特集

活力を生み出すダイバーシティ(障がい者雇用編【第2回】)


社内と社外の役割分担を明確にし定着を図る~第一生命チャレンジド

2016.03.09

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障がい者雇用を成功させる上で鍵となるポイントの1つは定着率だ。単に法定雇用率を維持するためだけでなく、生産性を高めていくためには、一定期間働くことで仕事に慣れ、スキルアップやステップアップすることで難しい仕事にも挑戦できることにつながる。

第一生命保険の特例子会社である第一生命チャレンジド(東京都北区)は、設立から3年後の2009年に厚生労働省の「精神障害者雇用促進モデル事業」受託を機に、本格的に精神障がい者の雇用に取り組み、当時入社した11名のうち10名が就労を継続している(2015年12月時点)。この定着率の高さに大いに寄与しているのが、人事担当者が中心となって組織する「職場定着推進室」(以下、推進室)だ。この「職場定着推進室」の活動ならびに取り組みについて話をうかがった(2015年12月取材:松尾美里、構成:編集部)

プロフィール

湯浅善樹
1978年、第一生命保険相互会社(現・第一生命保険株式会社)に入社。2010年第一生命チャレンジド株式会社出向。2011年、同社代表取締役社長に就任。
齊藤朋実
入社後、喫茶店をはじめ清掃、事務など各事業所の立ち上げを歴任。現在は職場定着推進室長・課長。同室の立ち上げにも携わる。精神保健福祉士※1。
梶野耕平
入社後、印刷グループ、書類発送グループを経て職場定着推進室に所属。職場定着推進室内では事務部門を担当。現在は田端事業部課長補佐と職場定着推進室を兼任する。社会福祉士、精神保健福祉士。
目次
  1. 障がい者、健常者双方にとっての働きやすい職場づくりを推進
  2. 現場に社員に当事者意識を持ってもらう
  3. 脚注

障がい者、健常者双方にとっての働きやすい職場づくりを推進

第一生命チャレンジド職場定着推進室の梶野氏、同社代表の湯浅氏、推進室室長の齊藤氏

左から職場定着推進室の梶野氏、同社代表の湯浅氏、推進室室長の齊藤氏

推進室は、2011年4月に各部門の情報を収集し、社是を全社的に浸透させることを目的に設置。現在、兼務も含め6名が所属し、障がい者、健常者が協働する働きやすい職場作りの潤滑油となり、社内に一体感を生み出している。具体的には、各事業部の横ぐしのための情報連携と吸い上げや⼈財育成、相談対応、休職者の復職⽀援、採⽤活動なども行う。

第一生命チャレンジドで印刷された名刺を裁断する社員

印刷された名刺を裁断する社員

同社は親会社の第一生命保険の事業所や自社で、印刷や書類発送、事務補助、喫茶、清掃など多岐にわたる事業を運営。2016年1月1日時点で所属する212名の役職員のうち150名が障がいのある職員と、知的障がい者や精神障がい者を積極的に雇用している。ただし、それだけの人数ともなれば、フォローが必要となる。

推進室設置以前は、週に一度1~2時間程度で推進室のメンバーが障がいを持つ社員の相談に乗る機会を設けていたこともあった。ところが、特定のメンバーに仕事とは直接関係のない相談を持ちかけ、頼りきりになる社員が現れ、双方の勤務時間を圧迫するなどの問題が発生していた。そこで、推進室設置以降は定期的な相談タイムを廃止し、社員から寄せられた相談に対処する形に変えた。職場定着推進室長・課長の齊藤朋実氏は、この方針変更が生んだ効果を次のように語る。

「私たちの役割は、『ここは職場』という心の切り替えを彼らに促すことだと考えています。仕事上の課題については、まず直属の上司が相談に乗り、そのほかの相談については、本人の話をいったん聞いた上で『このテーマはドクターに話したほうが良いのでは』などと提案します。すると、最初はあらゆることで相談に来ていた精神障がいを持つ社員が業務時間中は仕事に集中し、社外を含め適切な相談先を探すようになりました。さらには社員同士が励まし合うようになるなど、職場の横のつながりが強くなる効果も得られたのです」

同社が、障がい者の入社時に就業・生活支援センター※2などの支援機関の担当者をつけていること(支援機関に通っていること)を必須条件としていることも、職場と支援機関との役割分担をスムーズにしているといえる。

現場に社員に当事者意識を持ってもらう

推進室は現場のリーダー、サブリーダー(監督職と一般社員の間におかれる役割)のストレスや不満の解消にも役立つなど、様々な効果を生んでいる。齊藤氏ともに推進室に所属する梶野耕平氏は、推進室の運営において次のことを心がけている。

「問題解決の主体はあくまで現場。推進室が直接、社員に介入するのではなく、現場のリーダーと社員とで対話してもらいます。そうしなければ、当事者意識や解決のノウハウが蓄積されていきません」

同社代表取締役社長の湯浅善樹氏は、課題解決における社是や育成方針の重要性を強調する。「推進室の意義は、社是をもとにした育成ができること。当社が大事にしている『仕事を通じたモチベーション向上』という基準は判断の拠り所になってくれます」

現場での社員の表情、言動などを日頃から観察しつつも、現場の主体性を促す部署は、障がい者の定着だけでなく、職場全体の働きやすさ、仕事への意欲の醸成にも役立っている。障がい者雇用の定着には障がい者とその他の一般社員がともに働きやすい環境づくりを心がけかつ、人事担当者だけにすべての役割を押し付けないこと。この考え方は、専門部署の設置を検討中の企業にとっても参考になるだろう。

会社概要

第一生命チャレンジド株式会社(東京都北区田端)▼第一生命保険株式会社の特例⼦会社として2006年に設立。主に知的・精神障がいのある人を雇用し、5事業部(⽥端・相娯園・神奈川・喫茶・⼤阪)を構える。2016年1月1日時点で所属する212名の役職員のうち150名が障がいのある職員。

脚注

※1 一般的にPSW(Psychiatric Social Worker)と呼ばれている国家資格。精神障がい者に対する相談、援助などを行う。「精神保健福祉士」は法律上の名称で職種名ではない。

※2 厚生労働省の管轄で障がい者の身近な地域において、職場定着や職業訓練支援などの就業面と健康管理や金銭管理など生活面の一体的な相談・支援を行う。平成27年8月まで全国に327センターが設置。

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執筆者紹介

松尾美里(まつお・みさと) 日本インタビュアー協会認定インタビュアー/ライター。教育出版社を経て、2015年より本の要約サイトを運営する株式会社フライヤー(https://www.flierinc.com/)に参画。ライフワークとして、面白い生き方の実践者にインタビューを行い、「人や団体の可能性やビジョンを引き出すプロジェクト」を進行中。ブログは教育×キャリアインタビュー(http://edu-serendipity.seesaa.net/)。

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