コラム

林修三先生のなるほど人事講座


応募者の志望動機が高まるキャリアコンサルのヒアリング法活用術!

2019.02.08

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これまで当コラムでは引き出し型面接の技法についてさまざまご紹介をしてきました。応募者の志望度を上げることができる引き出し型面接において、今回はさらに一歩引き出し力を高める技法として、「ヒストリーテイキング法」をご紹介します。
※参考:応募者の本音を引き出し、志望度を上げる「引出し型面接」のポイント

「ヒストリーテイキング法」はキャリアコンサルタントが相談者との面談において、「信頼関係を構築」するために活用されるヒアリング技法です。この記事では、本来キャリアコンサルで活用されるヒストリーテイキングを、応募者と信頼関係を構築し、内面を引き出す技法として採用面接で使えるようにアレンジしています。

目次
  1. ヒストリーテイキング法を引き出し型面接に活用できる理由
  2. ヒストリーテイキングにより得られる2つの効果
  3. ヒストリーテイキングを活用した引き出し型面接の不安要素
  4. うまく活用できれば応募者の人物把握に効果を発揮するヒストリーテイキング

ヒストリーテイキング法を引き出し型面接に活用できる理由

本来キャリアコンサルティングで活用される「ヒストリーテイキング法」。この技法が引き出し型の面接で相乗効果を生み出すという考えは、大きく以下の2点が根拠となります。
①応募者の現状までの経緯を知ることができる
②応募者との信頼関係を構築することができる

①応募者の現状までの経緯を知ることができる

ヒストリーテイキング法とは、相手のこれまでのヒストリーを時系列に沿って語ってもらうヒアリングの手法です。これは、主にキャリアコンサルタントが初見の相談者とのキャリアコンサルティングにおいて活用する手法で、ジョブ・カード※を基に、相談者がどのような経緯を経て今日に至っているのかを把握するために行います。
※厚生労働省が普及を進めている、一般的な履歴書の記載事項と実務履歴・訓練歴を合わせたようなフォーマット

②応募者との信頼関係を構築することができる

また、ヒストリーテイキングには、「初見の相談者との信頼関係を築く」という、もう一つの重要な目的があります。相談者が、初対面のキャリアコンサルタントを全面的に信頼して、何でも自発的に打ち明けるということはごく稀です。まずは相談者から何でも話してもらえるような信頼関係を構築することが必須事項になります。

ヒストリーテイキングにより得られる2つの効果

ヒストリーテイキングの手法を引き出し型面接で利用する場合に得られる効果は大きく2つあります。
①応募者に対する評価材料を得る
②応募者の自社に対する好感度を上げる

①応募者に対する評価材料を得る

1つ目のメリットは、応募者が話をしやすくなることで、面接官が評価材料を得やすくなる点です。
ヒストリーテイキング法は、言い換えれば、応募者に自分史という一つのストーリーを語ってもらうようなものです。オチ(面接でいえば「今この瞬間の自分」)を起点として面接官に伝わるように話すのは誰しもにできることではありません。
しかし、「◯◯の時はこうした、△△の時はこうした、その結果××することにつながった」という時系列の構成であれば、容易に話をできるものと思います。したがって、応募者からより詳細な自分語りをしてもらえる可能性が高まります。

②応募者の自社に対する好感度を上げる

もう1つのメリットは、面接官が応募者に対する好意的関心を示しやすくなり、応募者の自社への好感度が上がりやすくなるということです。
通常の面接では、面接官がまずオチ(=結論)を確認し、そのオチの信憑性や詳細を確認していくという流れになるため、どうしても懐疑的・詰問的なコミュニケーションになってしまうことがあります。
一方、ヒストリーテイキング法を用いた引き出し型面接では、基本的に時系列で話が進むため、面接官は自然に「ほうほう、それでそれで?」という心持ちで応募者の話を聞けるようになります。
この心持ちが、期せずして応募者に対する好意的関心を生み、結果として応募者の自社への好感度が高まることに繋がります。
(※好意的関心の効果詳細については、『面接官が身に付けておきたい「アクティブリスニング」2つのポイント』をご参照ください。)

ヒストリーテイキングの手順

1.履歴書の学歴や職歴を参照して時系列で現在までの過程を聞き出す
2.個々の出来事に対して「なぜ?」をぶつける
3.特に応募者の人生において「変化」があった部分について深掘りする
4.応募者の話に対して「受け止め表現」※で返す
※参考:『応募者の本音を引出す面接テクニック 「話の受け止め表現」とは

通常の面接では、「志望動機を教えてください」や「学生時代一番力を入れたことは何ですか?」などの質問からスタートし、まずは応募者に特定の考えや体験を語ってもらった上で、それに対して「なぜ?」「具体的には」を使って逆時系列的に話を進めていくことが一般的です。

しかし、ヒストリーテイキング法はその真逆で、主に履歴書の学歴欄や職歴欄を参照しつつ、新卒学生であれば中学校卒業または高校入学あたりから、社会人であれば最終学歴あるいは最初の就職あたりから、今この瞬間に至るまでの経緯を時系列で聞いていく流れになります。

話を聞いていくにあたり、個々の出来事や考えたことなどについて「なぜ?」「具体的には」をぶつけながら丹念に確認していくことはもちろん重要ですが、特に着目していただきたいのは、「進学・就職・転職・退職・異動・昇進」など、立場に変化のある部分です。この変化の部分について、その選択理由や変化に対する思いなどをしっかりと聞き出し、その内容を受け止め表現として返していくことが最も重要なポイントです。

ヒストリーテイキングを活用した引き出し型面接の不安要素

一方で、ヒストリーテイキングを活用した引き出し型面接では、以下の3点の不安要素が考えられます。
①面接に時間がかかり過ぎてしまう
②採用の判断にならない話で終わってしまう可能性がある
③面接官の性格によって向き・不向きがある

①面接に時間がかかり過ぎてしまう

1つ目は、話を聞き出すことに「時間がかかりすぎること」です。
応募者の経歴の中に大きな方向転換を伴う動きがある場合には、その方向転換に至った経緯を詳細に語ってもらわなければならないため、どうしても長い時間が必要になってしまいます。また、時系列で順を追って話を聞くため、応募者が話す出来事や経験があまり重要とは感じられない場合でも、すっ飛ばすわけにはいきません。
そのため、まだ応募者が多く残っているような選考フロー序盤ではなく、ある程度内定候補者を絞り込んでからヒストリーテイキング法を活用するのが理想的です。

②採用の判断にならない話で終わってしまう可能性がある

2つ目は、応募者が気分良く話しすぎてしまい、採用の評価材料として意味のない方向の雑談になってしまう恐れがあることです。
ただし、このような場合に、強い言い方で話の流れを引き戻そうとするとヒストリーテイキング法で得られる効果を潰してしまうため、引出し型面接の大前提である
・「訊く」ではなく、「聴く」
・「答えさせる」ではなく、「教えてもらう」
・「アラを探す」ではなく、「良さを見つける」
という3つの意識を忘れずに面接を行う必要があります。

具体的には、本来聞きたい内容から脱線している場合、ある程度キリのつくところまで我慢した上で柔らかい物言いで「ところで先ほど○○というお話が出てきていたのですが・・・」といったように、話題をコントロールしてください。

③面接官の性格によって向き・不向きがある

3つ目は、ヒストリーテイキング法では面接官は基本的に話を聞き続ける側に回るため、「話したがり・教えたがり」な性格の方は不適当ということになります。逆に、応募者の話の続きにワクワクできる性格傾向の方は、向いていると言えるでしょう。
たとえ内心では応募者の話にツッコミや指摘を入れたい気持ちがあったとしても、それを表には出さず、興味を強く持って聞き続けられるかどうかは、技術の問題よりも性格による向き・不向きの問題が大きいため、このヒストリーテイキング法は、使う人を選んでしまう手法です。

うまく活用できれば応募者の人物把握に効果を発揮するヒストリーテイキング

このように一定の制約条件はあるものの、ヒストリーテイキング法はうまくハマれば面接において効果的に応募者の人物把握をできるようになります。特に、企業に対して斜に構えたところのある応募者や、逆に恐縮しすぎて口が重くなっている応募者に対しては効果が出やすいため、ぜひ使いどころを探りながら活用を図っていただければ幸いです。

【編集部より】
■応募者の本音を引き出す面接に関する記事はこちら

執筆者紹介

林修三(はやし・しゅうぞう)(株式会社ヒュームコンサルティング代表取締役) 1975年生まれ。仙台市在住。東北大学法学部を卒業後、大手自動車部品メーカーの経営企画職~IT企業の人事・採用職を経て現職。現在は東北地方の複数の大学でキャリア系科目講師として学生の就職指導に努めるほか、人事・採用コンサルタントとしても活動中。

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