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特集

【特集】“評価しない組織”の衝撃 第4弾


中小企業が取り組むべき人事評価のアップデート  5つの評価制度を紹介

2018.10.16

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ティール組織を導入するには、組織の在り方そのものを変える必要があるため、変容には3年以上の時間が必要だ。ホラクラシー経営も多くの失敗と改善を繰り返し、時間をかけて組織をつくりあげていかなければならない。

そこで、組織改革の一環としてまずは人事評価制度から見直してみるのはどうだろう。今回は旧来の年功序列とは異なる評価制度として、目標管理制度(MBO)、コンピテンシー評価制度、360度評価、OKR、ノーレイティングの5つを紹介。各制度の導入に向いている企業の特徴や運用時の注意点を、人事プロフェッショナルの永見昌彦氏に聞いた。

【特集】“評価しない組織”の衝撃~ティール組織の解説、ホラクラシーやノーレイティング実践企業の事例紹介、人事評価のアップデートまで~

プロフィール

永見昌彦(ながみ・まさひこ)
アルドーニ株式会社代表取締役。外資系コンサルティングファームなどで人事コンサルタントとして勤務した後、事業会社で人事企画担当マネージャーとして人材開発・人事システム・人事企画を兼務。事業会社、コンサルティングファームの両面から人事に20年たずさわった経験を活かして、2016年にフリーランス人事プランナー・コンサルタントとして独立。2018年に法人化。現在、@人事で「社員に選ばれる会社の人事制度・人材開発」を連載中。

アルドーニ株式会社代表取締役の永見昌彦氏⓵

目次
  1. 中小企業から大企業まで幅広く導入「目標管理制度(MBO)」
  2. MBOとの併用が多い「コンピテンシー評価制度」
  3. 客観性と公平性が高い「360度評価」
  4. 達成困難な目標設定で社員の成長を促す「OKR」
  5. ランキング評価からの脱却「ノーレイティング」
  6. 企業の特性に合わせて納得感の高い人事評価制度を選ぶ

中小企業から大企業まで幅広く導入「目標管理制度(MBO)」

個人、またはグループごとに目標を設定し、目標の達成度で評価を決める制度。Management By Objectives and self-controlの略で、ドラッカーが組織マネジメントの概念として提唱した。

最初に上司と部下が話し合い、組織と個人の目標をすり合わせる。個人は組織の目標を理解した上で自分の目標を立てるため、双方が目指すべき方向性を一致させることができる。個人は主体的に目標に向かって行動することで、組織の成功に貢献する意識を持つ。目標は評価期間が終わるごとに変わるのが原則である。

永見氏は「上意下達の軍隊的な組織には向いていないが、大企業から中小企業まで、幅広く採用されている。(後述の)コンピテンシー評価制度との併用もよく見られる」と語る。運用時の注意点は、評価期間の設定の仕方だ。目標設定から1年間で評価する企業もあるが、フィードバックが少ないと目の前の目標が意識しづらい。評価期間中にビジネスモデルや部署の体制が変わり、目標自体を変化させる必要性もある。

一方、3カ月など短期間に評価すると達成度が分かりにくくなることがあるため、永見氏は「評価期間は半年程度で定めると良い。1年間に設定する場合は、必ず期間中に何度か中間レビューを行ってほしい」と話す。

MBOを効果的に実施するには、上司が日々の業務で部下と交流することが欠かせない。評価期間終了となってから初めて、評価結果を一方的に告げられたり、通常の業務で関わりのない上司に評価されたりすると、部下の評価に対する納得感は低くなる。「目標を達成できず評価が低かった場合でも、普段から頻繁にフィードバックし、達成度や達成できなかった理由を情報共有していれば結果を受け止めることができる」(永見氏)

ポイント

評価期間を半年程度に設定し、意識的にフィードバックを多く行うことで納得感を得られるようにする。

MBOとの併用が多い「コンピテンシー評価制度」

社内で業務遂行能力が高い人に共通する行動特性を考え、それを評価基準に設定する制度。理想の行動特性に応じた目標を個別に設定し、その達成度を評価する。社員の具体的な行動が達成すべき目標となるため、理解しやすい。

永見氏によると、MBOと同様に幅広い規模、業種の企業で導入されているが、上意下達の組織には向かない。MBOと併用する場合は、MBOを賞与に、コンピテンシー評価制度を昇給に反映させることが多い。

ポイント

社内のハイパフォーマーの特性を評価基準に設定。MBOと併用しながら昇給評価に生かす

客観性と公平性が高い「360度評価」

上司に加え、部下や同僚らが評価者となり、対象者の業務の遂行能力とコミュニケーション能力を評価する制度。上司だけでは分からない対象者の特性や人物像、強み、弱みを多面的に把握できる。客観性と公平性が高く、被評価者の納得度も高くなる。

実施には注意が必要だ。永見氏は「匿名で360度評価を実施する場合、小規模の企業だと誰がどのような評価をしたのかが分かってしまう可能性がある。社員数は少なくとも100人以上が適切だ」と語る。全員が評価者となるため、人事担当者がデータを集約するための作業量が膨大となる。HRテクノロジーの導入や、他者の評価に慣れていない社員のサポートも必要になる。

永見氏によると、評価できる人数は、1人につき7~8人が限界だという。「あまりに多くの被評価者の人数を抱えると、一人ひとりに対する評価が雑になる危険性がある。360度評価だけで昇給や賞与の評価を決めるのは難しい」

ただし、全社的に取り入れるのではなく、一部の階級以上の人事異動・昇格の参考資料にすることはできる。例えば、対象者を課長以上の社員に設定し、その中での人事異動や新たな昇格を決める際に参考にする。一定の階級以上の異動・昇格では、部下や同僚、上司の幅広い視点からの評価を基に、該当者を選ぶことができる。360度評価は、評価を実施する目的を明確にし、必要な対象に絞って実施すると良い。

ポイント

全社で導入するとコストがかかるため、導入目的を明確にし、必要な対象に絞って実施する。

アルドーニ株式会社代表取締役の永見昌彦氏②

達成困難な目標設定で社員の成長を促す「OKR」

会社が達成すべき目標(OKR)から各グループ、個人の目標を設定し、その達成度で評価を決める。全社員の目標を1つずつ上位階層にたどっていくと、最終的に「会社としての目標」につながる。Objectives and Key Resultsの略で、Googleが導入したことで注目された。

MBOと仕組みが似ているが、目標の達成可能性が異なる。MBOは達成することが現実的か、少し難易度が高い内容を定量、あるいは定性目標として定める。OKRは達成率60~70%の定量目標を設定し、かなり高い目標に向かって成長していくことが求められる。目標の扱い方も異なり、MBOは個人で管理することが多いが、OKRは全社員の内容が社内で公開される。

永見氏によると、OKRはスタートアップ企業や、挑戦的な社風の会社が向いている。また、階層構造は少ないほうが良い。現場の社員は会社の目標に合わせて個人の目標を立てるため、階層構造が多いと個人の目標を決めるスピードが遅れていく可能性がある。

運用面で気を付けるべきは、評価に反映する際に、目標達成度そのものは高くない特性を意識することだ。永見氏は「数値の目標達成度をそのまま評価結果とするのではなく、最終評価の根拠を説明できるように、普段から部下のふるまいを観察してこまめにフィードバックしてほしい」と話す。

ポイント

会社の目標をいち早く現場の社員に落とし込む。達成することが目的ではなく、「成長すること」に主眼が置かれていることを理解して評価する。

ランキング評価からの脱却「ノーレイティング」

社員を年度単位の業績に応じてA、B、Cなどのランキングで評価し、昇給や賞与を決める「レイティング」を行わない制度を指す。米国のGEやアドビシステムズが導入したことで知られる。

継続的に上司と部下が面談をして目標に向けた達成度を確認し、評価の参考にする。昇給、賞与の金額は上司が決める。ランキングに応じた昇給割合や賞与金額が決められていないため、上司は昇給、減給となった場合の評価理由を明確に説明できなければならない。また、上司は会社から与えられた原資を昇給、賞与として部下に振り分けるため、部下の成長点や改善点を正確に把握する必要がある。

永見氏は「ノーレイティングはハードルが高いが、以前から上司に多くの裁量を与える文化が根付いている企業ならば取り組みやすい」と説明する。また、上司には高いマネジメント能力が求められ、時間、精神的な負担が増える。「管理部門は研修やサポートの機会を設けて、マネジメント能力の育成と啓蒙に努めてほしい」(永見氏)

ポイント

部下との継続的な面談、評価、昇給と賞与の判断の全てを担う上司をサポートする体制を整える。

企業の特性に合わせて納得感の高い人事評価制度を選ぶ

中小企業が組織改編を目指すために有効な5つの人事評価制度の特徴と注意点を紹介した。重要なのは、自社の特性に合わせた制度を選び、導入目的を明確にすること。社内の事業転換や人員の変動に合わせ、柔軟に人事消化制度を見直す必要がある。

組織が大きくなればなるほど、社員一人ひとりの評価を平等にすることは難しくなる。永見氏は「評価を完全に平等にすることは不可能だ」とした上で、「企業風土、事業内容、従業員数から、社員の納得度が少しでも高くなるような制度を組み合わせて運用してほしい」と強調する。人事は自社の特徴や変化、評価制度の導入により社員が受ける影響をつかみ、最適な制度を選び抜く力が求められる。

【取材・執筆: @人事編集部】

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