特集

社労士が解説 働き方改革のポイント Vol.8


キャリア構築支援と「ひとりひとりの働き方改革」

2019.01.30

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2019年4月より順次施行される、働き方改革関連法。施行にあたって人事がとるべき実務対応から、さまざまな制度活用のメリットや働き方改革が持つ可能性を明らかにする連載「社労士が解説 働き方改革のポイント」。

今回は、働き方改革の中の「キャリア構築とキャリアアップ」について解説します。働き方改革の中でも、特に重要な事項です。

※関連:【特集トップ】社労士が解説 働き方改革のポイント

目次

働き方改革が後押しする個人のキャリア構築

働き方改革キャリアアップイメージ

働き方改革の中で重視されている大きな方針が「再チャレンジ可能な社会をつくる」ということです。これは、中年期からであっても、育児による長期休職の後であっても、高齢になってからであっても、自身の意志で働き方や職業の選択ができ、さらに自助努力によるキャリアアップが可能な社会をつくるということだと思います。

私の身の回りでも、上記のようなライフイベントを機に、働くことに対して主体的な意志を持てなくなってしまった方が何人もいます。回避不可能なアクシデントや、幸せな家庭をつくろうとする選択、避けられない加齢などにより、キャリアの構築が難しくなってしまうのは本当に悲しいことだと思います。働き方改革の目指す社会とはこうした方々がキャリアの構築を前向きに考えられる社会をつくることだと思います。

働き方改革においてはさまざまな法改正や制度構築が行われていますが、多くのキャリア構築の支援や、キャリアアップにつながる制度が規定されています。下記はその一例です。

・改正されたパートタイム・有期雇用労働法や改正派遣法にキャリア形成支援義務が規定

・厚生労働省の多くのガイドラインや助成金の要件にキャリアコンサルティングが規定

・正社員へのキャリアアップを行う制度整備や社員育成に複数の助成金が整備

・キャリアコンサルタントの国家資格化・行政機関でのキャリアコンサルティングの推奨

・事業主が労働者にキャリアコンサルティングを推奨することが努力義務化

この他にも多くの法令や制度の中で、キャリアコンサルティングやキャリア構築、キャリアアップが推奨されています。労働者のキャリアの構築は、国全体が力を入れていることなのです。

「ひとりひとりの働き方改革」ライフイベントを言い訳にしない自助努力の決心

働き方改革において、我々ひとりひとりのキャリア構築が何よりも重要であることが、社会に広く理解されていないのは本当に残念なことです。働き方改革による一連の制度や法改正などにより、我々は企業に対して主張できる権利の幅が広がり、より自由に働ける可能性が広がります。しかし、働き方改革とは、決してそれに甘えることではないと思います。

現状「働き方改革」というと、労働時間を短縮したり、ライフイベントによる休業を確保したりといったことにひもづく「ゆるく働く」とでも言えるようなイメージが先行していると感じます。しかし、政策全体を見るとき、上記の制度の整備は、多様な働き方を実現するために必要な「手段」の一部なのであって、決して働き方改革の「目的」ではありません。「ゆるく働く」というイメージは、働き方改革の全体像としては間違っているのではないかと私は思います。

では、働き方改革の目的とは何か。それは、今まではキャリア構築を阻害していたようなライフイベントを言い訳にせず、働くことへの自助努力と、キャリアアップを決心するということだと思います。これからは、労働時間や働き方を自由にする制度も用意され、働くことに自由に前向きに、主体的に取り組む基盤が整備されます。働き方改革によるそうした制度をきっかけにして、自助努力と生涯を通じたキャリアアップを決心した労働者が増え、多数になることによって生産性が大きく向上し、少子高齢化が構造的に解決されるということなのだと思います。

働き方改革とは、いますぐに我々ひとりひとりが進めていくことなのだと思います。自身のキャリアの整理を行い、キャリアアップを考えていくことも重要だと思います。キャリアコンサルタントなどの専門家も活用できるでしょう。

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企業におけるキャリアアップと、法令や助成施策

働き方改革キャリア形成イメージ
キャリアアップの支援に関して特に政策的に重視されているのが、有期契約の労働者や派遣労働者の方を、無期雇用や正規雇用に転換できる道筋をつくるということです。法的な義務である内容もあり、またさまざまな助成施策もあります。
こうした施策を積極的に活用することで、社員の方のモチベーションアップや主体性の向上にもつながります。規模を問わず、あらゆる企業で制度の活用を検討することが必要な内容だと思います。

無期転換義務

有期雇用労働者を5年間継続して雇用すると、無期契約への請求権が発生するという雇用転換の法制度が2013年に労働契約法において制定され、既に5年が経過しました。事業主には、この制度に関する労働者への情報を提供する義務があります。しかし、こうした権利や説明の義務について理解されていないことがしばしばあります。対応することは法的義務なので注意が必要です。

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無期雇用・正規雇用への転換の推奨

企業側の任意の施策として、パートタイマーや有期雇用労働者を無期雇用や正規雇用に転換する施策が推進されています。厚生労働省の助成金や助成施策でも、こうした施策を後押しするものが多くあります。

厚生労働省の助成施策として、キャリアアップ助成金という名称で、有期契約労働者を無期や正規に転換する施策を支援する助成金が多く用意されています。他にも、処遇条件の整備やキャリアアップに向けての研修の整備、キャリアコンサルティングの制度化など、さまざまな面でキャリアアップの支援施策には助成制度が用意されています。制度構築や申請は複雑なものもあるので、法令と労務管理制度に精通した社会保険労務士などの専門家の活用を、ぜひ検討されてはいかがでしょうか。

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同一労働同一賃金に関する法改正

2020年には同一労働同一賃金に関する法改正も施行されます。有期雇用や無期雇用、通常は、パートタイマー・契約社員・正社員などの名称で区分された職域を飛び越えてキャリアアップを図っていくことがより一般化していくと思われます。経営を行う上で、こうした観点を持たないことは、働き方改革に対応していないということにもなりますし、何よりも現在の経営において不合理であると思われます。

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企業が個人の多様な働き方を許容し、主体的な工夫と自助努力を促すことが生産性の向上につながり、企業にとっての成長につながるのではないかと考えられます。企業と個人、双方が働き方改革を意識し、取り組みを進めるべきときが来ていると思います。

【編集部より】
■働き方改革とキャリアに関する記事はこちら


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執筆者紹介

松井勇策(社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト) 東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

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