ドラッカーに学ぶ成果をあげる人の条件
あなたは、自分の得意な「仕事の仕方」を知っていますか?
2016.03.23

「驚くほどの多くの人たちが,仕事には,いろいろな仕方があることさえ知らない。そのため得意でない仕方で仕事をし,当然成果はあがらないという状況に陥っている。」
(「明日を支配するもの」 P199)
「成果をあげるための習慣的な姿勢と基礎的な方法」としてドラッカーが問いかけるのは、あなたの得意な「仕事の仕方」を知っているか?です。
しかし、仕事の仕方を知ることが成果をあげるための条件であると言われても、もしかしたら多くの方が途方に暮れるかもしれません。
仕事の仕方と言われても、そもそも仕事には、はじめからマニュアルが用意され、また職場にある古くからの慣行に従うことが暗黙の了解でまかり通っています。仕事の仕方を知る必要が本当にあるのか疑問が湧くのも当然なのかもしれません。
確かに多くの仕事には決められたルールがあります。これは、今に始まったことではありません。
かつては仕事の仕方を知る必要は無かった
春になったら、畑に種をまくことは当たり前のことでした。種のまき方も種をまく時期も決まっていました。種のまき方も種をまく時期も各自の仕事の仕方に任せていたら、種のまき方にムラが出るだけでなく、種をまく時期も逸してしまい効率よく収穫出来ません。
しかも、建設機械もコンピュータもなかった時代は、(人道的見地から大いに問題がありますが)奴隷が半ば強制的に建設機械の役割を果たしていました。
そもそも、仕事の仕方など問題とされず、言われた仕事を言われたようにやることが求められました。
われわれの多くは、仕事の仕方を知る必要がなく、また考える習慣もなかったのです。
今日では得意な仕事で成果をあげることが求められている
しかし今日では、マニュアルできめ細かくルールを決められたファストフード店の店員でさえ、作り笑いをするか、心の底から笑顔を作るかで差が出ます。
そして、お客様が一番感動をするのは、マニュアルを超えたサービスです。
街を歩けば、飲食店がひしめき合って競争をしていますし、モノを運んだり動かしたりする仕事は奴隷から機械に置き換わりました。
そういう時代で求められるのは,差別化です。
今後、ますます画一的なものではなく、その人の得意な仕事の仕方で成果をあげ、差別化することが求められる時代になっていきます。
では、ドラッカーの言う得意な仕事の仕方を知るためには、具体的にどうすればいいのでしょうか?
自分は「読む人間」か「聞く人間」か?
「仕事の仕方について初めに知っておくべきことが,自分は読む人間か,聞く人間かである」
(明日を支配するもの P201)
とドラッカーは述べています。
世の中に「読んで理解するタイプの人間」と「聞いて理解するタイプの人間」がいるという事実に戸惑う人がいるかもしれません。
そもそも、自分が読んで理解するタイプの人間か、聞いて理解するタイプの人間なのかを意識して仕事した経験のない人が圧倒的に多いと思います。しかし、利き手が右手か左手かという以上に、両者の差はハッキリしているようです。
聞いて理解するタイプの人間は、相手の主張を耳で理解し、相手の主張を記憶に留めつつ、その受け答えもすぐに用意できます。どちらかと言うと行動力のあるタイプの人間です。
これに対して、読んで理解するタイプの人間は、白熱した議論になると言い負かされてしまうか、途中でブチ切れて議論を中座してしまうかです。
ところが、文章や図表にまとめ、理路整然とじっくりと時間をかけて分析することに長けています。どちらかと言うと参謀タイプの人間です。
自分がどちらのタイプなのか、言われてみると気がつくことが多いのではないでしょうか?
われわれが、読んで理解するタイプと聞いて理解するタイプの人間に分かれたのは、おそらく一方の能力に長けた人間だけの集団で活動すると衝突を繰り返したからだと思います。両方のタイプの人間が協力しあう方が社会としてうまく機能したので、両方のタイプの子孫が今日まで,生き延びてきたのだろうと思います。
読んで理解するタイプの人間と、聞いて理解するタイプの人間が、互いに相性(ウマが合うか合わないか)という問題で簡単に片付けられてしまっているのかもしれません。
しかし、読んで理解するタイプの人間と聞いて理解するタイプの人間の違いを理解していないことが、相性の良し悪しにつながっている――だとすればもったいない話です。
もし、読んで理解するタイプの人間であるならば、なにか重要な決断をするときには、想定問答を事前に文章で用意させておく方が上手くいきます。
逆に、聞いて理解するタイプの人間であるならば、想定問答を事前に口頭で伝えた方が上手くいくわけです。
読んで理解するタイプが、聞いて理解するタイプの人間の上手くいったやり方を無理やり真似しても成果をあげることは難しいです。反対に、聞いて理解するタイプの人間が読んで理解するタイプの人間の真似をしても上手くいきません。
自分の仕事の仕方を見つめなおす必要性
最近、職場で適性検査が実施され、働く人の個性を理解しようとする動きがありますが、まだまだドラッカーの言っている、「読んで理解するタイプの人間なのか聞いて理解するタイプの人間なのかを理解し、それぞれのタイプによって仕事の仕方を合わせようとする」働き方までには至っていないように思います。
もし、あなたが職場で成果をあげられない、あるいは相性が合わないことで悩んでいるのであれば、あなたの得意な仕事の仕方が何なのかを自分の中で向き合って欲しいと思います。
そして、自分の仕事の仕方を理解したら、自分にあった仕事の段取りや必要な資料を相手にわかりやすく伝えるようにすることですね。
それと同時に、自分の仕事の仕方だけではなく、共に働く人の仕事の仕方を理解し、その人にあわせた仕事の段取りを考えて行動し、必要なタイミングで資料を用意してあげるように努力することです。
仕事の仕方を理解することによって、成果をあげるといわれても、いま一つピンと来なかったかもしれませんが、仕事の仕方を理解するほど奥が深く、また成果をあげる原動力となるものはないのです。
まずは、自分の仕事の仕方はどのタイプなのか、じっくりと自分を見つめなおしてみてください。
執筆者紹介

大林茂樹(おおばやし・しげき)(大林税務会計事務所代表) 1999年大林税務会計事務所開設。開業以来、IPOや民事再生業務に携わると同時に、派閥争いによる内紛、骨肉の争い、経営者の自殺など浮き沈み激しいドラマに立ち会い、ドラッカーの著作に救いを求めるようになる。ドラッカーをテーマにしたメルマガでは、日本最大級の読者数を誇る。ドラッカー学会会員。
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