特集

社労士が解説 働き方改革のポイント vol.10


副業の解禁で外せないポイントと企業での効果的な運用方法

2019.02.13

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働き方改革をテーマにした連載「社労士が解説 働き方改革のポイント」。今回は、働き方改革の中の「副業の促進」について解説します。副業・複業を認めることが企業にどんなメリットをもたらすかについて、また社内でのルールの設定や運用にあたっての注意点をまとめました。

※関連:【特集トップ】社労士が解説 働き方改革のポイント

目次

政府が促進する副業解禁の流れ・副業禁止ルールの有効性

働き方改革に関連した政策の一環として、政府から副業や兼業の促進が発信されています。具体的には、平成30年1月に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を制定し、さらに現行のモデル就業規則が基本的に副業・兼業を促進する形式に改定されました。中小企業庁からもパラレルキャリアを促進する提言がされており、副業を促進する流れが続いています。

現状では就業規則で副業を禁止している企業も多いですが、こうした規則が有効かどうかは慎重な検討が必要です。近時の判例を見ると、就業時間外は副業を含めて労働者の自己決定を認めるものが増えています。職場の秩序や情報管理に悪影響を及ぼす、疲労で明らかに仕事の能率が下がるといった明確な理由がない限り、一律の禁止は難しいのではないかと解釈されます。今後はさらに政策の推進により、副業を認める流れは一層進んでいくものと思われます。

※関連:管理職の8割「副業認めてもよい」 それでも企業が認めない理由とは

企業における副業の考え方

副業をする男性のイメージ画像

企業が副業をどう扱うかは非常に難しい問題です。そこで副業についての考え方やルールの設定・運用について解説します。

働き方改革が目指すものは、多様な働き方が許容される社会をつくり、個人の付加価値を増大させ、生産性を向上させることです。これは決して理想にとどまるものではありません。企業も、労働集約的な考え方を離れ、社員の創造性を重視した考え方を持つことが発展につながるのだと思います。

疲労による本業の能率の低下、企業情報の流出などが副業に対する懸念としてよく聞かれます。こうした懸念はもっともではありますが、それらは防止できないことなのか、副業を認めるメリットの方が大きくないのかということは真摯に考える必要があると思います。

働く方の視野の広がりや能力の向上は、さまざまな挑戦からもたらされることが多いですし、自社では用意できる場も限られます。現在ではクラウドソーシングなど、副業の方法も広がっており、前向きな検討が望まれる流れになっていると言えます。検討を進める上で、メリットとなるような視点を下記に列挙します。

※関連:なぜ副業を禁止するの? 社員の副業を推奨すべき7つの理由

生産性を向上させる視点

副業を行うことで、本業の生産性や効果が高まることがあります。たとえば、インターネットの開発職の方が規模の小さい受託案件を行うことで本業では扱うことのない技能の幅が広がったり、企画職や営業職の方が仕事に関連がある内容の執筆業を行うことで一層視野が広がったりといったことです。

特に企画職や技術職においては本業との間に相乗効果が生まれる可能性が高いといえます。企業がこうした有益な副業を促進したいのであれば、副業にどういった職務を想定するかを決め、ロールモデルを提示したり目指す方向性を規定することにより、有益な副業に目が向きやすい状況をつくるとよいでしょう。

収入確保の視点

さまざまな事情により、短時間のアルバイトを行って収入を向上させたい会社員が増えています。働き方改革において企業が時間管理などを厳格に行うのは、個人の生活状況に応じた多様な働き方を実現するためです。そして、その個人の時間には当然副業を行う時間も含まれるものと言えます。空いた時間を使って仕事の「複業化」を進めることは、これからの大きな流れだと言えます。雇用する人の生活への自己決定を広く認めることで、業務へのモチベーションアップも期待できます。しかしトータルの労働時間があまりに長くなってしまう場合は、申請制にするなどして、労働者の健康に留意する工夫も必要でしょう。

※関連:「パラレルキャリア」を認めた企業 その経緯とメリットとは

副業の運用でおさえておきたいポイント

基本方針が定まったら、方針に沿ったルールつくりと、労務管理上の運用の整備を行う必要があります。以下、ワークルールの設定や運用で注意すべきポイントを紹介します。

副業開始にあたってのルールの定め方

企業として促進したい副業のあり方がある場合は、それに即したルールの設定が必要です。また、個人事業主の形での副業ではなく別の企業へ雇用される場合、労働時間の通算や社会保険料の支払いなどを検討する必要性もあるため、副業を行う場合は申請を行う運用にすることが一般的です。申請の項目や対応についても基準が必要でしょう。

情報管理

副業を行う場合に他社への情報漏洩を防ぐのは当然ですが、他社の情報を自社で扱うことにより、情報の盗用に当たってしまうケースも想定されます。最低限、上記のケースを防ぐようなルールの設定が必要だと考えられます。他にも、業種や職種によってさまざまな注意点があると考えられます。

労働時間の管理

異なる職場で副業を行う場合、労働基準法では労働時間を通算することを定めています。また通算した結果、時間外労働(残業)に該当する場合は、割増賃金の支払いの必要があります。厚生労働省のガイドラインによると、一般的には後から契約した事業主に割増賃金の支払い義務があるとされていますが、微妙なケースもあります。また、通算のための運用方法を検討する必要があります。

社会保険の適用

異なる職場で副業を行う場合、職場から職場への移動において事故が発生した場合にどちらの事業場の通勤災害となるかといった、保険適用に関する問題があります。また雇用保険や社会保険は、一つの事業場のみでの加入となりますが、どちらの被保険者となるかの選択の基準や申請のための届け出には特別なルールがあり、これらの運用の必要性も出てきます。

運用にあたっては専門家の活用も

複業をする男性のイメージ画像

副業にあたってのルール策定や運用にはさまざまな角度からの検討が必要だと言えます。また、単に法的な考慮のみではなく、ルールの運用や社内での広報、また、特に社会保険手続等の運用についても考慮が必要です。社会保険労務士などの専門家の活用が有効であると思われます。

働き方改革の流れの中で、こうした副業や兼業は今後より一般的になっていくことでしょう。また最初に見た通り、あらゆる規模の企業において、副業をどのような位置づけにするか、検討する必要性が高まっていると思われます。副業のメリットに注目し、積極的な視点を持つことが大切です。

※関連:2019年度就業規則改訂で知っておくべき副業・兼業の法的リスクと回避

【編集部より】
副業・複業に関する記事はこちら

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執筆者紹介

松井勇策(社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト) 東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

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