一層多様化していったことも重なり、13年には勤務時間の長短と場所の自由さを軸に9分類に増やした。選択型人事制度を通じて働き方にラベルを付けることで、多様な働き方を認める文化が育ち、次第に「長時間労働が正義」という感覚が薄れていった。

働き方を分類することの一歩先へ

多様性を認める文化が根づいた今、サイボウズでは「働き方を分類すること」の一歩先にたどり着いた。それが2018年4月から始まった「働き方宣言制度」だ。全社員が勤務時間や場所を詳細に記述して宣言し、共有する。選択制の人事制度では既存の枠から自分の働き方に近いものを選ぶことができても、具体的な働き方までは他の社員に伝わりにくい。「働き方の多様化において重要なことは、個々のメンバーが希望する働き方を実現させ、それを他のメンバーが理解すること」(大川さん)。新制度ではその両方がかなえられる。

新制度では、全社員がグループウエアのプロフィール欄で働き方を文章化している。具体的には、各曜日の勤務時間と場所、出張可否、残業・深夜対応・土日出勤・出張の可否、連絡先を記載し、全社員が見られる状態になっている。

サイボウズの働き方宣言制度

サイボウズの働き方宣言制度

(「働き方宣言」の例。「満員電車を避けて、生産性向上&QOLを上げるため、8時~9時30分は在宅で働きます」と宣言する社員もいる)

こだわりは、全社員に宣言をしてもらうこと。働き方が分からない社員がいるとコミュニケーションコストがかかり、チームワークを最大限発揮することができない。定時出勤、定時退社の社員も含めて全員が宣言することで、働き方に特にこだわりがない社員も理想のワークスタイルを考えるきっかけになる

オープンな企業風土が「脱ブラック企業」を促進させる

独自性の高い新制度を全社的に浸透させるには、社員の理解や共感が必要不可欠だ。新制度を「自分ごと化」してもらうために、サイボウズは制度構築の段階で社員を巻き込む形式を採った。

人事担当者が社員にグループウエア上でアンケートを実施し、有志の社員が自主的にワークショップを開いて新制度を形作った。その後、経営会議で経営陣が議論し、社長の決裁を受けて制度が成立した。サイボウズでは「愚痴を言うだけでは働く環境の問題は解決しない」との意識が浸透している。全社員が疑問を抱いたら質問する「質問責任」、質問されたら説明する「説明責任」を持ち、話し合いにより解決策を講じることを心掛けている。

また、サイボウズは「公明正大」を掲げて「正直にコミュニケーションすること」を徹底しているそうだ。場所や時間にとらわれない自由な働き方を実現するには、社員が互いにいつ、どこにいても仕事を任せられる信頼関係が必要だ。企業情報もインサイダーとプライバシーに関する事案以外は共有し、社員が希望すれば経営会議にも参加できる。社内がフラットな環境になると社員の一体感が増し、互いの理解も深まる。

100人100通りを実現する人事コストも、成長のためには必要

社員数は単体で450人以上に上り、100人100通りの多様な働き方を実現させるには当然、人事的コストがかかる。勤務体系や給与は社員ごとに設定し、社員が上司とそれぞれ話し合った上で個別に雇用契約を結んでいる。上司のバックサポートを担う人事・総務部門のコストは大きい。社内には人事・総務担当者が25人ほどおり、人事管理に多くの人材を当てている。

サイボウズはさまざまな取り組みを経て、離職率はブラック企業の時代から6分の1(2018年12月時点)にまで減少した。会社の売上も2012年から右肩上がりで、連結売上は100憶円を突破している。各社員が最適なパフォーマンスを出せる環境を整えることが、業績にもつながった。大川さんは「他社と比較すると高い人事コストかもしれないが、成長のためにリターンの大きい投資だと判断している」と話す。

公平性よりも個性を重視するカラフル企業へ

現在、サイボウズでは多くの社員が19時前後には退社している。無理やり帰らせているのではなく、あくまで個人の裁量にゆだねた結果だ。過剰労働にならない範囲で遅くまで働きたい人は自由に働いてよく、一律退社の制約は設けていない。個人を尊重して多様な働き方を実現するサイボウズは、自社をホワイト企業ではなくカラフル企業だと定義する。ブラック企業から脱却し、公平性よりも個性を重んじて社員一人ひとりの幸福を追求することが、離職率の減少や成長企業への近道になるかもしれない。

勤務体系や給与などの「制度」、情報共有や交流促進のための「ツール」、多様な個性の尊重や自立と議論などの「風土」。多様な働き方に必要な3つの柱を一つずつ組み上げていけば、ブラック企業の先に見える「カラフル企業」が実現できる。

企業情報

サイボウズ株式会社
・本社所在地:東京都中央区日本橋2-7-1 東京日本橋タワー 27階
・設立:1997年8月
・従業員数:468人(単体、2018年12月時点)
・事業内容:グループウエア開発、販売、運用

【編集部より】
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執筆者紹介

萩原かおり(はぎわら・かおり) フリーランスのライター・編集者。美容と心理が専門で、婚活パーティーの取材人数は200人を超える。三度の飯と執筆が同じくらい好き。求人・化粧品・社史制作を経て独立。現在は執筆業を中心に、取材記事から広告・LP・メルマガ作成まで幅広く活動中。休日はエステとジムに通い詰める美容オタク。 https://note.mu/hagitaro1010

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