コラム

大学教員・後藤かずやの「働きかた」研究室 Vol.5


M-1暴言騒動から学ぶ 人事が取組むべき「評価制度の整備」とは

2019.02.01

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年末の恒例番組である「M-1グランプリ」。それまで無名だったコンビが一夜にしてスターになり得るという、お笑い芸人にとってまさに真剣勝負の晴れ舞台だ。
ところが昨年末のM-1グランプリでは、一部の出場者が酒に酔った勢いで審査員への暴言を動画で配信したことから「炎上」状態に発展。
『審査員の皆さん、もう自分の感情だけで審査するのやめてください。1点で人の人生変わるんで、理解してください』との発言もなされたという。自分たちに対する審査に強い不満があることがうかがえる言葉だ。
本稿では、「M-1暴言騒動」に見られたような、評価者に対する被評価者の不満が生じる仕組みを、会社の人事評価に置き換えて考えてみたい。

目次
  1. 騒動の概要とは
  2. 評価者と被評価者の関係性…ポイントは「評価者の期待に応えられたかどうか」
  3. 「M-1暴言騒動」と「会社の人事評価」における共通点
  4. 評価者と被評価者の間にギャップが生じる理由
  5. 被評価者が評価を納得するために、評価者がやるべきこと
  6. 適正な人事評価のために人事部門が考えること
  7. 納得性の高い人事評価制度をつくることが人事部門の使命

騒動の概要とは

12月の恒例番組である「M-1グランプリ」放送後、酔っ払った久保田と武智がインスタライブを開始。審査員である上沼恵美子に対し「自分の感情だけで審査するな」「更年期障害」などと暴言を吐き大炎上しました。とくに「更年期障害」という言葉は女性蔑視と問題視され、これらの騒動を受けてとろサーモンは出身地・宮崎の県知事選のキャラクターを解任されるまでになりました。
女子SPA!「2018年“ヒドい炎上”ワースト10。上沼恵美子へのM-1暴言事件は2位」2018/12/28』より引用

酒の勢いがあったことなどを鑑みても、度が過ぎる個人攻撃と言わざるを得ない内容だ。言うまでもないことだが、容易に個人が特定できるような配信は絶対に行うべきではなかっただろう。

評価者と被評価者の関係性…ポイントは「評価者の期待に応えられたかどうか」

これをビジネスパーソンに置き換えてみれば「自分の達成した仕事に対する人事評価に納得がいかない」状態と言えるだろう。ある成果を挙げて直属の上司や同僚から賞賛を浴びたにも関わらず、ふたを開けてみれば人事評価の結果が芳しくなかったという経験は、誰しもあるのではないだろうか。

その場合「部長、もう自分の感情だけで評価するのやめてください。1点で僕の会社員人生変わるんで、理解してください」と訴えるのが果たして正しいのだろうか。

結論から述べれば、正しくはない。人事評価の結果は「評価者の期待に応えられたか」という点が肝である。やや乱暴に聞こえるかもしれないが、原則としてあなたの評価は評価者が下すのであって同僚や評価者以外の上司の判断は無関係なのだ。
まずは、どんなに周囲から賞賛されようとも評価者から評価されなければ意味がない、という実情を押さえる必要がある。

「M-1暴言騒動」と「会社の人事評価」における共通点

以上のように、「M-1暴言騒動」の当事者である芸人と審査員との関係は、「会社の人事評価」における部下と上司との関係に似ている。
両者に共通して挙げられる問題点は以下の2点だ。
①被評価者が、自身や周囲が予想する評価と評価者による実際の評価にギャップを感じている
②そのためモチベーションが低下している

では、なぜ評価者と被評価者のそれぞれの評価にギャップが生じるのだろうか。

評価者と被評価者の間にギャップが生じる理由

原因として、被評価者が「評価者が自分に何を期待しているのかを押さえられていない」ということが考えられる。自分が評価者である上司になったつもりで数段高い評価者の目線で仕事を眺めているかが問われる。

通常、人事評価上の目標は会社の経営課題や経営目標からブレイクダウンされたものになっている。例えば営業職であれば部門の達成目標から逆算した個人ごとの目標が設定される。逆の言い方をすれば、個人の目標の集合体が部門の目標、つまりは当該部門の評価者である管理職の目標となる。

つまり、被評価者である部下の成果が評価者である管理職の評価に直結するということだ。当然、評価者としては、まずは組織として設定した個人目標を着実に達成してほしいという心情になる。
評価者が求めている成果を被評価者は理解しなければならない。そうでないと、いくら自分自身や周囲が成果を認めようとも評価には繋がらず、結果として「こんなに頑張っているのになぜ評価されないのだ!」というギャップが生じることになる。

被評価者が評価を納得するために、評価者がやるべきこと

また、評価者である管理職も評価に対するギャップを生じさせないための工夫が必要だ。

人事評価のサイクルの中で、面談を行う機会は複数あるはずだ。その際に、評価者には全社的な経営方針や部門の目標などについて個々に応じた説明が求められる。被評価者の個人目標がどのような経緯で設定され、経営方針とどのように有機的につながっているかをできる限り丁寧にレクチャーする必要があるだろう。加えて、部下の健康状態をチェックしたり、ちょっとした悩みを聞いたりするなども信頼関係構築につながる。面談は管理職と部下のコミュニケーションの場としても有効なのだ。

適正な人事評価のために人事部門が考えること

面談を有効な場とするためには、評価者である管理職自身が面談のスキルを有することが必要だ。人事担当者は人事評価制度の周知や面談スキル(傾聴力やコーチング能力など)に関する研修を実施するとともに、人事評価に対する第三者的な窓口を設置するなどの対応が求められる。もちろん、現場の意見を吸い上げて人事評価制度の改善を図ることも業務の一つだ。評価は現場で行われるが、その下地は人事部門が整備する必要がある。

話をM-1に戻せば、いくら観客を沸かせお茶の間を爆笑の渦に巻き込んだとしても、目の前の審査員のお眼鏡にかなわなければ高得点は取れない、ということになる。M-1の評価者は審査員なのだ。彼らが何を望みどのような評価を下すのかを考え抜くというのも芸人としての技術なのではないか。
とは言え、渾身の芸に対する評価について不満が生じるのは自然な感情だ。人事担当者の視点で考えれば、このような評価に対する不満が生じないよう人事評価制度の適正な運用を図る不断の努力が欠かせない、ということになる。

納得性の高い人事評価制度をつくることが人事部門の使命

先に述べた通り、人事評価制度は一義的に現場の評価者に動いてもらう必要がある。管理職を経由して評価してもらうという点でバラツキが生じてしまい、適正な運用を維持するのが難しいのだ。
人事部門は評価者研修の実施など、後方支援に徹せざるを得ないのが実情だ。現場には部下の心情を汲めない評価者やロジカルでない評価者がおり、被評価者としては愚痴の一つも言いたくなる状況があるかもしれない。

それでも、人事評価は職場のコミュニケーションの促進や社員個人の能力開発に資するという点で向き合うべき人事的な業務であることは間違いない。評価者研修の機会に評価者の意見をヒアリングしてみることや、相談窓口に寄せられた苦情を分析して制度改善にフィードバックするなど、工夫次第で動ける余地はあるはずだ。
人が人を評価するという点で運用が難しい人事評価であるが、今回のM-1騒動を反省材料として、納得性の高い制度構築に目を向けてみてはいかがだろうか。

 

【編集部より】
■納得感を高める人事評価制度に関する記事はこちら

執筆者紹介

後藤かずや(山形県立米沢女子短期大学講師) 人事部門で勤務する傍ら、産業カウンセラー、キャリアコンサルタント等の資格を取得。その後、人事・採用・社内研修講師等の実務経験を活かして現職に転身。 専門はキャリア教育、人材マネジメント、人事・労務政策。修士(人間学)。 ビジネスマン向けウェブメディアであるシェアーズカフェオンラインに記事を多数寄稿する他、ブログ・Facebookで「働くこと」に関する論説を展開している。
ブログ:http://goto-kazuya.blog.jp/
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