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特集「東京五輪 急務のリスクマネジメント」第2弾


東京五輪で物流は大混乱。交通規制の影響と今から考えるべき納品対策

2019.07.24

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2020年の東京五輪の開会式を1年後に控えた24日、首都高速で大規模な交通規制テストが始まった。東京商工会議所の調査によると、社内や取引先との間で何らかの物流対策を検討し始めた企業(都内)はわずか11%(※NHK NEWS WEB「五輪規制 企業の物流対策進まず」より)。五輪で首都圏の交通網が麻痺し、物流網が乱れれば業務もままならないのは分かっているが、「それでもどう対策したらいいか分からない」が企業の本音なのかもしれない。

@人事編集部は、五輪時の混雑回避に関する論文を発表した東京海洋大の渡部大輔准教授に取材。物流システム工学に基づく物流の混雑回避のこつや、新国立競技場周辺の混雑回避の方法を聞いた。【取材:2018年10月26日 更新:2019年7月24日】

【人事・総務担当者向け】東京五輪 急務のリスクマネジメント(特集トップ)

目次
  1. 五輪期間中の物流は「多量小頻度納品」へ
  2. 千駄ケ谷駅はNG。新宿御苑を活用した鉄道混雑対策も

五輪期間中の物流は「多量小頻度納品」へ

東京五輪の交通混雑は、物流にどのような影響を与えるのか。物流業界や、日常業務で宅配便を多く利用する企業の総務担当者はどう対応すればいいのだろう。

大会組織委員会は、「大会運営と都市活動の安定との両立を図る上で、交通需要の抑制・分散・平準化を行う『交通需要マネジメント(TDM)』が前提かつ不可欠」(出典:組織委「TDM推進に向けた基本方針(案)」)と強調。渡部氏によると、五輪の開催期間中は主要なレーンの通行が規制され、思うように身動きが取れなくなる可能性がある。人や物が都心を移動するだけの「通過交通」に関しては環状道路を使う対処法もあるが、問題は荷物や人を特定の場所に届けるための「発着交通」への影響の大きさだ。

今は商品を迅速に届けることが利益に直結するため、物流をいかに効率化させて「少量多頻度納品」を実施できるかが重視される。しかし、五輪期間中はTDMの影響で「多量小頻度納品」に変える必要に迫られるため、渡部氏は「(企業や個人は)物流の頻度を平準化することが重要」と話す。1回の納品数を増やして納品の回数を減らし、トラックを行き来させる回数を減少させるのだ。具体的には、開催前にあらかじめ大ロットで運び、納品回数を1日1回から、3日に1回にするといった対策が考えられる。

東京海洋大の渡部大輔准教授

企業が五輪に対応するために上記のような物流対策を行うと、消費者にも直接的な影響が生じる。例えば、コンビニエンスストアでは通常、1日に何度も納品を行っているが、それが1日1回になるとする。その結果、鮮度が重要な惣菜類は運送、販売ができなくなり、消費者に商品が届かなくなる。消費者の欲しい物が24時間、常に必要なだけ手に入る「当たり前」の生活ではなくなるのだ。それほど、五輪開催期間中の納品の制約は大きな影響を持つ。

なお、期間中の物流については不確実な要因も大きく、完全なシミュレーションはされていない。物流の混乱による波及効果を正確に予測するのは困難だ。渡部氏は「非常時に近い事態だと考え、効率一辺倒で利便性を追求した今までの社会の在り方を見直すきっかけにするとよいだろう」と語った。

千駄ケ谷駅はNG。新宿御苑を活用した鉄道混雑対策も

東京五輪のメインスタジアムは、新国立競技場(新宿区)だ。開閉会式やサッカー、陸上競技の会場となり、期間中は最寄り駅のJR千駄ヶ谷駅や信濃町駅に人が殺到する可能性がある。もし、上記の駅だけで観戦客の対応をしようとした場合、駅構内に人があふれて電車が遅延し続け、JRが止まってしまうことも起こり得る。その影響で、首都圏の別の駅まで混乱するかもしれない。

渡部氏は2017年、「東京オリンピック・メインスタジアムへの観戦客に対する新宿御苑を活用した動線計画−時間拡大ネットワークを用いた徒歩流動モデルによる評価−」と題した論文を発表。五輪開催時に新国立競技場の最寄り駅に人が集中し、処理能力が限界を迎える危険性を軽減させるため、競技場周辺のターミナル駅、新宿駅を活用する手法を考案した。

渡部氏の提案は、新宿駅から競技場に向かう人を、その道のりの途中で新宿御苑に引き込む「新宿御苑徒歩ルート」の実施だ。ルートでは、新宿駅を出た後に新宿御苑を経由し、園内でセキュリティーチェックを受けた上で競技場に入場する。新宿駅の想定利用者数や競技場までの所要時間、チェックゲートの数、必要な設備の広さなどの評価軸を用いてシミュレーションした。このルートだと観戦客を円滑に誘導でき、交通規制を大幅に減らすことができる。

新宿駅から新国立競技場までの誘導経路

(出典:渡部大輔「東京オリンピック・メインスタジアムへの観戦客に対する新宿御苑を活用した動線計画―時間拡大ネットワークを用いた徒歩流動モデルによる評価」)

新国立競技場の混乱に備えることは、千駄ケ谷駅や新宿駅周辺を利用しない人には関係のない話のように聞こえるかもしれない。しかし、都心の巨大ターミナル駅の混乱は、首都圏全体の交通混雑に影響を与えかねない。企業の人事担当者は混雑回避策を考え、社員に提示できるようにしておく必要がある。

【撮影:高井直樹】

渡部大輔

1976年、川崎市生まれ。筑波大第三学群社会工学類都市計画専攻卒。筑波大大学院システム情報工学研究科社会システム工学専攻修了。民間企業、独立行政法人海上技術安全研究所、東京海洋大助教を経て、2011年より東京海洋大海洋工学部流通情報工学科准教授。2015〜16年にはカリフォルニア大サンタバーバラ校客員研究員。専門は物流システム工学。

執筆者紹介

直江あき(株式会社スキマタイズ) 早稲田大学教育学部卒。フリーランスの編集者、ライター、パズル作家。政治記事や少女漫画誌、インタビューなど幅広く執筆。

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