林修三先生のなるほど人事講座
「引出し型面接」における質問の基礎技術 応募者の本音を引出す2つのキーワード
2018.10.22
筆者のコラムでは、これまで不定期で「応募者の本音を引き出しながら志望度を上げる『引出し型面接』」について取り上げてまいりました。
以前の記事(応募者の本音を引き出し、志望度を上げる「引出し型面接」のポイント)では、応募者が話をしたくなるための場づくりについてご紹介しました。今回は、応募者の本音を引き出す質問の基本についてご紹介していきます。
面接で把握したい要素をあらかじめ明確にしておく
まずは準備段階の話になりますが、面接の中で応募者の何を確認していきたいのか、その要素をあらかじめ明確にしておくことが必要です。
一般的に、面接試験における評価基準としては「○○性」「○○力」といったものがあるかと思いますが、応募者が話す中身のうち、何をもってその「○○性」「○○力」の有無やレベルを評価していくのか、基準を設定しておくことがポイントです。
大きく分けると、「○○性」というのは性格や思考パターン、価値観など、応募者の内面を把握することで評価が可能になる項目、「○○力」というのは具体的な言動の中身(もっと言うと、そこから見えてくる行動パターン)を把握することで評価が可能になる項目だと言えます。
したがって、自社の評価基準を定める際は、単に「○○性」「○○力」で終わらせるのではなく、どのような内面や具体的な言動を「○○性」「○○力」の存在根拠として考えるか、一段階踏み込んで具体化しておくことが求められます。
その上で、面接においてまずは本人の“内面”と“具体的な言動”を把握することに務めるのが、面接官に求められる役割になります。
質問の基軸になるのは「なぜ?」「具体的には?」の2つ
“内面”と“具体的な言動”、この2つの要素を確認するための質問をしていくにあたって、基軸になるものは「なぜ?」「具体的には?」の2種類です。
(1)「なぜ?」ー応募者の思考を掘り下げる
人間が意識的に行った言動については、その背景に必ず当人の価値観や信念、ものの見方や捉え方というものが存在します。そのため、応募者のさまざまな言動に対して「なぜ?」と問いかけていくことは、応募者の思考を掘り下げるための、重要な手段となります。
そのやり方は簡単で、応募者が話した中身のうちの「○○をしました」「▲▲と考えました」という点に対して、「なぜ○○をしたんですか?」「なぜ▲▲と考えたんですか?」と、半ば機械的に対応するだけです。
例えば、応募者が「販売員のアルバイトをしていたのですが、売上1位になることを目指して頑張りました」という話をしてきた場合、
「なぜ販売員のアルバイトをしたのですか?」
「なぜ売上1位になることを目指したのですか?」
というように、応募者の話の一部に「なぜ?」をつけて聞き返せばOKです。
この一文だけでも2つの「なぜ?」が生じるため、応募者からの話題が多いほど、「なぜ?」をぶつける箇所が増えていきます。その瞬間瞬間で、どんな「なぜ?」を優先的に問いかけていくかを判断してください。
ただし、「なぜ?」という問いかけは非常に強い攻撃性を含むものですので、あまりにも「なぜ○○?」という言葉を使いすぎると、かえって応募者が心を閉ざしてしまう可能性があります。
そこで、意味は同じなのですが、「どうして○○?」「○○はどんな理由で?」「何があなたを○○に突き動かした?」など、ボキャブラリーを駆使して好意的関心に基づく質問であることを示していくことが肝要です。
参考:面接官が身に付けておきたい「アクティブリスニング」2つのポイント
(2)「具体的には?」ー発言の根拠を探る
応募者が話すエピソードなどに曖昧な表現が含まれる場合、それに対して必ず「実際にどのような言動を取ってきたのか?」を確認することが面接官には求められます。そのための代表的な質問が「具体的には?」です。
例えば、「一生懸命頑張った」「粘り強く努力した」「お客様にご満足頂けるよう取り組んできた」などの、一見キレイな表現だけれども実際に何をしてきたのかは分からない、という表現が出てきた場合は、確実に「具体的には?」をぶつけられるように訓練をしておくことが必要です。
(例:「一生懸命頑張ったということですが、具体的にはどんなことをどのように頑張ってこられたのですか?」「粘り強くということですが、具体的にどういうことをしてきましたか?」「お客様にご満足頂けるようにということでしたが、具体的には?」)
また、ある応募者が「○○力を有する」と言った場合、単に結果を出しているというだけで、その○○力を持っているとは言い切れません。たまたま神風が吹いていたり、周りの人の努力の成果に乗っかっただけだったり、ということも大いにあり得ることです。そのため、本当に○○力を有していると言えるのか? を確認するためにも、その応募者の具体的な言動を確認していく必要があります。
これを確認するためには、応募者が出した(と主張する)結果に対し、その結果が出た要因をどう考えていて、自身のどのような具体的言動がその要因に当てはまるのかを問うていくことになります。ちなみにこれは「なぜ?」と「具体的には?」を組み合わせた対応となっています。
2つのキーワードを駆使し、応募者の本音を引き出す
引き出し型面接の基本コンセプトは「相手にどんどん話をしていってもらうこと」です。とはいえ、採用面接に不要な内容を長々と話し続けられても意味がありません。
今回の「なぜ?」「具体的には?」をうまく活用して、まずはこちらが聞き出したい事を応募者に話してもらえるよう、導いてみてください。
【編集部より】
面接のノウハウに関する記事はこちら。
執筆者紹介
林修三(はやし・しゅうぞう)(株式会社ヒュームコンサルティング代表取締役) 1975年生まれ。仙台市在住。東北大学法学部を卒業後、大手自動車部品メーカーの経営企画職~IT企業の人事・採用職を経て現職。現在は東北地方の複数の大学でキャリア系科目講師として学生の就職指導に努めるほか、人事・採用コンサルタントとしても活動中。
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