人事のキャリア【第17回】
「人の可能性を信じ続ける」それが人事の真髄。(ベルフェイス・西島悠蔵さん)
2019.01.18

さまざまな業種の人事担当者に、仕事のやりがいやキャリアについてインタビューする「人事のキャリア」。今回は、ベルフェイス株式会社で人事を担当する西島悠蔵さんにお話を伺いました。
ベルフェイスは、BtoBの営業業務に特化したオンラインシステムを開発・販売するベンチャー企業です。西島さんは初の専任人事担当として入社し、採用や教育研修、組織開発などの人事全般業務を担当しています。【2018年11月2日取材:文・尾越まり恵、撮影・中村介架】。
西島悠蔵(にしじま・ゆうぞう)
ベルフェイス株式会社 コーポレート事業部 人事・広報チーム マネージャー。1987年生まれ。大学卒業後、2010年に全日本空輸株式会社に入社。3年間パイロットとして勤務した後、株式会社リクルートキャリアにて人事として中途採用リーダーを経験。業務委託を経て2018年、ベルフェイス株式会社に入社。
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急拡大フェーズでスタッフは4倍に
―現在の業務内容を教えてください。
今、当社で専任の人事担当は僕だけなので、新卒・中途採用を主軸に採用から教育研修、組織開発、教育設計など人事全般を担当しています。
ベルフェイスは2015年4月に創業し、4年目になります。2017年9月から業務委託で人事の立ち上げをしたのですが、当時はまだスタッフが10人しかおらず、渋谷のオフィスの一角の小部屋みたいなところで働いていました。
入社して最初の仕事が、隣の部屋に移動するという引っ越しの作業でした(笑)。自分たちで椅子もつくって、すごくベンチャー感を味わったのが印象的でした。
そこから約1年でスタッフは40人に増えました。売り上げも3倍になり、本当に急拡大でびっくりするような1年でしたね。さらに採用を進めているので、来年には60人規模の会社になります。こうした会社の成長を支えるために必要な採用や教育研修、組織開発などの人事業務の全般を任されています。
―ベルフェイスの事業内容を簡単に教えていただけますか?
BtoB領域の営業業務に特化した、いわゆるSkypeのようなソフトを開発しています。
今までの営業活動は「フィールドセールス」、つまり足を使って稼ぐことがメインでした。新しい営業の形として、社内やオフィスから営業できる「インサイドセールス」の仕組みをつくり、コンサルティングをしています。
Skypeなどのアプリは両者がインストールしていないと使えませんが、ベルフェイスはブラウザ上で動く仕組みなので、インターネット環境さえあれば、誰でも使えるのが特長です。
システム的な観点でも違いはありますが、特にベルフェイスはカスタマーサクセスを重視し、導入後にしっかりとサポートするのが他にはない良さだと思っています。
残念ながら、営業現場はこの数十年、イノベーションが起きていません。当然、クレーム対応の場合は実際に足を運ぶ必要があります。
フィールドセールスの全てを否定しているわけではく、オフィス内や自宅などでも営業活動ができるという選択肢を加えることが重要だと考えています。これにより、営業業務の時間短縮になりますし、移動コストも削減できます。
また、距離の離れている全国各地、あるいは海外の企業へも営業が可能になります。さらに、営業内容を全て録画できますので、トップセールスの営業ノウハウを部署内で共有していくこともできるんです。
「勘と根性の営業を、テクノロジーで進化させる」というのが我々のミッションです。
パイロットから人事に転身
―西島さんのこれまでの経歴を教えてください。
大学を卒業後、パイロットとして全日本空輸株式会社に入社しました。本当に恥ずかしい話ですが、パイロットを選んだ理由は、1割が親孝行で、残りの9割は「モテたいから」でした。
パイロットってすごく華やかに見えると思いますが、実際にはほとんどがルーティンワークです。自分には向いていないと感じ、思い切って外の世界に行こうと決めて選んだのが、リクルートキャリアでした。
―数ある選択肢の中で、人材会社を選んだのはどうしてでしょう?
パイロットになったときは天下を取ったような気持ちになって、風を切って歩くような嫌な奴でした(笑)。
でも、あるとき「君はパイロットに向いていないから地上に降りるか会社をやめるかのどちらかにしなさい」と言われて、初めての挫折を経験しました。
会社も職種もブランドにすがって生きてきたので、それが無くなったときに「何も残らないな」と感じました。
この先、どんな可能性があるかを考えたときに、ベンチャー企業に勤めているいとこがいて、面白そうだなと思いました。
でも、当時の僕は、人差し指2本でPCを打つような状態だったので無理だな、と。勉強しようと思って、あえてリクルートキャリアを選びました。ちゃんと育ててもらいたいなと。
そのとき、リクルートは「人の可能性を紡ぐ」というスローガンを掲げていて、その言葉に引かれたのも大きかったですね。
「パイロットに向いていない」と言われたことがすごく悲しくて可能性を消されていくような感覚があったので、それを僕の下の世代の人には感じてほしくないなと思いました。
また、自分にもまだ可能性があり、変われるのではないかと思ったんです。この「人の可能性を紡ぐ」というのは、人事の仕事をする上で、今でも僕のベースになっている思いです。
―リクルートキャリアではどんな業務をされていたのですか?
最初は大手コンサルティングファームからの転職相談や、そういった企業に入社希望の若手にアドバイスをするようなキャリアアドバイザーの仕事を経験しました。
その後、人事に異動し中途採用のリーダーを3年くらい担当しました。
正解のない問題を突き詰めていく人事の仕事は面白いなと思いました。マネジャー昇進の話もあり、このままここで働き続けるのだろうと思っていたのですが……。
―転職を決意したきっかけは何だったのでしょうか?
新卒チームが実施している5泊6日の新規事業創出プログラムがあり、強く希望してインターン生のメンターとして同行させてもらいました。その体験がとても衝撃的だったんです。
夜中に部屋の扉をガンガン叩かれて、「ちょっと話を聞いてください!」と学生たちが毎日悩みを相談しにくる状況です。
気がつけば、自分もプライドを捨てて、パイロットとして挫折した話を初めて人にきちんと話すことができていました。
そのとき、人と向き合うとはこういうことなんだ、と腹落ちしました。自分が本当にやりたいことは、マネジャー職ではなく、人の可能性に向き合うことだと気付いたんです。
そして、お世話になっている先輩から代表の中島(一明)を紹介されて、恵比寿のホテルのラウンジで初めて話をしました。
ベルフェイスのビジョンに共感したのも大きかったですし、大企業のように分業されていないので、人事全般が経験できることも魅力でした。
「人の長所にとことん向き合う会社」という中島の言葉に心を動かされ、会って40分後には中島と握手をしていました。
1日に4~5人と会い、情報をインプット
―入社して最初に取り組んだことは何ですか?
創業したてのベンチャーだったので、人事業務に関するデータや情報が何もありませんでした。
「今まで面接してきた人のデータってどこにありますか」と社長に聞くと、「ちょっとメール探すわ」みたいな状況で、「マジか」と思いました(笑)。
まずは社内の情報を整理すること、その上で外に出せる情報を整えること。なので、採用の要件定義も行いました。
ベルフェイスとはどういう会社なのか、これからどんな人材が必要なのか、あらゆる基準を明確にしていきました。
次に、リクルート時代のコネクションを利用し、エージェントの選定・契約を実行しました。
当時900社ほどのエージェントのマネジメントしていたので、その知識を使って個別に契約して、一気に採用を加速させました。また、採用数が増えるに当たり、HRMOS(ハーモス)という採用管理システムの導入にも踏み切りました。これまで主にエクセルでアナログに管理していた応募者情報や採用ステータスを一括管理できるようになりました。
―「HRMOS(ハーモス)」の導入は、大きな投資だったのではないですか?
月額10万円くらいですね。安くはない投資だと思います。社内からは「本当に必要なの?」という声は確かにありました。
でも、「これから人が必要になっていくフェーズにおいて、採用の加速に役立つから」と説得しました。
―今、一番力を入れていることは何ですか?
会社のブランディングを分かりやすくつくっていくために、採用ホームページのリニューアルやSNSの活用に注力しています。
今後は入社後のフォロー、組織の活性化にも着手していきたいと考えています。SNSは間違いなく、次の採用の手法だと思っています。
【写真】西島さんのTwitterのTOPページ。フォロー・フォロワー数の多さが目をひく。(画像は2019年1月10日18時のもの)
―人事の仕事の面白さはどのような点だと考えられますか。
人事は、人の価値観の多様性に触れ、人の変化を見届けることができる仕事です。
「あの時、あんなことを言っていた人がこんなふうに成長するんだな」、「こんな価値観を持っている人がいるんだな」と発見できる瞬間にあふれています。
そして、人はきっかけさえあれば変わることができます。まさに人の可能性を紡ぎ、可能性が広がる瞬間に「出会える」ことが人事の面白さだと考えています。
―その一方で、大変さや難しさもあると思います。
事業の成長スピードと個人の成長スピードとのバランスは非常に難しいと感じています。
経営の成長スピードに個人の成長スピードが比例していなければ、事業拡大にブレーキをかけてしまいます。
僕は人事という仕事柄、どうしてもスタッフ側に立ってしまうので、経営層が「この人は成長できていない」と言っていても、「いや、あと数カ月あれば変わることができる」と思ってしまうんです。
解決するにはまだ人が足りない部分もありますし、僕の能力不足も痛感しています。
―仕事の難しさを克服するため、日々どのように勉強に取り組んでいますか?
以前は比較的大規模な勉強会などに参加していましたが、今は少人数制の勉強会でより深く学ぶようにしています。
ツイッターなどで勉強になりそうな人にダイレクトメッセージを送り、直接会って話を聞くことも多いですね。
僕は10~40人規模の採用の話はできますが、組織開発などはまったくの素人なので、そのあたりのお話を聞いたりしています。多いときはランチやお茶、夜の会食も含め1日に4~5人と会うこともあります。
書籍だと、ベタですが『採用基準』(ダイヤモンド社)や『ビジョナリーカンパニー2』(日経BP社)は勉強になりました。
人と向き合い可能性を信じ続けることをずっとやっていく
―人事の仕事を通じて、ご自身の成長を感じられる点は?
価値観が広がり、年収や職業、企業名、大学名といった表面的な内容で人を判断しなくなりました。その人が大事にしているもの、その人の人生を知り、その人自身を理解しようとする力が身に付いたと感じます。
例えば、新卒の学生は「何となく自分に見合った偏差値の大学を選んだ」という人が多いですが、一浪してもっと上の大学を目指す選択肢も、高校卒業後に働くという選択肢もあったはずです。
そうしなかった事実に、もう1つ背景が隠されているんです。それを知ることの重要性を理解できるようになりました。
―今後の目標を教えてください。
僕はやはり、人と向き合い可能性を信じ続けることをずっとやっていくのだと思います。
人と向き合う仕事であれば、人事ではない仕事も可能性としてはあると思いますが、今はもう少し人事の仕事を体系立てて学びたいですね。
例えば大学や大学院などで学びながら、仕事で実践していく。そんなサイクルを続けていきたいと考えています。
―ありがとうございました。
西島さんのキャリアアップのポイント
・自分の可能性と人の可能性を信じる
・SNSを活用して情報発信・蒐集(しゅうしゅう)を行う
・知見をもっている人になるべく直接会って話を聞く
西島さんのある日のスケジュール
6:00 起床。朝食はプロテイン。朝ゆっくりしたい派です
8:30 出社。電車で30分ほど。音楽もしくはYouTubeを見ます
9:30 メールチェック、タスク管理
10:00 社長、役員と採用計画についてmtg
11:00 中途入社希望者と面接
12:00 昼食。マッスルデリでバランスのとれた食事をとります。たまに社員とランチにも
13:00 新卒入社希望者と面接
15:00 社内メンバーと1on1
16:00 採用広報の資料作成
17:00 オンライン派遣の方と進捗確認
18:30 残タスク洗い出し、その他事務作業
20:00 帰社。夕食は外食がほとんど。良くないです笑
22:00 風呂、読書、ジムに行けたらジム(健康的な生活なのに痩せないのが悩み(笑))
0:00 就寝。
西島さんの年間スケジュール
※スケジュールは2018年11月記載時点
企業情報
ベルフェイス株式会社
所在地:東京都中央区京橋3-1-1 東京スクエアガーデン14階
設立:2015年4月27日
代表:中島 一明
従業員数:40人 ※2018年11月現在
事業内容:インサイドセールスシステム『ベルフェイス』、インサイドセールスコンサルティング
HP:https://bell-face.com/
西島さんがゲストスピーカーで登場。人事向けセミナー「人事の学び舎.Vol.9」が2月26日に開催
@人事主催の人事向けセミナーを2月26日(火)WeWork東京スクエアガーデンで開催します。ゲストスピーカーとして西島さんも登壇。ウォンテッドリーの山田勇策氏と働き方ファームの石倉秀明氏とのパネルディスカッション「働き方改革最前線! 働き方改革による採用戦略の変化とは」を行います。
ほかにも、WeWorkオフィスツアー見学や参加者・講師の交流会も実施予定。現在、申し込みを受け付け中です。詳細および申込はこちら
https://at-jinji.jp/blog/vol9/
【編集部より】人事の資格やキャリアに関する記事
執筆者紹介

尾越まり恵(おごし・まりえ) フリーランスライター。福岡県北九州市生まれ。結婚情報誌ゼクシィの制作に携わり、2011年に独立。「女性の生き方」をテーマに取材・執筆を続けている。福山雅治、ホークスが好き。
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