「関西 総務・人事・経理ワールド」来場者に実施したアンケート結果を発表
あなたの会社は「働き方改革」は進んでいる? 企業の実情を緊急調査
2018.11.27
人事や総務担当者向けのサービスや商品が勢ぞろいした展示会「関西 総務・人事・経理ワールド」(来場者数16,415人、出展企業数350社)が、2018年11月7~9日、大阪市内で開催された。「@人事」(運営:株式会社イーディアス)も出展し、来場者に「働き方改革」に関する緊急アンケートを実施。「労働時間の短縮」「多様な働き方(在宅勤務、テレワークなど)」「ダイバーシティー/女性活躍推進」「生産性向上/業務効率化(ツールの導入や会議時間短縮など)」の中から、すでに取り組んでいること、今後取り組みたいことを選んでもらい(複数回答あり)、シールを貼ってもらった。
計416の回答(シール)を集計した結果、労働時間の短縮や生産性向上が進んでいる一方、ダイバーシティーや多様な働き方の実現については注目度が低いことが分かった。さらに、編集部が来場者の人事や総務担当者、経営者らに取材し、各企業の効果的な事例、社内改革が進まず試行錯誤する思いも聞いた。働き方改革のソリューションを求める彼らの「リアルな声」を聞いてほしい。【取材・編集:大西里奈、祝迫智子】
「すでに取り組んでいること」1位は「労働時間の短縮」
「すでに取り組んでいること」の質問では、「労働時間の短縮」の回答が最も多く、僅差で「生産性向上/業務効率化」が続いた。3位の「多様な働き方」、4位の「ダイバーシティー/女性活躍推進」はいずれも「労働時間の短縮」の半数ほどの回答だった。
上位の「労働時間の短縮」と「生産性向上/業務効率化」に対しては、どちらも全体の3分の1程度が「すでに取り組んでいる」と回答。「生産性向上、業務効率化のために、労働時間を短縮している」(IT関連、20代、女性)と回答する人が多く、関連した取り組みとして考えられているようだ。
「多様な働き方」と「ダイバーシティー/女性活躍推進」もほぼ同数の回答結果となった。「希望する女性社員には、事務の仕事から建設現場へのジョブチェンジを支援している」(建設業、50代、男性)、「学習塾という業務の特性上、母親の気持ちが分かる女性を積極的に管理職に登用している」(教育、50代、男性)という回答があり、人手不足に苦しむ業界や、女性ならではの視点を重視する業界が積極的に取り組んでいる。
また、今回は「ダイバーシティー」と銘打ったものの、障害者や高齢者の活用に関する回答は1つもなかった。
「今後取り組みたいこと」1位は「生産性向上/業務効率化」
「今後取り組みたいこと」の1位は「生産性向上/業務効率化」だった。2位「労働時間の短縮」、3位「多様な働き方(テレワーク、在宅勤務)」はほぼ同数だったが、4位「ダイバーシティー/女性活躍推進」の回答数は特に少なく、全体の10%にしか届かなかった。
来場者の中には「古い企業体質で、改善すべき点が多すぎる。まずはペーパーレスから始めたい」(製造業、20代、女性)、「社内には紙が多く、社員の出退勤はいまだにタイムカードで管理している。ツールの導入を検討し、できることから1つずつ取り組む」(小売業、40代、女性)との声もあった。企業によっては改革が全くできておらず、働き方改革の第一歩として業務効率化が最も優先されているようだ。
「ダイバーシティー/女性活躍推進」は、「今後取り組みたいこと」でも最下位となった。ツールの導入といった単純な方法ではすぐに解決できない課題で、企業が足踏みしているとみられる。一方で、「女性が活躍できる職場を実現させるために努力すれば、労働時間の短縮、働き方の多様化、業務効率化の全てをかなえられる」(情報システム、50代、男性)と語る来場者も。ダイバーシティーを実現した企業こそが、「働き方改革を全てクリアした」と言えるのかもしれない。
「働き方改革」の実施事例、悩みを一挙公開
ここからは、来場者が語った働き方改革の実施例や悩みを、4つの回答項目ごとに紹介する。各企業の具体的な実施内容や成果、なかなか職場環境を改善できず苦しむ姿もそのまま記載した。普段は聞けない他社の「リアル」を知り、自社の改善策の参考にしてほしい。
すでに取り組んでいること
労働時間の短縮
・残業時間を20時間以内に改定し、「20時間を超えた場合は人事評価に反映する」という仕組みを作ったところ、残業する社員が大幅に減った。以前は残業時間を月30時間以内とし、全社員(200人程度)の3~4割が規定時間以上に残業していたが、2018年4月の新制度導入後は、20時間を超える社員が10人程度に減少した。(IT関連、20代、女性)
・時間短縮を成功させる鍵は、チームで目標を立てること。1人だけ残業時間が減っても他の誰かがしわ寄せを受けるため、個人ではなくチームで残業時間を管理する。ノー残業週間やノー残業月を設定し、チームごとに目標達成を目指している。化粧品メーカーで社員の6割が女性という背景もあり、会社全体で長年、労働時間の短縮に取り組んでいる。(メーカー、20代、女性)
・上司と部下が1対1でミーティングをし、無駄な業務がないか徹底的に確認し合うことで労働時間を減らしている。労働時間を見直すことが、業務効率化につながる。(製造業、30代、男性)
■ポイント
「残業すると人事評価に影響する」意識付け、業務の洗い出しが効果的。チームごとの目標管理も有効
多様な働き方
・部署内の社員のうち35%が在宅勤務を実施している。柔軟な働き方の実現、大規模災害の対策のため普及を促しているが、実施社員数50%の目標はなかなか達成できない。「自分の業務内容では在宅勤務はできない」、「今の仕事をこなすので精一杯で、新たに在宅勤務の実施に費やす時間がない」と思い込んでいる社員を動かす方法がないか、考えている。(情報通信、30代、男性)
・管理部門の女性社員が試験的にテレワークを実施している。ただ、家でだらだら作業していても意味がない。テレワークする目的を明確にしないと、現場での本格導入は難しい。(製造業、30代、男性)
■ポイント
社外で働く環境を整えることは、働き方の自由化だけでなく、大規模災害時の対策にもなる。実施する目的や必要性を明確にし、現場社員に理解してもらうことが重要
ダイバーシティー/女性活躍推進
・事務から建設現場への異動を希望した女性社員を、積極的に現場に送り出している。過去3年で2人が建設現場に移ったが、現場の先輩社員が、建設業務に必要な資格試験の勉強方法を教えていた。今のところ、会社としては資格取得を支援する制度を設けていないため、今後は整備したい。(建設業、50代、男性)
・育児や介護を両立したい女性社員のため、時短勤務の制度を導入している。開始当初は「申請したいが、周りに迷惑をかけてしまう」という思い込みがあったようで、利用は進まなかったが、制度導入2年目からようやく利用者が増えてきた。(物流、40代、男性)
■ポイント
各種制度をそろえていても、それを利用できるような職場環境でないと意味がない。職場の同僚のサポートが大切
生産性向上/業務効率化
・社員が互いのスケジュールや資料(ドキュメント、スプレッドシート、パワーポイント)をクラウド上で共有できるツールを整え、ペーパーレス化した。会議の前には必ず、議題や会議のゴール、必要な資料を共有し、会議中に無駄な時間が生まれないようにしている。オフィス環境も整え、立った状態で会話できる高さのテーブルを用意した。椅子に座らず話すため、会議を短く進められる。(製造業、20代、男性)
■ポイント
ツールの導入でペーパーレス化、会議の効率化の両方を達成できる
今後取り組みたいこと
労働時間の短縮
・営業社員が勤務時間外に担当の顧客と連絡を取ることが多く、労働時間の実態がつかめない。今は全営業社員に一律で「営業手当」を支給しているが、本当は各社員の残業時間に応じた「残業手当」の支給に変更したい。顧客とのやり取りは欠かせないものの、営業社員の働き方を見直して残業時間を減らすこと、労働時間を正確に把握することの両方に取り組まなければならない。いい手立てがないか、探している。(製造業、40代、男性)
多様な働き方
・テレワークを導入し、時に社外に出て気分転換しながら働く環境をつくりたい。人事や経理担当者は社内にいる時間が多く、なかなかリフレッシュできない。自分のデスクから離れて気持ちを切り替え、集中力をもう一度高められるような働き方があってもいい。(製品加工販売、20代、男性)
ダイバーシティー/女性活躍推進
・化学メーカーという性質上、製造や大きな荷物の運搬など体力のいる仕事が多い。社員4,000人のうち女性は2割程度で、採用にも苦労している。労働人口が減る中、新たに女性を受け入れる土壌をつくりたいが、何から取り組めばいいのか分からない。(メーカー、30代、男性)
生産性向上/業務効率化
・会社が古い体質で、紙とはんこがないと何も動かない。今後のことを考えると、請求書や重要書類はデータで蓄積する必要があり、ペーパーレス化、データベース化したい。普段の会議は生産性が低く、何も決まらず、時間が過ぎていくばかり。育休や産休制度も整っておらず、全社的に改善したいことが山積している。まずはペーパーレス化を部署内で実施し、成功事例をつくってからそ全社的な改善を進めたい。(製造業、20代、女性)
・社員の勤怠状況、定年時期、中途採用向けの求人広告の掲載期限など、全てのデータをバラバラに管理している。働き方改革の影響で他にも取り組むべきことが増える中、せめてデータだけでも一元化できるようにしたい。全ての情報を効率よく管理できるツールが欲しい。(製造業、50代、女性)
働き方改革に関する記事はこちら
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