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特集

活力を生み出すダイバーシティ(女性活躍推進編)


女性の視点や経験を企業力へ転換 KDDIが実践する女性活躍推進

2016.02.03

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「女性が働きやすい会社づくり」は、一歩間違えると女性社員のキャリアロスにつながる可能性がある。「長期の育児休暇取得」「時短勤務時間の促進」などの“手厚い”サポートを充実させればさせるほど、「子育ては女性が担う」というように男女の役割分担を促進させる結果になっていると、感じるケースはないだろうか。(取材:玉寄麻衣/浜田有希子)

キャリア志向の女性が増えたことや、育児・介護休業法の浸透により、妊娠後も産休・育休を取得したのち復帰する女性社員の数は増加傾向にある。厚生労働省の事業所調査(平成26年度雇用均等基本調査)によると、産休・育休を取得した女性社員が一人でもいた事業所の割合は2008年の93.6%をピークに、その後も80%以上の割合で推移している。

2008年は、育児・介護休業法が改正された年である。3歳に満たない子を養育する労働者から、「勤務時間の短縮」「所定外労働の免除」などの希望があれば、使用者側の措置が義務付けられた。また、リーマンショックによる世界的不況、不安定な社会情勢の影響から、共働きを選択する夫婦が増えたことも、産休・育休取得率の向上を後押しした。

いまや、「産休・育休取得の希望を拒否する使用者」は、悪質であればその事業所名が公開され、世間的な大バッシングを受ける時代である。それでも、一部使用者の中には、「妊娠したら女性は退職するもの」という風土から、根本的には脱却しきれていないケースがあるのも事実だ。

もしくは、育児休業が浸透している企業においても「子育ては女性が担うもの」という概念のもと、制度が運用されている事業所がほとんどではないだろうか。

働く女性に手厚い制度を設ければ設けるほど、「女性活躍推進」どころか女性のキャリアロスにつながるジレンマをいかにして防ぐか。先進的に取り組む企業からヒントを探る。

女性が意思決定の場に参加

右端の女性が山下明子氏

女性社員の視点が「世界初」の製品を生み出した。KDDIは2015年12月にハンドソープで洗えるスマートフォン「DIGNO rafre(ディグノラフレ)」を発売した。従来の防水機能を強化し、タッチパネルディスプレイは濡れていても操作可能だ。

「子どもが口にする物にはかつてない程の注意を払い、衛生を保つよう努力をしていました。特に何でも口に入れてしまう小さいお子様がいるご家庭に、少しでも安心を提供できるのではと考えました」。そう話すのは、商品企画を担当したプロダクト企画1部プロセスマネジメントグループリーダーの山下明子氏だ。日本仕様に対応した最初のAndroidスマートフォンの企画開発などを担当し、産休・育休を経て、現在はauラインナップの方針策定を担う立場を任されている。

DIGNO rafreのターゲットは子育て中のママだ。企画のヒントは山下氏自身の育児経験から得た。加えて、子育て中の人に限らず、通話時に画面にファンデーションが付着するなど女性特有の汚れの悩みにも着目し、多くの潜在ニーズに応えられるのではないかと考えた。

同社は2005年からダイバーシティ推進に取り組み、なかでも女性活躍推進は、仕事と家庭の両立を支援する段階を経て、現在は女性ならではの視点や経験を企業活動の様々な場面に反映させる段階へ力を注いでいる。2012年度からは、女性が意思決定の場に参画することで企業力の強化を図るため「女性ライン長登用プログラムLIP(Lady’s Initiative Program )」を実施。ライン長とは、組織のリーダー職で人事評価の権限を持つ管理職だ。女性ライン長は2012年4月は32人だったが、2015年度の目標では約3倍の90名まで増やし、女性ライン長比率7%を目指すとしている。

研修では社内の経営層とコミュニケーションを取る機会を与え、意識改革を促す。集合研修の中でグループごとに事業や働き方など自社に関する課題が与えられ、最終的には社長へのプレゼンで提言を行う。

山下氏は2012年度に第1期のLIPに参加し、2015年4月からライン長となっている。「研修を通じ、物事を推進するうえで、女性は特に意識して主観を排除して語ることの重要性を気づかされました。DIGNO rafreのプロジェクトを推進するうえでは、第三者的な視点でファクトを整理し客観的に説明する努力をしたことで、早いうちから関係者にご納得いただけました」と振り返る。

活躍を支えるプログラムとフォロー体制

2013年に安倍晋三首相は「社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする」目標を掲げた。その後、大企業を中心に数値目標を掲げるなどして取り組みの動きは広がっているが、同時に難しさに直面している企業も少なくない。

人事部ダイバーシティ推進室の間瀬英世室長

KDDIは、2000年に第二電電株式会社(DDI)、KDD株式会社、日本移動通信株式会社(IDO)が合併したという背景があり、もともと地域の携帯電話会社に一般職で入ったという女性社員も多い。「例えば入社後30代くらいまで事務職としてキャリアを重ね、マネジメントの経験が乏しいような女性社員が、女性活躍推進という社会の動きもあって、あなたは優秀なんだから管理職を目指しなさいと突然言われても、尻込みしてしまったり、自信が持てなかったりする場合が多い」(人事部ダイバーシティ推進室の間瀬英世室長)。

LIPはその点を考慮したプログラムだ。「学んだ女性社員は、経営層から刺激を受けたり社の事業を真剣に考える経験を重ねたりする中で『私でもできるかな、やってみようかな』と意識が変わっていきます」(間瀬室長)。また、社内報で社長から女性活躍推進に対するメッセージを発信するなど、会社として女性社員に期待する姿勢を伝えることも大切にしているという。

女性に限ったプログラムではないが、さらに高度な経営判断を担う人材を育てるために同社には「役員補佐」という職位が設けられている。取締役以上に上席補佐(部長級クラス)と補佐(課長級クラス)が男女一人ずつ配置され、1年間、役員の仕事を間近で学ぶ。判断の視点や入ってくる情報など、座学では分からない生の経営を知ることができ、社内外の人脈も広がる。第1期生の矢野絹子氏は、補佐を経験したのちコミュニケーション本部宣伝部長としてauのCMシリーズ「三太郎」を手がけた。幅広い世代の支持を得て、ソフトバンクが8年連続で獲得していたCM好感度No.1(CM総合研究所)の座を奪うという成果を挙げている。

女性社員を会社にとって重要な決断を下す立場まで育成するには、どんな点が大切なのか。間瀬室長は次のように話す。「日本の企業は、社内ではスキル・評価が高い人が多いのですが、いざその人が外に出た場合使える能力が全然ないということがあります。女性社員を経営層まで育てたいなら、社内だけのスキルだけでは戦っていけないので、社外を知る環境を用意し、異業種の方との交流することが非常に大事です」

同社は、課長・ライン長級の社員が社外に人脈が広がっていないことを課題のひとつとして捉えている。リーダーを担うと困難に直面したり判断に困ったりする場面があるが、乗り越えるには社外に経営層など相談できる目上の知人を持っていることが大切だと考えているという。


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