コラム

@人事 ドイツ支部通信


「子育ては女性の仕事」はドイツも一緒? 仕事と育児を両立させるには

2018.11.27

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『女性が活躍できる社会に』。これは、ほぼすべての先進国が課題にしていると同時に、社会問題として頭を悩ませているテーマだ。女性の仕事と育児の両立において「遅れている」と言われがちな日本だが、同じく「子育ては女の仕事」という価値観が強いドイツから、時短ワークや男性の育児休暇制度について考えていこう。

出産・育児で離職する日本人女性

少子高齢化。この言葉が一般に浸透しはじめてから、すでにずいぶん時間が経った。また、労働人口の減少、男女平等の観点から考えて、「女性もどんどん社会に出ていくべきだ」という風潮になっている。

つまり、女性に子どもを産んでもらわなければいけないが、女性もバリバリ働くべき……という状況になっているわけだ。

出典:中小企業庁 中小企業白書

20代後半から30代半ばまで、日本の女性の労働力率はぐっと下がる。働かず求職もしていない理由のトップは、「出産・育児」だ(参考:内閣府男女共同参画局(I-2-8図))。つまり、出産と育児のために完全に仕事から離れる人が多いのである。

では、ほかの国はどうか。ドイツやフランス、スウェーデンではこのM字は見られず、出産・育児のために仕事をやめる人が少ないことがわかる。

02出典:内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書(概要版)平成29年版

また、日本では、一度仕事から離れた女性の社会復帰がむずかしく非正規として働くことが多い、というのも特徴的だ。出産・育児を機に仕事を離れ、子どもが大きくなったら非正規で働くというのが多いパターンである。

03出典:内閣府男女共同参画局 男女共同参画白書 平成26年版

しかし労働力不足が指摘される現在、女性の離職率を下げ、出産・育児と仕事の両立環境を整えていくのは必須である。では、そのためにはどんな対策ができるだろうか。

母親の7割が時短ワークするドイツの『両立』スタイル

ドイツをはじめ、ヨーロッパに『男女平等が進んでいる』というイメージをもっている人も多いだろう。わたしもそうだった。しかしドイツ、特に西側の地域では、「女も働く時代」という認識がある一方で、「育児や育児は女の仕事」という価値観もいまだに強く根付いている。

需要と価値観のギャップを踏まえ、ドイツはどんな対策をとっているのだろうか。

結論として、ドイツでは育児中の女性の時短ワークが浸透している。2017年、女性労働者の半数が時短ワークをしていたほどだ(参考:WSI)。未成年の子どもを持つ母親にかぎっていえば、69%が時短ワークをしている。ちなみに父親は、6%である(参考:ドイツ連邦統計局)。

04出典:T-Online Teilzeitbeschäftigung bei erwerbstätigen Frauen 2014 (25-49 Jahre, in %)

この統計は時短ワークをしている母親の割合で、紫がドイツ、青がEUの平均である。左から、「子どもがいない」「子ども1人」「子ども2人」「子ども3人」だ。

1~3人の子を持つ母親の時短ワーク率はEU平均で39%だが、ドイツは71%。時短ワークをしている女性の多さは、ドイツのひとつの特徴といえる。

しかし、男性はフルタイムなのに女性が時短で働いているという現状は、「平等」とはいえない。それはドイツ国内でもしばしば指摘されていることだ。だが「働きつつも育児に時間をとりたい」という女性が多いのもまた事実で、時短ワークは、現実的な解決策のひとつになっている。

3人に1人の父親が育休を取るドイツの『両親手当』

「女性が育児と仕事を両立しやすいように」と考えるとき、男性の働き方についても注目する必要がある。しかし、いくら「男も育児を」とはいっても、社会的、経済的にむずかしいのが現実だ。

ドイツも、10年以上前の男性の育児休暇取得率は3%程度で、決して高いとはいえなかった。しかし月額収入の67%を保証する『両親手当』を2007年から導入したことにより取得率が上がり、いまでは3人に1人以上の父親が育児休暇を取得するまでになっている。

05出典:statista Anteil der Neugeborenen, deren Vater Elterngeld bezogen hat, nach Geburtsjahr

両親手当は、以下のような制度だ。

「両親手当」は、片方の親だけが受給する場合は最大12カ月間支給される。もう一方の親も受給する場合はさらに2カ月延長され、最大14カ月間支給される。この追加の2カ月分は「パートナー月」と呼ばれ、もう1人の親が育児休業を取得しなければ受給権は消滅してしまう。ドイツの場合、受給期間を最大の14カ月間にしようとして「パートナー月」の2カ月だけ父親が育児休業を取得して両親手当を受給するケースが多い。実際、最新の統計では、両親手当の受給期間が2カ月だった父親の割合は79%だった。出典:労働政策研究・研修機構

かんたんにいえば、片方の親が取得すれば12カ月だが、両方の親が取得すれば14カ月の手当金を受給できる制度である。「それならば」と、母親が12カ月、父親が2カ月受給することを希望し、それにより育児休暇取得率が上がったわけだ。

ただ、これも時短ワークと同じで、「女性が男性よりも長い期間仕事から離れている」という点で『平等』とはいえない。上で紹介した統計では、育児休暇取得の平均期間は、男性は3.1カ月で女性は11.6カ月となっている。

しかし、2016年の男性育児休暇取得率が5.4%の日本では、このように「短くてもいいからとりあえず男性も育児に参加できるようにする」というのも大切だろう。

時短ワーク&育児に使える有給休暇という提案

ドイツのように、女性は時短ワークをしながら育児を行い男性はフルタイムワークをしながら育児を手伝うというのは、日本からすれば参考にしやすいモデルケースだろう。

ここでのポイントは、ドイツでは『時短=非正規』とはならないところである。会社との交渉にもよるが、「育児休暇後は時短ワークで職場復帰」「子どもが大きくなるまでは時短ワークで」ということがやりやすい。

時短社員として働ける環境を整えれば、働きやすくなるのは育児中の女性だけではない。介護中の男性や兼業したい人、大学に通いたい人などにとっても、魅力的にうつるだろう。時短社員×2でジョブシェアリングをする、というのもひとつの手段だ。

また、男性の育休取得に関しては、「育休を取得しなければ損」という状態になるのがいいだろう。いきなり2カ月間の休業はハードルが高くとも、たとえば『◯歳以下の子どもがいる社員は有給休暇を15日プラスする』のようにするのはどうだろう。

「育児休暇を取得します」というよりも利用しやすいはずだし、子ども関係の突発的な理由で急遽休む場合も、有休日数が多ければ安心できる。

機能する制度を作るための意識改革

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いろいろと書いてはみたが、「そうはいってもむずかしい」という人もいると思う。それはそうだ、実際にむずかしいテーマなのだから。そこで大切になるのは、制度の周知、そして人々の意識の変化だ。制度は、浸透していなければ意味がない。いくら時短ワークや男性育児休暇の制度を整えても、機能しなければないも同然である。

だからこそ、みんながしっかりと制度を理解しておくことが大切だ。申請されたときに上司が「よくわからない」と顔をしかめ、まわりが「そんな制度あったんだ」というリアクションを取れば、萎縮してしまうだろう。制度が機能する環境が必要だ。そして制度への理解をうながすのは、「子育ても大事な仕事」という意識の共有である。

ドイツではすでに、『育児休暇』を『両親の時間』という名前に変更した。「休暇ではなく親に専念する時間である」と、公に意識改革を図ったのだ。日本が『看護婦』を『看護師』に、『保母さん』を『保育士』と表現するようになったように、言葉を変えることで意識が変わることもあるだろう。育児休暇を『子育て支援期間』などとすれば、多少なりとも「休暇をとっているのではない」という意識に変わるかもしれない。

多くの国や企業を参考にしながら、女性はもちろん、男性も仕事と育児を両立させやすくするための制度を作ることで、意識改革が進み、より働きやすい企業が増えていってほしいと思う。

執筆者紹介

雨宮紫苑(フリーライター) ドイツ在住、1991年生まれのフリーライター。大学在学中にドイツ留学を経験し、大学卒業後、再びドイツに渡る。ブログ『雨宮の迷走ニュース』を運営しながら、東洋経済オンラインやハフィントンポストなどに寄稿。著書に『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書)がある。

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