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コラム

弁護士による企業がとるべき法的対策解説


弁護士が教える「従業員の不適切SNS投稿」の対策とリスク

2019.02.18

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どの業種にもある“バカッター”“バカスタグラム”のリスク。社外秘情報の漏れ、取引先の悪口など従業員SNSによる不利益をどう防ぐべきか

SNSの普及に伴い 2013 年にも社会的な問題となった、いわゆる“バカッター問題”が再燃しています。

投稿者が反社会的行動を自ら撮影・ネット上にアップすることから始まるこの炎上、数年前であれば「急激なインターネット、SNSの普及により、IT リテラシーが低いユーザーが拡散への想像力欠如で起こしてしまう」と言われていましたが、いまだに騒動が次々に起きていることは憂慮に堪えません。

従業員による不適切なSNS投稿は、企業の社会的価値を大きく損なうことにもつながり、飲食業に限らずどの企業でも起きています。社外秘の情報が漏れたり、取引先への文句をつぶやいたり…新聞の一面を飾るまでではないものの、そうした問題は実は日常的に起きており、多くの企業が頭を悩ますところです。

従業員による不適切なSNS投稿を防止するために、また発覚後の被害を最小限にするために、企業が取るべき対策を法的に解説します。

【参考】「ブラック企業」「ハラスメント」…採用担当者が悩むネガティブ書き込みへの対策は?

明確な社内ルールの作成・周知徹底で、SNSの問題投稿を未然に防ぐ

rscolm_fujii5th_1_190218よく、「従業員にSNS利用を禁止するのが手っ取り早いだろう」と考える企業がありますが、これには2つの点で問題があります。

まず、1つ目の問題として、このような一律禁止は、法的に無効の可能性が高い、ということです。従業員には表現の自由があるので、一律禁止は、会社による従業員の私生活に対する過剰な干渉になるからです。

2つ目の問題として、従業員から大きく反発を受けることになります。現代はSNSを通じて情報収集、人脈構築をしている従業員も多く、一律禁止は従業員にとって大きな不利益になるからです。

従業員にSNSのアカウントを届け出させて、会社側で投稿を日々チェックしている企業もあります。が、これもまた過度な干渉にあたり、法的には無効の可能性があります。会社のネット環境からSNSへのアクセスを制限するという手もありますが、いまやSNS投稿に使われるのは圧倒的にスマートフォンが多いため、根本的な抑止にはならないでしょう。

では、スマートフォンを職場に持ち込むことを禁止するのはどうかというと(例えば、ロッカーや貴重品ボックスに仕舞わせるとか)、従業員がこっそり持ち込む可能性がありますし、就業開始前・終了後の投稿は防げませんので、万全ではありません。

従業員のSNSトラブルを未然に防ぐ第一歩は、まずシンプルに“ルール化”することが重要です。

ポイント① SNS利用ガイドラインを作る

SNSで不適切な投稿をしてしまうのは、リテラシーが欠けているからです。自分の投稿を世界中の誰もが見ている可能性があり、ひとたび不適切な投稿をすれば、どんな事態になるのか分かっていれば、最初からそんなことはしません。

そこで、「SNSで、どんな投稿をすると、どんなことになるのか。どんな投稿ならしても構わないが、どんな投稿はしていけないのか」について、ネットの炎上事案などを具体的に紹介しながら、分かりやすい内容のSNS利用ガイドラインを作りましょう。そして、それを新入研修や、定期的な社内研修で、従業員に周知しましょう。

ポイント② 誓約書を提出させる

SNS利用ガイドラインを作って周知しても、それを無視してSNSを利用する従業員も、中にはいるでしょう。そこで、

  • SNS利用にあたっては、他の社員や取引先、株主などあらゆるステークホルダーが、自分の投稿を見ている可能性があることを、十分に注意すること。
  • 社員や取引先、事業に関する情報、業務に関する情報、その他機密情報は、一切投稿しないこと。このような投稿は、機密情報の漏洩にあたることを自覚すること。
  • 投稿を見た人が不快に感じるようなことは、一切投稿しないこと。このような投稿は、会社、取引先などに損害を与えるだけでなく、自分や家族、友人にも不利益になることを自覚すること。
  • これらの誓約に違反した場合は、会社から懲戒処分を受けたり、民事・刑事の法的措置を講じられる可能性があることを了承すること。

といった内容の誓約書に、署名・押印をしてもらい、会社に提出してもらいましょう。従業員の危機意識に直接訴えかけることで、大きな抑止力が期待できます。

ポイント③ 就業規則で規定する

rscolm_fujii5th_2_190218ここまでやっても、不適切な投稿をする従業員がいないとは限りません。そのような投稿が行われた場合に、きちんと懲戒処分をすれば、さすがに二度と不適切な投稿はしないでしょうし、他の従業員に対する注意喚起が期待できます。

ですが、従業員に懲戒処分をするには、就業規則上の根拠(懲戒事由)が必要です。そしてこれが、きちんと規定されていない就業規則も多いのです。

そこで、就業規則の中で、機密情報の漏洩行為や、会社の信用・名誉を傷つける行為を、禁止行為として規定すると共に、それに違反した場合は、懲戒事由に該当することを、きちんと規定して
おきましょう。そして、①と②の際に、就業規則のことを併せて説明しておけば、より①と②が効果的になるでしょう。

問題が起きてしまったら、とにかく迅速に対応する

これら防止策を行ってもなお、騒動が起きてしまった場合はどうすればよいでしょう。

① 投稿を特定して保存する

騒動の過程で、問題の投稿は次々と拡散されますが、途中で加工がされている可能性もあるので、オリジナルの投稿をURLが特定できる形でキャプチャーを取るなどして保存しておく必要があります。
本人が騒動に驚いてオリジナルの投稿を削除したり非公開にしたりする可能性もあるので、早急に行う必要があります。いち早く投稿に気付くためにも、管理部門は自社名や事業名などでエゴサーチを設定しておくのもよいでしょう。

② 投稿者を特定して事情聴取する

投稿者を特定したら、直ちに事情聴取を行い、投稿の経緯などについて確認します。なお、事情聴取に際しては、後で言った言わないの争いにならないよう、録音しておくべきです。

③ 投稿者に投稿を削除させ、謝罪の投稿をさせる

SNS アカウント自体の削除は、謝罪の手段を失うことになってしまうので、させるべきではありません。会社のためはもちろんのこと、本人のためにも、誠実な謝罪を投稿させます。

④ 企業としての公式コメントを出す

会社としての謝罪(従業員の管理不十分)と、再発防止策を策定し、騒動が拡がってしまった場合はそれらをプレスリリースやコーポレートサイトで公表します。炎上は極めて早いスピードで広がるので、①〜③と同時進行で迅速に行う必要があります。

⑤ 投稿者を処分する

就業規則に基づき、問題の程度に応じて、懲戒処分を下します。処分結果については社内で共有することで、他の従業員が同じようなことをしないよう、注意喚起します。処分を社外に公表するかどうかは、事案に応じてケースバイケースになります。

⑥ 法的措置の検討

騒動の悪質さ、会社の被った損害の重さ如何によっては、民事の損害賠償請求訴訟の提起、刑事の業務妨害罪等での告訴など、法的措置を講じることも、ケースバイケースで検討することになります。

なお報道によると、2019年2月4日頃に従業員の不適切な行動がSNS上に拡散された大手回転すしチェーンは、今回の炎上を同日に把握し、翌5日に従業員から事情聴取を行い、翌6日に謝罪を発表、さらに8日には「雇用契約を終了し、退職処分とした」と同時に、「刑事、民事での法的処置の準備に入った」ことを公式に発表しました。

これは、①〜⑥を極めて短期間に行ったことを意味しています。
この会社の迅速な対応は世論に評価され、風評被害を最小限に食い止める成果を出しています。

従業員の不適切なSNS投稿は、企業にも本人にも不幸な結果にしかなりません。まずは不適切投稿をさせないための社内体制を整備し、騒動が起きてしまった場合は誠意をもって迅速に対応する事が、現代企業の必須スキルとなります。
“バカッター”“バカスタグラム”による被害をなくし、ぜひ企業・従業員ともに健全なSNS活用を楽しんでください。

【弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 概要】

法人名:弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所(第一東京弁護士会)
代表弁護士:藤井 総、小野 智博(共同代表制)
所在地:東京都千代田区丸の内1-8-3 丸の内トラストタワー本館20階
電話:03-4405-9708
設立:2015年(2018 年に現事務所名に変更)
ホームページ:IT弁護士.com https://itbengoshi.com/
事業内容:IT事業に特化した企業法務顧問業
オウンドメディア:IT弁護士 MEDIA https://media.itbengoshi.com/

【この記事は2019年2月14日発表の弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所のリリース記事を一部編集して公開しています】

執筆者紹介

藤井 総(ふじい・そう)(弁護士法人ファースト&タンデムスプリント法律事務所 代表弁護士) 「世界を便利にしてくれるITサービスをサポートする」ことを使命(ミッション)に掲げ、ITサービスを運営する企業に法務顧問サービスを提供している。 顧問を務める企業は2019年現在で70社以上。契約書・Webサービスの利用規約(作成・審査・交渉サポート)、労働問題、債権回収、知的財産、経済特別法など企業法務全般に対応している。

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