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特集

社労士が解説 働き方改革のポイントvol.4


労働安全衛生法の改正と、衛生管理や健康管理の必要性

2018.12.27

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働き方改革をテーマにした連載「社労士が解説 働き方改革のポイント」。今回は、2019年4月施行の働き方改革関連法の中から「労働安全衛生法の改正」について、法改正に伴う変更点や人事労務担当者が対応すべきことを解説します。また、働き方改革の中で対応の必要性が拡大している「衛生管理や健康管理」に関しても検討すべき6点をまとめました。

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目次

1.労働安全衛生法の改正 5つのポイント

労働安全衛生法の改正のポイントは、産業医の職務が明確に法定されたこと、事業主の安全衛生の管理や時間管理に関する義務がより厳しく定められたことです。特に重要な改正点は以下の5つです。

①産業医の職務

産業医が専門的立場から独立性、中立性を持って仕事を行うべきことが定められました。

②衛生委員会への報告義務

衛生委員会が設置されている企業は、産業医から安全衛生管理に関する勧告を受けた場合や、産業医の選任、解任時に、衛生委員会に報告をすることなどが定められました。

③長時間労働者への措置の共有

事業主は、残業時間が80時間超の社員の氏名や、健康診断で不調者がいた際に企業または産業医以外の医師が事後措置として実施したことを、産業医に共有しなくてはならないとされました。

④医師との面談要件の変更、厳格化

長時間労働者と医師との面談に関して、実施基準となる時間外労働の長さが100時間超から80時間超に変更されました。これまでも長時間労働者は医師との面談が必要でしたが、残業の上限規制に合わせて要件がより厳格化されました。また、新設の高度プロフェッショナル制度などの対象者には、一定の条件のもとに面談が義務付けられました。

⑤物理的な時間管理の努力義務

事業主は上記の「医師との面談要件の変更、厳格化」の実施義務を果たすために、労働時間の状況把握を行わなくてはならない旨が明確に定められました。

産業医

改正、新設された条文の量を見ると、今回は大規模な改正といえます。人事労務担当者が労働時間や休暇の取得について厳格な管理を行いつつ、労働者が働きやすい環境を整備するには、適切な安全衛生管理や健康管理を実施することが大切です。

今回の労働安全衛生法の改正は、この点を重視して行われたと考えられます。その中でも衛生管理・健康管理の専門家である産業医が果たす役割は非常に重要で、法改正では彼らの位置付けや役割を厳格に定義することで権限を強化しています。

2.今後は安全衛生管理体制がより重視される

法改正により、政府は企業にどのようなメッセージを送っているのでしょうか。

今回の改正では、産業医の運用面のほか、事業主が労働者に医師の面談を受けさせる義務、時間管理の運用について変更されました。企業は労働安全衛生法上の義務についていっそう注意することが求められます

従来、10人以上の事業場には衛生推進者を選任する必要がありました。また、50人以上の事業場では衛生委員会を設ける義務があり、産業医と衛生管理者を選任して企業の安全衛生管理や健康管理を行うことが定められています。しかし、実態ではこうした体制が形骸化している企業や、設置義務の要件に当てはまっていても設置していない企業も散見されます。一連の法改正により、従来定められている安全衛生管理体制が今後、より重視されていくことは間違いないと思われます。働き方改革により、安全衛生管理体制が積極的な役割を果たすことができるのではないかと考えられるのです。

3.安全衛生管理や健康管理で検討すべき6つのポイント

今回の労働安全衛生法の改正、その他の働き方改革関連の法制度の変更は、安全衛生管理や健康管理と関係がある点が多くあります。具体的には以下の点です。

①時間管理

労働時間管理が厳格化されたため、残業時間が発生した要因や実態、健康管理の把握が重要度を増しています。

②勤務間インターバル

勤務終了後に一定時間は業務をしないようにする「勤務間インターバル」を設けることが事業主の努力義務となりました。労働時間に関連して、人事労務担当者が検討すべき点の一つです。

③休暇管理

有給休暇の取得が必須となったため、休暇の取得率や取得実態、業務の実態について衛生管理、健康管理面から検討が必要です。

④労働のあり方や実態

労働時間管理が厳格化された一方、フレックスタイム制の清算期間の上限が3カ月となるほか、高度プロフェッショナル制度の創設が可能となります。労働体制の柔軟性が高まる中、労働のあり方や実態について検討する幅が広がりました。

上記4点のほか、既に公布された働き方改革関連法の一部ではないものの、働き方改革を広義に捉える上で人事労務担当者が考えるべきこともあります。

⑤女性や罹患者の就業支援

妊産婦を含む女性の復職支援、がんや難病に罹患している方の就業が促進されています。労働者の健康状態を加味した支援策を考えていく必要があります。

⑥高年齢者への対応

高年齢者の雇用義務の年齢を引き上げることが奨励されています。近い将来の法改正も予想され、高年齢者の健康管理や職務の執行能力について判断が求められる機会が増えると思われます。

以上の6点を衛生委員会で議題にしたり、人事部門で継続的に取り上げたりすることで、働き方改革への対応が万全となります。企業や働く方々にとっても意味のあるものになっていくでしょう。

4.安全衛生管理、健康管理は労働環境の基盤となる

働き方改革の中でも、労働安全衛生管理や健康管理は非常に重要な役割を果たしています。人事労務の管理体制や法令上の安全衛生管理体制に関して、定期的に検討する項目を決めて現状把握と改善を行うことが重要だと思います。従来の体制を活用しながらより良い内容に改めていくことが、法令対応として求められています。

労働安全衛生法改正の流れの背景には、働き方改革により多様な働き方が許容される社会をつくるという政府の方針があります。働き方の多様化により働き手が増えれば、健康や安全に配慮する必要性が高い人が増えることは確実だと思われます。

そのような環境で高い業務成果を生み出すためには、企業だけでなく、働く者一人一人が自身や共に働く人々の安全衛生や労働環境に配慮することが必要です。今回の労働安全衛生法の改正は、その配慮を行いやすくするためのものだといえます。労働者の安全衛生や健康に気を配ることは充実した労働環境の基盤となります。基盤があってこそ、働き方改革が目指す「一億総活躍社会」を本当に実現することができるのではないでしょうか。

安全衛生や健康管理に関する記事はこちら

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執筆者紹介

松井勇策(社会保険労務士・産業カウンセラー・Webアーキテクト) 東京都社会保険労務士会 広報委員長(新宿支部)。フォレストコンサルティング社会保険労務士事務所代表。名古屋大学法学部卒業後、株式会社リクルートにて広告企画・人事コンサルティングの営業職に従事、のち経営管理部門で法務・監査・ITマネジメント等に関わる。その後、社会保険労務士として独立。労働法務の問題や法改正への対応、IPO支援、人事制度整備支援、ほかIT/広報関連の知見を生かしたブランディング戦略等を専門にしている。

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