特集

社労士が解説 働き方改革のポイント vol.7


テレワークの導入によって開かれる、新しい働き方の可能性

2019.01.23

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「働き方改革」は、安倍内閣が提唱する「一億総活躍社会」をつくるための最大のチャレンジで、日本の企業文化から、日本人のライフスタイルまでの全てを変える改革だと見られています。(内閣府ほか、政府各種資料より)

こうした「働き方改革」の一部である「働き方改革関連法」が、2019年の4月以降、順次施行されることが決定しています。本特集では第6回までは、直近の法改正の対応について解説してきました。しかし「働き方改革」の政策全体の中では「働き方関連法」は一部であるといえます。

多様な働き方が許容される社会をつくり、あらゆる人が人生のいつの時期にでも主体的なキャリアプランを持てるようにする。少子高齢化の中でも労働人口を確保し、主体的な労働によって個人の創造性を引き出す。それが結果的に社会全体の生産性を向上させ、経済発展に結び付く。「働き方改革」は、そのような壮大なビジョンの下にあるのだと考えられます。

働き方改革の中には、さまざまなガイドラインや促進施策が含まれています。その中には、企業や個人に指針やメリットをもたらすものが多く含まれています。積極的に活用することが重要であるといえます。今回は働き方改革の中でも、その理念の実現にとって重要な鍵となる「テレワーク」について解説します。

※関連:【特集トップ】社労士が解説 働き方改革のポイント

目次

企業がテレワークを導入するメリット

テレワークをする男性のイメージ画像
テレワークとは「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語です。情報通信技術を活用して、時間や場所の制約を受けずに柔軟に働く形態のことをいいます。
多様な働き方が許容される社会を目指す働き方改革において、場所にとらわれない働き方は重要なことであるため、企業に向けた導入の推進を促すガイドラインや、さまざまな助成施策が用意されています。

働き方や働く場所が多様になっていく中で、海外を含めた遠隔地に住んでいる方や、場所にとらわれずに働きたい方と仕事を進める必要性は増しています。また、育児介護中の方や高齢者など、遠隔地に居たままで仕事をするニーズも高まる一方です。

そして、実は労働者以上に、企業にとってもテレワークを導入することには、以下のような大きなメリットがあります。

〈企業がテレワークを導入するメリット〉
1. 労働者の人生のイベントに左右されにくい組織体制・生産性を確保できる
2. 場所にとらわれずに、優秀な人材確保と活用が可能になる
3. 従業員のモチベーション向上が期待できる

1. 労働者の人生のイベントに左右されにくい組織体制・生産性を確保できる

テレワークが可能な体制を整備することで、育児や親族の介護、高齢期など、従業員の方のさまざまなライフイベントに左右されにくい体制が確保できます。従業員の方々にとって、家に居たままでコミュニケーションがとれ、仕事ができることは大きなメリットだといえますし、企業にとっても欠員の補充や体制の整備などを抑えることができます。

2. 場所にとらわれずに、優秀な人材確保と活用が可能になる

テレワークにより場所の制限をなくすことができれば、例えば地球の裏側に住んでいる人を採用し、そのまま働いてもらうこともできるようになります。採用において勤務地は候補者選びの制約となるため、大きなメリットであるといえるでしょう。
実際にはオフィスという場所が不要になるほど、テレワークのみで成り立つ業種は限られています。しかし採用との関わりでいえば、感度の高い転職者は、テレワーク導入企業であるかどうかということに敏感だということがよくいわれます。例え一部であっても体制が整っているということは採用において大きなアピールポイントになり、他社との差別化にもなります。

3. 従業員のモチベーション向上が期待できる

働く方の多くが、育児・親族の介護・高齢化、あるいは病気や事故など、さまざまなライフイベントに対する不安を持っています。テレワークによって雇用が継続できることを示すことで、社員の不安を取り除き、モチベーションアップが期待できると思われます。

このように、テレワークの導入には大きなメリットがあります。そして、多様な働き方の実現へ近づくことができるのです。また、導入を検討する過程で仕事のあり方を捉え直し、生産性を向上させる効果も期待できます。

テレワーク導入の手順

テレワークの導入に当たっては、以下の順番で進めるのがよいでしょう。

1. テレワークの導入目的を決める
2. 業務の棚卸し
3. 適切なICTツールの選択・助成施策の活用
4. ワークルールの設定

1. テレワークの導入目的を決める

テレワークの導入の方法やその程度には多くのバリエーションがあります。ライフイベントによって通常の勤務が難しい方へのフォローとしてテレワークを導入するのか、社員の働く場所の制約を取り除いて生産性の向上を目指すのか、その目的によって対象となる仕事やルール、導入すべきツールは違ってきます。

2. 業務の棚卸し

対象となる業務について検討していきます。業務の内容について、リスト・ランク付けやワークフローの見直しを実施することが重要です。こうした整理については、外部の社会保険労務士などの専門家がコンサルティングによる力を発揮しやすいところだといえます。

3. 適切なICTツールの選択・助成施策の活用

テレワークの導入で最も重要なのが、適切なICTツールの選択です。ICTツールは、働き方や風土に合わせ、適切なものを選択・導入する必要があります。ツールは、WEB上のチャットツールから映像の送受信ツール、WEB上にバーチャルオフィスを設けるような形式のものまで、多種多様なものが開発されています。こうしたツールの何を導入すればよいのかについても、外部の専門家を活用することが効率的です。

また、国や地方公共団体で、テレワークのツール導入に関するさまざまな助成金や、説明会などの助成施策が設けられています。導入のためのコンサルティング費までを含んだ高額の補助が受けられる施策もあるため、詳しく知りたい場合は、社会保険労務士などの専門家に相談してみるとよいでしょう。

4. ワークルールの設定

テレワークに関するルールの設定も重要です。検討が必要な事として以下のようなものが考えられます。

対象者を定めるルール

テレワーク導入の目的に沿って、対象者を定めるルールがまず必要です。全社的に導入を進める場合は、反対にテレワークで行わない業務範囲や対象者の定義が重要となりますし、ライフイベントなどへの対応で限定された方にテレワークを導入する場合、申請方法などの定めが必要になるでしょう。

時間管理制度

時間管理の仕組みを特に詳しく決めておく必要があります。テレワークを行う企業でよくお聞きするのが、労働が過重になりやすいということです。テレワークによって日常生活と仕事の境目があいまいになり、働きすぎになる可能性が高くなるということです。

労働時間を管理する方法を定め、労働が過重な場合の管理の方法などを定めておく必要も大きいと思います。また、始業と終業をどの時点に置くか、ということがテレワークの形態によっても違ってきます。法的な根拠も必要なのでルール化の必要性が高い部分です。

賃金制度・評価制度

働き方が変わることによって、テレワークを行う労働者とオフィスで勤務する労働者の平等性の担保が重要になります。業務によっては、テレワークを行う方が成果で管理されやすくなる傾向があり、評価の基準となる項目や職種自体を分けた方がよい場合もあります。

以上のようなワークルールの設定は、労働基準法などの適法性も重要なので、社会保険労務士などの専門家を活用する必要性が高いといえます。

テレワーク導入のデメリットは少ない?

テレワークをする女性のイメージ画像
「働き方改革」は、多様な働き方が許容される社会をつくり、あらゆる個人が、人生のいつの時期にでも主体的なキャリアプランを持ち実行できるようにするという目的を持っています。テレワークは働く場所の制約をなくしていくものであって、今後の働き方を考える上で重要性が高いといえます。

実際にテレワークが可能な業務は非常に広く、さらにテレワークを導入することによるデメリットも意外と少ないものです。「オフィスに来なくなることで、モチベーションが下がるのではないか。企業としての一体感が薄れるのではないか」という不安を持っている経営層や管理部門の方が多いのですが、意外なほどそういった問題は少なく、また懸念点はICTツールや施策の導入によって解決できる場合も多いのです。

さまざまなライフイベントの中で多くの方が前向きに働ける場をつくることは重要であり、テレワークについては全ての企業で前向きな検討が求められているといえます。

【編集部より】
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執筆者紹介

松井勇策(社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト) 東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

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