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特集

社労士が解説 働き方改革のポイント vol.9


高齢者の就業と産業構造の変化

2019.02.06

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働き方改革関連法の施行にあたり、人事がとるべき実務対応から働き方改革が持つ可能性を明らかにする連載「社労士が解説 働き方改革のポイント」。

9回目となる今回は、「働き方改革」が目指す、誰もが活躍できる社会を実現するために必要不可欠な「高齢者雇用の促進」について取り上げます。少子高齢化社会において、高齢者は貴重な労働力となりうる人材です。企業が高齢者雇用を進める際に、課題となるケースや具体的な解決方法などを紹介します。

※関連:【特集トップ】社労士が解説 働き方改革のポイント

目次

「働き方改革」の本来の目的と、実現のために必要なこと

「働き方改革」は、安倍内閣が提唱する「一億総活躍社会」をつくるための最大のチャレンジだとされています。日本の企業文化から、日本人のライフスタイルまでの全てを変える改革という位置付けです。(内閣府ほか、政府各種資料より)

この「働き方改革」の一部である「働き方改革関連法」が2019年の4月以降、順次施行されることが決定しています。いずれも従来の働き方の仕組みを変える重要な施策です。

本特集では、2019年4月の法改正の対応について、第1回から6回にわたって解説してきました。しかし「働き方改革」の政策全体の中では「働き方関連法」はほんの一部分でしかありません。

「働き方改革」は、多様な働き方が許容される社会をつくり、あらゆる個人が、人生のいつの時期にでも主体的なキャリアプランを持ち、実行できるようにすること。さらに、少子高齢化の中でも労働人口を確保し、主体的な労働によって個人の創造性を引き出し、生産性を向上し経済発展に向かう、という壮大な社会ビジョンの下にあります。

働き方改革の方針では、さまざまなガイドラインや促進施策が設けられています。中には、法令上の義務を伴わないものでも、企業や個人にメリットをもたらす指針・施策も多く見られます。

しかし、いかなる法令や施策も、それ自体が未来のより良い社会や生活をつくるわけではありません。特に「働き方改革」は、働く場を用意する「企業」と、そこで働くひとりひとりが価値の実現のために積極的に思考すること、そしてあるときは主張し行動すること。そうして初めて、法令や施策が本当に生きてくるものだと確信しています。

さて、働き方改革が目指す社会をつくるために重要な「高齢者雇用の促進」について、詳しく解説していきます。

高齢者雇用の現状と今後の予測

高齢者雇用のイメージ画像

高齢者の雇用は、日本の産業にとって重要度の高い問題であり、働き方改革の中でも非常に重視されています。働き方改革の根本的な背景として、少子高齢化があります。

2017年時点で、60歳以上の就業者はすでに822万人に及び、全労働人口の12.2%を占めていました(参考:総務省労働力調査)。

この割合は今後も上昇していくと予想されます。そして、高齢者の労働力を活用しない場合、就業人口は事業続行が不可能なレベルまで急激に減少し、産業が維持できないのではと危惧されています。

戦後、特に社会保障が拡充し国民皆年金が成立してからは、多くの企業で定年制が定められ、一定の年齢になったら定年退職を迎える、ということが社会的な常識となっていました。これに対し、政府による働き方改革実行計画では、年齢に関わりなく公正な職務能力評価によって働き続けられる「エイジレス社会」の実現が掲げられています。

2013年施行の「高年齢者雇用安定法」の改正により、就業を希望する65歳までの高齢者の雇用が、あらゆる企業で義務化されました。「エイジレス社会」を実現するためには、今後、この年齢を引き上げる法改正もあり得ると考えられます。

※関連:高年齢者雇用安定法とは? データから見る日本企業の現状

そもそも定年制に合理性はあるか?

現状、定年制をとっている企業が大半です。ほとんどの企業で、定年を60歳あるいは、60代のいずれかの年齢を設定している場合が多いと思われます。一方で、「定年を引き上げる・定年という考え方をなくす」方針に移行する企業も、今はまだ少数ではあるものの徐々に増えてきています。

そもそも、なぜ定年制というものがあるのでしょうか。

定年制というものの根拠は実は徐々に失われていて、定年による退職制度は意味があることなのかを、根本的に考察する時代になっていると、私は考えています。

定年制を実施する理由は以下の2つが考えられます。

1. 身体の制約条件による能力の低下

定年制の根拠は、一つは加齢による業務能力の低下を理由とされることが多いです。しかし、60代に入った方を継続的に雇用したときに、能力低下が起こる確率は一般的なイメージよりも低いものです。さらに、60歳時点での生理的年齢(視力・聴力などの感覚機能、バランス機能を各種テストの結果から判断した年齢)には、個人差が15年ほどもある場合もあります。加齢による身体能力の低下に個人差があるように、業務能力の低下にも個人差があり、「定年」という一律の年齢で業務遂行能力は判断できないものと言えます。

加齢による暦年齢と生理的年齢の個人差の拡大

2. 就業意欲の低下

60代になると、年金の受給年齢に入ってくるため、仕事への意欲が下がるというのも、よくあるイメージの一つです。しかし、統計によれば、60歳以上の7割近くの高齢者が就業意欲を高く持っていると示されています。

高齢者の就労意向と就労希望年齢

企業の経営層や人事部の方と話していると、「高齢者は今までの業務の型が染みついていて、育成が難しい。自社でも継続雇用に入った高齢者のやる気の低下は顕著である。高齢者雇用の増加は考えられない」という発言をしばしばお聞きします。しかし、こうした見方が本当なのかを、注意深く検証する必要があると思います。

60歳を超えた高齢者の給与が一律で切り下げられ、有期雇用となり、役職を外すような継続雇用制度を規定している企業が多いのが現状です。こうした制度を規定している企業が「高齢者は業務へのモチベーションが下がるので困る」という意見を持つのは、よく考えると非常に矛盾しているのではないでしょうか。

高齢者に限らず、たとえ新卒者であっても、30~40代の労働者であっても、勤務条件を有期雇用に一方的に変えられ、給与水準が下がり、社内の立ち位置やコミュニケーションを限定された環境に置かれれば、意欲も能力も下がるのが普通ではないでしょうか。「意欲や能力が下がるのが望ましくない」のであれば、雇用条件を無期もしくは長期にし、給与水準を上げるか上がり得る形とし、責任のある立場に置くという、逆の処遇を行うのが改善策と言えるのではないでしょうか。

つまり、「高齢者は能力・意欲が下がるので、賃金を下げるのも当然のこと」という根拠なき前提による制度が、実際に予定された能力・意欲の低下を引き寄せているのではないか、と考えられます。客観的に見れば、高齢者を労働力として活用することは、社会的に必要性が高いことは当然として、個の企業単位で見ても、合理性が高いことは明らかです。

今の自社の年齢層や高齢者の持つ能力を分析し、今後活用していくことを真剣に検討することが、全ての企業にとって必要なのです。

※関連:高年齢者雇用確保措置、99.2%の企業で実施

高齢者雇用を継続するための方法論

高齢者を活用する上で、3つの方針が考えられます。

1.  継続雇用の年齢延長

2.  定年の引き上げ

3.  定年の廃止

1. 継続雇用制度

雇用契約を更改するため、特に賃金などの雇用条件の変更がしやすく、高年齢期にさまざまに変化する社員の状況や企業側の必要性に合わせ、処遇の変更がしやすい制度です。

しかし、この柔軟性はそのまま雇用が不安定であるということに直結します。本質的に雇用契約が変わり、期間(通常は1年)ごとに処遇や業務内容まで見直す可能性が生ずるわけです。被用者としての意識も当然変わります。また、社内や社外のキャリアプランニングやモチベーション維持に関する施策を行わない場合、仕事への意欲が下がることが多い傾向にあります。

2.  定年の引き上げ 3.  定年の廃止

現状の雇用契約をそのまま続けるということなので、賃金などの処遇の引き下げの変更については合理的な理由が必要です。また、通常の正社員雇用と同じように、企業側にも事業の中核を担う自社の一員として雇用する決意を要するものになります。

それぞれの施策の導入にあたっては、契約更改の限度となる基準や、同一労働同一賃金関係の基準の考慮、賃金体系の整備など、法務や労務管理上のさまざまな考慮を必要とします。社会保険労務士などの専門家の活用の意味が大きく表れる場面です。

※関連:ミドルに聞く「定年延長」意識調査  「定年延長」に8割が賛成
「超高齢社会 拡大し続けるシニア雇用」

高齢者の活用の重要性

高齢者雇用のイメージ画像

今後、年金をはじめとする高年齢期の社会保障制度の対象年齢が上がっていく中で、高年齢期でも働き続けたいと考える労働者の数も、いっそう増えていくと予想されます。少子高齢化による若年労働者の減少は、地方において特に顕著に表れてきており、近い将来には全地域的・全業種的な問題となってくると考えられます。

継続雇用制度を採用している企業が現状は多数派です。これは、今までの社会においては、高年齢者を補助的な戦力、あるいは現役時代と違う補助的役割として捉え、年金受給までのつなぎとしてのキャリアプランニングを重視してきたためでしょう。その前提には、高齢者は職業生活を終えるものだという一般的なイメージがありました。

しかしながら、働き方改革の目指す社会は年齢に関係なく活躍できる社会です。個別の企業ごとに捉えた場合であっても、一律の定年制という制度は根拠を失いつつあると考えます。高齢者が、ベテランとしての戦力を存分に活かし、確保しにくい若年の労働力に頼り切らなくとも、業績が上がり続ける企業となることが必要です。

今後5~10年先までの自社の変化を見据え、どのような施策をとることが事業の存続と発展につながり、ひいては社員の幸せにつながるのかを真剣に考える時が来ていると言えるでしょう。

【編集部より】
高齢者雇用に関する記事はこちら

執筆者紹介

松井勇策(社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト) 東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

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