【速報】厚労省で記者会見
住友重工で自殺未遂した30代社員が労災認定。時間外労働は月116時間に
2019.02.08
勤怠管理システムを導入し、上司が長時間勤務者と面談を実施も業務量は変わらず。男性社員が会社の寮から飛び降り自殺を図る
住友重機械工業(東京・品川)の30代男性社員が2016年、出向先の子会社で精神疾患となったのは月100時間を超える長時間残業や上司からの叱責が原因だったとして、横須賀労働基準監督署(神奈川県横須賀市)が労災認定したことが分かった。
【写真】厚生労働省で記者会見をした代理人弁護士(撮影:@人事編集部)
2月8日、厚生労働省で記者会見した男性の代理人弁護士によると、男性が勤怠管理システムに記録されない方法で残業していたことを上司は把握していた。しかし、上司は男性の業務量を調整することなく、男性が残業していることを叱責。男性は精神疾患となり飛び降り自殺を図ったが、一命をとりとめた。
4月に迫る働き方改革関連法の施行を前に企業は時間管理の徹底や勤怠管理ツールの整備を進めているが、今回の事件は「小手先の対処」がいかに意味をなさないかを物語っている。
業務が増え続け、時間外労働は月116時間に
事件のあらましはこうだ。
男性の代理人弁護士によると、男性は2014年に住友重機械工業に入社し、すぐに横須賀市内の子会社に出向。航空機の部品の材料管理を担当していたが、2016年5月以降は外部機関に監査を受けるための準備、入社3年目の研究課題(論文作成)も兼務することになった。
業務量は所定労働時間や36協定の範囲では終わらないほどに増加。男性は監査準備のために13日間連続で勤務したほか、残業時間も月100時間を超えていた。
同社の勤務管理は、社員が勤怠管理システムを使い自分で始業・終業時間を申請する。社員のパソコンのログイン・ログアウト時間が申請した始業・終業時間から30分以上離れていると、エラーとなる仕組みだった。
男性が残業する際は、勤怠管理システムに接続されていない共有パソコンを使って仕事をしていた。上司とは席が近く、上司も男性が残業していることは認識できたはずだが、上司が男性の業務量を調整することはなかった。
さらに「会社の36協定の範囲内で残業を行え」「なんでまだその仕事が終わっていないのか」と男性が残業していることを叱責したと、代理人弁護士は明かす。
男性は業務量の多さから論文作成が進まず、精神的にも負担を感じていた。論文の中間発表の場で上司から叱責されたことも重なり、男性は2016年11月、会社の寮の屋上から飛び降り自殺を図った。一命をとりとめたが、現在も精神疾患のため休職している。
男性は2018年4月に横須賀労基署へ労災申請を行い、同年10月に労災認定された。男性の時間外労働が最長で月116時間、飛び降り自殺を図る1カ月前には89時間に達していたこと、論文の中間発表会で上司に指導・叱責され、トラブルがあったことが認められた。
住友重機械工業の広報担当者は、@人事の取材に対して「詳細を把握していないためコメントできない」としている。
形骸化した面談やツール導入だけの働き方改革に警鐘
4月から働き方改革関連法が施行されるため、企業は労働時間の上限規制への対応を急いでいる。代理人弁護士は「最近は業務管理のクラウドやツールが大きく宣伝されているが、小手先の業務管理では意味がない」と訴える。
また、代理人弁護士によると、住友重機械工業では長時間勤務になっている社員を対象に面談を実施していたという。
男性の長時間労働について把握できていたにもかかわらず、上司は男性を叱責するだけにとどまった。「社員一人ひとりの業務量を把握、管理し、調整をすることが重要だと理解してほしい。これは大企業だけでなく、日本企業全体が考えるべきこと」と代理人弁護士は強調した。
経営者、人事担当者は社員の時間管理をツールに任せてばかりで、「各社員の業務量を管理する」という基本を忘れてはいないか。企業規模にかかわらず、もう一度意識を向ける必要がある。
【長時間労働対策に役立つ記事】
・人事が必ずおさえておきたい 労働時間の上限規制と時間管理方法
・【2019年改正】36協定の重要な変更ポイントと人事がとれる対策
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