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「WANTEDLY VISIT AWARDS 2018」レポート


就活ルール廃止。今後の新卒採用のカギは「ファン」の創造

2018.11.28

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経団連が2021年卒採用から「採用選考に関する指針」を撤廃し、同年以降は現在の3月採用広報開始、6月採用選考開始というスケジュールに縛られない採用活動が可能になる。
※参考:経団連・中西会長「就活ルール」廃止に言及 安倍首相は遵守を呼びかけ

こうした背景を踏まえ、ビジネスSNS「Wantedly」を運営するウォンテッドリー株式会社が2018年11月8日に開催した「WANTEDLY VISIT AWARDS 2018」にて、人事・キャリアのプロフェッショナルが今後の採用手法の展望について徹底討論した。

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登壇したのは、法政大学キャリアデザイン学部教授 田中 研之輔氏、モルガン・スタンレーやGoogleで人材育成や組織開発を担当したプロノイア・グループ株式会社 代表取締役 ピョートル・フェリクス・グジバチ氏、株式会社Loco Partnersの徳山耕平氏、そしてウォンテッドリー社のビジネスマネージャー川口かおり氏。海外の採用の最新トレンドや就活廃止のニュースなどの内容を踏まえ、3年後の採用を考察した。

目次
  1. 日本の就活は「婚活」と同じ
  2. 内定辞退を防ぐには、「具体的なキャリアプランの提示」と「自社へのファン化」が必要
  3. 「コミュニティをつくる」感覚で採用活動を行う会社は成長する
  4. 今後の新卒採用で優秀人材を獲得するには、「ファン」をつくることが重要
  5. 「WANTEDLY VISIT AWARDS 2018」受賞企業

日本の就活は「婚活」と同じ

法政大学キャリアデザイン学部教授の田中氏

法政大学キャリアデザイン学部教授 田中氏

田中氏:
9つの大学で約5,000人の学生を送り出してきて思ったことですが、学業だけに没頭しても社会で活躍できる人材は生まれません。活躍人材を育成する最も効果的なツールが、インターンです。

しかし、実際にはインターンに行くチャンスをつかめず、変わらない学生もいます。チャンスが限られているのは、インターンを導入する会社数は増えていても、受け入れる学生数はあまり増えていないからです。

都会の感度の高い学生やエンジニア系の学生はインターンに取り組んでいますが、それ以外の学生にはあまり浸透していない。それを広げていきたいと考えています。半数近くの学生がインターンに行けるようになれば、社会全体の風潮も変わってインターン制度が広く普及するのではないでしょうか。

川口氏:
海外では、どのように採用活動を行っているのでしょうか。

ピョートル氏:
そもそも、海外には就活という概念はありません。自社にとってベストなタイミングで新卒を大量採用することはありますが、多くの会社が一斉に採用活動を行うことはありません。また、ほとんどの学生は在学中から契約社員として働いていますし、僕もフリーランスとして働いていました。

川口氏:
ピョートルさんから見て、日本の就活はどんな印象がありますか?

ピョートル氏:
日本の就活と日本の婚活はよく似ています。良いパートナーに出会いたいならひたすらデートして、新しい人間関係を増やしていくしかありません。良いパートナーに出会える人は、SNSの友達数が多いように感じます。つまり、社交的であるということ。今の日本の正社員採用は結婚に近いので、就活では多くの企業を見るべきです。

「私を拾ってくれる会社」を探すのではなく、「私と仲良くなれる会社」を選ぶ。会社は建物ではなく、人のコミュニティです。良いコミュニティに入ることが満足度の高い働き方を実現するために必要なことなのではないでしょうか。

内定辞退を防ぐには、「具体的なキャリアプランの提示」と「自社へのファン化」が必要

田中氏:
約5,000人のデータから分析した、内定辞退を防ぐ2つの法則をご紹介します。1つ目は「この会社にいたら成長できる」と思ってもらうこと。今の学生は成長意欲があり、とても純粋です。会社側から「うちに入ったら、あなたは3年後にこんな風に活躍できるよ」と具体的なキャリアプランを提示するといいでしょう。

2つ目は、自然と会社を好きになる仕掛けをつくって自社のファンにすること。例えば面接の際に、採用・不採用に関わらず自社商品をお土産としてプレゼントするんです。また、ファン化させる仕組みを設ければ、数年後にまた応募するかもしれません。採用の潜在層をつくり続ける会社は強いですね。

Loco Partnersの徳山氏

Loco Partners 徳山氏

徳山氏:
Loco Partnersでは長期インターンを導入していますが、新卒採用のためではなく事業成長のために導入しています。もちろんそのまま入社してくれるに越したことはありませんが、他の会社に入社した後に自社の話をしてくれるだけでも口コミ効果が生まれるため、それだけでプラスの効果になります。また、学生には「採用したい」とアピールせず、「こんな新規事業をやりたい。君が参加してくれたらマーケティングや立ち上げの経験ができるよ」と具体的にメリットを伝えています。

田中氏:
それはとても大切ですね。高級車のカリスマ販売員は「買ってください」とは絶対に言いません。採用も同じく「入社してほしい」と言ってはいけません。「好きな会社に行っていいけど、うちに来てくれたらこんなことができるよ」といった口説き方が一番効果的でしょう。

「コミュニティをつくる」感覚で採用活動を行う会社は成長する

川口氏:
採用のために、どのような組織づくりをしたらいいでしょうか。

プロノイア・グループ代表のピョートル氏

プロノイア・グループ代表 ピョートル氏

ピョートル氏:
コミュニティをつくる感覚で取り組むべきです。急成長している会社の採用活動の起点はほぼコミュニティづくりで、「あなたたちのために」ではなく「あなたたちと共に」というスタンスで採用しています。例えば、メルカリでは毎月違うテーマでイベントを開いて面白い人材を集め、そこで共感した人たちは「次のイベントはボランティアで運営に参加したい」と手を挙げてくれるのです。やがて「一緒に働きたい」とコミュニティの中に入り、マッチした人材が獲得できます。

プロノイア社では、インターン生も参加型の活動をします。インターン生が議事録を取り、会社は今後どうしていけばいいか自由に提案しているのです。立場に関係なく発言できるフラットな組織が理想的ですね。

川口氏:
とはいえ、担当者が組織の仕組みを変えるには上を巻き込む必要がありますよね。上層部への働きかけのヒントを教えてください。

徳山氏:
組織づくりにコミットしている人を事業部側に置くことです。人事以外の社員も組織づくりに意欲的になってくれるように働きかけることが重要だと感じます。上層部だけでなく、プレーヤーも1人ひとり巻き込んでいくのが良いのではないでしょうか。

今後の新卒採用で優秀人材を獲得するには、「ファン」をつくることが重要

ウォンテッドリーの川口氏

ウォンテッドリー 川口氏

川口氏:
就活ルールが撤廃されると、優秀な学生を早く確保しようとする企業が増えると思われます。今後の採用活動は、どのように進めたらいいのでしょうか。

田中氏:
早い段階で採用を行うと、どうしてもリスクが生まれます。大学1年生の段階で採用するのもアリですが、約80万人もいる新卒層へのアプローチには適していません。例えば大学2年生で採用するとしたら、卒業までの2年間、まめにフォローしなければいけない。卒業間近に「やっぱり入社できません」と言われたらその2年間の労力が無駄になってしまいます。

急いで人材を確保するより、よりコミットしてくれるファンをつくる方が生産的な採用活動ができます。そこで有効なのが、学生と複数企業の交流会。学生を集めるイベントは一社単独で行いがちですが、複数社合同でイベントを開催した方が集まる学生の幅も広がってより上質なコミュニティが生まれ、ファン潜在層をつくり出せます。

川口氏:
今後、日本の採用はどのように変えていくのが望ましいのでしょうか。

ピョートル氏:
保守的な日本人は社会から保証されたいという思いが強く、安定した企業での終身雇用を望みます。自己責任で働き、自分の市場価値を高めながらミッションを達成しようとする人は非常に少ないのです。

Google社でも採用したい日本の人材が少なく、目標数の採用ができませんでした。率直に言うと、学生のクオリティは海外よりも低いです。

「やりたいけどできない」ではなく「やりたいからやる」と言える人が増えなければ、これからの成長はありません。まずは教育機関と行政が自己実現を求める人材を育て、会社でも教育に力を入れるべきでしょう。

「WANTEDLY VISIT AWARDS 2018」受賞企業

「WANTEDLY VISIT AWARDS 2018」受賞企業

今回の「WANTEDLY VISIT AWARDS」では、過去1年間の応募数、応援数、スカウト返信率、フィード閲覧数などの実績値を基に、4部門からなる部門賞を各1社ずつ、総合力に重点を置いた総合部門としてシルバー賞を2社、ゴールド賞1社を選出した。

GOLD賞:チームラボ株式会社

高いエントリー数に加え、スカウトを活用してマッチング力を強化するなど採用力を高めている点や、フィードを活用した自社のPR、募集のSNSシェアなど、Wantedlyをバランス良く活用し共感採用を推進。新入社員からヒアリングし、採用チームのメンバーも増やして採用に取り組んだ。

SILVER賞:株式会社Loco Partners

全社を巻き込み、会社の「思い」をWantedlyなどのメディアを通じて深く発信。カジュアルな接点から深いコミュニティを醸成し、成果につなげた。

SILVER賞:freee株式会社

採用のマーケティング・広報に重きを置き、「思い」を伝えて「共感」したメンバーが当事者意識を持って入社できるように促した。それを実現するツールとしてWantedlyを活用。

ほか、ENTRY賞を株式会社TABI LABO、FEED賞を株式会社空、SCOUT賞を株式会社グッドパッチ、STAR賞を株式会社スクウェア・エニックスが受賞した。

【編集部より】
昨年の「WANTEDLY AWARDS」についての記事はこちら。

就活ルール廃止後の新卒採用に関する記事はこちら。

執筆者紹介

萩原かおり(はぎわら・かおり) フリーランスのライター・編集者。美容と心理が専門で、婚活パーティーの取材人数は200人を超える。三度の飯と執筆が同じくらい好き。求人・化粧品・社史制作を経て独立。現在は執筆業を中心に、取材記事から広告・LP・メルマガ作成まで幅広く活動中。休日はエステとジムに通い詰める美容オタク。 https://note.mu/hagitaro1010

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