企画

就活ルール廃止元年 2021年卒の本音(後編)


就活ルール廃止「学生の間では話題にすら上がらない」って本当?

2019.02.19

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「就活ルール」廃止元年に就職活動をすることになった、2021年卒の学生たち。@人事は彼らの動向を明らかにするため、以前公開したアンケート調査に加えて、学生の個別取材も実施した。就活ルール廃止を受けて感じていること、就職活動の本番に向けて学生がどう動き、企業に何を求めているのかを赤裸々に語ってもらった。

※参考:経団連・中西会長「就活ルール」廃止に言及 安倍首相は遵守を呼びかけ
※参考:就活ルール廃止。今後の新卒採用のカギは「ファン」の創造

目次
  1. まだ21卒は就職活動そのものに関心が低い
  2. 「ルールがなくなっても、実情は変わらない」
  3. ルールがなくなっても就職活動は早期化しない?
  4. インターンシップでより多くの情報を包み隠さず提示し、満足度を高める
  5. 「就活ルールどうこうよりも、内定をもらえるかどうかの方が大事」

まだ21卒は就職活動そのものに関心が低い

就活ルール廃止の話?周りの2年生では話題にも上がらない

早稲田大学教育学部2年のYさん①

今回、取材に応じてくれたのは早稲田大学教育学部2年のYさん(男性)。自動車業界や総合商社で広報の仕事がしたいと考え、昨夏には2年生ながら20年卒の学生に交ざってPR会社で2週間のインターンシップに参加した。今では本番の就職活動に向けて、新たなインターンシップを探している最中だそうだ。筆者は、Yさんのように先の見えない就職活動に向けて早くから行動している学生が一定数いるのかと思っていたが、Yさんから返ってきたのはルール廃止は話題にすらならないという意外な答えだった。

以前、@人事が行った21年卒向けのアンケートでは、約3割が就活ルールに対して「まだよく把握していない」「前例がない」と回答していた。Yさんはこの結果に「突然ルールがなくなると言われても、リアリティーを感じられないのでは」と分析する。「まだ一度も就職活動をやったことすらない学生が、ルール廃止でどんな影響が出るのか考えるのは難しい」(Yさん)。就職活動開始目前の20年卒の先輩も「自分たちはルール廃止の影響を受けない」と考えているからか、会話にルール廃止の話は上がらないという。
ちなみに、Yさんの周囲ではそもそも就職活動について話題に上がることすら少ないそうだ。就職活動、ルール廃止ともにまだ2年生では関心が高くないのかもしれない。

「ルールがなくなっても、実情は変わらない」

Yさんは「就活ルールがある今でも、広報や面接の解禁前から学生に内定を出している企業はたくさんある。名実ともにルールがなくなった、ということ」と冷静に捉える。すでに一部の企業は、経団連の面接解禁日より前に「面接練習」と称して選考を行ったり、インターンシップ参加者に早期内定を出したりしている。「ルールがあってもなくても、実情は何も変わらない」との考え方が、「そもそも学生たちの話題にも上がらない」理由の根源にあるのかもしれない。

一方で、ルールに賛成している学生がいるのも確かだ。Yさんは「就活ルール廃止でメリットを受ける学生は、すでに行きたい業界や企業が絞れている人だけ」と考える。エントリーしたい業界が決まっていたら、ルールにかかわらず早い段階からその業界の内定をもらえるように動き、その後の学生生活を自由に過ごすことができる。しかし、自己分析や業界研究をしてから業界を決めたい人は、一定の準備期間が必要だ。その間に「志望業界確定済み学生」たちが先に選考に進み、内定を取っていると、当然「業界迷い中の学生」は焦りを感じるだろう。ここで、就活ルールの賛否が分かれるのではないかと、Yさんは考えている。

ルールがなくなっても就職活動は早期化しない?

就活ルールがなくなったことにより、企業では就職活動の早期化や通年採用が進むと予想されている。しかし、@人事のアンケートの結果を見ると、学生の考えとは若干乖離があることが分かった。

アンケートでは、就職活動の開始時期について「3年生になったら」「3年の夏」という回答が多かった。この時期は、現行日程で就職活動をする20年卒の学生がインターンシップに参加し始めるタイミングとほぼ同じだ。Yさんは「就活ルール廃止が与える影響がつかめない中、ひとまず21年卒は先輩たちと同じ動きをしようと思っているのではないか」と話す。同時に、21年卒もインターンシップを就職活動のスタートと捉えている傾向も伺える。企業は学生から最初の「見極め」を受けるインターンシップで、どうすれば学生の心をつかめるのか。

インターンシップでより多くの情報を包み隠さず提示し、満足度を高める

Yさんがインターンシップで重視する点は、「実務が経験でき、本音が聞けるかどうか」だそうだ。

早稲田大学教育学部2年のYさん②

Yさんが参加したPR会社のインターンシップでは、クライアントに関連する記事のスクラップ、営業同行、記者会見の同席などが体験できた。ほぼ実務に近い経験を通じて、自身がPR会社の仕事をしたいのか、あるいは特定の企業に入り広報をしたいのか、就職活動の軸を考えるきっかけになったと、Yさんは振り返る。
また、ランチの時間には社員から会社の裏話や仕事で苦労したことを話してもらった。社内では電話が鳴り止まず忙しく働く社員の姿も、上司から厳しく怒られる社員の姿も見ることができた。都合の悪い情報を含めて会社のそのままの姿を見せてくれたPR会社に、好感を持ったという。実務に近い仕事を体験し、プラスマイナス両方の情報を学生に提供し、より多くの判断材料を学生に与えられるかどうかで、彼らの評価が左右される。

Yさんがもう一つ重視するのは「インターンシップが採用に直結するかどうか」だ。なんと、学生たちの間では「表面上は『選考なし」としていても、実は採用に直結するインターンシップ」の情報をまとめたデータが出回っているらしい。大学卒業までに内定がもらえるのか、不安を抱えながら就職活動をする疲労感を考えれば、学生にとってインターンシップで早期に内定をもらうのはメリットになる。どのような就活ルールになっても、「とりあえず内定がほしい、が学生の本音」(Yさん)なのかもしれない。

「就活ルールどうこうよりも、内定をもらえるかどうかの方が大事」

「就活ルールどうこうよりも、自分が内定をもらえるどうかの方が大事」。これが学生の叫びだ。彼らは就活ルールの有無にかかわらず、自分の目指す方向に合った企業にどれだけ接触できるかを考えている。これはどれだけ時代が変わろうと、ルールがなくなろうと変わらない不動の欲求だ。まずは就職活動の入り口に当たるインターンシップで、学生一人ひとりにどれだけの情報を手渡し、満足感を与えられるか。その視点で採用戦略を見つめ直してみてはどうか。

【編集部より】
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