特集

障がい者雇用が会社を強くする CASE3 LITALICO


どうする? 障害者の就労定着 支援の現場に聞く

2019.01.07

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昨今、中央省庁や地方自治体などによる障害者雇用者数の水増しが明らかとなり、改めて障害者雇用への注目が集まっている。

就労移行支援の仕組みも整い、働く障害者の数は増え続けているが、課題となっているのは離職率の高さで、特に精神障害者は顕著である。企業側には、障害に配慮するための体制づくりが求められるものの「どうしたら良いか分からない」というのが実態ではないだろうか。特に、身体障害と比べて目に見えない障害である精神・発達障害を持つ人への対応に苦慮している企業は多いかもしれない。

精神障害者を中心に多くの障害者の就労移行をサポートしてきた「LITALICO」の東北グループマネージャー林田元太氏に、人材定着に重要となるポイントを聞いた。

企業情報

株式会社LITALICO
・本社所在地:東京都目黒区上目黒2-1-1 中目黒GTタワー15F/16F
・創業:2005年12月26日
・従業員数:1,925名
・事業内容:
1. 学習塾及び幼児教室の運営事業
2. 児童福祉法に基づく障害児支援事業
3. 障害者総合支援法に基づく就労支援事業
4. インターネットメディア事業
5. その他

本人と企業、双方の理解が前提

LITALICO 林田氏

LITALICO 林田氏


全国71拠点(2018年11月時点)の就労移行支援事業所を展開する株式会社LITALICO。約4,000人の利用者のうち、6割が精神障害、2割は発達障害のある人が占め、累計6,000人以上の就職実績を持つ。

東北グループマネージャーの林田元太氏(33)は、障害者の企業への定着の成否について「本人の自己理解と、理解ある企業との縁や巡り合わせによるところが大きい。その確実性をいかに高めていくかが鍵となる」と強調する。

本人の自己理解とは、障害者が自らの症状や障害特性、得意不得意を自覚して整理することを指す。LITALICOワークスでは、利用者がスタッフとの面談やさまざまな訓練を通じて自己理解を深めながら就職を目指すカリキュラムを提供している。

自己理解が進んでいれば、企業側に配慮してほしい事項を具体的に伝えることができるほか、得意なことを伝えることで、より適性に応じた働き方が可能となり、定着にもつながりやすい。例えば「ざわざわした場所では心身の調子を崩しやすいので静かな場所で働きたい。静かであれば集中力を生かせるので効率良く作業ができる」といった伝え方が考えられる。採用面接でも、このようなメッセージを受け取れるような工夫が必要となるだろう。

一方、企業側の「理解」とはどういったことを指すのか。林田さんは「障害に関する知識を得ることは必ずしも重要ではない。その人自身を知ることを大切にしてほしい」と力を込める。

精神・発達障害のある人は、身体障害と比べ、外見からは分かりにくい障害のため、配慮すべき点も分かりにくいという課題がある。また、障害の程度や特性についても個人差が大きい。書籍などでいくら知識を詰め込んでも、目の前の障害者にそのまま適応できるとは限らないということを留意しなければならない。

その上で「定着は、単に雇われ続けてもらうことだけを意味しない。体調や生活の豊かさ、キャリア形成など全てを含めて『働く』ことだと考えて支援してきた。その人がどのように働いていきたいか、どのような人生を送りたいのかをきちんと聞き取ってほしい」と林田さんは語る。

長期的キャリアも見据えた関わりを

LITALICO 林田氏

LITALICO 林田氏


さらに「仕事をしてもらう人材を獲得する、という強い意識を持って採用することが重要だ。目標の数値を満たすことをゴールにしている限り、人材は定着しない」と警鐘を鳴らす。

当たり前のことのように思うかもしれない。だが、障害者のことを単に法定雇用率を満たすためだけに雇い入れる存在であって、戦力としては期待していない企業も少なくない。雇うことがゴールとなって、あとは「どうして良いか分からない」では互いにとって不幸なことだ。

本人の自己理解と採用時のコミュニケーションを踏まえ、障害特性や得意不得意を見極めた上で、一人の貴重な戦力として扱うことが重要となる。

そこには当然、健常者の社員がそうであるように昇給や昇進などキャリアアップの道も描くことができれば、モチベーションは向上し、定着にもつながる。

キャリア形成の道筋をつけ、定着を図る動きを推進するための制度化も行われた。国は今年4月、従来の就労移行支援制度の枠組みに加える形で、新たに障害者の就労定着支援制度を創設した。

これまで就労移行支援事業所は移行支援の枠組みで就職後6カ月の間、主に本人や企業担当者との定期的な面談により、体調の変化の確認や日常生活の相談、職場での困りごとへの対策などを話し合いながら、短期での望まない離職を防いできた。4月からは、6カ月の移行期間の後も、最大3年間、就労定着支援事業所(多くは就労移行支援事業所が新事業として手がける)による定着に向けた本人や企業へのサポートを利用できるようになった。

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出典:厚生労働省(2017) 就労定着支援に係る報酬・基準について≪論点等≫

支援のスケジュールが最大3年(+6カ月)となったことは、障害者の職場定着においては、採用時の相互理解や就職時の一時的なサポートだけでなく、中長期的なキャリア形成を見据えた支援が必要であることを意味する。これまでもLITALICOワークスなど一部事業所は、6カ月以降も中長期に渡り定着サポートを行ってきたが、制度化されたことで今後より多くの事業所が定着支援を充実させ、企業側も制度を利用しやすくなることが期待される。

林田さんは「障害のある人を雇うときは戸惑うこともあるかもしれないが、最初は見学や実習を受け入れてみるなど、できるところから実践していただきたい。そのうえで『雇ってみよう』となったら、ぜひ支援機関に相談してほしい」と、多くの企業と障害者にとっての幸せな「定着」を願っていた。

【編集部より】
障害者雇用に関する記事はこちら。

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