コラム

「HR Technology Conference & Expo 2018」参加レポート(前編)


「HR Technology Conference & Expo」で参加すべき4つのコンテンツとは?

2018.11.05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

世界最大級のHRテクノロジーイベント「HR Technology Conference & Expo 2018」は、2018年9月11日~14日にアメリカ ラスベガスにて開催されました。今回で21回目を迎える、歴史のあるイベントです。

来年以降このイベントに参加しようと検討されている方に向けて、前編・後編の2回に分けて、「HR Technology Conference & Expo 2018」の模様をお伝えします。

前編となる今回は、初めてこのイベントに参加した私の所感を交えつつ、主に「Expo」の様子をレポートします。さらに、「Expo」をより一層満喫するためのポイントもご紹介していきたいと思います。

「HR Technology Conference & Expo 2018」参加目的

近年、日本でもHRテクノロジーサービスを展開している会社が増えており、それに関連したイベントが多く開催され、書籍やWeb上での記事も毎日のようにリリースされています。

それだけ、世の中で注目されているHRテクノロジーに関して、日本以外の国の状況はどんなものなのか、そして、そこに国による違いがあるのかといったことを、自分の目で確かめたいというのが一番大きな目的でした。

また、私が担当している案件の中には、HRテクノロジーサービス導入後の拡張利用支援といったものがあるので、ここで得られる新たな知見は間違いなく役に立つだろうと認識していました。

イベントは「Conference」と「Expo」の2部構成

このイベントは、大きく「Conference」と「Expo」の2つで構成されています。

「Conference」は、著名な方による基調講演や、ケーススタディ・トレンド・考え方などのフレームワークを紹介したセッションです。1つのセッションは60分~75分で、全部で約60セッションほどが開催されます。同じ時間帯に複数のセッションが開催されることもあるので、全部に参加できるというわけではありません。

「Expo」は、HRテクノロジー関連の企業がブースを出展しています。HRテクノロジーサービスのデモの実演や、担当者と直接話すことができる、いわゆる「展示会」のことです。こちらは、初日の夕方から9月13日までの期間で開催されていました。

多数のスタートアップ企業も出展

今回、ダイヤモンドスポンサーのSAP、Oracleなどから、スタートアップ企業まで、全部で442社が出展していました。会場はとても広いので、明確に訪問したい企業のブースがある場合は、ブース番号を頼りに向かうのが良いでしょう。

こういったExpoでは、ブースの広さと出展料は大抵比例するものです。そのため、スタートアップ企業にとって、出展料や準備コストと効果を鑑みると、若干敷居の高いものなのかもしれません。

しかし、「HR Technology Conference & Expo」の場合、スタートアップ企業向けにデスク1つ分くらいのスペースのブースが「Startup Pavilion」として設けられており、そこに60社ほどの情報が集約されていました。このようにして、スタートアップ企業が出展しやすい環境づくりもなされていました。

写真②IMG_8695

「Expo」内で参加すべき4つのコンテンツ

今回私が参加した中で、特に有益に感じた4つのコンテンツをご紹介します。

① 小規模セッション

Expo会場の一部を使った「HR Tech Talk」という名前の20分程度のセッションが1日に3~4回開催されていました。

実際に、その中の1つ、9月12日(火)開催の「Offboarding Is Just as Important as Onboarding」に参加しました。日本語に訳すと「退職から離職までの対応は、新規採用者の受け入れと同様に重要である」というタイトルでしょうか。多くの人の関心を集めるテーマだったのか、立ち見も出るほどの参加者数でした。

内容としては、「退職者は退職してからの状況変化によって、顧客になる、パートナーとして業務委託を発注する、あるいは社員として再入社することもある。すなわち、企業との関係性が変わっていくことを想定しておくべきである。そのため、退職時の対応(Offboarding)は会社としてのブランドの維持も考慮することがとても重要である。オフボーディングの必要性はマネジャーだけではなく、スタッフにも会社の方針は啓蒙しておくべきである。」といったもので、最近日本でも注目されつつある「アルムナイリレーション」の意義を説明していました。

写真⑤IMG_8667

こういったセッションの間に、スピーカーと別のスタッフが首から下げているバッチのQRコードをスキャンして「顧客登録」をするという仕組みになっていました。また、セッションに参加したことをきっかけに、後ほどブースで詳細な説明を受けるといったことも可能です。

② 軽食・ハッピーアワー

期間中、何度か昼食を含むフードやドリンクサービスなどが行われていたのですが、朝食以外はExpo会場内で提供されていました。

特に、初日(9月11日)の夕方は「Opening Night Pub Crawl」、2日目(9月12日)の夕方は「HR Happy Hour」と称して、いくつかのブースではアルコールやフィンガーフードが提供され、それらをいただきながら各ブースを回ることができる時間帯がありました。各ブースを回るだけではなく、参加者同士のネットワークも広がるきっかけにもなったので、面白い企画だと感じました。

写真⑬IMG_8722

③ Expo Guided Tour

400以上の企業が出展する「Expo」で、全てのブースを回るのは事実上難しいでしょう。また、どこに行ったらよいのか分からない……と迷ってしまうこともあるかもしれません。

HR Technology Conference & Expoでは、そういった方々を対象に「Expo Guided Tour」を開催していました。これは、テーマごとに30分で3~5つのベンダーを回ることができるツアーで、各ベンダーから、短時間でのデモや説明を集団で聞くことができます。テーマは以下の3つで、それぞれ別の時間帯に開催されました。

・Recruitment
・Workforce Planning & Analytics
・Engagement & Recognition

スケジュールの関係上、私は「Recruitment」のツアーにのみ参加しました。開催前にメールで案内が来たので事前登録をしたところ、モバイルチケットが発行されたのですが、実際には全く確認されることはありませんでした。日時や集合場所はガイドブックなどに公開されていたので、「飛び入り参加」も可能なツアーだったのかもしれません。

写真⑦IMG_87332

「Recruitment」のツアーでは、ATS(Application Tracking System:採用管理システム)やそれに関連するサービスを提供する3社(Cornerstone OnDemand, Inc.、HiringSolved、Lumesse, Inc.)を回りました。同時にツアー参加者20名くらいが訪問してくることになるので、かなり盛況なブースとなります。

ツアーでは、1つ1つのサービスについての説明は簡略的なもので終わってしまいますが、短時間で多くのベンダーと接触することが可能です。また、ベンダー側としては、「潜在的な顧客を開拓する機会」になると言えるでしょう。

写真⑪IMG_8742

④ ピッチコンテスト(Pitchfest)

スタートアップ企業を対象にした「Pitchfest」という名前のピッチコンテストが、期間全体を通して行われていました。
※ピッチコンテスト:自社の事業計画や将来性を短時間で発表するイベント

書類審査で選ばれた30社が、10社ずつ3回に分けて予選を行います。1社あたり5分間の持ち時間の中で審査され、決勝ラウンドには計6社が進出できます。この3回の予選および決勝ラウンドが、Expo会場に設けられた特設会場にて実施されました。

写真⑨IMG_85932

写真⑩IMG_8805観客は会場内にあるQRコードからWebサイトにアクセスして、それぞれの会社のプレゼンテーションに対して5段階評価をつけて投票することができます。審査員70%、観客30%の割合で、その企業の採点が行われます。

今年は、マイノリティーに対するバイアスを無くすために、候補者の氏名や写真を表示せずタレント・能力・経歴だけでジョブマッチングができるサービスを展開しているBlendoor社が優勝しました。

優勝企業は、午後のセッション「Discovering the Next Great HR Technology Company」に登壇することができ、また、来年のHR Technology Conference & Expoにて展示ブースが与えられることになっています。来年行かれる方は、是非ともBlendoor社のブースも立ち寄ってみてはいかがでしょうか?

このピッチコンテストを見て、日本のマーケットが諸外国より大きく進んでいるわけでも遅れているわけではなく、状況はそれほど変わらないのではないかと感じました。英語でプレゼンや質疑応答を行う必要がありますが、来年は、日本企業にも是非とも挑戦してほしいと思います。

Expoに人を導く戦略

様々な方法を使って、「Expo」内のコンテンツに足を運ぶ仕掛けが施されていました。具体的にどんなものだったのかをご紹介したいと思います。

① 葉書・メール

カンファレンス申込時に記載した住所宛てに、事前にE-mailや葉書が送付されてきました。葉書は写真のように3通だけでしたが、E-mailは開催日の10日前から期間中も含め全部で30通くらい受信しました。しかも、同じ企業から複数回受信することもありました。

ベンダーによって記載内容は若干異なっていましたが、ブースナンバーと共にどんなことが展示ブースでみることができるのか、ミニセッションの日時、デモ予約の申込リンクといったものが記載されています。

写真③IMG_9140

直前にこういったものが送られてくると、「時間もありそうだし、申し込んでおこうか」「現地でブースに立ち寄ってみようかな」と感じます。実際、私もこれがきっかけでブースに行ったところもあったので、集客に多少なりとも効果があると思いました。

② ノベルティーグッズ

写真④IMG_9133
Expoでは、各社が趣向を凝らしたちょっとしたノベルティーグッズなども併せて配布していました。ノベルティーグッズで関心をひきつけて、ブースに来た方に話しかけるという戦法をとっていたのかもしれません。

こちらのミニボトル・シェーカー・マドラースプーンは、思わず私ももらいに行きました。ちなみに、この緑色のゴムバンドのようなものは、USBメモリーです。

「Expo」の傾向と対策

「タレントマネジメント(86社)」「エンゲージメント(67社)」関連のHRテクノロジーサービスの企業の出展社数が昨年は多かったようです(かっこ内は今年の出展社数です)。今年もその傾向は維持しつつ、「AI(62社)」を使ったサービスを展開している企業がとても増えたと思います。

AIはデータ分析などの機能として使われるだけではなく、Google Homeのようなスマートスピーカーの人事版といったものも登場しているようです。例えば、上記のPitchfestにも出場されたJane.aiの場合、社員が「有給休暇は何日残っている?」と尋ねると、それに対してAIが有給残日数を答えるといったような機能です。

また、次回ご紹介する「Conference」に出席していると、Expoを見て回る時間は意外と限られてきます。そのため、イベント参加の目的が明確な場合は、どの会社あるいはブースを見たいのか、ある程度決めておいた方が良いでしょう。いくつかの会社のデモを事前予約しておくことも、方法の1つかもしれません。

その一方で、会場内を歩いている時に、ちょっと気になったから立ち寄ってみる……ということも新たな出会いのきっかけになるので、会場を見て回る時間を持つだけでも、十分に雰囲気を知ることはできると思います。

今回は、主に「Expo」の内容をご紹介しました。次回は、HR Technology Conference & Expoのもう1つのメインである「Conference」についてご紹介します。ご期待ください。

執筆者紹介

永見昌彦(ながみ・まさひこ) アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社(ラグジュアリーブランド持株会社)で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、人事全般のプランニング・コンサルティング・実務にたずさわっている。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

あわせて読みたい

あわせて読みたい


資料請求リストに追加しました