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社労士が解説 働き方改革のポイント vol.3


【2019年改正】36協定の重要な変更ポイントと人事がとれる対策

2018.12.26

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2019年4月に施行される働き方改革関連法の施行にあたって、人事がとるべき対策をまとめた「社労士が解説 働き方改革のポイント」も3回目となりました。今回は時間外・休日労働に関する「36協定」について解説します。法改正の内容や重要なポイント、人事が対策したい具体的な実務についてまとめました。

※参考:業務ガイド【36協定の基礎知識】上限規制や特別条項、届出の記入例など

目次

「36協定」に関する改正内容と新様式の記入例(厚生労働省)

2019年4月に時間外・休日労働に関する協定届(労基法36条に規定されているため通称「36協定」以下通称で表記)の様式・内容の変更が予定されています。変更のポイントは以下の2つです。

  • 特別条項によって規定される、36条項の上限時間を超えた時間外労働について規定する場合、想定される業務内容を区分して記載するための別様式が付け加えられた。
  • 一定時間以上の長時間労働者に対して、健康確保措置を設けて記載する欄が付け加えられた。
36協定届の新様式記載例・1枚目

※参照:36協定届の新様式記載例・1枚目(厚生労働省のHPより)

36協定届の新様式記載例・2枚目

※参照:36協定届の新様式記載例・2枚目(厚生労働省のHPより)

いつから提出する届出が法改正の対象に?

現行の法制度上36協定届は1年に1回以上、労働基準監督署に提出をすることが求められているため、 今回の法改正が適用されるのは、2019年4月以降に提出される協定届からになります。

※なお、労働時間についての法改正である36協定の特別条項の上限規制の施行が中小企業は2020年の4月からとなります。それとの関係で、今回の36協定の新様式について、中小企業は1年遅れて適用になるとの情報もあります。詳細な運用については、現在定まりつつあると思われますので、細かい運用については管轄の労働基準監督署に確認、または社会保険労務士等の専門家を活用し、正確な情報の確認を行ってください。

法改正に関連した法令の重要な文言変更

36協定の様式変更は多様な働き方を可能にするために、時間管理をより厳格化する政策の一環として設けられました。

法令上の変更としては、今までは36協定の協定内容は施行規則などで規定されていたのですが、今後は労基法の本則で規定されることになります。内容の変更は前項の通りですが、労基法の本則に規定されたということは、内容の重みも増していると考えられます。

また、今回の実務対応にも関係する箇所で、法改正によって法文の文言が変わっている箇所があります。

特別条項の定義について、旧条文では「限度時間を超えて労働時間を延長しなければならない特別の事情(臨時的なものに限る)」となっていました。今回の改正によって、「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等」という文言に変更されています。たとえば、あらかじめ繁忙期が決まっている場合は予見することが可能になるため、新条文だと要件に当てはまらないようにも思われます。

細かい解釈については今後より明らかになっていくと思われますが、特別条項として規定する内容については相当に配慮する必要があると思われます。また、解釈や運用が厳格化する可能性もあるため、そもそもの残業時間を削減する必要性が高いと言えるでしょう。

今後、企業での36協定の締結が行われているのかどうかの確認や調査について、労働基準監督署等の行政機関だけでなく、民間にも一部を委託する準備が進められているとの報道もあり、取り締まりも厳しくなると考えられます。実務対応については注意をする必要がありそうです。

中小企業もできる、いま人事に必要な実務対応とは

36協定では今まで、通常の時間外労働についても業務ごとに区分をして内容を定める必要がありました。新様式ではそれに加え、特別条項についても業務ごとに区分をして書く必要があります。また健康確保措置を定める項目も加わりました。そのため、新様式の36協定の締結と届出にあたり、下記のような実務対応が必要となると思われます。

1.現状の労働時間を把握する

年間を通じ上限規制の時間を上回っていないか、上回る可能性がないかを検討し、 上限規制を上回る可能性がある場合は業務や人員配置自体の見直しを行う必要があります。

2.把握できた労働時間を棚卸しする

通常の36協定に掲載する職域や業務と、特別条項に記載する必要がある職域や業務を分けて列挙しましょう。

3.自社の労働安全管理体制(産業医や健康管理・衛生担当者の配置や役割)を見直し、特別条項の労働時間に達した場合の健康確保措置の運用を決める

これは、医師による面接指導・深夜労働の制限・業務間の一定時間のインターバルを設ける・休暇の付与・相談窓口の設置と相談、などの措置を講ずることが望ましいという形で、厚生労働省の指針で示されています。

4.上記を盛り込んだ内容で36協定を締結し、労働基準監督署に36協定届を提出する

前に記載した通り、36協定が適用され、遵守されているかどうかが一層厳格に監督されるとの報道もありました。今後は企業規模を問わず、時間管理については行政の指導が行われやすくなると考えられます。そのため、上記の項目は一つずつ慎重に決めていく必要があります。

働き方改革関連法の施行後の「36協定運用」をどう考える

今回の法改正以前は、建設・運輸・医療・研究開発などの業務が、36協定による限度基準の適用除外となっていました。また労働時間についても、これらの業界は緩い管理が認められてきた経緯があります。

法改正によって、これらの業務についても一部を除き、時期を定めて限度基準のルールが適用されることに決まりました。上記業界の労働の性質上、他業界と同じような時間管理が難しいとされてきた見解に、根本的な変更が加えられたと考えることができます。また、これらの業界についても36協定の新様式自体は適用され、さらに健康確保措置についての扱いも同様です。

多様な働き方を可能にし、生産性の向上を図る働き方改革において、労働時間の管理は重要です。時間外労働の根拠となる36協定を、業界や企業の規模を問わず、厳格に捉えることが求められていると言えます。

社労士が解説 働き方改革のポイントシリーズ


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執筆者紹介

松井勇策(社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト) 東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

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